星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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GET DATA(トレーダー)……
『ソード』『エアスプレッド2』『マッドバルカン1』『アタックパネル』『ジェットスキー2』


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 ーーナンスカーー

 

「おっふ……」

 

 まぁ、ボクの運なんて元々、たかが知れているワケで。余りカードを全て注ぎ込んではみたものの、大した当たりが出ることは無かったのである。

 因みに、余りカードとは四枚目以降のカード達のコトであり、運用が絶望的(某社長のように、ピストルの撃鉄へとレアカードを投擲するという使い道が無いわけでもないが)なのでトレーダーの弾に回しているというのが実情だ。手持ちの戦力を減らす気は無いってことだね。

 

「(だから言わんこっちゃない……そら、早く聞き込みを始めようぜ)」

 

「うう……ヨビフォルダのカードを流用すれば、あと4回は回せるのに……」

 

 ヨビフォルダはスターキャリアーに固定で搭載されているデータのみのフォルダを指しており、空のカードにデータを移すことも出来ない仕様となっている。

 

「(諦めも肝心ってことだ、相棒よ)」

 

「コイツもBIGWAVEのトレーダーみたく、ウィルスに侵されているんじゃないかと思えてきたんだけど……」

 

「(……不正は無かった)」

 

 それ用途違うからっ!

 

 

 ーー十分後ーー

 

 取り敢えず一通り話しかけて回ったのだけど、じろじろみられたり、チラチラみられたり、じーっと見られたりする羞恥プレイに走っただけの結果となってしまった。さっきのゲシュタルト崩壊のせいか、どうにもナンスカのことを思い出せない。ナンスカってなんだっけ?

 

「あと、話しかけていないのは……」

 

「(あのデカイ祭壇の前にいる、変な杖を持ったジジイだけだぜ)」

 

 ジジイって……いや、間違いではないんだけどさ。もっとこう、オブラートに包むとかね……

 件のジジイ(仮称)は、村人達とは少々異なる意匠の装束を纏っている。ポンチョと言うよりは、ローブに近い見た目かもしれないな。下半身には布を巻き、サンダルのような履き物をしているが、この人の特徴的なパーツは首から上に集中していると言えるだろう。

 何せフッサフサの白髭に、鳥の意匠を凝らした杖だ。その見た目から、まるで天狗のような印象を受ける。常人に比べて高い鼻も、その印象付けに一役買っているようだ。

 

「ナンスカ!」

 

 なんて考え事をしていたら、またあのナンスカという言葉だ。……何かの挨拶だっけ?

 

「…………?」

 

「……お客人、その様子から察するにナンスカは始めてかね?」

 

 どう対応したものか戸惑っているボクを見かねたのか、落ち着き払った声でジジイ(仮称)さんは問い掛けてくる。どうやら慣れたものらしく、またかよ……みたいな心の声が聞こえてくるようだ。

 

「はい、そうなんです。あの……ちょっとした質問なんですけど、皆さんが口にしているナンスカって言葉は、一体どんな意味なんでしょうか? 」

 

 漸く思い出してきたのだけど、一応確認を入れておく。推測で行動するのは危ういからね。

 

「お客人、ここでは人に話しかける時は最初に『ナンスカ』と挨拶するのがしきたりなのです。そのしきたりを守らないと、ここの人間は話も聞いてくれないでしょうな」

 

「難儀なしきたりですねぇ……」

 

 いや、ちょっと閉鎖的過ぎない?だって今みたいに『ナンスカ』の意味を教えてもらうことも難しいってことなんだよね?

 今はナンスカ・オサ・アガメさん(パーソナルビューで確認出来た)が対応してくれたからいいものの……

 

「その言葉……ナンスカを軽んじたと受け取ってもよろしいのですかな?」

 

 やはり排他的な印象を受けるのだけど、それにしても少し口を滑らせた感はある。ここは素直に謝るべきだろう。誰だって、生まれ故郷を悪く言われていい気はしないものだからね。

 

「ああ……いえ、そういうつもりではないんですよ。すいません、失礼をお詫びします」

 

「……そうですか」

 

 向こうとしても、こちらが子供だということを考慮したようで、大人の対応を見せてくれる。キズナリョクも高いみたいだし、村の人からの信頼も厚いのだろうな。

 

「ええっと、空から人が降ってきたと伺ったんですけど……本当の話なんでしょうか?」

 

 と言うか、ゴンターガ様だ。祭壇の裏手には、ゴン太を象ったと思われる巨大な石像まで確認出来る。マテリアルウェーブでもないのに……用意すんのはえーよ。

 

「確かに、そのお方はこの村にいらっしゃいます」

 

 いらっしゃる……尊敬語か。語調からしても、大層崇めているというのが伝わってくる。この段階ではまだ、ゴン太のコトを本当にムー大陸から降ってきた使者だと思ってたんだっけ?

