1:始まりの終わり
コンッ
独特な香木の打撃音。
この音が鳴り響くのは、ある季節になった証拠。
「やあ、やってるね……って、今度は見たこともない術式だね」
「俺もそろそろ、陰陽師として陰陽道を扱えなくちゃいけないんだよな」
僕は浩二。
そして僕と会話しているのは、友人の哲也。
僕たちは地面に魔法陣を描いて、新たな理論等を発見していってる。
これを使っていろんな賞を取って、将来役立てるためにこれをやっているんだ。
「重五芒星連立魔法陣。これの効率は最高だと、上から賞状があった。
受け取ってくれよ」
「やったぜ。それよりも、哲也は何かできた?」
「いんや、まだだ」
僕らは日々研鑽を積んでいる。
これが集中力とやる気の増大につながっているから、これは今では欠かせない習慣だよ。
「おーい、お兄ちゃーん!」
おっと、僕の妹の聲だ。
いや、厳密には妹じゃないんだけどね。
そんなに深くない事情がある。
「なーにしてるのー?」
「Star Light Breakerを、この魔法陣で作れないか試しているんだ」
「そんな物騒なもんできるか」
僕の冗談に真面目に突っ込んでくれる哲也。
最高だね!
おっと、紹介しないと。
僕の義理の妹、高町なのは現田畑なのはだ。
え、アニメや漫画とおなじ名前じゃね?って。
そうだよ、その通り。
僕たちは一年前、夏休みの初日に魔法陣の開発をしていたんだ。
そこで哲也が憎悪と怨嗟に塗れる魂で彩られた天使を召喚、同時に哲也が精神的に憑依されてしまった。
それに気づかないでそのまま、その天使のいう通りにしてしまったんだ。
僕らは原作やアニメからキャラクターが現実に抜け出して、
現実世界に深刻な被害を与えているという事を聴かされた。
そしてその被害を抑えなくさせる方法として、キャラ召喚の方法とその媒体等を貰ったんだ。
それは錠剤と呼ばれるもので、いまでは手に入らないけど強力で協力的なキャラを呼び出せたんだ。
段階として、架空・ホログラム・ロボット・本物がある。
今はもう必要ないから説明はしないよ。
とにかく僕らはそれを使用したんだ。
そうしたら学校の元教師である田中先生や消防官等が、クリエイター(創造主)として僕らを襲ってきた。
これが何なのかわからない。
そして天使への携帯電話番号を持っているけど、電話する意味がもうない。
この時聞いとけばよかった。クリエイターって、実際は何だったのか。
とにかく、僕たちはほぼ毎日夕方に襲撃を受けていた。
更に田中先生が金曜日に確実に殺しに来たんだ。
そして夏休みの間じゃないとできない事が沢山あったから、
僕と哲也は短期決戦ということで開発した特殊魔導布陣を用いたんだ。
これを西部運動公園、東部埋め立て工事現場に向かって使用。
そこで高町なのはともう一人の子を召喚したんだ。
錠剤の効果で災害と化した二人と共に、地球上に蔓延る全てのキャラを殲滅した。
最後に哲也を蝕む憑依体である、天使を全力でぶっつぶした。
その時天使が死んだことで、二人が原作に帰られなくなった可能性が高いのでこの現実世界で一緒に過ごすことになったんだ。
お母さんとお父さんは喜んでくれたよ。
え、哲也はいいのかって?あいつ陰陽師だから、嫁さんを親に勝手に決められるんだと。
それで僕の両親は、自分に子供ができてうれしいと言っていた。
だって……僕はお母さんのおなかから、人工的に取り出されたんだから。
お父さんも不活性になったらしくて、もう無理だったんだって。
だからこそ、二人の義理の娘を自分の子として迎え入れるのは、なんら苦ではなかったんだ。
それに僕も妹ができてうれしいよ。
だってお母さんと同じ女性だし、何か男に解決できない事情を共有してくれると思ったんだ。
その僕の思いは的外れではなかったみたいだよ。
前以上にお父さんとお母さんは、仲睦まじくだなった。
