5:全ては可能性の為に
―――
俺は哲也。
今俺の実家の本山にいる。
友人である浩二と共に同じ学校へ通ってるが、あちらは母方の祖父の家から通っているに過ぎない。
俺は清涼感に溢れる山奥にある、武家屋敷に歩いてくる。
途中までバスで来たが、ある一定の場所を超えると私有地になっており、一般人の頭髪数ミリが入っても
私有地侵入で逮捕される。
俺は一族だから、許されているわけである。
山に入った瞬間、そこは空気が緊張し生物がいる気配がほとんどしなくなった。
それくらい生物的頂点にいる、俺の父や父方の祖父・曾祖父は異常である。
俺達の家系は陰陽師であり、薙刀や剣道に関する最高峰の戦闘集団だ。
陰陽道については、女系が後継していくのだが俺は武道に関してはからっきしだ。
だから宗家であるにも関わらず、分家である女系の陰陽道を教えられている。
俺には兄貴がいる。兄貴は薙刀の武闘派として、最高峰だ。
それなのに夢はイラストレーター。古今を彩る現代に洗われた、最先端の天才児だ。
今風に言えば、ギフテッド。昔風でいえば、麒麟児だ。
まあ考えると分かるが、俺は異端児もいいところ。
この女系の陰陽道を教えられることこそ、侮辱もいいところで俺を暗殺しようと数する過激派もいたくらいだ。
その過激派集団に気づいた母が、俺を転校させて祖父の所に住み込みで居候させてくれた。
ほとぼりなんて冷めるわけがないが、浩二を巻き込んだ例のアニメキャラ召喚戦争で敵として出てきたことがある。
その時に浩二に知られる事無く、陰陽道と魔法陣のハイブリッド(混合術)を使用し奴らを撃退している。
浩二が言うにあいつらが使ったのは、AKIRAの”テツオ”・今、そこにいる僕の”ララ・ルゥ”・らんま二分の一の”らんま”。
色々あったが魔法陣で人間的に弱い雷撃を使えば、簡単にショック死して元の世界へ帰っていった。
ララ・ルゥに関しては、直ぐに首を差し出したが。
「矢嶋哲也。ただいま帰参いたしました」
巨大な門を開ける。
ここから先は宗家の血を継ぐ人間とそれに仕えるにんげんしか入れない。
「そのような俗世に塗れた者など、この宗家にはおらぬ。早々に立ち去れ」
門……いや、衛星写真や政府の眼から潜り抜けてきた、この城門の上から矢が飛んできた。
俺は回避する。
それと同時に俺自身の出で立ちを憎む。
あの名前は嫌いだ。
「大宮次郎左衛門信忠。只今帰参仕りました」
「良かろう、入れ」
自然の要塞。山を切り拓いて作った山城。それが、大宮家の本山だ。
総人口4000人からなる、大宮家を取り巻く主となる部分に居る実力集団だ。
元々活火山だったおかげで、ここらの地盤は固く震災被害や火災被害等なかった。
又多くの水源をもつため、水商売で生計を立てていたこともある。
山に入り、城に入る。
そこから大広間へ向かう。
「失礼致す」
「定刻だ、入れ」
中から聲がする。
普通に作法等関係なしに入る。
これにより周囲がざわつくが、俺は異端児だ。
こんな些細な事でざわつくな、老いぼれ大老共。
「信忠。貴様が召喚した者、誠に良い武人だ。
よって、貴様の願いを叶えてやらんこともない」
一番奥に偉そうに座っているのが、俺の父親だ。
正妻である母に実子である俺を、次郎(無能)左衛門(左様と内外認める)とつけさせることを強要した、糞ジジイ。
一番俺が俺の手で殺したい人間だ。
此処は完全自治権があるので、治外法権は発動しない。
何時か縊り殺す。
「はっ、有りがたき幸せ」
頭を垂れる。
俺は父の左右に控えている、進撃の巨人”リヴァイ”・ワンピース”ロロノア・ゾロ”・Fate”衛宮士郎”を見る。
奴らは俺が父を殺す為に育てた精鋭だ。
しかし父とそれを取り巻く者に、一瞬で鎮圧された。
リヴァイに関しては、曾祖父が峰内で終わらせた。
立体機動による重心や威力を殺し、本人を物理法則を無視して完封した。
よって俺の仲間は、取り上げられた。
腹が立ったので、良い素質ならば俺の言い分を聞いてもらうように云った。
そしてそれが今回回ってきた。
だから俺は、曾祖父に逢えることになる。
あいつが実際の方向指針を決める奴。
「ここだ。粗相をするなよ?」
「ああ」
俺はこの世俗のままの服ではなく、一度心身を滝つぼで清め同時に儀式的に清められた和服を着用した。
そしてこの『神木の言霊』と呼ばれる舘へ、この樹齢2000年以上の木々の森の中を歩いていく。
この中は非常に静寂だ。この上空は飛行機や天皇の乗る飛行機すら飛べない、神聖中の神聖な区域に該当する。
つまり、ここにいる曾祖父は相当やばいのだ。
また、ここでは走る事と一定以上の歩幅以上で歩く事を禁止されている。
自然と一体化しろ。
そういう場所だ。一応『原初の森』とされている。
俺はこの舘に来る。ここで俺は生まれた。
権力争いとか言われたことがあるが、俺が出来損ないだった御蔭でそれは表沙汰になっていない。
「おい、来たぞ」
「口が悪いのぉ」
「俺は出来損ないだ。それくらいいいだろうが」
「何を抜かす阿呆。お前は利用されない様、工夫されただけだろうに」
「何だと?」
俺は初耳なんだけど、それ。
今まで忌み嫌われた曰く付きな物件だと思っていた。
なのに、利用されない様……?
