6:日常の終わり
「起きて」
「ん~」
僕は誰かに揺さぶられる。
まだ寝て居たいんだよー。
「御願いだから起きて~」
何か引っ張られるまたは押される感触がある。
んだよ。まだ夏休みだろ?
それに集合時間は午後だし。
「浩にーちゃん?なのはと一緒に寝るのは良いよ?
でも、一線を超えるのはダメだと思うんだ」
嫌な予感!
僕は目を開ける。
すると目の前には、頬を朱に染めるなのはがいた。
そして目線を右に向ける。
左向きに寝ていたから、そうするしかないわけで。
そこに立つのは仁王立ちのエリちゃん。
寝間着姿。そしてにわかに明るい部屋の中。
あ、これ、朝だ。
「お兄ちゃん……まだ、なのはには早いよ?」
「早い?」
何を勘違いしているんだろう?
僕は両手がどこに行っているか、感覚で調べる。
右手はなにか固いものを触っているとしか思えない。
左手は腕諸共なのはの腰を抱く様にやっている為、めちゃくちゃ痺れて感覚がない。
「まさか、浩にーちゃんが妹に手を出すなんて思わなかった」
「そんなわけないじゃん……」
僕はなのはの隣から抜けて、そのまま起き上がる。
枕下の錠剤袋はそのまま二人に見つからない様に、机の引き出しにいれた。
二人は僕の事に関して話していたから、視線をずらすことができた。
「浩にーちゃん、朝食をたべてよね」
「うぃーっす。ほら、なのはも行くよ」
「うん、もう少ししてから行くよ」
僕らはなのはを置いて、リビングに来る。
まあ朝食は簡単なごはんだよ。エリちゃんがお母さんとごはんを作るようになってから、
時間に余裕がでてきたのかバランスの良い食事がでてくる。
「おはよー」
「おはよう、浩二」
「夏休みなのに早いなー」
「エリちゃんに起こされたんだよ」
お母さんとお父さんに云われ、言い訳をした。
エリちゃんの甲斐性っぷりが、前面に押し出されて来ているような気がする。
この後ごはんを食べて、自室の片付けと宿泊に関して再確認をする。
集合時間は午前10時。
今は7時だから後三時間だ。
この間にやることは、魔導布陣……ではない。
魔導回廊とでも名付けようかな。
これを家の周囲に香木で描いていく。
この魔導回廊は、最低でも二つの魔法陣と一つの回路が必要なんだ。
一つは普通の魔法陣。もう一つは、命令式だ。
これを改良すれば魔力を自動生成してくれて、命令式に従ってそれを回路をつないだ先にある魔法陣に使い発動させる。
僕は円陣と方陣を組み合わせる。
円陣は効果範囲を設定し、方陣で効果そのものの術式を設定する。
さて、幾何学模様にしなくてもいいので、陣としての形容を整える。
龍脈(活断層)を発見して、そこで地球のエネルギーを魔力に転換する魔導布陣を敷く。
ここら辺は自転車で行ける範囲なので、10分程度で配置完了だ。
次に僕の家や周囲の家を奴らに壊されない様に、回路・魔導陣・魔導布陣を周囲に敷く。
そういえばこれらをどんな形で書いているか教えていなかったよ。
回路は布陣の中に線として書いたり、離れた魔法陣や魔導陣の記述にポインターのように命令転移させるときに書く。
それと方陣や円陣は、中に記述や回路を書いていない空白や処理待ちの分岐点に使える。
魔法陣や魔導陣は、地面や紙に描く。
布陣系は、魔法陣や魔導陣の命令式等の記述の途中に、再度方陣や円陣・魔導陣・魔法陣を組み込んだ物をいう。