 

「本当ですか!?それで、今は一体何処に……」

 

「申し訳ないが、そのお方はご多忙でして。今、アナタ方に会わせる訳ことは出来ないのです」

 

 丁寧な口調だけど、断固とした拒否の意思が剥き出しの雰囲気だ。これは、何を言っても無駄なんだろうな。

 

「そうですか…………」

 

「暫くは、この村を見学してお行きなされ」

 

「……はい、わかりました。お手数かけてすいません」

 

「いえ、お若いのに感心な態度ですとも。こちらとしても、理屈が通じる相手は楽でいいですからな。それではお気をつけて……」

 

 見学してろって言われたし、取り敢えずさっきの人達にもう一度話しかけてみよう。委員長達に合流するのは、それからでもいい。

 

 

「ナンスカ!」

 

「ナンスカ!」

 

 一番近くにいたおばさんに話しかけてみる。気分はアローラ地方に迷い込んだ、新人トレーナーそのものだ。キテルグマ怖い……

 

「アラアラ、観光客かい?ここはいいところだよ。なんもないけど、平和なトコさね。さてと、あのお方の為にご馳走を用意しようさね~」

 

 なんて忙しそうにして、向こうへ行ってしまった。

 あのお方ねぇ……後でスターキャリアーのカメラで黒歴史を激写してやろうかしら。特盛牛丼一杯くらいにはなりそうだ。

 この調子で、他の人達にも話を聞いてみよう。

 

 

 

『ナンスカ!空から人が降ってきたんだ!すごいよ、すごいよね!カミサマなのかな~?でもその人、なんだかふとっちょなんだ!カミサマってふとっちょ?』

 

 

『ナンスカ!食事の準備をしてるんだけど……あのお方はよく食べるからね~料理を山程用意しなきゃいけないから大変さ!』

 

 

『…………ナンスカ。が、外国から来たのかい?ボク、人見知りが激しいからあんまり喋りかけないでくれよ。……空から降ってきた人?そうだよ、降ってきたんたまよ。ビックリだよね。も、もういいかい?』

 

 

『ナンスカ!空の方はお肉が大好きみたいなのね。だから、お供えの牛肉は最高級なのよ』

 

 

 

 ーー十分後ーー

 

 村の中央につくられた祭壇の脇で、得られた情報の共有をしていると思われる委員長達を発見した。いや、元々ここで待ち合わせていたんだけどね。少し遅れてしまったようだ。

 

「ナンスカ!!」

 

「ナンスカ!」

 

 委員長に話しかけようとしたら、いきなり大声でナンスカ!!と挨拶してきたので、こちらもニッコニコでナンスカ!と返す。気持ち抑えめの声量だったので、気恥ずかしくなったのか委員長は、顔を真っ赤にして俯いてしまった。やるせない恥ずかしさを発散しているらしく、時々うがー!だのあ"あ"あ"あ"!だの聞こえてくる。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……マズイわね。どうにもクセになりかけているみたい」

 

「皆ナンスカナンスカ言ってますし、無理もないですよ。情報より挨拶の方が印象的なまでありますからね」

 

 ビッグサイズの日傘を開きながら、キザマロがぼやくように呟く。正に、この場にいる全員の気持ちを代弁したようなものだった。

 

「まぁいいわ……集めてきた情報を纏めるわよ」

 

 漸く落ち着いたらしい委員長が、ゴホンと一つ咳払いをして場の空気を入れ換える。このままじゃ愚痴

 合いになっちゃいそうだからね。仕方ないね。

 

 ーー五分後ーー

 

 全員で集めた情報を整理した結果、浮かんできた人物の名は……

 

「…………ゴン太ね」

 

「ゴン太くんですね」

 

「ゴン太しかないよねぇ……でもさ、どうして直ぐに会わせてもらえないんだろうね?」

 

「まったくよ!! ゴン太はワタシ達の仲間なのに!!」

 

 キーーーッ!!っと頭上で輝き続ける太陽を睨むように空を見上げ、ワナワナと震え出す。

 

「…………暑い!!」

 

 日傘があっても、ジリジリと照りつける太陽の熱からは大して逃げられないらしく、額に汗を浮かべた委員長は吠えた。しかし、噴き出した汗で透けたシャツを着込んだ委員長は、いつもより色っぽく見える。暑苦しいとも言うんだけれどね。

 

「まぁ、『会わせない』って言ってるわけじゃないしさ。今は待つしかないよ」

 

「そこでお二人に提案なのですが……『マロ辞典』によるとですね、この近くに『ナンスカの地上絵』があるらしいんですよ。遥か昔に描かれた、巨大な絵だそうで……どうです? 時間が来るまで、そこを見学と言うのは……」

 

 何故ナンスカの場所は載っていないのに、ナンスカの近くにある地上絵の場所は載っているんだろうか……アップグレード?

