レディー暁ちゃん   作:Mすわ

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暁の優しさ

「大淀頼むよ~。」

「ダメです。」

執務室で頭を下げながら、俺は大淀に頼み込む。

季節は冬。

外には雪が積もり鎮守府は一面銀世界。

 

「最近ほんと寒いんだよ。暖房付けさせてくれ!」

銀世界なのに我が鎮守府、というか俺の執務室と寝室だけ暖房がついていない。

何故か。

 

「提督、この前もうしばらくは大型建造やらないって言ってましたよね?なんですかこの抉れたように減った資材は!特に燃料鋼材ボーキ!」

「そ、それは...。」

「大鳳ですね?」

大淀は眼鏡をくいっと上げながら、追及してくる。

声は平坦で落ち着いているように聞こえるが、逆にその平坦な感じが怖い。

怖くて会話しているのに大淀の顔を見られない。

 

「そ、そうです...。」

「資材は有限なんです。運用方法は提督に任せられていますが、大型建造を回し続けられるのはさすがに困ります。」

「...。」

俺は黙るしかなかった。

 

資材は毎日皆が頑張って遠征で稼いできてくれた。

特に鬼怒に睦月に如月、水母の子たちは夜中でも遠征に行って資材を回収してきてくれる。

そんな資材を大型建造で吹き飛ばしたのは事実。

だからこそ何も言えなかった。

「ということで数日は提督の部屋には暖房抜きです。」

そう言って大淀は執務室から出て行った。

 

大淀が出て行った後俺は大きくため息をつく。

寒い。

我が鎮守府が北海道とか北の方じゃなくてよかった、なんて思いながら仕事を再開する。

だが寒いのは変わらない。

積まれた書類に目を通しながら、

「なんか暖を取る方法ないかなぁ。」

と思ってしまう。

「暖を取る...暖かい...湯たんぽとか。でも湯たんぽなんてないしなぁ...。」

そうぶつぶつと呟いていると、

「司令官ー艦隊帰投したわ!」

暁が回収した資材の報告のため、執務室に入ってきた。

 

こ れ だ。

暁を見た瞬間俺は立ち上がり、天才的な発想ができたことに歓喜する。

 

「ありがとう、暁。ところでゲームしないか。」

「ゲーム?」

「そう勝った方が負けた方に何でも命令できるんだ。」

「やらないわ。じゃあね。」

報告書を置いてとっとと去ろうとする暁。

 

「待て!」

俺は先回りしドアの前に立つ。

「な、なによー。」

暁は眉をハの字にして困った顔だ。

「間宮と伊良湖のダブルアイス食べたくないか?」

間宮と伊良湖のダブルアイスとは士気高揚のために提督が発注した時だけ食べられる贅沢なアイスである。

艦娘はこのアイスを食べると天にも昇る気持ちになれるとか。

あまりにも人気でさらに高価で金銭的な問題もあることから提督の許可がないと作られない。

 

「だ、ダブルアイス...。」

暁の目がキラキラしている。

さらに畳み掛ける。

「それにレディーは男性の誘いは受けるもんだ。一人前のレディーになりたくないか?」

これでどうだ。

「し、仕方ないわね。暁はレディーだし誘いに乗ってあげるわ!」

ちょろい。

そこが可愛い。

 

「じゃあやるゲームはこれだ!ノット50!」

「の、のっとごじゅー...?」

「そう、ノット50。1から順に数字を数えて50を言ったら負け。一度に言える数字は3まで。例えば俺が1.2と言ったら暁は3.4.5まで言えるんだ。こんな感じで交代で数字を言って50を言ったら負けだ。」

「なんだ簡単じゃない!はやくやりましょ!」

「まぁそう慌てるな。じゃあ見本的な意味を含めて俺が最初に数字を言うけどいいか?」

「いいわよ、先行は譲ってあげるわ。」

にやぁ...。

 

「ありがと、じゃあ最初は1。」

俺は最初の数字を言う。

「2.3.4!」

暁も数字を言う。

「じゃあ5。」

「司令官随分と控えめね。じゃあ6.7!」

「8.9。」

俺は暁の言った数字に対してノータイムで答えていく。

 

「14.15.16!」

「17。」

「18.19.20よ!」

 

どんどん数字が増えていく。

そのたびに口角も上がっていく。

 

「じゃあー...41.42.43よ!」

「44.45だ。さぁ暁どうぞ。」

来た。

「46.47...あれ?」

「48ぃ!49うううううううううう!」

勝利の49を叫んだ。

「ぴゃああああああああああああ!」

暁も叫んだ。

 

「さぁはやく次の数字を言うんだ暁!」

「ご、ご...。ごじゅー...。」

勝った!勝ったぞ俺は!

