幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活 作:軍曹(K-6)
「片付けるだ? 昨晩の、あの程度の力でか?」
「昨日・・・? あぁ、寝ぼけ眼で使ってたあの力か」
「・・・!」
「「!」」
「観覧される方はこちらへ! 急いでください!」
「それでは大空のリングXANXUSVS.沢田綱吉。勝負開始」
「とりあえず大空戦・・・リング一つゲット」
「?」
そう言ったツナの右手中指には大空のボンゴレリングが着けられていた。
「! いつの間に」
「さっきお前が俺を飛ばした時、奪っておいた」
「はっ。まるでスリだな!」
「勝てば良いんだよ。勝てば」
そこからは原作通りに事が運ぶ。
ツナがXANXUSの憤怒の炎を避け、鉄筋コンクリートの校舎が風化した。その炎の特性についてリボーンが説明し、ツナとXANXUSは炎のガチンコ勝負をした。結果はツナが勝ち、XANXUSが武器を取った。
「カスごときに武器を取るとはな・・・」
「オレがカスじゃなかっただけの話だ」
そこからも概ね一緒だ。リボーンが観覧席でその場の全員にボンゴレボスの炎の特性と武器の話をする。そして、XANXUSが銃により高速移動を可能とした。
体育館の方に向けて撃たれるはずの銃をツナは避けながら蹴り飛ばすことで打ち出される方向を変えた。
XANXUSの施しで嵐と雷のポールが壊れた。
そして戦況は原作通りに移り変わっていく・・・。
ツナが死ぬ気の零地点突破を使おうとした所でXANXUSはキレ気味に怒涛の攻撃を仕掛けてきた。
そして、XANXUSの一撃がツナに直撃した。
爆炎が上がる。
煙が晴れるとそこには、ボロボロのツナが横たわっていた。
XANXUSは勝利の余韻に浸りながらぶつぶつと呟くが、その彼の目の前で、ツナは大きな炎を出して起き上がった。
リボーンは満足そうにその技、死ぬ気の零地点突破。について説明するが、XANXUSは死ぬ気の零地点突破がどんな技か知っているらしく、豪快に笑い飛ばす。
そしてツナは死ぬ気の零地点突破 改を編み出した。
XANXUSはツナに連続で攻撃を撃ち込みタイミングをずらしていく。
そして死ぬ気の零地点突破 改は完成した。相手の力を自分の力に変換する大空の使命そのままの技が。
その力の差にXANXUSはマジギレした。
と、言ってもキレたのはツナにではない。自分自身にだ。初めて会った時、幼子であったにもかかわらず殺気を自在に操り、年上の自分でも敵わないと思わせた沢田綱吉に追い付きたいと覚悟を決めていた。だが、どこまで行っても遠かった。久しぶりに見たツナは殺気で重力を作り出すほどに成長し、力も段違いだった。情けなくて自分が情けなくて、超える目標を前にして。XANXUSは本気を出した。
だが、死ぬ気の零地点突破はツナが元々自在に使えていた技だった。
炎の逆の状態、つまり冷気を放つ初代死ぬ気の零地点突破。
原作通りにツナはXANXUSを氷付けにした。
そこでツナが気力の限界を迎え膝をつく。
「おい!」
「ツナの奴・・・、珍しく気力の限界らしいな」
ルッスーリアとレヴィの幻覚を見破ったツナ。そこにはやはりマーモンがいた。
「よく見破ったね。でも、もう。戦う力すら残っていないようだ」
「ムダだ・・・。XANXUSは眠りについた・・・・・・」
「それはどうかな?」
「?」
「むしろボスが次期ボンゴレの後継者になるための儀式の準備が整ったのさ」
「?」
「ボスは再び復活する」
マーモンの手には全ての守護者のリングがあった。彼の説明によると、リングには力があるという。九代目の零地点突破が溶かされた床には七つの小さな焦げ跡が残っていたそうだ。
「誰がやったかは定かではないが、その経過は一つの仮説を立てるのには充分だ」
マーモンの掌の上でボンゴレリングが徐々にその力に目覚め出し、それぞれの属性の色の炎を発し始める。
「思った通りだ。見るがいい」
マーモンはそう言って氷漬けになっているXANXUSに向き直る。
勢い良く燃え上がったリングの炎が、零地点突破の氷を溶かし始めた。
が、全ての炎が溶けきった時、ボンゴレリングは全て砕けて消えてしまった。
「「「「?!」」」」
「ど、どー言うことだ! なんでリングが砕けるんだ!!」
「い、いったい・・・・・・」
マーモンとベルフェゴールはもちろん。起きたXANXUSも、駆けつけたツナの守護者達も、見ていた部外者のみんなも、全員が全員驚いていた
「へぇ~・・・、大いなる力を後継者にねぇ。面倒なことが大好きなのかな? ボンゴレファミリーのご先祖様は」
「「「「!!?」」」」
「・・・・・・フッ」
どこからともなく聞こえた沢田綱吉の声に、全員がツナの方を見る。だが、彼は軽く笑っているだけだった。
