「君は、何を得たい?」
金髪に、マンハッタンのビジネスマンが来ていそうなビジネススーツをを身に纏った、白人顔の若そうな男は、黒髪のアジア顔の青年へと、そう尋ねた。
「えっと、記憶は消されるんです、よね?」
青年はおそるおそる、男へとそう言った。
当然だ、記憶を消されるということは、自らの人格が死ぬということと同じなのだから。
「あぁ、勿論。だけど、これは古来より行われて来たことなんだ。なに、記憶が無くなるといって怖がることはない。そして、数々の人々も、そうやって記憶を無くして、今、こうやっているように、得るべきものを得てきたのだからね」
男は、慣れたように言葉を紡いだ。
青年は、その言葉を聞くとすぐに、こう言った。
「では、僕は愛してくれる人が欲しいです」
ろくに恋愛も経験せずに、若くして死んだ青年ならではの言葉だろう。
だが、男には、それはとても心地よいものだった。
「そうか、そうか。では、君を愛す人を、君への特典とする。それでいいかな?」
男は、優しげに、青年のだした答えへと返答する。
その目は、とても慈愛に満ちあふれていた。
「はい、問題ないです」
そう青年が答えた瞬間に、青年の姿が霧となって消え去った。
転生、したのだろう。
男は、青年が転生したのを確認すると、静かに懐から羊皮紙を取り出した。
「■■■■、死因は急性心筋梗塞。幼少期は父子家庭で過ごし、何気ない日常を送っていた、か。でも、愛する人を得たいという彼の願いは、正しかったのかもしれないね」
男は、そういうと羊皮紙を裏返した。
転生先の世界であろう、表側とは違い、血文字のように赤い文字にて文面が記されていた。
「母親は浮気癖が強く、父親は家庭内暴力をものともしない上に異常性癖の持ち主。ましてや彼は一人っ子。こんな家庭内で愛なんか得られるはずがないな」
そこで、男は転生先の世界に、ある干渉をすることにした。
干渉とはいっても、彼に与えた特典についてだ。
「ふむ、この世界には英霊とやらが存在するのか。そして、聖杯戦争とやらで英霊が召喚されると。ん?彼が生まれるのも、その聖杯戦争とやらが起きるであろう土地なのか……丁度良い。彼には英霊を召喚でき、維持できる程度の魔力は先天的に開いているものと後天的に開くものを含めて充分あるようだし、彼へと、その時が来たら聖杯戦争への参加権を優先的に与え、英霊召喚とやらの省略をできるようにしてあげよう。あ、それと英霊の優先召喚と英霊召喚のときに後天的な魔術回路を開くようにしなくちゃね」
男の行っていることは、なんら不正ではない。
なにも、特典は一つだけではないのだ。ただ、彼が一つだけしか願わなかったので、男は彼が幸せになれるように、勝手に追加しているだけである。
「さぁ、存分に幸せになってくれたまえ。■■くん。君にはきっと、幸せを得ることができるさ」
そして、男もまた、霧となって消え去りゆく。
偶然にも、男が落としていった羊皮紙の一部には、こう書かれてあった。
転生先、WordType-FATE-Number130
転生者名 ■■■■
転生先の起源 ■■
転生者の特典 愛する人が欲しい