ただ魔法陣の中に、方陣や円陣を書いたものは只の魔法陣。
しかし魔法陣の中に、回路を描けば魔法布陣になって、回路を描かず魔法陣を記述すればそれは『複合魔法陣』になる。
魔法布陣に魔法陣をつないだものは、重層や6重等二次元平面の繋がりを表すものになる。
また位相は、魔法布陣や魔法陣・魔導陣・魔導布陣等を、重層や6重等を垂直や並行に繋ぐ立体的なつながりを表す。
次元に関して言う。
基本的に平面的な所で回路やポインターで情報を転移変換させる。
だがこれらを魔法陣等の内部で処理せず、物理的三次元空間で直接挿入や転換を促す事でフェイクや超強力な効果を狙える。
更に応用すると三次元空間を、複素二次元平面の図面として利用できる。
よってただのXYZで終わっていた効果が、16次元や48次元を通して複雑な計算の末ありえない効果を発揮することがある。
ちなみに、リリカルなのはのあの魔法陣は、こちらでいう複合魔導布陣だ。
円陣の中にポインターの役割を果たす円陣と同じ場所に、命令式を書いている。
更にその内側に魔導円陣を描き、更に内側に効果を発揮する場所を拡大する方陣と回路が描かれている。
詳しく言えば円陣系は、複合魔導陣。方陣の足元展開で、二次元複合魔導布陣だ。
とにかく、回路や魔導陣を石やコンクリ・住居に書いて、魔導回廊を作り上げる。
これでこの直径一キロは、魔導回廊の守備領域となる。
もし入り込んでも、公園周辺は省エネ魔導陣が集結している。
これにより、退場してもらうことになる。
「浩にーちゃん、どしたの?」
「んー、ちょっと地元を走ってみたくなっただけさ」
「感傷に浸ってたんだね」
「そうだよ」
帰ってきて自転車を車庫にしまった後、玄関先でエリちゃんと話す。
そう、他愛のない話。
絶対に魔導回廊の事は話さない。
これは哲也にも話していない秘策であり、最後の秘密兵器でもあるからだ。
この団地は大丈夫だろう。
でも向こうに行けば、何があるかわからない。
用意しておくべき切り札は、多い方が比較的良いはずだ。
あらゆる最悪の状況を妄想と想像で予測して、その状況に合わせた魔法陣を用意する。
前の戦闘で油断と怠慢が、命取りだということを知った。
機械腕時計に仕込まれている『零時迷子』とその特殊効果であろうと、使用錠剤が100に満たない弱い性能では弾幕に太刀打ちできない。
それを立証されてしまった今では、信用はできない。
正に信頼に盲目だった。
だから唯一の対抗手段を、全力で練っているんだ。
……よし、決意はできた。
「エリちゃん。何が起きてもいいように、決意はしておいてね」
「大丈夫! 戦術的戦闘構想は常に構築してるから!」
「ははは、それは頼もしいな」
この後僕らは最終確認をして、お父さんたちに挨拶して公園に来る。
集合時間の時には、既にベンツ等の高級車が5台と警察車仕様のランボルギーニが7台停車していた。
「なにこれ」
僕もそうだけど、エリちゃんが聲に出して反応してくれた。
よくわからないけど、公園に近づく。
すると多くの黒服の人が、ベンツ等から出てくる。
この光景は結構精神に来るが、ある事情のおかげで僕らは臆せず歩んで行けた。
そして何故こんなに人がいるのか……其れは直ぐにわかった。
黒服の人や警察官が異様な雰囲気を出している中、彼等がつくる道の中央を歩くその者。
哲也……なのか?
