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「•••••まぁ、その、なんだ。お前もようやく男に••••」
「変な勘違いすんなこのクソ親父ッ!!」
あれから数分後。
突如息子の部屋から聞こえてきた悲鳴に、「どうした愛しの息子ォォオ!!」と叫びながら部屋に侵入してきた親父。
そう、この•••••加賀だったか?とにかく、この女の人と俺と親父、出会ってはいけない?3人が一つの部屋に鉢合わせになってしまったのだ。
「いやぁ、でもお前•••••この状況はどう見てもお前が女連れ込んだようにしか見えんぞ••••••あ、お前ゴm」
「ふんッ!」ギガンティックパンチ
「ヒデフっ!?」
余計なこと言うんじゃねぇよこのゴミ親父が。
まぁ最近ストレスも溜まりに溜まっている状態でのギガンティックパンチだ。取り敢えずこれで数分は起きないだろう。
「あ、あのぉ〜」
おずおずと言った風に口を開く加賀。そんな澄んだ眼でみんなよ。言っとくけどこの場で一番ヤバイのアンタだからね!?
「え?ああ••••どうしたの?」
「その•••ここは、どこの鎮守府でしょうか?」
「チン••••ジュフ?」
「え?あ、あの、あなたは提督ではないのですか?」
「テイ••••トク?」
「•••••近くに海はありますか?」
「え?無いけど?」
「な、無い!?」
「だってここ京都だよ?超内陸県だよ?」
Σ(゚д゚lll)←こんな感じの顔をする加賀さん。
海••••海、か。てことは、海で泳いだりキャッキャしたりするアニメの人なのだろうか••••。所謂青春系?
でもチンジュフとかテイトクとか言ってたけど••••なんのことだ?俺のことをテイトクとか言ってたから、主人公か、この人の相手役の男子がテイトクという名前なんだろうか?変な名前だなぁ。
まぁどっちにしろこの近くにある水源は家の中の風呂か市営プールのみだ。海なんてこの県には存在しない。
「そ、そうですか」ショボ-ン
明らかに落ち込む様子の加賀さん。
(あ、やべ。女の子落ち込ませるとか、俺割と戦犯じゃん)
「い、いや、その、ゴメンね••••俺ん家父子家庭だからさ•••••その、こういうの慣れてなくて」フォロ-フォロ-
「ふ、父子家庭••••ということは、提督のお母様は••••」
「うん•••俺を生んで、すぐ死んじゃった。」
「それは••••お気の毒に」ポロリ...
初対面でこんな重っ苦しい話しされて、嫌な顔どころか同情して涙流してくれるとか•••この人どんだけ優しいんだよ。
もしかして••••この人は神なのか?いや、普通はありえないけど、そもそもアニメなんて神様のオンパレードだし、というか抱き枕から変身した時点でもうそんくらいの耐性ついたわ。
「おお!なんてお優しい方だ!」ガバッ
コ、コイツ!?
いつの間に復活したんだよクソ親父ィ••••。
てか中年が美女の手を取って跪くな!それだけで十分世間的には『アウト』だ!
「聞くところによれば、貴女はそのチンジュフとやらを探していらっしゃるご様子••••どうです!?見つかるまでウチにいらしては!?」
「ちょ、親父ィ!?」
「••••よろしいのですか?」
な、何を言い出すんだこいつは!?
お前、この状況わかってんの•••?さっき『おやすみ〜』って言いに来てから約3時間くらいで人が1人増えてんだけど!?
フツー怖がらないの!?なんなのこの人!?
「もちろんですとも!いやぁ、正直なところ息子はアイドルどころかアニメの中にも女性に興味を示していなかったのに••••こんな美しい女性をいつの間にか手に入れていたなんt•••」
「オイ••••それ以上言うとマジでぶっ殺すぞ」ジャキッ
「わ、わかった••••わかったから脳天にエアガン突きつけるのはヤメテ」ヒエ-
「••••••」
加賀さんが黙った。
あ、やべ。もしかして怖がらせちゃった?
ま、そうだよなぁ••••突然枕から変身したら父子家庭とかいうヤバイとこに出るなんて、フツー耐えられなi••••••
「••••楽しそうですね、お二人とも」ニッコリ
そう言って加賀さんが見せたのは•••••俺が知らない、心の底からの笑顔だった。
直後、俺の中の時間が静止した。
中学、高校と、出来るだけ他人との接触を避け、少数の男友とだけ過ごしてきた。だから、俺が見る女性の笑顔というのは、その場で作った愛想笑いだけ。
そういうのは、本人たちが自覚していなくても、他人から見れば無理矢理作っているのは一目瞭然だった。
けれど、目の前の加賀さんは、俺たちの状況(馬乗りになってエアガンを突き付けている状況)に対して、心の底から笑っていた。
初めてみた心からの笑顔は、ただ見ているだけで心が洗われるようだった。
俺の中で、何かが動き出す。
突然こんなところにやってきて、右も左もわからない状態の女性を、このまま放っておいて、果たしていいのだろうか••••?
しかも、俺に初めて本当の笑顔を見せてくれた、たった1人の女性を。
「あー、その、親父••••」
「••••俺は別に構わんぞ?」ニヤニヤ
コイツ••••。
ちょっと手を緩めたと思ったらこれだ。やはり、後で1発だけぶちかましておくか。
「あ、加賀さん••••だっけ?」
「え、ええ•••••」
「その••••俺は多分『テイトク』って人じゃないし、チンジュフってのが何かもわかんないけど•••••」
「そ、そう••••ですよね•••」
「だから••••見つかるまではウチにいていいよ?」
「すぐに出て行きまs••••••え?」
「いや、だから••••」
見つかるまではウチに•••••と言おうとした俺の視線は、いつの間にか天井を向いていた。
それが、加賀さんに飛びつかれたのだと分かるまで、数秒の時間を要した。
「ちょ••••加賀さ」
「ありがとうございます••••ありがとうございます••••!」
そう言って俺の胸から顔を上げた加賀さん。その間には涙こそ浮かんでいたものの、表情はさっきと同じくらい眩い笑顔だった。
「•••••そういえばまだ名前言ってなかったね。俺は
「では••••少しの間お世話になります••••」
「赤城さん」
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