クリス「親戚がスタイリッシュだった件」   作:数多 命

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短めですが、キリがいいので。


その5

自身に起きた変化に動揺するクリスに、激を飛ばしたのは弦十郎だった。

彼は今までの戦いや、アリシアが語ったスパーダ伝説を引き合いに出し、

 

『正体が悪魔だろうと、《親や友への愛情》を持っている君は、間違いなく人間だ』

『俺は、今まで共に戦ってくれた君を信じる』

 

きっぱりそう言い切って見せた。

クリスに釣られ動揺していた響や翼、そして二課のスタッフ達も。

弦十郎の言葉に励まされ、何度も頷きながらクリスを鼓舞する。

繋げて来た絆がくれた、優しい言葉。

クリスは涙を抑えられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――悪ぃ、みっともないとこ見せた」

 

一通り泣き終えたクリスは、乱暴に目元を拭いながらはにかんだ。

 

「構わんさ。こちらこそすまなかった、一番に声をかけるべきは私達だったと言うに」

「ごめんね、クリスちゃん・・・・」

「いいってことよ」

 

背中をさすり続けた翼や、肩に手を置き傍にいてくれた響。

申し訳なさそうにする彼女達に、クリスは首を横に振った。

 

『それでクリスくん、急かすようで申し訳ないが・・・・』

「構わねぇよ・・・・ママの親戚のこと聞きたいってんだろ?」

 

通信の向こうの弦十郎に答えつつ、クリスは少し困った顔をする。

 

「つっても、あたしも全然知らないんだ。ちょっと前に会ったパパの兄貴夫婦が、ちょろっと語ってくれたくらいで・・・・」

「そうなの?」

「ああ、その話してくれたことも、『スラム出身で、天涯孤独』ってもんだったし・・・・」

 

響に首肯しながら、クリスは少し前の出来事を思い出す。

フロンティア事変の後始末が一段落した直後のこと。

父方の親戚である伯父夫妻が、クリスの生存を知ったらしく。

是非会いたいと連絡してきた。

弦十郎に相談した後、会うことにしたクリスが彼らに聞いたのは、当然両親のこと。

幼いうちに死別してしまったが故の問いかけだったのだが。

伯父夫婦が少し困った顔をしながら教えてくれたのは、『母方の親戚はいない』ということだった。

元を正せばスラムの出身で、親も兄弟もいなくなってしまったと、本人が語っていたらしい。

それでも弟が選んだ人だったし、とても器量良しで素敵な女性だったから。

あまり気にならなかったと、クリスを元気付けるように明るく教えてくれた。

 

「そっか・・・・」

『ソネット女史のスラム出身という事実は、バル=ベルデに赴く動機のひとつとして公式に発表されている』

 

調べてくれたらしい藤尭が、通信で教えてくれた。

曰く。

 

『スラム出身だからと、幸せになっていけないわけが無い』

『同じように、戦火に巻き込まれているからと、平和を望んでいけないわけが無い』

『だからバル=ベルデに行き、得意の音楽で平和を掴むのだ』

 

己の出自を恥じることなく打ち明けた彼女は、堂々と宣言したらしい。

 

「すごい人だったんだね」

「・・・・ああ」

 

響の素直な賞賛に、クリスはどこか誇らしげに頷いた。

 

「だが、アリシアが語ったスパーダの子供達の名。そして先ほどの・・・・雪音の、力、どうも無関係とは思えない」

「それはあたしも同感だ・・・・どっちにしろ、あいつを追いかけて確かめねーと」

 

少し躊躇いがちに『力』について触れた翼に、気にするなという意味を込めて首肯しつつ。

クリスは気合十分といいたげに拳を手に打ちつける。

 

『ちょうどみんなの向かい側に、先へ続く通路がある。そこを通れば外に出られるみたいだ』

『ただ、悪魔の反応も多数観測されているわ。気を抜かないようにね』

「はいッ!!」

 

どちらにせよ、ここに留まっていては始まらない。

十分休息を取った装者達は、先へ進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――そうか、施設はダメになってしまったか」

「申し訳ありません、彼女の力量を見誤りました」

 

とある部屋。

数人が円卓を囲んで座っている。

その中の一人であったアリシアは、トップである男性に頭を下げていた。

 

「ああ、いいさ。結果的にソロモンの杖は修復されたのだろう?ついでに『面白いもの』も見つけたようだし、収穫があっただけマシだ」

「・・・・寛大なお言葉、感謝します」

 

見逃すことを告げてくれた彼に、改めて頭を下げてから。

アリシアは静かに着席する。

 

「けど、どっちにしろ敵が増えたのは確かでしょう?日本の連中は、少なからずこちらにも探りを入れるはず」

「そのとおり、彼らの情報捜査は目を見張る技術。用心は必要だ」

 

細身の男性がからかうように指摘すれば、トップはそれも肯定した。

 

「して、ネロの方はいかがいますか?」

 

話が一区切りしたところで、アリシアは当面の警戒対象たる男の名前を出す。

 

「私の姿を見られ、我が社に疑念を抱かれてしまった以上。彼との戦闘を避けて、協力を視野に入れるはずです」

「なら、俺が行こう」

 

ちろりと、細身の男性を見やれば、彼は意味ありげににやついていた。

 

「何、どこぞのお嬢さんと違ってヘマはしないさ」

「・・・・そうやって足元をすくわれないようにね」

「すくわれた人の言うことは違うなぁ~」

 

明らかに舐めた態度を取る彼。

アリシアは苛立ちを隠さないまま、盛大に舌打ちしてやった。

 

「どちらにせよ、お前達にはもう幾ばくか働いてもらわねばならない。アリシアは次で失態を取り戻すように」

「・・・・はい」

「おおせのままに、ってね」

 

部下達の返事に、男は満足げに頷く。

早速行動を起こすべく、彼らは部屋を後にする。

残されたのは、上司たる男性ただ一人。

 

「あと少し、あと少しだ・・・・・崇高なる方々へ、この世界を献上するまで・・・・もう少し」

 

いっそ色っぽいまでの、恍惚とした表情で。

窓から見える満月に手を伸ばす。

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