The Fool
俺には、愛っていうのが何なのか、よくわからない。
純愛や肉体関係のみの愛……正しい愛って、なんなのだろう。
でも、俺は愛に飢えていた。
不明瞭な愛を、俺はひたすらに求めていたんだ。
でも、愛っていうのはすぐ近くにあって。
その瞬間に、俺は愛っていうものに一瞬で一目惚れしてしまった。
だけど、俺は馬鹿だった。
愛っていうのはいつも自分の側で寄り添っているものって、勘違いしていたのだから。
愛の期限は有限だ。
でも、それでも人間っていうイキモノは、愛という不明瞭なナニカに心酔し、追い掛けていく。
俺から見ると、それはとても滑稽で。
でも、凄く透き通っていて……美しかったんだ。
どこの宗教でも、愛を縛るような規則はない。
セックスを縛っている宗教はあっても、愛を縛るような宗教はない。
愛っていうのは縛りようがない。
だって、神を敬うことも、霊的なものに心酔することも、みんな愛だから。
だけど、俺は愛を否定した。
母が俺を産んですぐに死に、必死で不器用ながらも愛を注いでくれた父を、俺はどこか心の隅で否定していた。
男の癖に。母親でもない癖に。
これだから父親は。
俺は、阿呆だった。
俺は、ただひたすらに……
馬鹿っていうのは、ひどく自覚がない。
学習しないし、学習しようともしない。
だから、俺は馬鹿だった。
父親の不器用な愛情から目を背けていたし、勿論、目を向けようともしなかった。
しかし、転生したあの日。
俺は初めて父親の愛を知った。
転生先の母親は、愛に溢れていて。
父親も、どこか転生する前の俺の父親に似ていた。
だが、歯車が狂った。
俺の父親は、俺を殴った。
笑いながら俺を殴り、蹴り飛ばし、肌をえぐった。
おおよそ、常人が思いつく限りのDVは受けていただろう。
それでも、俺は泣かなかった。
いや……泣けなかった。
どうしようもなく馬鹿な俺は、おぞましいくらいにどうしようもないことになっても、この瞳から塩辛い体液を垂れ流すようなことも許しはしなかったんだ。
だからだろうか。
俺は"あの"人を見たときに、初めて何かが目から頬へとぽつりと伝った。
故に、俺は馬鹿を突き進む。
道化、芸人、気違いと言われても、俺は'あの"光をもう一度目にするまでは。
馬鹿になってやる。
とことん、馬鹿になってやる。
これが、俺なりの、俺流の。
唯一知っている、道の作り方だから。
さぁ、観客ども。しかと喜べ。
これより、馬鹿の馬鹿による馬鹿のための
スタートだ。
遅れて申し訳ありません。
一応、前作との繋がりも明らかにしていく予定です。