限界、それは突然やってくる。
俺は身体を鍛えたが、それでも目に見えて成果が現れない。
種の限界って奴なんだろうか。
『何を悩んでいるイッセー』
「ドライグか。俺は、強くなっているんだろうか」
『何を今更、俺が言った冗談で六式が使えるようになっているんだ。出来るに決まっている』
そうか、俺はドライグの冗談で強く……なんだと!?
「じょ、冗談だと!?」
『細かいことは気にするな。結局できたんだ、なら出来るってことだ』
「お、おう。そうなのか?」
来るべき聖戦のために強くならないといけないのか。
しかし、仙人になれば強くなれると思ったんだが壁にぶつかっているのは事実だ。
どうしたらいいのか、うむ悩ましい。
山の中、滝行をしながら考え事に耽る。
どうしたら強くなれるのか、飛ぶ斬撃ならぬ飛ぶ手刀とかどうだろうか。
そもそも、拳圧って飛ばせるんじゃないだろうか。
貫手とか飛ばしたらどうだろうか。
『ふむふむ、釘パンチというのがあってだな』
ドライグの教えにより、一点集中の拳による技を覚えることができそうであった。
だが、それにはまだ力が足りない。
ドラゴンの身体でも、パワーが足りない。
「話は聞かせて貰ったニャ!」
「むっ、誰だ」
俺の見聞色の覇気感知を掻い潜った存在に視線を向ける。
そこに来たのは、メス猫だった。
黒い猫が、喋っていた。
『まさか、夜一さん!?』
「知っているのかドライグ」
「誰ニャそれ」
どうやら猫違いであった。
しかし、こんな山奥でしゃべる猫とは……待て、喋るということは猫じゃないのではないか?
「つまり、貴様は妖怪だな」
「猫魈ニャ」
「妖怪仙人って奴だな。だから、俺の見聞色を掻い潜っているのか」
見聞色と首を傾げる猫、どうやらニワカ仙人のようだ。
それで、こんな山奥で何をしているのだろうか。
「これでも仙術は得意ニャ。修行を付けてやるから、願いを叶えてくれ」
「分かりやすい、いいぞ」
「うんうん、信用出来ないのはわか……えぇ!?即決!」
『相棒は素直なんだ、慣れろ』
ふっ、所詮は猫よ。
どうせツナ缶が欲しいとかなんかだろう。
そんなことより修行である、俺ワクワクすっぞ。
「まぁ良いニャ。ズバリ、アンタが弱いのは龍の気と人間の気と自然の気が入り乱れてるからニャ」
「なるほど、わからん」
「取り敢えず、上手く調和が取れれば扱いきれないエネルギーを全部使えるってことニャ」
「つまり、一部しか使えなかったということか」
ドライグのパワーを俺自身がコントロール出来ていないのが原因だったとはな。
しかし、この猫やるな。
「そこで、私を抱くニャ」
「……何故?」
「房中術というものがあってだニャ」
「ぼーちゅーじゅつ?」
その後、猫は長々とその概要を説明してくれた。
俺がうつらうつらと眠そうになるまで続き、話が終わったあたりで起こされた。
「聞いてるのかニャ!」
「すみません、聞いてませんでした」
『つまり、コイツのエロさがお前を強くする』
「事実だけど、事実だけど誤解を招くようなことを言うニャ!」
ドライグが言うにはそういうことらしい。
そうか、俺も年頃だからエロいことくらい考えるが、しかし猫とか。
そういう特殊な性癖はないんだがな。
「勿論、たっぷりサービスするニャ」
「うむ……やっぱりエロいことはダメだ。アーシアに言われている」
「誰ニャ!」
「アーシアが言っていた。婚前交渉はしてはならないってな」
アーシアの教えは絶対、いいね。
立派なSEISYOKUSYAになるためには必要なことだ。
うむ、だがしかしエロいことでも強くなれる。
どちらか一つの道しか選べないのだから、強くなるのは大変だぜ。
「そんな、計画じゃ……」
「もしするなら結婚しよう」
「えぇ……ムードも何もないニャ」
「じゃあ、この話は無しだ」
猫はぐぬぬと唸り声を上げた。
そこはフシャーじゃないのか。
しばらくして、そうだと何かを閃いた様子を見せた。
「婚前交渉でなければ良いのニャ、肌を重ねるだけならセーフニャ!」
『なるほど、十八禁から全年齢版になるという訳か』
「どういうことだ?」
「ぶっちゃけデリヘルニャ」
な、なるほど。
デリヘルみたいなことってことか。