その和服。かなり似合っているというより、そちらが本来の姿なんじゃないかと思える程。
そして哲也の後ろに、圧倒的威圧感を放つ三人の者がいる。
ありえない。なのに、ありえる。
哲也が隼以外召喚していないわけがない。
それなのに、表しかみていなかった。
そうだ、僕は何も知らなかった。
それが愚かだったのか、それとも僥倖だったのか。
それは全く分からない。だがそのような事だったとしても、哲也への態度は変えない。
「浩二、なのは、エリ。今から、我が本山へ案内する。
三人は向こうにある、ロースロイスやフェラーリではなく、ランボルギーニヴェネーノに乗ってもらう。
運転手は衛宮士郎に一任する。
行くぞ、皆の衆」
「「「は!!」」」
僕らは衛宮という青年に案内されて、哲也と共に同じ車に乗る。
車に乗ってドアを閉め鍵を閉じる。
そしてラジオをつける。
「だはー、疲れた」
哲也はいつもの哲也に戻った。
助手席に乗る哲也は、厳かな雰囲気を崩して僕らの方をバックミラーで確認してくる。
「びっくりしたか?」
「びっくりもなにも、たまげたよ!」
エリちゃんが後方座席から、バックミラーの保有視界へ移り込む。
エリちゃんとなのはは、哲也と衛宮士郎と会話する。
衛宮はこの世界の事に結構溶け込んでいるようで、こっち側の情勢を的確に把握しているようだ。
「そういえば、僕らは結構後ろの方だね。前のは囮かな?」
「よく気づいたな浩二君」
衛宮は僕にこの車列の陣形の意味を教えてくれる。
やはり衛宮達も彼等に襲撃されているようで、万が一の為に囮を配置しているんだとか。
更に受肉している、リヴァイ、ロロノア・ゾロ、衛宮士郎が僕らを確実に守る盾になるんだと。
この説明を聴いて、哲也に漸く聴ける口実ができた。
「なあ、まさかと思うけど、受肉させたのか?」
「ああ。親父から皆を解放してもらってから、確実に皆を救えるようにした」
僕は放心した。
そして背もたれにもたれかかる。
受肉。
この言葉は、ゼロの使い魔のゼロが言った言葉だ。
本来は転生という意味のほうが強いという事を、書面で伝えられた。
そう、なのはやエリちゃんが見ない様に配慮して。
受肉は錠剤にある、使用者である人間にそのアニメキャラを投影させる効果がある薬剤を使えばいいだけ。
この事から才人は、元々こちらの人間で記憶や知識を上書きされた人間だという事になる。
だから死体が残った。
受肉していないキャラはブレイカーと言われ、魔力など力が弱いキャラは一瞬で消去されるんだそうな。
更に受肉していないキャラが多いほど、この地球世界に空間的なほころびができて理の乖離が発生し分解するとのこと。
これは本山で発生したクリエイターによる内戦で、確定で実証されている。
「昔から……?」
「内戦はかなり昔から発生している。最近は位相結界が発生しているようだが、それは俺達の周囲だけだ」
通勤ラッシュが去った平日は、かなり道が空いているので多くの車両が通ることができる。
衛宮は意識して、なのはとエリちゃんの意識を自身の方へ向けている。
こうしておかないと彼女達は、呆然自失してしまいかねないからだ。
更にラジオによる周波数制限と若干大きな音により、この会話は聞こえない筈だ。
「また錠剤の追加投与は、専用の錠剤が無くても可能である。本人が飲めばいいのだからな」
だがブレイカー達は専用の錠剤がなければ、追加の能力付与は不可能。
二人には魔法的措置を行わなければ、そのまま泡沫と化して世界に溶けてしまう。
いや、普通に粒子になるだろうけれど。
その場合一週間以内に呼び出さないと、記憶が消される。
「同じ奴を同じ人間が呼び出すことは、一か月経過の後可能になる」
「……」
僕の希望も砕かれる。
やはり生半可に行かないようだ。
僕は哲也と話ながら、車内と周囲の風景を見る。
車内には魔導布陣が大量に施されてある。
この魔法陣系は、僕らだけにしか見えていないのだろうか?
