自身が掠れるほどの時間、俺は漂っていた。
大量のビル群、人はいないそんな場所、いったいここは何処だろう。
『起きて……』
脳が、痺れるような声がした。
女の声だ、どこかで聞いたことある気がする。
「いつまでそんな所で寝ている」
「ハッ!?」
落ちる、堕ちる、墜ちる。
視界が置き去りにされながら、俺は地上に向かってビルの上から落ちていた。
目の前には赤い竜、アレは、アイツは、アイツの名は。
「ドライグ……」
「何をしている、何故落ちている」
「だって、俺は」
俺は、何だったのだろうか。
その言葉の続きを口にすることは出来ない。
俺は人か、それともドラゴンか。
静止するように、俺は止まっていた。
ビルに足付き、向かい合うようにドライグと対峙していた。
「止まった?」
「演出だ。ここは俺の精神世界、いやお前の精神世界か」
「なん……だと……」
こういうのも出来るぞと、いつの間にか俺は牢屋の前にいた。
牢屋の中にはドライグがいる。
なんで、セルフ収容されてるんだ?
「そんな所にいないでこっちに来いよ」
「そうだ、こっちに来てゲームしましょう」
声がした。
何処かで聞いたことあるような、というか覇龍の時に聞こえた声だ。
また知らない場面に移り変わる、気付けば俺は剣や刀が突き刺さった荒野にいた。
そこでは知らない人達が戦っていた。
「最初は憧れだったけど、間違いなんかじゃなかった!」
「その先は地獄だぞ」
「誰かに負けるのは良い、けど自分にだけは負けたくない!」
「いや、そもそも俺達別人だし性別も違うんだが」
「うるせぇ!」
うわぁぁぁぁとお互いに叫びながらガチャガチャと剣をぶつけ始めていた。
子供のチャンバラみたいで、太刀筋とかは素人のそれだった。
なんだろう、あの男の人と女の人。
「あの人達は」
「ナチュラルに順応してスゲェな。普通さ、後ろにドラゴンが急にいたらびっくりしない?」
「そうか、歴代の赤龍帝か」
「待てよ、答えてないのに気付くの早いよ。そして俺の存在は無視か。みんな人の話を聞かない」
俺の背後には赤い竜が翼を畳んで佇んでいた。
うむ、精神世界って言ってたしドライグなんだろう。
朧気ながら思い出してきた、ついカッとなって覇龍したんだった。
「ここはアホどもの溜まり場だ。お前は今、死にかけてるんだ」
「そうか、死ぬのか」
「もうちょっと驚こうぜ。いや死なないけどさ、今は外が大変なんだぞ」
どう大変なのか、ドライグに話を聞けば怪獣決戦と返ってきた。
どうやら、俺の身体は精神と違って暴走してるらしい。
でもって、ヴァーリが俺をブン殴ってるそうだ。
「今じゃ冥界がてんやわんやだ。いや、本当原作より規模がスゴイことになってるからな」
「俺も剣とか使えるかな」
「マイペースか!俺の話を聞けよ!」
ごめんドライグ、今オレ自身が死ぬことだって言ってステラァァァァって叫びながら爆発する所だったから聞いてなかったよ。
歴代赤龍帝ってこんな所で何してるんだよ。
「まぁ、そろそろ目覚める頃だろう。本当だったら、ここにある原作を見せてやりたいところだったんだがな」
「ドライグ、そんな物より良い物がある」
「お前は!ちょ、来んなよ!お前、歴代でも脳筋なんだからなベルザード」
誰だろう、俺の前には先程まで遊んでいたのと違う人が立っていた。
赤い鎧を纏った人が仁王立ちで立っていた。
ラーメン屋の店主みたいなポーズで、此方を見下ろす。
「アンタは」
「俺からの選別だ喰らえ」
「一体、何を――」
「グレートホーン!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!」
一瞬、何をされたのか分からなかった。
腕を組んだ状態から、溜めを作られて放たれたその拳はまさに居合抜き。
光しか見えなかった、なんて拳だ。
「我が技を授けたぞ、一誠」
