ついに聖杯戦争が始まった、が。
現在にして五日目。その結果は、余りにもあっさりとしすぎていた。
マリスビリー=アニムスフィア。
初老にも見える彼が召喚したサーヴァント……キャスター、ソロモンは余りにも強すぎたのである。
他のマスター達が召喚したサーヴァントも、決して弱いものではなかった。
だが、余りにもソロモンが強すぎたのだ。
魔術という概念を生み出した原初の魔術、たった一夜にしてちっぽけな小屋が難攻不落の大要塞になるほどの陣地作成……これに対抗できる英雄など、大英雄でしか不可能である。
そんな強大な敵相手でも、なんとか一人のマスターが、ソロモンのマスターであるマリスビリーを暗殺させようとアサシンをマリスビリーを屋敷へと忍び込ませた。
だが、そのアサシンは二度と戻ってきはしなかった。
アーチャー、ランサー、バーサーカー、アサシン。
この聖杯戦争は、グランドキャスター……ソロモンによる虐殺でしかなかった。
のだが。
「キャスター、どうした!その程度か!」
悲劇の騎士、ジャック・ド・モレー。
ライダーでありながら、馬を殺され、地に伏してなお、彼はなお、自らを奮い立たせていた。
「ライダー、無意味な攻撃はやめるんだ。君には、もはや僕に勝つ余力なんて残ってやしないだろう?」
キャスター、ソロモンは空虚な瞳で、淡々と言葉をライダーへと、降伏するように言葉を投げかける。
「私にも騎士としての誇りがある!マスターの願いを成就させねばならぬという!誇りが!使命があるのだぁ!」
ライダーは身の丈ほどあるロングソードを、力任せに振り落とすが、キャスターには避けられ、体に火の魔術を受けてしまう。
されど、ライダーは攻撃の手を決して止めようとはしない。
羅刹が繰り出しているかのように狂った剣筋の斬撃は、すこしではあるが、確かにキャスターを圧倒していた。
「我が忠義の騎士剣!我が魂の斬撃をその身に受けるがいい!」
そして、ライダーはロングソードを天に掲げ、令呪のバックアップもあるのだろう、膨大な魔力をロングソードの長い刃に纏わせながら、こう言った。
『
ライダーの顔を、赤色の炎のような色彩をした光が大きく照らし、魔力に覆われた真っ赤なロングソードは、見事にソロモンへと放たれた。
「僕には、理解ができない」
ソロモンは、避けようともせずに、そう呟いた。
その目には、困惑の色が浮かんでいる。
「何故、負けるとわかっていて尚、戦うんだ?撤退をしようとは、考えないのか?」
否、ライダーも騎士である。
撤退をするのが、もっともな騎士であり軍人の選択なのだろう、だが……ライダーは、自らのマスターの命令に従った。
魔力量も、お世辞には優秀とは言えない。
令呪全てを消費してまで、ライダーをキャスターへと赴かせたのである―――マスターがそう想うのならば、ライダーは例え、間違っているであろう戦術であろうと、忠義を尽くす。
かのディルムッド・オディナ卿のように、かのペティヴィエール卿のように。
彼は、騎士として完成されていた。
それゆえ、その騎士の厚い忠義を、ソロモンは今、しかと目にしたのだ。
「……あぁ、そうか。君は、忠義を尽くすのか。では、僕も応えなければならない。それが、君に対する
キャスターは、そういうと、まぶたを閉じ、呪文を唱えた。
徐々に、キャスターの周りへと、無数の魔方陣が浮かび。
そして
「さぁ、忠義の騎士よ。しかと受け取れ、これが僕からの……餞だ」
魔方陣から放たれた無数の火の槍がライダーへと襲い掛かった。
その威力は恐ろしく、流石のライダーでも、耐えられることはできず、そのまま瓦礫となった壁へと打ち付けられた。
「グハッ!」
ライダーの宝具は、あと一歩でキャスターには届かず。
なおも、動けなくなったライダーには、反撃をしようにも、反撃をする余力すらもなかった。
「さぁ、これで終わりだ」
キャスターは、目を開き、動けなくなったライダーの兜へと左手を載せる。
左手には魔力が収束されており、炸裂させれば、いくらサーヴァントといえども、ただではすまない。
だが、ライダーは笑っていた。
そして、こうライダーへと言葉を投げかける。
「あぁ、終わりだな」
キャスターはその言葉に耳を傾けると、背中に恐ろしい殺気を感じた。
その殺気は並大抵ではない……そう、これは、この殺気は、まさしく大英雄のものだ。
だが、キャスターが振り向いたときには、時既に遅し。
夕日に照らされて乱反射する白銀の刃が、静かにキャスターの首元へと突き付けられていた。
凛とした声で、その剣の持ち主は、こう言った。
「話し合いに興味はあるか?キャスター」
突然、聖杯戦争が始まってフィナーレになっていて?な方がいるかもしれませんが、一応、断りを入れておくと、ライダーさんとそのマスターさんは決して噛ませ犬ではありません。
あくまでも、この聖杯戦争はプロローグとしてお楽しみくださいませ。