サマエルに苦汁を飲まされた俺は、吸血鬼の国に向かうことにした。
時は二千年代、ドライグを宿した兵藤一誠はルーマニアへと旅立つ。
『ラリホー』
「ここは、夢の世界か」
海を泳いで渡り、中国人のトラックに乗せて貰って俺はルーマニアを目指してる旅の最中に、どうやら眠っていたらしい。
そして、ドライグの声で目を覚ました。
「どういうことだ?」
「お前に修行を付ける」
「そ、その声は!?」
そこには歴代の赤龍帝達が立っていた。
赤い鎧を纏った赤龍帝達、そのフォルムは各自どこか違っている。
その数、12人。
何やら、意図的な何かを感じる。
「グレートホーンの人じゃないか」
「お前は弱い。まだまだ気や魔力の運用が未熟である。よって修行を付ける。行くぞ、覚悟はいいな!」
でぇじょうぶだ、夢の中なら死ぬことはないと俺の回りを赤龍帝達が囲むようにして言ってくる。
い、一体何が始まるんです。
『負けないでイッセー、アンタが負けたらアーシアはどうなるの。夢の世界なんだから死にはしない、12回耐えればなんとかなるわ、次回イッセー死す!ここまで想像した』
「スターダストレボリューション!」
「グレートホーン!」
「オーロラエクスキューション!」
「スカーレットニードル!」
「ロイヤルデモンローズ!」
「エクスカリバー!」
「ギャラクシアンエクスプロージョン!」
「廬山百龍覇!」
「積尸気冥界波!」
「ライトニングプラズマ!」
「天魔降伏!」
「厳霊乃焔!」
光が走った、流星群のようなオーラが俺をブチのめした。
腕が消えたと思ったら拳がいつの間にか入っていた、超スピードとか超能力とかそんなチャチなモンじゃねぇ世界を狙える拳である。
オーロラのようなビームが拳が出て、俺の全身が凍りつく寒い。
いつの間にか激痛が走って、頭がおかしくなりそうである。あばばばばば。
何かバラの花弁が散っていた、ゴフッ!?コイツは……毒!
手刀が光となって飛んでくる、飛ぶ斬撃が俺の身体を引き裂いた。
気付いたら巨大な光が俺にぶつかっていた、派手に死にそう。
目の前にドラゴンの群れが現れて俺の身体に体当たりを噛ましてきた、超絶痛い。
ブラックホールみたいなのが発生して、俺を飲み込もうとした。酷い悪臭と醜悪な声に心が折れそうだ。
光った拳の壁が目の前に現れた、避けられない。
気付けば寝ていた、立つことすら許されない、ぐぬぬぬ。
大量の雷が俺の身体を貫いた、ビリビリする。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「やはり、この手に限る」
飛んだり跳ねたり、何度も死にかけた。
というか、死ねるレベルなのに死ぬことが出来ない。
しかも、攻撃の後に追い打ちが掛かるから抵抗もできない。
俺の意識はそこで途絶えた。
夜空が見えた。
気付けば、俺はトラックの荷台で寝ていた。
「……ハッ!?」
『気づいたか、相棒』
「俺は一体、あれは現実なのか?」
『アレは赤龍帝の残留思念。残念な奴らの成れの果てだ』
ドライグがいつにもましてシリアスに説明してくれる。
なんてことだ、どおりで錯乱していると思った。
まさか、俺に対して攻撃してくるとは先輩達の洗礼が厳しい。
「そうか、サマエルに負けたからきっと思う所があったのだろう」
『まぁ、それは置いといて修行だ。1秒間に10回の呼吸ができるようになるんだ。あと、10分間息を吸い続けて10分間吐き続けるようにもな』
「それを出来るとどうなるんだ」
『その呼吸は波紋と呼ばれる。対吸血鬼の技術だ、太陽になるんだ。太陽ォォォォ!ってな』
なるほど、太陽ォォォォ!か。
吸血鬼は太陽が弱点、スゴイ。
波紋を覚えれば吸血鬼なんて貧弱ゥ貧弱ゥってことだな。
ルーマニアに行くまでの道中、時間を倍加することで俺は波紋を覚えた。
修行時間が増えた分だけ、普通の人の数倍の時間を過ごしているがドラゴンの寿命は長いから多分平気である。
ドライグが言うには、精神と時の部屋かよとのことだ。
何言ってんだ、屋外だから部屋じゃないぞ。
「ここがトリファス」
ルーマニア、そこは吸血鬼の話をよく聞く場所。
でも実際は吸血鬼のヴラドは創作でこっちでは英雄らしい。
地元の人が言っていた。
まぁ、でも、吸血鬼が住んでいるというのだから一般の人が知ってる真実と裏の真実は別なのだろう。
「匂う、匂うぞ!血の道標、わざと垂らしそして拭く同類にのみわかる程度に、香るように……誘ってるのか?」