「待て、お前の技ではない」
「ありがとう、ベルザード」
「お前もお前で大概だな!」
薄れ行く意識の中、俺は満足そうなベルザードにお礼を言った。
「…………ハッ!?」
「イッセーさん!」
「ここは……アーシア生きていたのかお前」
気付けば俺は荒野にいた。
大丈夫だ、刀とか剣は突き刺さってない。
随分とおかしな夢を見ていた気もするが、思い出せん。
なんか殴られた気がする。
「ここは冥界か、更地になってるけど」
「ヴァーリさんがイッセーさんを助けてくれたんです。もう、いなくなっちゃいましたけど」
「借りを作ってしまったな」
オーフィスもいないし、先に帰ったのかもしれない。
アーシアも無事、戻ってきたので俺も帰るとしよう。
俺は拳を構えて、確かこんな感じと殴ってみる。
「グレートホーン!」
『Penetrate!』
確実にやったという確信があった。
なんというか手応えと言うやつだ。
ドライグの能力、透過の本質は選択するということだ。
選択したものを無視する、透過する、それが本質だ。
つまり、物質じゃないから殴れないという部分を透過することで、概念も殴れるようになれる。
距離の壁を殴ることが出来る様になるのだ。
「つまり、こういうことだ」
「…………」
『アーシア、考えるな感じるんだ。オーフィスもやっている』
パキンという音と共に景色に穴があいた。
オーフィスと違って徐々に治っていくから、まだまだ練りが足らないのかもしれない。
まぁいい、これで冥界に穴を開けたわけなので歩いて帰れるぞ。
「帰るぞ、どうしたアーシア?」
「…………行きましょう」
「お、おう?」
良くわからないアーシアであった。
家に帰ったら、何故かパーティー状態であった。
やったアーシアが帰ってきたとテンションの高い両親が色々買ってきたからだ。
ちゃっかり、ヴァーリも家にいて何でいるんだと思ったが細かいことなので気にするのはやめた。
「帰ってきたぞ、戦士達が」
「おう、帰った」
「フッ、待ちくたびれたぞイッセー!今日は鍋パだ、つまり締めはラーメンだ!ラーメンについては、俺はこだわりがある!」
「やけにテンションが高いなヴァーリ」
この後、メチャクチャ食事した。
食事をしたヴァーリが去り際に、借りを返してほしいと言ってきた。
どうやら、北欧神話の奴らがやってくるらしいので喧嘩売ろうぜとのことだった。
神殺し、してみないかなんて唆る誘い文句である。
殺しはしないけど、ブン殴ってはみたいな。
大丈夫、異教の神だから俺の宗教的に問題ない。
俺の宗教は異教徒には容赦しないからな。
「狙うはロキだ。まだ主神は時期早々だからな」
「ロキか。確かフェンリルの親父だろ、俺は北欧神話には詳しいんだ」
「ヨルムンガンドの父親でもある」
「なんだって、それは知らなかった」
世界と同じくらいデカイ蛇の親か。
きっと、ものすごいデカイのだろう。
スゴイ、殴りがいがありそうだ。
後日、ウチの神棚から日本神話勢のお知らせがやってきた。
日本に北欧神話勢が来るからどうにか穏便にしろと、小さい狐がやってきて頼んできた。
狐って日本神話勢だったんだな知らなかったぜ。
頼みますよ、本当に頼みますよとフリをしてきたから、つまりは思い切りやれってことである。
『フリじゃないと思うぞ』
「俺、ワクワクすっぞ」
『あっ、これダメなパターンだ』
よし、そうとなれば修行である。
俺達の戦いはこれからだ!
「ほっほっほっ、いいケツじゃな」
「キャア!?」
「やっぱ殺すわ、うん」
家を出た瞬間、目の前にいた明らかに神であろう爺がアーシアの尻を触っていたので殺すことを決めた。
ヴァーリ、やっぱ主神にも喧嘩売ろうぜ。
お前はロキな、俺はコイツをブン殴る。
「むっ」
「あっ、避けられた!クソ、どこ行きやがった!」
和平とかぶち壊し確定である。