「何してくれてるのかな、もぉー!」
「確かに俺は何か間違えている……けどいいんだ。だって、誰かの為になりたいっていう思いが、間違えの筈がないんだからな!」
「良い風に纏めんなしー!間違いだよぉ!」
後日談、俺は京都に来ていた。
なんで京都かというと、北欧神話の件、上手くやってくれたから家族ごと京都に招待してやるよタダだぜ、と日本神話勢に言われてホイホイついてきてしまったのだ。
もっと観光地じゃない場所とかなら警戒したのに、くっ油断したぜ。
そして、いいのかホイホイついてきてしまって俺達はそんなチョロい赤龍帝でも構わず食っちまうんだぜ、と神達に連行されたのだ。
や、やめろー!英雄色を好むとか英雄から神になった奴らもいるみたいだが、なんだ衆道って!ケツを狙ってくるんじゃねぇ!ホモかよ、貴様ら!
でもって、俺は正座させられて幼女である天照大神ポコポコ殴られながら説教されていた。
「はいはい説教終わり、さてと罰を与えます」
「えー」
「どうして京都なのか分かりますか?京都は妖怪魑魅魍魎が跋扈する場所だからです。でもってそんな所で良からぬことを企む輩が居るわけですが、生憎と私達は忙しい。さぁ、どうする」
「困る」
「違うだろぉ!そこは、私がやりますだろぉ!忖度しろよぉ!」
やだこの幼女、難しい言葉を使ってくる。
それにしても、妖怪か。
清水寺で狸が天狗とかと戯れてるんだろうか?
「それで京都で誰を殴れば良いのだ?」
「もう、すぐ殴って解決しようとするぅ。京都の狐が須弥山の会合に向かう予定よ、連中の当ては狐と霊地の強奪でしょう。はてさて、何を企むのやら、阿呆の考えることは分かりませぬ」
「何を言ってるか分かりませぬ」
「お黙り!ようは、狐を守れと言っているのです、分かりましたね。私は、帰りますよ。そろそろDVDBOXが天岩戸に届く予定なのです、在宅しないと宅配業者が困るでしょう?」
「へぇ、分かりましたでございます」
取り敢えず敬語っぽい事を言ってその場を誤魔化し言われたことを考える。
取り敢えず、京都在住の狐さんとやらを見張ってればいいのだろう。
幼女は、というか天照大神はそういうことでと言って屏風に向かって手を突っ込んだ。
すると、屏風に波紋が出来上がって絵の中へと入っていった。
スゴイ、絵の世界に入ってしまった。ちなみに屏風の絵は雲とか山とか書いてあるので天界的な奴なんだと思われる。
さて、狐とやらがどこにいるかなど検討がつかない俺は、神社仏閣をめぐる事にした。
ブラブラしてれば、きっとイベントが起きるだろうと思ったのだ。
ゲームだとそうである、だから現実もきっと同じだと思う。
ドライグに聞けば、だいたいあっているとのことなので問題ない。
赤い鳥居が大量にある神社に訪れると、何やらドライグがネギマを思いだすぜなどと口走る。
どうした、急に焼き鳥の話なんかしてお腹減ったのか。
そんなことを思っていたら、何やら周囲に気配が集まってきた。
「貴様、見ているな!」
「ふぇぇ!?」
気配に向かって、俺が指差せば鳥居の後ろに隠れながらビクッとした幼女がいた。
また幼女か、何なんだろうな幼女っておい。
日本での幼女に出会う確率凄すぎやろ。
幼女大好きかよ日本人、きっとこれも神格の類なのだ。
であれば、幼女のイメージが神を変質させてしまうのも致し方ないことなのだろうな。
「南無南無」
「なんで!?というか、貴様京都の者ではないな!」
「ほぉ、そこに気付くとは天才か」
ピョコと指差す幼女の頭に黄色い三角形が二つ現れる。
そして、同時に尻尾のような物が尻に生えた。
なっ、コイツは狐の類であったか。
つまり、騙されたのである。
なんだと、許さんっ!
