クリス「親戚がスタイリッシュだった件」   作:数多 命

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書きたいシーンを書いてしまったら、一気に筆が遅くなってしまった拙作ですが。
今回、ちょっとしたネタを何とか書き上げることができましたので、投下します。


番外編:もしも拾われてたら

―――――偶然。

本当に偶然だった。

せっかく会えた家族(いもうと)の訃報に打ちひしがれ、気分がすっかり沈んでいた頃。

あまりの落ち込みようだったのか、珍しく気遣ってくれた『同業者』が仕事に誘ってくれた。

場所は、南米のとある国。

奇しくも、妹が亡くなった場所だった。

子どもを中心とした奴隷を買い叩き、それを生贄に魔界の扉を開こうとした魔術師。

『憂さ晴らし』には、これ以上ない大儀と理由のある相手だった。

結果は言うまでも無く圧勝。

魔術師には悪いが、ある種の箍が外れた自分に、勝てると思ったことが間違いだった。

少しの物足りなさを感じながら、ふと、生贄達の方に目をやって。

 

「――――」

 

言葉が出なかった。

だってあの髪は、その顔は。

間違いない。

記憶にあるものとは少し違うけれど、それはきっと東洋人の父親にも似ているからであって。

 

「――――ぁぅ」

 

今まさにスプラッタショーを行った人物だからだろう。

同じ銀髪を揺らした彼女は、目が合うと体を強張らせた。

歩み寄れば、更に震える。

だが目だけは閉じずに、まっすぐこちらを見据えていて。

 

「・・・・ッ」

 

こちらの体も奮えた。

子どもと違って恐怖ではない、歓喜でだ。

胸に温かいものが溢れて、一瞬でも気を抜けば泣いてしまいそうだった。

 

「よう、お嬢ちゃん」

「・・・・っ」

 

しゃがんで目線を合わせれば、なお怯える彼女。

参ったなと思いながら、笑いかける。

 

「名前は?」

 

そう問いかけると、頭を庇っていた子どもはきょとんとした。

大方、暴力を振るわれると思っていたのだろう。

彼女が置かれていた環境と、それをどうにも出来なかった自分が悔しくて。

せっかく生まれた喜びに、黒いもやが混じる。

『いけない』とかぶりを振る一方で、子どもは束の間黙ってから、

 

「・・・・くりす」

 

蚊の鳴くような、声。

 

「ゆきね、くりす」

「・・・・そっか」

 

どんなに小さな声でも、周りが静かだったから聞き取れた。

飲み込むように、何度も、何度も頷いて。

子どもを抱き上げる。

 

「クリス」

「わ・・・・!」

 

急に高くなった視点が物珍しいのだろう。

自分を見下ろす位置に来た彼女は、忙しなくあたりを見回していた。

と、

 

「ダンテ遅い!何、して・・・・」

 

思わず忘れるところだった『同業者』がやってきた。

・・・・・表情からして何やらあらぬ誤解を受けているようだが、ちょうどいい。

 

「レディ、今回のギャラは全部お前にやる」

「は?」

「代わりにこのガキもらうんでよろしく」

「はっ?」

「一部だが借金返済だ、よかったな」

「そ、そうだけど、っていうか」

 

『いやいや待て待て』と、頭をかきむしった『同業者』は、指を突きつけて。

 

「その子、何!?」

「姪っ子だ」

「・・・・ハァッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の帳が下りた街。

時計の針が頂点を過ぎても、歓楽街は賑わいを見せている。

そんな中、十代後半かと思われる年頃の少女が。

ギターケースを背負い、赤とオーク色を基調にしたコートを揺らしながら、ゆったりと歩いていた。

首の辺りで二つに結わえられた髪が、ネオンを反射して銀糸のように輝き。

彼女の妖艶さを演出していた。

それでも声をかける男がいないのは、彼女から溢れる気配が尋常ではないから。

週末でリフレッシュしようなんてものじゃない。

むしろこれからが戦いだと言いたげな、張り詰めた気配だった。

と、やがて彼女は足を止める。

目を向けたのは、地下へ続く階段。

看板は出ている。

どうやらここが彼女の目的地らしい。

踏み出すのを躊躇うような暗闇へ、確かな足取りで突き進む。

それほど深くない場所に入り口はあった。

ドアノブに手をかけ開けば、雰囲気の良いバーが現れる。

 

