俺はドラゴンである   作:nyasu

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お前が、白龍皇ヴァーリー!そういう君は、赤龍帝兵藤一誠

敵は強大だ。

俺を殺そうとし、足蹴にした堕天使にも及ばない強者。

俺の見聞色の覇気が強さを感じさせてくれる。

 

コカビエルは、その手に光の槍を出現させた。

その光は眩しく、そして強大だ。

最初の堕天使が銛だとしたら、コカビエルのそれは丸太だ。

丸太か、いい武器を使う。

 

「光の丸太か」

「舐めてるのか貴様ァ!光の槍だ!」

「うるせぇ!」

 

どうやら違ったらしいが、強いことには変わりない。

俺は奴の懐に向かって、剃で瞬間的に移動する。

貰った、食らうがいい我が必殺の――。

 

『相棒!』

「ッ!?」

「甘いぞ、赤龍帝!」

『Boost!!Boost!!Boost!!』

 

光の槍が腕を抉る。

赤い龍の身を、焼きながら削っていく。

咄嗟に、防御力を倍加したが俺が弱いせいか防ぎきれなかった。

特防に努力値を振っておけば、努力が足りない。

 

「な、中々やるな。確実に倒せたと思ったんだがな」

「貴様ほどの人間など、たいして珍しくはない。大戦時代、たくさんいたのだ」

 

なるほど、戦争経験者という奴なのか。

そういうやつは漫画でも強い奴が多い、伊達じゃないって奴だな。

 

「近づかない方が良さそうだ」

「何?」

「行くぞ、相棒!」

『Boost!!Boost!!Boost!!』

 

俺の気が数倍に膨れ上がる。

掌の間にそれを溜め、腰で構える。

足を大地に降ろし、反動に備える。

 

「その構えは、まさか!うおぉぉぉぉぉ!」

「ドラゴン破ァァァァァァ!」

 

コカビエルが、その雷にも見紛う光の矢を振り投げる。

そこに向かって、俺の赤いレーザーのような気の塊が飛んで行く。

俺とコカビエルの間で、それはぶつかり火花を散らした。

お互いの力は拮抗、押され押し返され、互いにぶつかりあっていく。

クソ、もっとだ!もっと気合を入れるんだ。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

「人間風情がぁぁぁぁ!」

『なんだと、二個目だと!?』

 

一気に、俺に向かってくる圧力が増す。

どうやら、奴は二個目の槍を投擲したらしい。

俺が気合を増やした分だけ奴の投擲した槍も力を増したらしい。

お互いに決着はつかない拮抗、それにより飽和したエネルギーはお互いを吹き飛ばすように爆発して膨れ上がり、クレーターを生み出した。

 

「ぐあぁぁぁぁ!?」

「ぐおぉぉぉぉ!?」

 

お互いにボロボロになって、地面に投げ出される。

俺は満身創痍、あの短いやり取りの中で常に全力だった。

だが、まだ終わりじゃない。終わりじゃないのだ。

 

「よっしゃ、隙あり!」

「くっ、邪魔だ!」

「待て、フリード!」

 

立ち上がろうとした瞬間、背後から気配が忍び寄ってきた。

コイツは、あの時の神父ではないか。

虎視眈々と不意打ちの機会を狙っているとは、というかよく見たらさっきの白髪の剣士だった。

奴は光の剣で殴りかかってくる。だが、今は邪魔である。

そんな俺を庇うように、金髪の剣士が剣と剣をぶつけて防いでくれた。

なんだこのイケメン、死ねばいいのに。

 

「大丈夫かい、一誠君。ここは僕に任せてくれ」

「へいへいへい、そういうの死亡フラグって言うんだよ!僕ちん舐められてる、上等上等!ぶっ殺してやんよぉぉぉ!」

「よく分からんが、イケメン助かった」

 

死ねばいいと思ったが、やっぱり生きてても良いだろう。

そんなことより、コカビエルである。

奴は片方の翼を折っていたが、それでも立っていた。

俺と奴の目が合う。

奴もまた、こんなところでは終われないという目をしていた。

 

「フフフ、ハハハ!いいぞ、いいぞもっとだ!来い、赤龍帝!」

「なんて奴だ」

 

あの攻防で、片翼になる程度とはやはり元のポテンシャルが違うのだろう。

だが、諦めなければ人は成長出来るのだ。

奴は倒す、倒さなければならない。

 