だとすれば優位なんだけど。そんな都合よく行かないだろうな。
………
車で走って2時間。
トイレ休憩も含めて停車したり、昼飯を食いながら山地にくる。
上り坂やせせらぎが聞こえる沢を横目に見ながら、此処まで入ってきた。
「警戒するように」
哲也がトランシーバーを持ち出して、全ての車両に指示を伝える。
ただの夏休みの自由課題達成が、こんな壮大なものになる。
まあ思っていなかっただろう。
でもまあ、僕は既にこうなることはわかっていたつもりだよ。
二人は僕に騙される形でついてきたことになるんだ。
だとしても精神的な愉楽を楽しめる様、哲也には頼んでいるつもりだから大丈夫だよ。
<南方300M敵襲!>
車内のスピーカーから、後方車両の観測手の聲が聞こえる。
この声が聞こえた瞬間、最後尾の車両が破壊され爆発した。
爆音に気づくなのはとエリちゃん。
「浩二!」
「くそっ!」
僕はなのは達の眼を覆って、外を見ない様にさせる。
「士郎、すぐに本部へ行け。俺はあいつらを抑える」
「わかった。俺は子供達を届けるのと共に、外に出ない様にさせる」
「頼む」
哲也はドアを開いて、外へ飛び出す。
そして魔法陣を使用して、空中闊歩を行って遥か後方へ飛んでいった。
衛宮はスピーカーを車内放送から、ラジオに切り替えて高速走行に切り替える。
そのまま走っていくと、いろんなキャラが僕らを阻んだ。
そしてそのキャラと対峙するため、多くの警官たちが立ち向かっていった。
僕たちは見逃してくれるわけがないという思いはあるが、本命ならば相当まずい事にしかならない。
まあ予想通りだった。
僕らが乗る自動車の先に、黒い人物が空中から降りてきた。
「ちっ。浩二君、あらゆる力を使って、このナビのところまで行ってくれないか?」
「哲也からの情報かな?わかった。任せるよ」
衛宮士郎さんが降りて、僕が運転席に座る。
風力・抵抗力・摩擦力・慣性等、あらゆる力を使ってナビの所へ行く。
とにかく今回僕が確認できた敵は、犬夜叉・巨人エレン・キングギドラ・SAOキリトだ。
私有地に入ってからは、時速100キロで走っていたから殆ど見逃してしまった。
とにかく、僕となのは・エリちゃんは、そのナビの所に行って哲也の仲間達に保護された。
待つしかないんだ。
そうじゃないと、本当にひどいことになってきていそうだからね。
―――
「浩二!」
「くそっ!」
俺は浩二と士郎に後の事は任せて、爆破された殿と囮の救出をキャラの撃破へ向かう。
魔法陣を発動して、一気に加速する。
そして魔導陣を使用することで、空中闊歩を行うことができる。
瞬足移動とでもいえばいいのか。
俺が現場に到着すると、10人程の部下は生き残っていた。
いや、独りだけ頭をショゴスに変化させられて、奴に従っていた。
「やあ、綾香ちゃん。久しぶり」
「あ、前の子供?よかった、釣れてくれて。これで、さっさと殺せるよ」
非常に露出が高い小学生と思えない服装と態度。
その異常さが比例しているかのように、中々信じられない技を使う。
「そうか。それで、美味かったか?」
「なにが?」
片目が白い敵は、とぼけやがる。
呆れる。だが、此処で攻撃を仕掛けてしまえば、情報等取り出せない。
「俺達の仲間、女中の娘を喰らった感想はどうだ。人食い」
「うん。上手くなじんでくれたよ?だって、ノワールが私に合わせてくれたんだから」
こいつを含んだ敵の勢力は、受肉を果たして世界に上手く入り込み能力を使用している。
このためブレイカーよりも抑え気味だが、同じように世界の乖離を促進させていると理解できていないようだ。
わからずやというよりも、事実を歪曲されそれを真実と盲目的に信じ、他を拒絶している
考えが赤子な綾香は非常に腕白で恐ろしい。
「まあいいだろう。とにかく……」
綾香ちゃんは浩二曰く、エリちゃんの同級生で俺達と同じように共に遊ぶ関係。
ならばお互いに知らぬうちに殺しておくべきだ。
受肉した奴を殺せば、記憶や能力が全て初期化される。
世界の歪みの回復はできないが、一年は再召喚できないとあの魑魅魍魎の塊は言いやがった。
だから、今ここで殺す。
陰陽道である陰陽術を使用し、奴の生命の気を見る。