「騙したな!貴様ぁぁぁ!」
「ひぇ、なんだこの情緒不安定な人間」
「人間、違うなぁ……俺はドラゴンだ」
俺の身体が膨張する。
人間態からドラゴン態へと姿を変えたからだ。
あわあわしてるが、幼女のことなど知ったことではない。
「变化しおった、物の怪の類か」
「いや、だからドラゴンと言ってるだろ」
「くっ、こんな所で死ぬわけには……おのれ、許さぬぞ!母上を返せ」
「お前は何を言ってるのだ」
人差し指と親指で、目の前の幼女を摘み上げると周囲の気配がざわついた。
ふむ、どうやら俺が守る狐とやらはコイツのようだ。
偉いやつだから回りが心配しているのだろう。
「ええい、離せ!この、このこの!クソ、届かーなーいー!」
「だろうな、届かんだろうさ」
ぶらんぶらんと揺れる幼女が騒ぎ立てる。
待て待て、話し合おうではないか。
何やら食い違いがあると、馬鹿な俺でも分かるというものだ。
「おい幼女、お前母親がどうのと言ってるが何の話だ」
「しらばっくれるな、お前が母上を拐ったのは分かってるんだ!」
「おかしいぞ、俺は狐を守るように言われてるんだけどな。ちょっと待て、攫われただって?」
つまり、どういうことだってばよ。
『マタマモレナカッタ……』
「ドライグ、何を言ってるんだ」
『天照と喋ってる間に拐われたようだ』
「始まる前に終わっていたのか」
話を整理すると、コイツの母親を助けるはずだったんだが既に拐われたらしい。
でもって、それは人間だということなので禍の団の人間と言えば、英雄派ってことなのだろうな。
おのれ、曹操!また、貴様か!
「よしわかった、俺がお前の母親を助けてやろう」
「えっ、何故」
「人を助けるのに理由が必要な訳ないだろ!」
『人じゃないし、神から言われてなんだがな』
細かいことは良いのだ、一度言ってみたかったからな。
曹操という輩は、神器を用いて気配を巧妙に隠しているので全くもって探すのが困難である。
だが、犯人は現場に戻ってくるというので京都でブラブラしてれば会えると思う。
京都が現場だからな、範囲は広いけど探せば会えるさ、多分。
「むっ、霧が出てきたのじゃ」
「霧か、きっと奴らだな」
「ど、どういうことなのじゃ」
霧のせいで今まで周りにいた妖怪の気配が消える。
それと同時に、ポツリと複数の気配が現れる。
つまり、敵である。
「フハハ、久し――」
「オラァ!」
随分と前に会ったが、あの頃と違って成長した俺は軽い身体能力だけで奴らの懐に入り込んだ。
そのまま、蹴りを入れれば誰かしらが吹っ飛んだ。
倍加を使わずとも、瞬間的な移動ぐらい簡単に出来るわ。
「なっ、ヘラ――」
「フンッ!」
「ジャ――」
「邪魔だぁ!トゥ!ヘアー!」
俺の回りで三人の人間が吹き飛ぶ。
脆い、脆すぎるぞ。この程度に着いてこれないとは、それでも英雄かよ。
「ハァァァァ!」
「くっ、曹操か」
「前より強くなっているとは、魔人化していたのに瞬殺とは恐れ入った」
魔人化ってなんだよ、人間やめてんのかよ。
弱体化してんじゃん、馬鹿じゃねぇの。
俺の拳を槍で受け止めた曹操を見ながら、そんなことを思う。
因みに、俺の背後では狐幼女こと九重がぽかーんと口を明けて立っている。
「だが、足手纏いを連れてこの神殺しの槍、黄昏の聖槍と張り合うつもりかな」
「そ、ソイツが母上を拐ったに違いない!やっちゃえ、イッセー!」
「応!」
『Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!Transfer!!』
俺の拳から光が曹操に放たれる。
今まで槍と拳が拮抗していたのだ、距離は近く避けられない。
そして、俺の譲渡に当たってしまった。
「しまっ――」
2の5乗、つまりは32倍である。
基礎体温が35度だとして、約900度くらいにはなると思う。
100度で水は沸騰するので、血液も沸騰する。
算数と理科は得意なんだ。
「うわらば!?」
曹操の身体が膨れ上がり、内側から破裂した。
血液が高温になって気化したからである。
武器がスゴくても使い手がスゴくなければこんなもんだ。
「うえっ」
「ちょ」
「おえぇぇぇぇ」
九重が吐いた、子供には刺激が強かったか。