「いらっしゃい、ご注文は?」

 

奥の席でポーカーを嗜んでいるグループを横目に見ながら、彼女は席に着いた。

 

「ストロベリーサンデー」

「っ、お客さぁん・・・・」

 

こともなげに好物を口にすれば、マスターらしき男は呆れた声を出した。

 

「ここは酒場だ、餓鬼のくるとこじゃねぇぜ」

「へーぇ?その割にはアルコールより血の臭いが目立つけどな?」

 

ポーカーをやっていた一人に、少し挑発的に返す。

怪訝な視線を涼しげに受け流して、カウンター席に座った。

 

「まあいいや。ところで妙な噂を聞いたんだが、この辺に今どき流行らねぇ暴力バーがあるって」

 

話を切り出せば、グラスを拭いていたマスターの手が止まる。

あからさまな反応に手ごたえを感じながら、彼女は続けた。

 

「何でも金の換わりに命をとられるって話だから、おっかないことこの上ないぜ」

「・・・・ッチ」

「へへっ、悪いな」

 

ポーカーをやっていた一団を見てみれば、一人が舌打ち。

こちらに背を向けた男の手札が見える。

 

「ロイヤルストレートフラッシュ、そんな役出してたら寿命が縮むぞ?」

 

物静かに、淡々と。

まるで警告を発するように。

 

「みんなぁ、今日は一杯・・・・」

 

そんな少女の言葉を無視して、男は徐に立ち上がり。

 

「――――奢るぜぇッ!!」

 

どこか狂気的な笑みで振り返れば。

こちらに狙いを定めている銃口。

 

「ごがッ!?」

 

銃声、硝煙の臭い。

薬莢が一つ吐き出され、男は大きく仰け反る。

そのまま倒れると思いきや、体のあちこちが盛り上がって。

 

「グオアァッ!!!」

 

人間とは似ても似つかぬ、バケモノへ。

少女はその突進を避けてカウンター席に叩き込み、振り向く。

彼女にとっては思ったとおり、残りの二人も似たようなバケモノに変わっている。

臆することなく、もう一つの銃を握って発砲。

 

「ギャッ!」

「グブッ!」

 

いくつもの鉛玉が、バケモノ達の頭蓋を破壊する。

と、ここでカウンターに突っ込んだ一体が復帰した。

ヤツはご自慢の牙を剥くと、切っ先を彼女の片手に突き立てる。

牙は肉に深く食い込み、吹き出す血をちゃっかり味わいながら骨を砕かんとした。

 

「やるな、ロイヤルストレートフラッシュ」

 

一方の彼女はこともなげに賞賛すると、徐にギターケースを引っつかんだ。

ファスナーを力尽くで引き裂いて取り出したのは、巨大な剣。

柄の部分に取り付けられた、バイクエンジンのような仕掛けを作動させると。

真っ赤に染まった巨大な刃を、力強く振り回す。

 

「グェ、アバッ!!」

 

憐れ。

バケモノはたったの二太刀で三枚におろされ、絶命した。

刃の血を振りはらった彼女はふと、ドアに近寄る。

そして徐に剣を突き刺した。

曇りガラスの向こう、くぐもった断末魔。

間髪いれずガラスを突き破り、マスターが倒れこんできた。

 

「――――次に店をやるときは」

 

彼女はこれで終わりだと言いたげに、死体に背を向ける。

 

「ストロベリーサンデーくらい置いときな」

 

そんな軽口を叩きながら、剣を背負う。

ここで気配。

事切れたはずのマスターが、ぶるぶる震えだし。

 

「グオオオオッ!!!」

 

その醜い正体をあらわにして。

 

「――――Bingo!」

 

不敵な笑みに、打ち抜かれる。




原作クリスちゃんが小柄なのは、十分な栄養状態じゃなかったからと推測しております(いや、それにしたってあの胸に疑問は残るけど)。
なので、ここのクリスちゃんは身長高めのつもりです。
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