俺はドラゴンである   作:nyasu

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何、髪が長いと強いのか!?

山に来た。

何故山に来たのかは分からないが、人がいない上にドライグが勧めるので都合が良かったからだ。

ドライグは俺に、この世界の秘密を教えてくれた。

悪魔、天使、堕天使、それから神話の存在に神滅具や神器についてなどだ。

そして、この世界には魔女も魔法使いも仙人も妖怪もいるらしい。

 

『人が想像できることは実現可能という言葉がある。つまり、お前が想像できるなら存在するということだ』

「なに、ならば世界を壊せるくらい強いやつがいるとでも言うのか?」

『ふっ、愚問だ。それは次元の狭間にいる』

 

なんてことだ、本当に存在していた。

つまり、ドライグの言うことは真実ということだ。

そして、ここから山に来た理由が語られる。

 

『山にいればそれだけで強くなる、人はそれをYAMA育ちという』

「何を馬鹿な、確かに過酷だがそれだけで」

『自分を信じろ、俺が信じるお前を信じろ』

「分かったよドライグ」

 

ドラゴンの姿を幻視した。

そして、俺は人からドラゴンになったのだ。

あり得ないということこそあり得ない。

つまり、そういうことだ。

難しく考えずドライグの言うとおり信じればいいのだ。

 

それから数日俺は山で過ごした。

俺が過ごした山の大地はそれは過酷だった。

入り乱れる根っこ、岩や泥など整備されていない道は、なるほど人が育つとはよく言った物だと思わせる。

そして、時折現れる野生動物は皆が何故か荒ぶっていた。

熊は両手を上げて襲いかかり、鹿はその角を使って襲いかかり、猪は見つけた瞬間襲いかかり、鷹は鉤爪で目を抉りに来る。

ふとした瞬間、首を狐が噛みちぎろうと飛びかかり、いつの間にか肩にいたリスは耳を齧ろうとする。

他にも遭遇する動物はすべてが襲い掛かってきた。

俺の知ってる山と違う!

 

『ドラゴンとは争いと女を呼び寄せる、つまりそういうことだ』

「なるほど」

 

つまり、動物達は産後間近とかそういう気性の荒い時期なようだ。

それで襲ってきたのだろう納得した。

まぁ、全部美味しく頂いたがな。

 

『いいか、世の中色々とゴチャゴチャ言うがな。大体は魔力だ』

「何だそれは」

『魔力があればイメージでどうとでもなる。今、お前は竜の心臓から無尽蔵なくらい魔力が供給されているのだ』

「すごいんだな、ドラゴンって奴は」

 

ドライグはそれから、俺の知らない知識を教えてくれた。

まずは覇気と六式という技術。

魔力でとにかく強化する武装色、魔力でとにかく気配を読む見聞色、魔力で威圧感を強化する覇王色。

魔力で強化して放つ突き、指銃。

魔力で強化して身体の筋肉を強張らせて防ぐ、鉄塊。

魔力で感覚を強化して風圧を感じて避ける紙絵。

魔力で強化して地面を何度も蹴って移動する剃。

魔力で強化して空気を蹴る、月歩。

魔力で強化して鎌鼬を起こす、嵐脚。

 

「本当だ、殆ど魔力じゃないか」

『魔力にも種類があるが、それを人は念という』

 

魔力を使って強化する強化系。

魔力を使って炎とか水を作る変化系。

魔力を使って操る操作系。

魔力を飛ばす、放出系。

魔力で何か作る、具現化系。

魔力によって起きる良く分からないことは特質系。

 

『だが、魔力じゃ説明できないこともある』

「なに、良くわからないことは特質系ではないのか!?」

『良くわからないからと言って、魔力関連ではないのだ。そう、仙術だ』

「仙術……」

 

周囲からエネルギーを取り込む、仙術である。

触れたやつの気を乱して体調不良を起こす、仙術である。

回復することや寿命を延ばす、仙術である。

気配を消したり出したり、仙術である。

手からビームが出る、仙術である。

空が飛べるようになる、仙術である。

自然と一体になる、仙術である。

頭部が発光する、仙術である。

分身する、仙術である。

気合でなんでも出来る、仙術である。

 