「おい吐け、魑魅魍魎の塊。お前が矛盾した事を行っている事なんぞ、とうの昔から知っている」
「それに気づけたのは、お主一人だて」
知るかんなもん。
「丁度好い時じゃ、お主にこれを見てもらおう」
俺は人生でい一番嫌っている物体を見た。
それは俺の全てそのモノが書かれている診断書だ。
そこに書かれているのは、要約すると剣術に対する適性なし。
陰陽道に関して血が巡っていると。
俺はここで破り捨てたい。
だがここでの破壊行為は禁止されている。
「これは嘘っぱちじゃ」
「は?」
総合評価最低ランク、しかし一つだけ少しいいだけの判断書が?
てっきりこっちだと思った。
俺は何やら厳重に保管された巻物を、このジジイから受け取り中身を見る。
『大宮神子杜尊[オオミヤ-ミコモリノ-ミコト]:神の子を身に宿す、現人神』
総合評価は最大だ。
訳が分からない。最底辺の雑魚が、てっぺんの最強になってた。
ははは……
「ふざけるな」
俺は今までの苦渋や辛酸を、精いっぱい言葉にしてのこれだ。
隠してかくして、浩二にすらかくして黙ってきて……。
俺の名前は嘘。
本当の名前すら嘘。
俺を示す診断書すら嘘。
ひっくり返した奴が、本当の俺。
何を信じればいいんだよ。
「ミコト。お前の母親と父親は、我が一族きっての現人神になれなかった出来損ないだ」
「娘と息子を道具のようにいうな」
「1世紀以上生きている故、そこらは妥協してくれ」
俺は腕を組み胡坐をかいて、その場に座る。
「で、結局。俺はどういう奴なんだ。ただの遺伝子的に優れた奴なのか」
「悪霊や神等に操られない、観測史上最大の魂だで。尊、戻って来い」
「戻ってくるか、色ボケが」
するとジジイは、腰に帯刀している奴を抜刀してくる。
俺はそれを見切って、ジジイの腕を使い物にさせないようにする。
そして奪った刃で切ろうとしたが、こいつに安寧を与えてはいけないということで峰内にした。
「……」
「……尊。やっと渡せる。わしの人生を掛けて打った、この無銘の正宗を……」
「いらん」
「遠距離だけでは、防御できぬぞ?」
嫌に現実的なところをついてくるな。ああ、その通りだ!
俺はやけになってこいつを奪う。しかし納刀のままだ。
ここで抜く等馬鹿の一つ覚えだ。
俺は地面に倒れるこいつを無視して出ていく。
刀は持ったままでこの森から舘からでていく。
後は父親に直談判だ。
「それで、友人3人を連れてきたいんだけど」
「構わんさ。既にお前が、一番上なんだからな」
だからといって、現在はその地位にすがりついている愚かな人間だけどな。
とにかく了承は取れた。後は浩二に話すだけだ。
俺のことはいい。
なのはとエリを強化して、今後の不明瞭なところでもなんとか把握して強くできればいいのだ。
―――
午後。哲也がなのはとエリちゃんを連れて、公園に来るように電話があった。
時間はまだある。
僕は二人を連れて、例の公園に行く。
やっと説明会だよ……。
「おーい、哲也ー!」
「来たか、浩二」
僕は駆けよる速度を弱める。
あれ、こんな奴だったっけ?
