「あら?お目覚めですか?」
「……」
ふと目覚めると、視界の先には見目麗しい美女の顔。
頭には柔らかく、そしてどこか温かな感触があるので、おそらくは膝枕をされているのだろう。
「立ち上がるのを、手伝ってもらえるか?」
なにも初対面ではないので、別段驚きはしないし、わざわざ敬語も使いはしない。
なにより、この美女が俺のサーヴァントであることは、先ほどから痛いほどに感じる魔力のリンクを認識すれば容易に理解できる。
「はい。では、少し失礼しますね」
美女はそういうと、丁寧に俺の体を支えながら、さらには繊細に俺を立ち上がらせた。
不思議と痛みはないし、立ちくらみやその他の体の不調は感じない。
どうやら、運がよかったみたいだ。
だが、俺は思い出してしまった。
慈愛の唄を、純粋で、清らかで、慈愛に満ちた唄を。
誰の唄かはしらない。
だけど、それでも俺は……あの歌が恋しい。
狂おしいほどに追求をしたくて。
だから俺は、俺は今の今まで忘れ去っていた、そして、今ですら忘れている、あの歌を思い出したくて。
だから俺は馬鹿になった。
今一度、■■を否定して、俺はそして。
「......君は俺の駒になってくれるのか?」
ぽつりと彼女にそんな言葉を無意識に投げかける。
すると、彼女は満面の笑みを浮かべて、こう言った。
「私はすでに貴方の駒です。存分に使い潰してください」
そして、今、気付いたことがある。
彼女は....狂ってる。
彼女の名前は、ジャンヌ。
かの有名なフランスの聖女、ジャンヌダルクの憎悪らしい。
しかし、いまだ不明瞭で不確定な存在のため、サーヴァントとして成り立っているのがやっとのことらしいのだ。
されど、戦闘能力はある。
コツコツと道路を歩いている時に物陰から出てきたスケルトンども三匹を、軽く消し炭にしてしまう程度には。
いい駒を手に入れた.....のであろうか?
正直、駒という言い方を先ほどしてしまったことには、結構後悔している。
なので、彼女に謝罪をしたのだが、「お気になさらず。むしろ、駒として扱っていただけるほうが嬉しいです」と返されてしまった。
......扱いに困る。
いや、確かに俺が言ったことも悪いが、それでもアレである。
っと、そんなことを言っている場合じゃないな。
「先輩!後ろに回ってください!」
「ちょっ、マシュ!はやく!早く助けてぇぇ!」
「藤丸!はやくこっちにきなさい!はやく!遅いのよ!」
そう叫ぶと、鼻水と涙を垂れ流しながら走る青年と、自分の構えている巨大な盾の後ろに、早く隠れろといっている薄紫色の短髪にした、少々形状のきわどい軽鎧を着た少女...おそらくはサーヴァントだろうか?そして、その彼女の後ろに、いち早く隠れ、盾の陰から藤丸という名前で青年を呼んでいる白銀の髪色をした、ストレス溜まってそうな少女。
ただ......彼らは結構な危機に陥っているようだ。
さすがのサーヴァントでも、捌ききれないほどのスケルトンが押し寄せて来ている。
「マスター、どうされますか?」
「人助けか。まぁ、彼らを助けても、特に損になることではなさそうだから......やってくれるか?ジャンヌ」
「私はマスターの駒であり、マスターは私にとっての神に同じ。マスターが命令したことをやらなければ、私は私に対する憎悪で、首を掻き切ってしまいます」
そう言葉を告げると、ふふふと、病的に笑うジャンヌ。
怖い、怖いけど、返答はOKということらしい。
「....それじゃあ、やろうか」
「了解しました、我が愛しきマスター」