どんなキャラであろうと、元の人間が弱ければ弱いほど良い。
俺も当主になる男だから言わせてもらおう。
遺伝子異常な子を食ってくれてありがとう、とな。
最低でも構わない。
だが功利主義を主に掲げなければいけない。常じゃない。
最優先でもなく、優先的にしているだけ。
これを踏まえ、お前を即行で排除しなければならない。
「そうそう、私達の主曰く貴方には死んでほしいってことらしい。
だから、今すぐに死んでもらうね」
『死[ザ・デス]』
目が付いている鎌から、黒い多数の光線が放たれる。
ドドンッ
綾香は空中に浮き、俺は地上にいる。
だから爆発音がするのだ。
「わっ。効かないなんて聴いてないよ!?」
「効くとは言っていない」
俺はその光線を無銘の刀の刃の側面で反射させ、効果を無効にしただけだ。
俺は魔法陣を発動させ、綾香を行動不能にさせ魔法陣を介して、刀の切っ先の一部を脳内に入れてかき乱す。
「ぇあっ、へっ。うげげっ」
ビクンと身体を緊張させると、地面に落ちそうになる。
変な呼吸を行い、過呼吸なのだろうか激しく呼吸を行っている。
「な、何を……」
「知らん。お前こそどうした。早く来い」
俺は刀を手に持ち、適当にぶら下げて置く。
構える必要はない。変に警戒すれば、奴は可笑しな行動に移るのは目に見えているのだからな。
「ぁ、あぐぁ……『アリス……」
「脆い」
「ふぇぁ……?」
もたもたしているから、斬ってしまったではないか。
綾香は頭・四肢・胴がそれぞれ分割して、そのまま魂か何かが粒子となって消える。
本体は綾香の容姿のまま、息絶えていた。
多量の血液。俺は処理班に任せ、その場で塵芥にさせた。
―――
「エレン。お前も呼ばれたのか、このクソッタレな世界に」
「り、リヴァイ兵長!?い、いや、お前は偽者だ!死ね、巨人に命を売った裏切り者!」
はあ、物分かりが悪い野郎だ。
俺は今、調査兵団時代の装備をそのまま使っている。
俺が最初に呼ばれたのは、巨人が居ない小さな家の一角だった。
奴は俺に言った。物理的にではなく、権力的に巨人な奴がいると。
そいつを殺してくれと。
アイツは俺と同じようで違う目をしていた。
大事な仲間を巨人に殺されたその憎悪に塗れた、あの時の俺のようじゃない。
この良い子ちゃんぶったクソガキは、大人の事情に呑まれいいようにされた復讐に燃える馬鹿だった。
だが此奴の出自や実家に行って分かったことがある。
此奴。哲也のいう事は本当だということがな。
確かに図体はそれほどだ。だがその目の奥とその肉体や衣服に包まれた四肢を見れば、その道の玄人だという事だ。
こいつはこんなにでけぇ奴と一人で戦ってきたんだな、とまあ我ながら感傷に浸れたな。
そういえば俺以外にも、召喚されたやつがいる。
ロロノア・ゾロと衛宮士郎だ。
一方が筋金入りの正義感を翳した、早死または犬死する馬鹿だ。
もう一方は純粋にこの世界を見たことがない、人間の情緒を知らねぇ真新しい餓鬼だな。
図体がでかくあっても、心がその外界に晒されたそれが全てと思っちまう馬鹿野郎だ。
とにかく俺達はこの世界の事と哲也から、剣術となるものや陰陽道等を教わった。
武器や歴史、戦法や戦術。
巨人どもが蔓延り人同士が戦っていなかったあの世界。
糞と家畜の臭いで吐き気を催すほど、壁の中は醜悪だった。
だがこの世界はどうだ。巨人はいなくとも、権力や金というもので武力以上の物を使うどうしようもない奴らがいる。
反吐が出るな。
俺の世界は少なくとも、あきらめなければどうにでもなった。
だがこの世界はどうにもならねぇ。ままならねぇ事はたくさん見てきたが、
ここまで絶望的だと笑えて来るな。
だが、悪くねぇな。
俺は哲也に力を貸してやった。そして他の歳食っているように見せかけた餓鬼共と、戦線を張るようになった。
奴らと戦った。俺達の全てを投入してな。
それがどうだ。完敗だ。
負けたら負けたで、哲也は俺達を道具として受肉とかばかげた事をやらかしやがった。
それはまだいい。
俺はどんな状況だろうと諦めねぇ奴は、最後まで仲間であり続ける。
そうだ、哲也が負けねぇ限り、俺は共に行く。
理由?