雰囲気が変だ。
でも隼は通常通り上空で待機している。
一応本物らしい。
「哲也君!私達も行っていいんだよね?」
「拒否は許さない」
なのははともかく、エリちゃんの目つきや態度が最悪だー!?
出会い頭にそれを云うのは、さすがにまずいぜよ。
でも哲也は二人の言動を意に介しておらず、そのまま言葉をつづける。
「拒否はしない。むしろ、来てくれて助かる。
これで自由研究である魔法陣のパターン研究が捗る!」
あ、いつもの哲也だ。
よかったよかった。
なんつーか、午前で何があったんだろう?
……僕はなのは達が哲也と話しているとき、自然に公園の外にいる人を見てしまう。
なんとも思っていなかったけど。
本当は敵だったんだ。さっさと潰しておけば、と思ったね。
突然僕たちは攻撃を受けた。
謎の模様をした何かが浮遊し、ソレが僕ではなくなのは達を狙ったモノだと分かった。
<Protection>
レイジングハートの自動防御が発動し、そのナニカを防御した。
しかしそのナニカを弾くと、プロテクションが破壊された。
つまりそれを受けて居たら、なのはは死んでいたことになる。
謎の集団に僕らは現実で襲われる。
結界を張る暇等なく、弓矢や石の投擲をしてきた。
その中にナイフがあり、じめんにある石等に当たって反射する。
僕は油断していたのかもしれない。
最強の魔法使いがここに居て、簡単に敵を倒すことができるんだって。
でもそれは間違いだった。
質で勝れば、数で負けるのは必然。
僕はそう思いながら、初めて脚にナイフが刺さった。
っ!?
「うあああああアアアッ!!!!」
「浩二!」
「お兄ちゃん!?」
「浩にーちゃん!」
腕時計に搭載されている自動防御が、数を捌き切れなかった。
結果がこれだ。
痛む左脚の刺さったところに意識を集中させて、力んでしまう。
本来ならば抜いてはいけない。
でも抜かないと、再生できない。
僕はナイフに触る。
痛いッ!
手が震える。
それだけでも、体組織や神経を傷つけているというのに。
「フーッフーッ」
奥歯を食いしばって痛みに耐え涙を流しながら、骨に轟くその痛覚に意識を奪われそうになる。
ナイフを勢いで一気に引き抜き、血がとめどなく溢れ熱くなる患部に急いで生命力を与えられる。
ナイフは抜いた瞬間に、痛む左脚じゃなく、右足に力を入れて先ほどの通行人に投げてやった。
「らアアアあアあああッ!!!」
ナイフは思ったよりまっすぐとんだ。
彼等の魔法がかかったままなのか、それとも僕の激昂が力となったのか……。
そのままフードを被り表情を隠している通行人の心臓に、吸い込まれるように刺さった。
矢や石の投擲はこの時、一瞬にして消え去った。
逢やtられていた武器軍は、存在する場所で高さを地面に合わせ落ちて行った。
カラカラカランッ
ゴロゴロゴロパンッパシッ
僕は勢いそのまま前のめりに、地面に落ちる。
いや、エリちゃんが支えてくれた。
そして哲也が持っている服の一部を破り医療品を使って、俺の脚の応急手当をしてくれた。
「不死身だろうと、痛いものは痛い。そのコンクリに座ってろ」
「はあはあはあはあっ!」
収まらない激痛。脚を抑えても全く効果がない。
それでも腕時計が白銀の光を溢れださせ、徐々に僕の傷を回復して行っているのが分かる。
痛い部分が左脚全体からその刺さった部分が局所的に痛かったり、流血がなくなり完全に止血された状態になる。
「!」
僕は何かを感じて左に移動する。
僕が先ほどいたところには、槍が刺さっていた。
その槍を注視する。
此れが刺さっていれば……!