『仙術とは気を操る力、生命力とはつまり小宇宙だ。小宇宙を燃やす、つまり気合がアレばだいたい出来る』

「知らなかった」

『知識や認識とは曖昧なモノだ、その現実は幻かもしれない。人は皆思い込みの中で生きている、そうは考えられないか?』

「答えは得たよ、ドライグ」

 

ドライグの教えに従い、俺は川に来ていた。

川岸に穴を掘り、水をためて葉っぱを乗せる。

水見式というやつである。

 

「よし」

 

魔力を手からふっ飛ばすと、水が弾け飛んだ。

つまり、俺は強化系であった。

なるほど、身体を鍛えればいいのだな。

 

『まぁいいや』

「何か言ったかドライグ?」

 

目標は、ドライグの話に出てきた聖闘士だ。

なんでも光の速さで殴れるらしい。

弱いやつでもマッハ1は出るそうだ。

いやいや、そんな馬鹿なと思ったがドライグが言うには現代に伝わる神話の話は殆ど実話なのだ。

つまり、英雄はいた訳である。

山脈をぶっ壊したり、宇宙を支えたりしたヘラクレスはいたのだ。

流星より早い矢を放ったアーラシュはいたのだ。

海をダッシュで渡ったクーフーリンはいたのだ。

なら、マッハ1で殴れるやつが至っておかしくないのだ。

 

「取り敢えず、正拳突きか瞑想だな」

 

手頃な岩に向かってただ殴る、ひたすら拳を振るう。

だが、意識してみるとこれが中々難しい。

同じ拳は一つもなく、僅かにズレが発生する。

理想的な正拳とは程遠いのだ。

そもそも、理想的な正拳とはどんなもんだろうか。

そんな他愛ないことを考えながら正拳突きしていたらいつの間にか朝を迎えていた。

 

「朝……まさか、日が暮れて明けたというのか」

『おい、やっと気づいたのか』

「ドライグ、正拳突きって何だろう」

『急にどうしたお前』

 

正拳突き、ただの殴るのとは違うのだ。

理想的な正拳突き、それはいったいどんなものなのだ。

俺はそれを知らない、知らなければそれに修正を掛けて近づくことも出来ない。

俺は、強くなれない。

 

『ふむ、そういうことならば拳法家を探せばいい』

「何故、拳法家なんだ」

『拳法は強いんだ。八極拳を極めれば神でも殺せる』

「それはすごい」

 

しかし、それは人里に降りないと行けないということだ。

この姿で人里に降りるなんて出来るはずがない。

そんな弱気を、俺の相棒は吹き飛ばした。

 

『馬鹿野郎!諦めんなよ!諦めんなよ、お前!どうしてそこでやめるんだ、そこで!もう少し頑張ってみろよ!ダメダメダメ!諦めたら!周りのこと思えよ、応援してる人たちのこと思ってみろって!あともうちょっとのところなんだから!』

「ドライグ……」

『ちなみに竜の力を外に放出できれば一時的だが人間の姿になれる』

 

な、なんだって!?つまり、人里にも行けるし親にも会えるってことなのか。

知らなかった、やっぱり気合があればなんでも出来るんだ。

俺が、俺が間違っていたよドライグ。

そうとなれば、と俺は修行を開始した。

 

「力を、俺の中の力を放出するんだ」

『頑張れ頑張れできるできる絶対出来る頑張れもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る!北京だって頑張ってるんだから!』

 

ドライグの応援を受けながら数日、飲まず食わず不眠不休で自分の中の力を探り、力を放出することを考えていた。

何も感じないと思うから感じないのであって、俺はあると確信して座禅を組む。

そのうち、何か熱いものを感じた。

もしかしたら、これが力なのかもしれない。

それは心臓から溢れてくる。

間違いない、コイツが魔力だか小宇宙とか言われてる奴だ。

だが、その供給量は激しい。

俺にこの力をすべて放出することが出来るというのか?

 

『逆に考えるんだ、全部じゃなくたっていいやと』

「そうか、顔だけでもいいんだ」

 

顔から力を周囲に放出する。

また、力の流れを顔以外の所に向けていく。

すると、顔に違和感を感じ始めた。

そして、川を見ると髪が伸び切った俺がいた。

ドラゴンでない、俺の姿があった。

 

「よし、これで山を降りることが出来る」

『長髪、強キャラ感がスゴイ』

「何、髪が長いと強いのか!?」


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