幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活 作:軍曹(K-6)
「さて、と。ここでマモンチェーンを巻いても問題ないね」
ツナはボンゴレリングの反応を消すと、黒川の家に亜音速で飛び出した。もちろん死ぬ気の炎無しでのことだ。
京子を迎えに行ったツナは、夜のリングでアジトへと戻ってきた。
「ただいま。みんな」
「ツナ。どこ行ってやがった! あとあいつ等は何だ!」
「獄寺君達の対戦相手? 何にせよトレーニングの相手にはピッタリでしょ?」
「・・・・・・無茶苦茶だな」
「知ってるよ」
「いいかな。話」
「雲雀さん? あ、見つかったんだ。良かった。でも、ちょっと待ってくださいね。これから雲雀さんの嫌う群れが始まると思いますんで」
「分かった。みないようにしておくよ・・・。って、何か僕の知る小動物と違う」
「違う時間軸ですから。俺は草食恐竜です」
「ふーん」
そして、ツナの言った通りビアンキとフゥ太が帰ってきた。
十年前の面影がしっかりと残っているその二人をみて、ツナは思わず笑っていた。
「ビアンキ、フゥ太。十年経ってもあんまり変わらないんだね」
「時間軸が違うとは聞いていたけど、ここまで違うものなのね」
「確かに、俺はこの時代の俺とは大きく違うのかもね。だって、多分だけど俺、その白蘭って人と仲良しだもん」
「は?」
「え?」
「ん?」
「はぁ?」
「「「「「えぇえぇえぇえぇえ!!???!!?」」」」」
「どーいうことだツナ!」
「かっ、過去の話だよもちろん!」
「だから俺達がここに呼ばれたのか・・・?」
「カンケーないと思うけど?」
「ツナ、とりあえず何があったのか話せ」
「あーえっと。これは俺が小学生の時なんだけど、白蘭って俺と同い年ぐらいの子と一緒に甘味を食べた思い出が・・・、今でもメールとか電話とかするし・・・」
(((友達かっ!!)))
ツナはそれだけの情報を喋ると、トレーニングルームに赴き自主練習を始めた。
(さってとぉ~。さってとぉ・・・。どーやって強くなる? とりあえず数日後の試練まで待った方がいいのかな?)
ラル・ミルチの指導でツナはその後何日も修行を続けた。
―――十三日後。
本日から新しい修行“強襲用個別強化プログラム”が開始されることになった。
山本を鍛えるのはリボーン。
獄寺を鍛えるのはビアンキ。
そしてツナを鍛えるのは―――
「気をぬけば死ぬよ。君の才能をこじ開ける」
雲のハリネズミで突然襲いかかってきた雲雀恭弥だった。
ツナは雲ハリネズミに対抗するように死ぬ気の炎を出すが、押し返すこともできずに壁際で停滞している。
「赤ん坊から聞いた通りだ。僕の知るこの時代の君にはほど遠いね」
「・・・じゃっこれでっ!」
死ぬ気の零地点突破Fast Edition!