「ふははははははははははは!」

物語が違えば完全に悪役である。

「そういえば、俺が勝ったらどうするか、言ってなかったな。」

暁の体がびくんとなる。

 

「しばらく湯たんぽになってくれ。」

 

「ぴゃああああああああああああ!」

暁がまた泣き叫ぶ。

「変態司令官!」

「だって寒いんだもん...。暁見た瞬間、あぁこの子は湯たんぽとしての才能を秘めてるって思ったんだ。」

「そんな才能ないわ!」

 

「仕方ない。俺も自分の命令を言わずにゲームを始めてしまったからな。暁にチャンスをあげよう。」

「ちゃんす...?」

「暁が次に勝ったら命令を取り消しできる命令、つまりもう一回ゲームやってもいいぞ。」

「や、やるわ!やらなきゃ暁が湯たんぽなんて屈辱よ!」

「そうか、やるか...。じゃあいくぞ1!」

「え、えっと2.3.4...。」

「5。」

一気に進めてく。

何度やっても変わらないこのゲームを。

 

 

 

「ふええぇ...。」

結果暁の20連敗である。

負けが募るたびに次こそは次こそはと予定よりたくさんやってしまう、俺はこれを大型建造で学んだ。

今、暁がその状態である。

 

「つ、次こそは...。」

だいぶ暁の元気がなくなってきた。

もうそろそろ暁がかわいそうなのでこれで最後にしておこう。

 

「じゃあいt」

「1って言うんですよね。提督。」

ふと自分の背後から聞いたことがある声が。

具体的にはちょっと前に聞いた。

 

暁はきょとんとした顔で声の主を見ている。

俺は振り向けない、というか振り向きたくない。

次の展開が読める。

 

「提督?」

呼びかけられる。

「....。」

俺は恐る恐る振り返る。

とてもゆっくりと。

 

そう、声の主は大淀だった。

顔は笑顔だ。

「先手必勝ゲームで暁ちゃんをいじめるなんていい度胸してますね。詳しく話を聞かせてもらいましょうか。」

ゴゴゴ...そんな擬音が聞こえてくる。

逝ったな。

 

 

 

「うぅ大淀怖いよぉ。」

めっちゃ大淀に怒られた。

すごく怒られた。

騙された暁が止めに入るくらいには怒られた。

 

布団に包まりながら、涙を流す。

「はぁ...寒い。」

体の冷えに加えて心の冷えも加わってネガティブになる。

「暁に悪い事したなぁ...。庇ってもらって申し訳ない...。」

今日やったことを振り返り反省する。

先手が必ず勝つゲームであり、後手でも相手が必勝法を知らなければ勝つ確率が高いゲームだ。

知らなそうな暁にやったのは悪質だったと思う。

やっちまったなぁ…自制すべきだったよ。

嫌われたかなぁ...。

どんどんダークサイドに堕ちていく。

 

 

ふと寝室のドアが開く。

「失礼するわよ司令官。」

「えっ暁...。」

部屋に入ってきたのは枕を持った寝間着姿の暁だった。

 

無言で俺の布団の中に入ってくる。

「あ、暁...。」

「仕方ないから一緒に寝てあげる。レディーは優しいのよ。」

暁は俺の背中に自分の背中を合せてくる。

なんで、って一言を言いたいが気まずくて聞けない。

 

暁は察しているようで、

「レディーは優しいのよ。寒くて寝れなくて明日の艦隊運用に支障が出たら困るし。」

「変態司令官なのにいいのか?」

「帰るわよ?」

「すいません。」

はやく寝なさいと俺に言ってくる暁、その声はとても優しかった。

 

悶々とどうしようと思ってた俺に、この優しさは効く。

「ありがとう、暁。」

心に染み渡ってまた泣きそう。

暁に寝かしつけてもらってるんだし寝ないとな…。

でもこんな気持ちで寝れるかな。

そう思ったが、心の安堵がとてつもない睡魔を引き起こしそして背中の暖かさで俺は電源が落ちたようにあっさり寝ることができた。

 

 

夢の中で、頭を優しく撫でられたような気がした。




暁にはれでぃーの一面とレディーの一面があると思うんですよね。
こどもっぽいところもあるけど、母親のような優しさがあるんじゃないかなって。

勢いで書いた拙い文章でしたが読んでくださりありがとうございます。
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