決まっている。
そいつが作った歴史を俺達が証人になってやらなくて、誰が世界に示す事ができる。
俺達はあいつに召喚された時点で、共に歩む仲間でしかないというわけだ。
肩は貸してやる。
後は自分でやれ。
「うおおおお!」
エレンは持ち前の蛮勇を振りかざし、俺の前に立ちふさがる。
能力値は中々のようだが、お前を操ったのはだれだ。命令式を放置してやがるな。
俺はあいつからもらった魔導陣を使い、立体機動を行う。
そして横10センチ縦1メートルをうなじから削ぎ落とし、中にいるエレンを肉毎引き抜き殺す。
此奴は粒子になってどこかへ消えた。
こっちは片付いた。
奴らの方へいくか。
―――
「トレース・オン」
俺の名は衛宮士郎。
冬木市に住む、魔術師の一番弟子だ。
いや、”だった”がただしいかな。
「俺は衛宮士郎だ。君は?」
「俺は桐ケ谷和人。お前たち、ブレイカーを殺しに来た」
「そうか、君にはブレイカーに見えるのか」
俺は哲也に召喚された。
俺の制止の言葉に、一つも頷かず効率のみを求めたその姿勢。
相容れられない。
そう思った。
だがあいつが見せる、悲しみに見た表情はあいつを象る何かが別にあるというだ。
殺意じゃない。それは……子供さながらの甘えの感情だ。
きっと今までそうだったんだろうな。
実際その理由にも、俺は立ち会えることになった。
「だったらなんなんだ。お前たちは世界を壊しているに過ぎない虚像だ」
俺以外にも召喚された奴がいた。
まさに英霊召喚と思える様相だ。
そのあと、俺達は哲也を殺そうとする一派と戦闘になった。
全面戦争を行い全ての敵を捕らえ拷問するが、奥歯に挟んだ毒薬が入ったカプセルをかみ砕き自殺する。
「生憎、俺達は受肉している。お前たち虚空こそ、ブレイカーに過ぎない」
命が軽い。軽すぎる。これが哲也の生きる世界か。
聖杯戦争も中々なものだった。
あっちもひどいが、哲也の対応が仲間への物だった。
いや、同じ組織の者としての対応か。
その為か自殺したのも、普通に無視していた。
俺は人が死んだことについて、心が死んでいる哲也に説教をしようとした。
まだ幼い哲也に、命がなくなったことについて、もっと考えるべきだと。
すると哲也は何と言ったのか。
”で?それが何か”
「俺達はあるお方によって、この状態であっても世界を壊すことはない。
そして、この情報を引き出させたお前には、死という報酬を出そう」
俺は哲也に何も言えなくなった。
可哀想とか哀れなんてものじゃ、哲也を彩る闇を表現できない。
これはもっと深い、根本的な部分だ。
愚か。
……しっくりくる言葉だ。これはリヴァイが言った。
良い子ちゃんにしていれば、基本的に大人になることはどの世界でもできるが、
常識や認識がすこしでもずれた場合個人的観念が崩れやすくなる。
結果この哲也のような、心を動かさない人間ができるというわけだ。
いや、俺が今まで感じている以上に、哲也はやばい。
「やれるもんなら、やってみろ!」
「行くぞっ!」
今では哲也は俺達を使って、この愚かな世界に君臨している。
哀しみの連鎖を止める事なんてやらないで、そのまま見過ごした。
俺は全く分からなかったが、哲也にとっての正解はそれだった。
更に俺達も受肉をほどこされた。
どこのだれかもわからない人間を殺し、全てを手中に収める。
「スターバーストストリーム!」
「無限の剣星だ!」
俺の心象世界が受肉の影響で使えなくなったのはつらい。
しかしこの世界へ俺が与える乖離現象への影響は、ほぼ皆無となった。