「ドライグ、アレを使う」

『なんだと、そんな身体で……』

「だからこそだ、アイツに勝つにはこれしかない」

 

コカビエルは何をする気だと此方の動向を伺っている。

終わりだコカビエル、その余裕もいまに吹き飛ぶ。

 

「次は何をする赤龍帝!見せてみろ、お前のすべてを!」

「奥の手だ、行くぞ相棒!クロックアップ!」

『Boost!!Boost!!Boost!!』

 

世界が、ゆっくりと停滞していく。

加速し続ける俺自身により、時を置き去りにしているのだ。

奴の一秒を、俺の数十秒に変えていく。

刹那の一瞬を、永遠の一時に変えていく。

そう、時を置き去りにするほどの自身の加速、それがクロックアップだ。

 

『相棒、これは寿命を削る技だ。早く決めろ』

「うおぉぉぉぉ!」

『Boost!!Boost!!Boost!!』

 

静止したコカビエルの背後で、俺は右足に魔力を貯める。

念による強化、そして倍加による強化、更に武装色の覇気を使い強化する。

 

「終わりだ、コカビエル」

『ファイナルアタックライド!』

「うおぉぉぉぉ!」

 

その強化された一撃がコカビエルへと入っていく。

奥の手を切らされるほどの強敵ではあった。

そして、クロックアップが解除される。

 

「なッ!?ぐわぁぁぁぁぁ!」

 

叩きこんだ一撃に身体が耐えきれず爆発するコカビエル。

俺の背後で、黒い一枚の羽根がヒラヒラと落ちていった。

 

「くっ……」

 

今までの戦闘で蓄積したダメージのせいで膝を着く。

魔力や気を使い過ぎたせいでドラゴンの身体から人間態へと戻ってしまった。

絶をして回復力を早めるが傷は深い。

そして、そんな状態だったからだろう。

俺は奴の存在に気づかなかった。

 

「ほぉ、コカビエルを倒すか。なかなかやるな」

「誰だ!?」

 

声のした方を見る。

そこには月光を背後に佇む白い鎧の男が飛んでいた。

あ、アイツはまさか。

 

『久しいな、赤いの』

『起きていたのか、白いの』

「お前が、白龍皇ヴァーリ!」

「そういう君は、赤龍帝兵藤一誠」

 

奴が、ドライグが言っていた超えるべき壁。

二天龍の片割れ、アルビオンを宿した歴代最強の白龍皇。

 

「やめておこう、弱った所で戦うなんて勿体無い」

「あぁ、そうだな」

 

出会った時に感じた。

我が宿敵に相応しい。

ドライグに言われたからじゃない、コイツは俺の獲物だ。

 

「いつかお前を倒す」

「あぁ」

「だから、俺以外に負けるんじゃないぜ」

「楽しみにしているよ、兵藤一誠」

 

奴に向かって拳を向けて、俺は宣誓した。

そして、同時に決めた。

俺も、コイツと戦うときまで負けないと誓った。

 

「会長、なんかあそこだけ少年漫画みたいな感じなんですけど」

「しっ、今が良いところだから」

「会長!?でも、アイツって」

 

ヴァーリはゆっくりと降り立ち、その黒い羽を一枚回収して飛び立った。

さて、俺も帰るとするか。

 

「ま、待って下さい」

 

帰ろうとして、呼び止められたので振り返る。

すると、今までの戦闘で疲弊しているのか顔を赤くした状態でボロボロな奴らが此方を見ていた。

 

「なんだ」

「…………」

「何なんだ」

 

振り返り、何か言うつもりか。それとも、これから俺を討つのか。

そう思い、仁王立ちでいつでも動けるように待機する。

 

「…………」

 

しかし何も答えない奴らに痺れを切らした俺は、そのまま奴らに背を向けて帰路についた。

徒歩で帰り、玄関を開ければそこにはアーシアが待っていた。

 

泣きそうな顔で、泣き腫らしたのか目は真っ赤だった。

というか、顔が真っ赤だった。

はて、どこかで見たような……さっきの生徒会長たちと同じ顔だ。

 

「一誠さん!」

「なんだ」

「ホワイ!ナンデ、全裸ナンデ、着替えて、ハリー!」

「あぁ、そうだった。すまない」

 

玄関で全裸の男が謝っていた。

というか、それは俺だった。


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