なのはは上空を見るが、誰もいない。
でも僕にはわかる。
「公園を囲っている木々、茂みに隠れているッ。だから、気を付けて……ッ」
するとエリちゃんが、ぼくを前から抱く。
痛覚で発狂しそうになった僕の脆弱で惰弱な心を、その場で引き留めてくれた。
「大丈夫だよ……”場所”さえわかれば、後は始末できるから……」
エリちゃんはその場で、天使のような三対の翼を広げながら魔法少女になる。
翼からは物体防御魔法である、羽が召喚され周辺を舞っている。
痛みで苦しみながら、エリちゃんを強く抱きしめてしまう。
エリちゃんはそれでも微笑んだ。
「浩にーちゃんに危害を与える害虫は、私が全部殺してあげるから」
彼女の言葉に戦慄する。でも何もできず苦しみ続ける愚かな僕は、彼女を引き留めることなんてできない。
だってこれは、命を掛けた戦争なんだから。
クリエイターは敵。それは当然なんだもの。
「だから、安心していいんだよ?」
「ハアッハアック……グゥッ…!」
僕は嫌な予感しかしなかったから、香木を先端に括り付けた槍で地面を突いて結界を発動する。
これで僕らクリエイターとブレイカーは、位相空間にずれ込んだ。
「ありがとう……おかげで、全力でいけるッ!」
エリちゃんは言葉に力を込める。
そして今まで聞いたことがない、殺意を込めた言葉がその幼い少女の口から出る。
「来い、『時空を追いすがる猟犬[ハウンド・オブ・ティンダロス]』」
この瞬間、変身したときのエネルギーと召喚したエネルギーが、同時にこの位相空間を焼く。
ピシッ…ピシピシッ……ドドッドガアアアァァァンッ
敵は索敵レーダー外へ出た。回避したみたいだ。
初めての召喚のときよりも魔力を扱えているみたいで、その暴力的圧倒的な力を抑えて使っている。
その為周辺が全て焦土に変わることがなかった。
そして出現したクトゥルフ神話に出てくる、どこまででも追いかけ殺す神話生物ティンダロスの猟犬。
収容違反しそうな”シャイマン”よりも強力で凶悪、全ての世界を所狭し狭隘[きょうあい]であるというその踏破能力。
ただ噛み殺すという行動は、執行者となりてその者に裁きを下す。
遠くで聞こえる断末魔の聲。
男や女の聲。
僕はどんな奴が襲って来たのか、僕が手に駆けた奴を持ってきてほしいとお願いした。
哲也は分かったと言い、持ってきた。
そう、連れてくるじゃないんだ。
魂や命を失った肉塊は、最早人間ではないから。ただの腐乱臭をまき散らす生ごみでしかない。
「どうだ?」
フードを捲り、素顔を見る。
「『クジラの子らは砂上に歌う』の主人公、”チャクロ”だよ。
そして使うのは『情念動[サイミア]』という魔法のようなもの。
彼らが使うサイミアの性質は、物体を移動させるだけのもの。
サイミア自体に殺傷力を持たせられる者は、かなり少ない」
「だからお兄ちゃんの投げたナイフは、あの子に突き刺さったんだね」
「そういう事。僕の殺意が、あの子を殺したようなものだよ」
傷は大分収まってきた。
御蔭で普通に喋られるようになった。
まだズキズキと痛いけど、歩行以外に支障はない。
僕は結界発動を止める。
今はティンダロスによって、全て排除されただろうから。
「浩にーちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ。エリちゃんの御蔭で、痛みも吹っ飛んださ」
「よかった……」
エリちゃんは微笑む。
魔法少女の服装はまだ戻さない。
まだ警戒状態だからだ。
―――
「よし。明日の日程と必要な物を口頭で説明する。
一応用紙も用意したけど、これは保険だ」
完全に敵が沈黙したので、僕が座る高低と広さが違うコンクリの遊具にそれぞれ座る。
僕が二番目に低く一番広い黄色のコンクリ、なのはは6番目に高い水色のコンクリ、エリちゃんは5番目に高く橙色のコンクリ。
哲也は一番目に高く一番狭い緑色のコンクリに座り、上記と情報をリンクしてそれぞれ左・正面・右と僕らがいることになる。
「服は休憩に使う私服を二種類。下着は三種類用意しておくこと。
それ以外はこちらで全て用意しておくので、リュックサックに軽く入れてきてくれ。
特になのはら女性陣。なんでもかんでも、”かもしれない”で物を入れなくていい。
これらの服だけを持ってくるように」
「うん」
「はーい」
哲也から書面を貰って、集合場所はこの公園だと指示を受ける。