ただこの特殊能力を使用するたびに、身体が非常に重くなるのはいただけない。
和人は全身真っ黒な服装で、二刀流で俺の剣嵐を捌き俺にダメージを与えてくるようになる。
受肉すれば能力が低下する。
それでも慣れてくれば、その程度どうにでもなる。
ザシュッ
いや、どうにもならないか。
「ハーフストライク(体力二分の一)!」
「チッ」
俺は伝説を作る。
その剣で攻撃する。
しかし敵の武器を破壊することは願わなかった。
この後も戦闘は続くと思っていた。
だが唐突に終わる。
目の前の和人が構える腕二本が、いきなり何かにより飛ばされる。
「え」
和人は己の腕が飛んだ事に気づいた時、既に事は終わっていた。
「乳臭い餓鬼は、さっさと家に帰りな」
聞いたことがある声が聞こえ、和人の身体が三つにわかれ光となり消えた。
「ぼろぼろだな、士郎」
「受肉してから、回路が上手く使えないんだよ」
「強いて言えばお前の力は非現実的だからな。次行くぞ」
「ああ」
俺とリヴァイは、他の班の応援に向かう。
――――
「ったく、面倒な奴の相手を頼まれたもんだ」
「はっ、ほざけ!」
俺はロロノア・ゾロ。
武器屋で三代鬼徹を購入したとき、一瞬で景色ががらりと変わった。
なんだ?と思うのと同時に、俺が置かれた状況や情報が一気に頭んなかに入ってきた。
俺は俺自身を疑った事はねぇが、この時は別だ。
可笑しくなったんじゃねぇかってな。
まあ、俺以外にも召喚された、リヴァイや士郎がいた御蔭で正気は保てたな。
だが死ぬことでしか、向こうに帰られないという事だけは、俺も対処しがたいもんだ。
仕方ねぇからこの目の前の小僧の御願いを聴いてやった。
そしたら、でっけえ奴と戦うんだとよ。
権力的にも武力的にもな。
スケールがでけぇなんてもんじゃねぇよ。
何せこの餓鬼、哲也の実家にきたら、俺でも勝てねぇ奴らばっかだ。
戦う前から敗北の心を持つのは、剣士としての名が廃る。
だがな、本能で相手を見極めねぇと早死にしちまう。
今回の敵は、俺にはでかすぎる。
死ねば向こうに帰れる?
ふざけるな。剣士として、剣豪として負けらんねぇよ。
「いい加減くたばっちまえよ!」
「黙れ、狛犬」
「近距離だけが取り柄の侍が、遠距離には勝てねぇ。これが道理だ!」
「はっ、勝手に咆えてろ、犬」
「俺は”犬”夜叉だからなっと」
哲也に頼まれて、召喚組で強大な敵を暗殺しようと斬りかかった。
だがまさか指で俺の妖刀が止められるとは思っちゃいなかった。
「『鬼斬り』!」
「既に軌道は分かってんだよ!」
「くそっ!」
三代鬼徹は放し、哲也から貰った妖刀『名工正宗:真言』を使う。
これを使うと敵は動揺した。
なるほど、これは哲也が譲り受けた皮肉な奴なんだな。
斬るに値する敵だ、全く。
俺の中にあるリヴァイの言う鈍感という奴か?
だが俺はあの時確実に、怒りを覚えていた。
実の息子に、何をやっているんだってな。
殺されるために生まれてきた?
ざけんじゃねぇぞ、糞が。
「4大陸と3大海、合わされば小千世界。条理摂理この世全てが合わさりし奇蹟。
是こそ真の世界よ」
「何言ってやがんだ?」
「”三 千 世 界”」
っと怒りにかまけて居たら、白髪野郎が光になって消えた。
それにしても、ここどこだ?とにかく、道路を目指して歩くか。
哲也がいうには、俺は方向音痴らしい。
そんな事は全くねぇよ。
俺の真の実力、見ててくれ。
結局三時間後に拾われるんだよな。
なんでだ?