更に僕となのはともう一人の子とで、自宅に残されてもある程度の資金があれば過ごせるくらいになったんだから。
だから、僕は……二人に本当の家族(世界)の所へ戻ってほしいと思いながらも、ずっとここに居てほしいと思っている。
時が経つ程、二人に対して帰らないでほしいという気持ちが強くなる。
別に女性として感情が昂るというわけじゃなくて、僕たち家族の絆の為に残ってほしいっていうやつだよ。
いや、そこまで僕たち家族の結束が弱いってわけじゃない。
それでもやっぱり……ね。
一年も一緒に過ごしていると、二人の家族への思いは強くなっていく一方でやせ我慢をしていたり、
それが原因で病気になったこともあった。
だから僕は……葛藤している。
僕は僕だけが知る引き出しがあるんだ。
そこに例の錠剤が入っている。そこには、設定解除の錠剤があるんだ。
この錠剤を媒体に浸透させると、召喚状態が本物でなければ召喚を解除できるんだ。
今彼女達を縛っているのは、祖父から一番最初に貰った『機械式腕時計』の中にある『零時迷子』だ。
零時迷子はありとあらゆる力を、器が満たされるまで無期限無限に力を生み出すんだ。
しかも腕時計は、強奪不可・破壊不可にあって、『零時迷子』の召喚段階架空状態を物理的に取り消せないんだ。
更に錠剤もクリエイターではない、僕以外のモノらの浸透操作は受け付けない。
これだと腕時計の効果で、僕と仲間であるなのはともう一人の子は不老不死になってしまう。
不老不死の何がいけないかは、現実問題として議題に挙げられている。
でもそんな些細なことじゃない。
彼女達は原作等からこっちに召喚される。
ならば戻る方法は?
それは死ぬ事。
死ぬことで元の場所に戻る。
更に整合性を合理的に上昇させるため、一定時間経過・一定以上の痛覚で召喚時の記憶が抹消されるんだ。
実際召喚され死んだ”上条当麻”は、新約でセリフの一部が変更されていた。
でも一週間経過すると、文字列は全て元に戻ったんだ。
それで上記の問題は何かというと、『零時迷子』は器が満たされるまでありとあらゆる力を生み出すんだ。
これは生命力も然りである。
だから、設定上死ぬ攻撃をしても、死者蘇生となってしまって向こうに戻れない。
しかも天使すらいない現状、殺しても原作に戻らないんじゃないかという懸念がある。
「……」
「どうした、浩二」
「! あ、いや、なんでもないよ?」
僕は表情を取り繕う。
哲也にまでこの感情を悟られたらおしまいだ。
「そんじゃ、この魔法陣をやってみよう!」
カッカッカッ
コンッ
魔法陣は光り輝くとともに、三次元空間に浮かび上がり回転し始める。
<貴方達は、私が見えますか?>
!?
な、なんだこいつは……。
<なるほど、貴方だけが分かるのですね>
そう云った瞬間、魔法陣が爆発する。
ダダアアアァァァン……
「ゴホッゲホッ、な、何だあ!?」
「ふぇ!?な、何ぃ?」
「ちょっと、浩にーちゃん何の音!?」
僕は茫然と佇んでしまう。
目の前の爆発の水蒸気に包まれるその存在。
あの天使と似ているんだ。
「えーと、始めまして、浩二です」
<混乱すると思いましたが、冷静ですね>
口を開かない、後光がでている人かどうか怪しい者。
顔が分からない。その白髪の前髪で、目元が隠されていてよくわからない。
なんなんだ、こいつは。
「おい、浩二……。あの天使か」
<これはこれは、クリエイターが二人も……。
そして、ブレイカーが二人ですか……。
納得です>
「何一人で納得してるの?」
もう一人の娘である、美咲エリ現田畑エリ。
後で紹介する、今は目の前だ。
エリちゃんはこいつに、殺気を込めた鋭利な視線を送る。
<此方の話です。では、端的にお話します。
ブレイカーの方々は、今すぐ原作に帰ってください。
さもなければ、この世界は崩壊します>
は?