「よし、俺は明日の手続きもあるから、此れにて解散だ」
「りょーかい。帰って簡易な準備だで~」
「帰ったら、お風呂焚かないと」
「私もお母さんの手伝いをしないとねー」
僕らはそのまま帰ることになるんだけど、エリちゃんはまだ服装を解除しない。
其れと共に僕の傷はすべて完治した。
服を犠牲にした哲也に、ナニカやろうとしたけど思いつかなかった。
言葉だけでも伝えようとしたけど、ここら辺に関しては全く気に留めていないんだよね。
「哲也、今日はありがとう!」
「ああ、浩二。自分の身体は大切にしろよ」
僕は哲也と拳を合わせ、なのはとエリちゃんを伴って帰路につく。
「エリちゃん。もう解除していいんじゃないかな」
「うん、そうだね。魔力を出していたら、居場所を突き止められるからね」
ちゃんとわかっているじゃないか……。
流石に保有魔力が周囲に散乱しているのは理解できるよなぁ。
「ちょっとお兄ちゃん、私を無視しないでよ」
「無視してないよ!?」
なのははずっと例の反応を追って、一人射殺してた。
だから僕の近くにはいなかったんだ。
おかげでナイフが刺さったのは一本だけだったんだと思う。
なのはが撃破したほうも、結構サイミアの使い手だったろうからね。
きっとヒロインぐらいだろう。
「なのは。ありがとう」
「どういたしまして」
歩いて自宅に到着する。
「「「ただいまー」」」
「おかえりー」
お母さんの聲がする。
此れが僕らの日常だ。
まだ未来のことはそんなに考えられないけど、徐々に考えていかなければならない。
そして、なのはやエリちゃんたちの事も、今の状況に合わせて考えていかなければならない。
彼女たちは、別の世界の人だから。
「夏休みの宿題は終わってる?」
「うん。配布された日に終わらせたよ」
「私も一気に終わらせた」
「よかったよかった」
「それでお兄ちゃんは?」
「書道と自由研究だけ」
「其れが終わったら遊び放題だね!」
「そうさね」
僕は二人と自室で話す。
そういえば、僕もそうなんだけど身体が大きくなってきたら、今の庭の所に家を一軒立てて部屋を確保したいとお母さんが
言いだした。
其れに関して僕ら三人は反対した。
金銭面・いつ帰るかもしれない不安・離れ離れになりたくないとか、いろんなものがあってこれは反対された。
でも男女の関係があるから、すみ分けないとダメとか言われる。
其れに関しては、僕は受け入れる準備はできている。
あの錠剤の効果に、そういう奴があるからね。余裕ですぜ。
ああそうだ、言い忘れてた。
僕は皆が熟睡したとき、魔法陣を使って彼女たちに再度錠剤で能力を加算しているんだ。
何が起こってもいいようにね。
前は上書き不可能だったんだけど、そういう錠剤を故意に付与しているから魔法陣で摂取させた状態にしている。
僕もその契約の証として、多くの錠剤を呑んでいる。
だけどその効果が出現するのは、感情が荒ぶる時だけ。
やはり危ない力だそうだからだ。
このリミッターがないと、変身の度に操作できない魔力が周辺を破壊してしまう。
こんなことはあってはならない。
だからこれは最高によいリミッターだ。
「……おにいちゃん、何こそこそやってるの?」
まあ、ばれるよな。
自室を三人で共同で使っていると、魔法陣を仕込む事ができない。
時間がかかるし魔導陣だと魔力で、簡単に見破られるし。
むしろ一年間も見つからなかったって、それはそれで凄いなおい。
真夜中、月光が差し込んでいるとき。
なのはが抱き付いてきて、問いかけられる。
今回のばれは、錠剤袋の開閉の音だ。
なんてこった。
ばらす気はないよ。
これをばらせば、秘密を喋る可能性があるからね。
誤魔化しておくに限る。
「なんでもないよ」
「そうなの?」
「そうだよ」
錠剤が入っている袋は、自分の枕の下に入れて置く。
こうすれば、ばれない。
最後に施すのは、なのはへの気遣いぐらいか。
僕はなのはの布団に潜り込む。
「今日はちょっと肌寒い。一緒に寝てくれないかな?」
「ふぇっ!?ぁ、ぃや。いいよ?」
「よかった」
僕はにこやかに言い、なのはの動揺を誘う。
そして予想通りな反応。
この反応を返されるたびに、僕は居た堪れない気持ちになる。
はぁ……。まあいいや、明日の為に寝よう。うん。
「おやすみ」
「ん」
良い夢ではないけれど、無心で寝ることができた。
明日……夏の自由研究なんてもの、やっていられるかってなるんだろうな。
それでも全力で生きよう。