慌てて当たりを見渡すと、校舎の縁に腰を掛け足をプラプラさせながら、ツナは腰に着けたチェーンを守護者のリングで全て埋め、手の中で大空のリングをもてあそんでいた。
「沢田・・・綱吉ッ!!」
「十代目!?」
「ヤッホーみんな」
気力が尽きていたと思われるツナが、大きな一つの死ぬ気の炎となって屋上に座る“ツナ”の元へ飛んでいく。それをツナは死ぬ気の零地点突破 改で吸収し、残った一枚の人型をした紙を持つ。
「なん・・・なんだテメー・・・・・・!」
「なんだ手前と聞かれたら、答えてあげるが世の情け! 世界の平和を守るため、宇宙の平和を守るため、愛と真実の悪を貫く! ラブリーちゃーみーな敵役! ・・・なーんてね。ネタばらしをすると、今までXANXUSが戦ってたのは俺のコピー。それも失敗作で俺の百分の一ぐらいしか力が出ないんだよね・・・。だからさ、適当なピンチの場面で入れ替わるつもりだったんだけどまさかまさかの勝っちゃったからさー。思ったよりXANXUS弱いね」
「・・・ッ!」
オメーが強すぎるんだバカ。と、観覧席で呟いたリボーンの声はツナには届かない。あ、でも。とツナは付け足す。
「XANXUSは弱くない。とっても強いよ。だってヴァリアーのボスになれたぐらいだからね」
「!」
XANXUSがツナに認められたという事実に少し嬉しそうな顔をした。そして、ツナは飛び降りながら右手の指に大空のリングをはめた。
「そう、決してXANXUSは弱くない。ただ、俺が強すぎただけだ」
ツナはそう言って、ボンゴレリングから大いなる力を受け取った。
「へぇ・・・大いなる力ってそーゆー? 俺にパワーは十分とふんで・・・こーいう物を渡してきたかー・・・」
ツナの呟きに全員が首を傾げる。と、ツナの次の言葉は想像だにしないものだった。
「もう、さ。邪魔する奴は片っ端から肉片に変えていいんじゃないかな?」
「・・・性格面での力を与えやがった!?」
リボーンが愛する生徒の急激な変化に対応できず悲鳴に似た叫びを上げる。
「ハッ・・・おい沢田綱吉」
「なに?」
「楽しかった。敵わなかったが、これだけは言える・・・。てめェは裏の社会の頂点に立つような人間じゃねぇ」
「そう?」
「裏の世界も表の世界もひっくるめてぶっ壊し、自分の都合の良いように作り替えるような人間だ」
「そこまで非道じゃない気がするんだけどなぁ」
「・・・いずれ分かる」
「オッケー。考えとく」
「だが。このまま俺が終わると思うか?」
「思わねーな。まだなんかあるの?」
「お前の言う通り、全部ぶっ壊すだけだ」
「?」
「今回の件に関係した者、全ての抹殺のため・・・総勢五十名の生え抜きのヴァリアー隊が間もなく到着する」
「?」
それぞれの守護者が殺気立つ中、チェルベッロがヴァリアーの失格を宣言する。さらに、リングに適正のあるツナが全てを揃え大いなる力を受け取ったことも踏まえてツナの勝利だ。
だがXANXUSの計画は止まらない。そうなることも計画の内だったのだろう。
共に闘おうとする観覧席の面々だが、細工された観覧席から出ることが叶わず、ただ見ていることしかできなかった。
そして到着したのは、ヴァリアーの隊服を着た男達。
挟まれた形となった獄寺達が警戒を強めたその時だった。バタバタとその男達が倒れ、一番大柄な男が呻くように報告する。
「報告します。・・・我々以外のヴァリアー隊全滅! 奴は強すぎます! 鬼神のごとき男が、まもなく・・・」
その報告の途中に巨大な鉄球が飛来して、男達をなぎ倒した。
「ぼ、暴蛇烈覇!」
「!!?」
「あの人・・・ずっと骸様の話しかけてた」
「奴は・・・!」
クロームが呟き、獄寺が目を丸く見開いてその姿を見つめる。
「取り違えるなよ、ボンゴレ。俺はお前を助けに来たのではない。
礼を言いに来た」
「・・・ランチアさん」
愕然とツナが呼んだ名を聞いたマーモンとスクアーロが顔を青ざめさせた。
「・・・アイツ、何者?」
ベルフェゴールが首を傾げ、スクアーロがモニターを凝視しながら呟く。
「北イタリア最強と恐れられたファミリー惨殺のランチア・・・」
「あ、アイツ、あんなに強ぇんらっけ?」
「強いよ」
犬が以前とは比べ物にならない力を見せるランチアに驚愕していると、千種はそう答えて俯く。
「他人に操られるのではなく、自分の意志で闘うアイツには迷いがないからな」
そしてツナは炎を拳に灯して言い放った。
「俺、ボンゴレ十代目になるつもりないからね?」
「・・・・・・一つだけ言っとくぜ。綱吉」
「あんだよ」
「誰にも、負けんじゃねぇぞ」
「様子見のコピーが負けることはあるかもしれないけどねん」
こうして大空戦の勝者はツナに決定した。
守護者同士のリング争奪戦もこれにて終了。