――――謎の男による、イタリアの歌姫『アルジェント』の襲撃。
彼がアルジェントを狙った理由や、再び出現した危険生物達。
そして殺された護衛達が、人間ではなかったこと。
アルジェントが所属していた音楽会社『アルカナ・レコード』から依頼されたこともあり。
これら全ての原因を調べるため、装者達は一同イタリアへ足を運んでいた。
「たぁッ!!!」
響の鉄拳が、トカゲのようなバケモノに突き刺さる。
バケモノは潰れるような悲鳴を上げ、きりもみしながら吹き飛んでいく。
「はぁッ!」
翼もまた一閃を叩き込み、膨らんだ案山子のようなバケモノを両断。
その勢いのまま、背後の同じバケモノを叩き斬った。
「おおおおおおおッ!!」
クリスはポンチョのようなガスを纏ったバケモノへ、銃弾を何発も打ち込む。
するとガスが剥がれて、醜い虫のような本体があわられた。
「っと・・・・!」
攻撃を加えようとすれば、背後から一撃。
振り向けば、別の個体が爪を伸ばして攻撃していた。
「舐めんなッ!」
ギラリと、右目が光る。
紙一重で避ければ、神経が研ぎ澄まされる感覚。
「――――ッ」
何もかもがモノクロで遅くなる中、クリスは一人駆け抜ける。
バケモノの背後に回り、弾丸を放つ。
通常以上の速度と量を以って襲い掛かる鉛玉は、もう一匹のガスを剥がし、二匹もろとも葬り去った。
「グアアアアア―――ッ!!」
「立花ッ!」
これで終わりかと思えばそうではなく。
響の背後、雷光を纏ったバケモノが飛び掛ってくる。
音を超え、光に至らんとする速度は、翼を以ってしても追いつけない。
前までなら、そうだった。
「・・・・ッ!」
再びクリスの目がぎらつく。
右半分の視界に、何かを示すような赤いマーカー。
それを確認するや否や、クリスは躊躇い無く銃口を向けた。
「ギャアアアアアアッ!!!」
「っとと・・・・!」
発砲音、火薬の臭い。
急所を打ち抜かれたバケモノは、大きく仰け反って怯む。
響が危なげなく離脱すれば、暴走したような赤黒い稲光を発して爆散した。
『――――エネミー、オールクリア』
『みんな、お疲れ様』
聞きなれたオペレーター達の声で、どっと緊張が解ける。
「だってさー!クリスちゃんおつかれー!」
「どっわ!?」
今回も勝利をつかめたのをクリスがほっとしていると、響が後ろから飛びついてきた。
一度は睨みつけるものの、もう恒例行事のようなものなのでため息を零すだけに止める。
「雪音、『目』の調子はどうだ?」
そんな後輩達を微笑ましげに見ていた翼は、やや真面目な声で問いかける。
――――イタリア行きが決まって、すぐのことだ。
現場に駆けつけた響やエージェント達にモロに見られてしまったこともあり、クリスは『右目』について正直に打ち明けた。
もちろんというか、二課の面々がそんな『充血』した程度で見限るような性質ではないことは、周知の事実と思う。
ちなみに、このときクリスがほんのちょっと泣きそうだったのは、全くの余談だ。
なお、それでもほっとくわけにもいかないので、検査はきっちり行われたが。
『右目』には検査した当時も今も、特に異常は見受けられていない。
むしろ『千里眼』を始めとした様々な恩恵をクリスに与えていた。
しかし力には代償が付き物。
過去、まさにその代償を背負っていた者を知っている身として、翼はクリスを案じていた。
「あー、今んところも、何もないっす」
同じく心配げな響の目線を受けながら、クリスは右目に触れる。
「確かにツケも気になりますけど、ここんとこずっと遭遇してる連中に対して結構使えますし・・・・出し惜しみは、ちょっと」
気遣ってくれる翼の意思も組みながら、改めて『右目』を使うことを告げた。
『クリスちゃんのバイタルは、精神・肉体共に異常なし』
『ただ、身体能力が少しずつ上がり始めている。杞憂かもしれないけど、一応覚えておいて』
「分かった」
オペレーター達の忠告に頷きながら、一同は歩みを進めた。
現在いるのは使われなくなった坑道。
いい加減お日様を拝みたいという思いが、足を速める。
やがて見えてくる出口。
「な・・・・」
『出待ち』を警戒しながら、外に繰り出せば。
「なんだこりゃ――――ッ!?」
今が秋だ何て関係ないといわんばかりに生い茂る。
緑、緑、緑!
加えて妙に蒸し暑く、すでに肌がじっとりと湿っていた。
『気温・湿度、共に高いわ。これじゃまるで赤道直下・・・・!』
友里の絶句する様子を聞きつつ、眼下に広がる
「――――おいおい、どうなってんだこりゃ」
「――――ッ!!」
クリスにとっては、忘れもしない声。
弾かれるように銃口を突きつければ、その先には藍色のコートが揺れている。
「貴様・・・・!」
「まあ、そう急くな」
肩を怒らせ臨戦態勢を取る翼を一瞥し、やれやれと言いたげに手を振る。
実に癪に障る行為だったが、下手に突っ込んで勝てる相手でもない。
故にぐっと堪えて、隙を覗う。
「遊んでやるのはやぶさかじゃないが、こっちも仕事なんでね」
そう乱暴に頭をかいた彼は、徐にクリス達へ向き直り。
「また後でな、嬢ちゃん達」
その身を、宙に躍らせた。
「待てッ!!」
後を追おうと飛び出したクリス。
今まさに落ちていった崖下に銃口を向けるが、肝心のターゲットが見当たらない。
「まんまと逃げられたか・・・・」
「だがそう遠くには行っていまい、追うぞ」
「はいッ!」
苦々しく呟くクリスに翼が促せば、響がしっかり返事をした。
幸いほど近い場所に降りれそうな道がある。
ひとまず、そこから樹海へ入ることにした。
New Skill !!
千里眼
遠くの敵を察知する能力。
隠れている敵を見つけ出すことも出来る。
コンセントレイト
敵の攻撃をギリギリで回避することで思考と自身を加速させる能力。
早い話が『ウィッチタイム』。
ウィークロック
普通のロックオンと違い、こちらは弱点を直接ロックオンする能力。
この状態で攻撃を加えると、大ダメージを与えられる。