それなら、アーシアも許してくれる訳だな。
大丈夫だ抱いてない、抱くのはNG行為だからと説明できる。
コイツ、天才か。
「というわけで、約束は守ってもらうニャ」
「あぁ、望むところだ」
「行くニャ、変身」
「なん……だと!?」
俺が納得していたら、目の前で猫が女の姿に変身していた。
スゴイ、コイツも変身できるなんて知らなかった。
さすがは妖怪仙人である。
「私はあと、一回変身を残している」
「何!?ね、猫ミミと尻尾まで生えた」
「この状態の私はエロさが当社比で1.2倍ニャ」
『なんて微妙な』
その後、猫は服を脱ぎ去って俺に跨ってきた。
そして、エロいことは次の日の夜まで続いた。
夜、焚き火の前で手に入れた魚を焼いて二人で食べる。
あの後、俺はみなぎるパワーを感じていた。
上手い感じに溶け合っているらしいが、その結果使いやすくなったらしい。
それで、猫の願い事を聞く算段になった。
「私のお願いは一つニャ。禍の団に入って、一緒に妹を悪魔から取り返して欲しいニャ」
「妹を悪魔から取り返す?」
詳しく話を聞いみると、どうやら猫は黒歌と言うらしい。
その黒歌は無理矢理に悪魔にされて、妹と離れ離れになったらしい。
妹は、グレモリーが預かっているということだ。
おのれグレモリー、またお前か!
「そこで私は禍の団を利用して、今度学校を襲撃するニャ」
「なんで学校を襲撃するんだ?」
「そこで和平の会談がある予定だからニャ」
黒歌が所属する不良グループ禍の団とやらが学校を襲撃するらしい。
恐らく、敵対グループの集会を襲うのだろう。
それが会談って奴だな。
それに何故か参加している妹を掻っ攫うとのことだった。
つまり、不良少女を連れ戻すってことだな。
そのために敵対する不良グループに入るとは、黒歌も頭が悪い。
そういうの、本末転倒って言うんだぜ。
「だいたいわかった」
「本当かニャ?あと、禍の団に一度顔を出して欲しいニャ」
『おい信用するな、恐らく話半分にしか理解してないぞ』
まったくドライグは失礼である。
それと、その不良グループに一応挨拶回りをするらしいことになった。
これも約束の範囲内だ、従うとしよう。
黒歌に連れられて森の中を歩くといつの間にか霧が発生して視界が悪くなった。
そして、気づけば俺は建物の中にいた。
どうやって入ったんだ、不思議である。
つまり、不思議な霧だったんだ。
間違いない、なんか神器的なやつか魔法的な奴だ。
「ついたニャ」
「驚いた、本当に勧誘を成功させるとは」
「アレが禍の団のリーダーである、曹操ニャ」
曹操か、中国の偉い人と同じ名前だ。
つまり、偽名に違いない。
カッコイイからって真似しちゃう奴だろ。
「俺は曹操、英雄派のリーダーをしている」
「英雄派って?」
「英雄の生まれ変わり、英雄たちのチームさ」
「つまり自称英雄の不良ということだな」
「おい、それは聞き捨てならないな」
事実を言ったのだが、どうやらそれが気に食わなかったらしい。
しかし、実在してたとしても死んだ人物だ。
それをあやかるならまだしも、英雄と同じ名前だからって英雄になれる訳がない。
長友って名前の人がプロになるわけじゃない、本田って名前の人がプロになるわけじゃない。
「名前だけじゃ、サッカーは上手くなれないんだよ!」
「何の話ニャ!?」
「まぁいい、仲間同士で争うのは不毛だ。俺達のことは、これから理解して貰おう」
「おい曹操、俺は納得いかないぜ!名前だけの赤龍帝なんぞ、足手纏いだ」
「やめないかヘラクレス。彼はまだ覚醒したばかりなだけさ」
「そんな英雄の魂を受け継いでない奴が、神器程度を持ってるだけの奴が強いわけがねぇからな」
へへへと笑う大柄の男が俺を馬鹿にしていた。
正直言って、コイツは嫌いである。
だがこれはいい機会だ。
不良グループだと思っていたが、神器とか言ってるしどうやら反社会団体だったようだ。
どのくらい強いのか試してみよう、そうしよう。
「おい、デュエルしろよ!」
「ひょ!?」
「おい猫一つ聞きたい。決闘だが、別にアレを倒してしまっても構わんのだろ?」
『おいやめろ!何故そのネタを知っている!偶然なのか、そうなのか!?』