「すげぇ!!」
「さすが十代目!!」
凍らされていく匣兵器に、山本と獄寺の歓声があがる。
「いや、まだだ!」
匣兵器が凍りつくよりも先にさらに増殖を始めるのを見て取ったラルが声をあげる。
ツナを雲雀の匣兵器が包み込もうとしていた。
「紫色の雲・・・・・・増殖しているのか!?」
「増殖スピードまで化け物ですか!?」
全て凍らせるつもりだったが、増殖速度に追いつかず、ツナはすっぽりと匣兵器に包み込まれてしまう。
「ツナ!!」
「十代目っ」
「何あれ・・・?」
「ボールになっちゃった!!」
「球針態。絶対的遮断力を持った雲の炎を混合した密閉球体。これを破壊することは彼の腕力でも炎でも不可能だ。密閉され内部の酸素量は限られている。速く脱出しないと、死ぬよ」
中に閉じ込められたツナにも、その声は聞こえていた。
(そんな事言われたら腕力で破壊したくなっちゃうじゃないですか・・・。まぁ炎で壊させるための処置なんだろうけど・・・。ウラヌスリングは外だし・・・。ボンゴレリングじゃそこまで出力は出ない。恐らく、大空のリングでXグローブVer.化ができないのは恐らくこれで何かを得ないといけないんだと思うんだけど・・・)
あえてハリネズミの炎切れを待つために全身凍らせるのもありか? なんて考え出した自分を戒めながらツナはとりあえず酸素切れを狙ってみる。死ぬ気の炎を全開にして、雄叫びを上げて球針態を殴りつけた。
「ダメかー。びくともしないんだからもう。ってかこれ、俺が閉所恐怖症とかだったらどうするのさ。まぁ、そんな事ないんだけどね」
ってか、酸素薄っ! と、ツナは余裕そうに言うが、肉体は自然と空気を求め、死に近づいていた。
と。そこでツナの頭の中に映像が流れてきた。
【殺れ】【「どうか命だけは助けてくれ!! 俺が死んだら、子どもが・・・妻が・・・・・・!! ぐあ!」】
(何これ。リアルな夢・・・。走馬燈? いや、俺こんなおっさん知らない)
【報復せよ】【「ギャアア!!」】【嵌めろ】【根絶やせ】
(あ、これもしかしてボンゴレリングから? ってか何これ)
「ボンゴレの・・・業」
「GO?」
ツナの周りにたくさんの人の気配がする。
「抹殺、復讐、裏切り、飽くなき権力の追求・・・・・・、マフィアの血塗られた歴史だ」
「あ、
「大空のボンゴレリングを持つ者よ。貴様に覚悟はあろうな」
「ん?」
「この業を、引き継ぐ覚悟が」
【「助けてください!!」】【「ギャアアア!!」】【「むごすぎる」】【「息子を返せ」】【「ぐわぁ!! 目がぁ!!」】
「目がぁ!!」
そしてツナは自分のボケがツボに入ったのか、少ない酸素を使って笑い始めた。
「げほっげほっ・・・酸素少ないの忘れてた・・・」
「目をそらすな。これはボンゴレを継ぐ者の宿命。貴様が生を授かったことの意味そのものだ」
「生まれた時から就く職が決まってるとか、昔の日本かっつーの。そもそもこんな酷い事するわけないだろ?」
「代価を払わずして、力を手に入れることなど叶わぬ。偉大なる力が欲しければ、偉大なる歴史を継承する覚悟が必要なのだ」
「自分で自分達のことを偉大なとか言うんじゃねーよ。偉大なる歴史? 自分の私利私欲のために人を殺すことがか!? 偉大なる力? 自分より立場の低いものを苛めるための力がか!? こんな歴史を継承する気なんてさらさらないね!」
「!!」
「何だと!?」
「こんな、人として落ちぶれた間違いを、子ども達に背負わせようとするなら・・・・・・。俺が、
―――その
「・・・・・・」
そして、ツナが気付くとそこには。
ボンゴレの歴代ボス達がいた。おそらく、生死が危うい状態になったツナの魂がリングの中に引き込まれたのだろう。
「貴様の覚悟、しかと受け取った」
「へ? ・・・あ、はぁ」
「リングに刻まれし我らの時間」
「時間・・・【時】?」
「栄えるも滅びるも好きにせよ、ボンゴレX世」
「どうも」
「・・・・・・お前を待っていた。ボンゴレの証を、ここに継承する」
「・・・身勝手だとは今まで思わなかったの? 自分達の犯した罪をさ、自分で尻拭いせずに子どもにまで押しつけた。その罪は重いぜっ!」
球針態に大きなヒビが入り、そこから徐々に広がっていく。一度も弱音を吐くことなく、その状態に達したことに、ヒバリは眉を顰める。
違う時間軸の沢田綱吉。果たしてそれだけで説明していいのだろうか。
「恭さん。これは!?」
雲雀は、球針態のヒビから爆発的に光が漏れるのを目にする。
「球針態が・・・・・・、壊れる」
その呟きとほぼ同時に、球針態が爆発を起こした。
煙の中から出てきたツナは笑っていた。例えるなら、新しいオモチャを買って貰った子どものように、それはもう無邪気な笑顔だった。