『俺じゃなきゃ見逃しちゃうね』
裏の人間とカッコよく言えばいいか、というか動物並みの嗅覚がないと気付けない程度に血が匂いを発していた。
道にポタポタ、鼻血でも零したのかってくらい点々と続いている。
「それで、やっぱり罠だったか」
「よく気付いたな赤龍帝、ここは我らが支配している場所。監視の目を掻い潜れるとでも思ったか?」
石造りの、曲がりくねった道を進んでいくと建物の裏から人が現れた。
いや、まぁ人に擬態した吸血鬼たちなんだが囲まれたようだ。
「さて、君に提案だ。下等種族である貴様でも、ドラゴンの力を宿してるんだ使えるだろう。慈悲深い私達は選択肢を与えよう。我々、ツェペシュ派に協力してカーミラ派を共に潰そうではないか」
取り敢えず、実力も分からないのに見下しているのも分かった。
太陽の元で歩いていることから、なんか強い吸血鬼なんだと思うけど偉そうなのがムカつく。
ドラゴンより吸血鬼が偉いと思ってるとか、ナンセンスだ。
というか、そもそも俺の宗教的に吸血鬼はアウトである。
「答えはノーだ、教義に則り貴様らを葬る。安心しろ、我らが神は慈悲深いから死んだら受け入れてくれるぞ、もっとも魔王と一緒に死んだらしいから嘘なんだが、ていっ」
挨拶代わりに倍加もしてない魔力弾を飛ばしてみる。
早さだけで、特には威力はない。
「ぬっ!?ぐぅぅぅぅ!……ハァハァ、敵対する道を選ぶとは愚かな。我々は、太陽すら克服した最強の種族だぞ、そんな攻撃は無駄だ!」
自分に置き換えみる。
サマエルを克服した自分、スゴい強そう。
だが、特に驚異は感じない。
「死ぬがいい!ハァァァァ!」
「…………」
「フハハハハ、マッハで発射された血液は何でも切り裂く!それは貴様も例外ではない!後悔して、死ぬがよい」
「えいっ」
「…………えっ?」
お互いの間に微妙な空気が出来た。
何だよ、片手で弾いただけだろうが、どうした?
「此方からも行くぞ、波紋カッター!パパウパウパウ!」
「こんな、ワインがなんだ、ぐあぁぁぁぁぁ!?」
「掛かったな、馬鹿め!」
俺の口からワインが飛び出し、それを片手で防ごうとする吸血鬼。
その片手をワインは弾丸のように直進して貫き、絶命させる。
波紋を知らないのか何が起きてるのか分からない様子であり、何やらざわついている。
「次にお前は化物と言う」
「ば、化物!……ハッ!?」
「何処に行こうと言うのかね。さぁ、聖杯を出せ!聖杯出せよオラァ!」
見聞色の覇気を使って、唇の動きを先読みして発言すれば目に見えて動揺が走る。
そして、俺が動き出すと同時に、吸血鬼達は背を向けて走り出した。
「…………聖杯」
『アイツらは放っておこうぜ』
何だよそれ!頑張って波紋習得したのに、何だよ!
やってられねぇと街を壊しながら城を目指す。
どうせ城にいるんだろ、知ってるわ。
『相棒、ゴーレムだ!』
「ゴーレムなんざに頼ってるんじゃねぇ!」
『相棒、狙撃だ!』
「銃なんざに頼ってるんじゃねぇ!」
『相棒、アイツら血液を取り出したぞ!』
「アイテムなんか使ってるんじゃねぇ!」
城を目指して進む俺を邪魔する奴らを片っ端から攻撃して突き進む。
おい、コソコソしてないで来るなら来いよ。
「な、何が……ぐっ、ぐぁぁぁぁぁ!?」
「ほぉ、ドラゴンに変身するとは面白い」
俺の要望に答えるためか、吸血鬼達が爆発するように体積を増やしたと思ったら人型からドラゴンに変化した。
理性を失ってるからか、きっと奥の手なんだろ。
『なろうとしてなった訳じゃなさそうだ。ドラゴンを狩りに来ていたらドラゴンになるとは……啓蒙でも得たのかな?ドラゴンになっちゃう病気かな?』
「分からんが来いやぁぁぁぁ!」
群がるようにドラゴン達が殺到する。
そこに向けて拳を振るえば、十数体ほど宙を舞う。
まさに無双ゲーのような状態だ。
「フハハハハ!遅かったな赤龍帝」
「誰だ!」
戦いの手を一旦止めて高笑いが聞こえた方を見る。
すると、声のしたところに人影があった。
「お前は……誰だ?」
「俺はレオナルド、そしてコイツが」
ゲオルグでもいるのか、何かが空間から現れる。
赤い赤龍帝の腕が見えた。
白い白龍皇の腕が見えた。
人の腕や骨の腕が見えた。
天使の翼と悪魔の翼が見えた。
九本の尻尾にフェンリルの頭部が見えた。
サマエルの気配のする、なんかごった煮があった。
「フハハハハ!僕の考えた最強のモンスターだぞ!」
「強そう」