 

「へぇ、面白そう!いいね、行ってみない?」

 

「男の子って、そういうの好きよね……まぁいいわ。どうせ暇になりそうだし、付き合ってあげるわよ」

 

「…実は、委員長も気になってるんじゃないの?」

 

「あのねぇ……暑さでそんなこと、気にする余裕なんてあるわけ無いでしょう!ほら、行くわよ!!」

 

 微妙にカリカリしてるような……まぁ、暑いとイライラするってのはわかるからねぇ……

 

「委員長、大丈夫?喉乾いてるなら、水筒貸そうか?」

 

 出発前に用意しておいた、スポーツドリンク入りの水筒を委員長に見せる。口をつけるタイプなので、少し飲んでしまった後でよければ貸し出すことも吝かではない。

 

「うっ…………………………い、いえ。け、結構よ……!」

 

 何がしかの長い葛藤があった後、委員長は歯を食い縛りながら丁重にお断りを入れてきた。どうやら自分でも用意してきたらしい。

 さて、この先にあるのが『ナンスカの地上絵』か。どうしても地縛神を思い出してしまうような。

 最高に高めたボクのフィールで、最強のチカラを手に入れてやるぜ!

 

 

 ーーナンスカの地上絵ーー

 

「これが……『ナンスカの地上絵』!」

 

 ナンスカの村から続く一本道……少々歩いた先に広がっていたのは、広大な土地をふんだんに使用して描かれた巨大な地上絵だった。入り口付近なので、遠目ながらすべての地上絵が見えるのだけど、この大きさではもっと近くに寄らなくては何の絵かもわからないな。

 

「大きなモノになると、遥か宇宙からでも見えるらしいですよ」

 

「へぇ……宇宙からでもかぁ……」

 

 コスモウェーブにアクセスしてみたら一度、『ナンスカの地上絵』を探してみるのも面白いかもしれない。

 

「折角だから、もっと近くで見てみましょうよ!」

 

 地上絵の近くには、その地上絵に対応した案内板が地面に埋め込まれており、スターキャリアーを翳すことで翻訳された説明文を読ませることが出来る。ガイドのマテリアルウェーブをマテリアライズしてみるってのも結構面白いかもしれない。まぁ、非対応なんだけどね。

 

 

 

 

 

『ムーの戦士……と伝えられている地上絵です。ムーの平和を守る、屈強な戦士だったと言われています』

 

 

『この地上絵は、ムー大陸を描いたものです。ムー大陸は、空中に浮かんでいたと伝えられています』

 

 

『この地上絵に関しては、何の伝承も残されていません……謎の紋章です』

 

 

『ムーの使い……と伝えられている地上絵です。ムーから地上に使わされ、スパイ活動のようなことを行っていたと言われています』

 

 

『ムーの軍師……と伝えられている地上絵です。ムーで戦争などが起こった時、作戦などを考えていたそうです』

 

 

『ムーの子供……と伝えられている地上絵です』

 

 

『ムーの監視者……と伝えられている地上絵です。ムー大陸と共に空を飛び、大陸を見守っていたと言われています』

 

 

 

 

 ーー十分後ーー

 

 一通り地上絵を見て回ったボク達は、一度入り口に戻ってきていた。見学してみて思ったのだけど、ナンスカの地上絵以外にも、壁画や化石の類いがあったのが驚きと言うべきか。特に食べ物の化石と言われて、壁面に残っているどう見てもハンバーガーにしか見えない化石を見た時は、思わず二度見してしまったくらいだ。

 ナンスカの人は、空中に浮かんでいたと言われるムー大陸を信仰しているらしく、真っ昼間から祈りを捧げる人も多いらしい。……お仕事は?

 

「じゃあ、そろそろ村へ戻るわよ!」

 

「だね。ゴン太に会わせてもらわなきゃ……」

 

 さて、ゴン太最大の黒歴史(になると思われる)のゴンターガ様を、とくとこの目に焼き付けさせてもらおうか……!

 

 

 ーーナンスカーー

 

「あれ……祭壇に人が集まってるよ」

 

 祭壇とは言うけれど、どちらかと言うと舞台色が強い建築物って感じだ。ナンスカ村の中央に建造された祭壇へと、原住民(ナンスカ族と呼ぶらしい)の人達が集まっている。ナンスカに来たばかりのボク達を囲んだ時のような騒がしさは無いけれど、何かを心待ちにしているような、そんなそわそわした雰囲気だ。

 

「何か始まるみたいね」

 

 委員長が訝しみつつも、ここは観察の構えを崩さないようだ。変に邪魔をして、不興を買っても面白くないからね、仕方ない。

 

 

 

『ナンスカ!!さぁ、皆の衆!準備はよいな!?』

 

 ナンスカ・オサ・アガメの言葉に、先程までのそわそわしていた雰囲気が一発で霧散し、緊張感がその場を支配する。小声で喋っていた素振りの人達も、今ばかりは口を接ぐんでいるようだ。

 

『ムー大陸よりいらした使者……ゴンターガ様の、お成りだ!!』

 

『『ゴンターガ様ー!!ゴンターガ様ー!!』』

 

 祭壇の奥に取り付けられていたと思わしき階段を登ってきたのは、奇抜な衣装に身を包み、頭に冠らしき物を被ったゴン太……ゴンターガ様だった。

 ナンスカ族の少年曰くふとっちょな体を、足元までゆったりと包むローブに、なんだろう……紫色のタテガミ?ファー?のようなモノが首周りを覆っている。年末にやる歌合戦で、小林◯子さん辺りが着ていそうな衣装だ……

 

『ワレこそはムー大陸の使者、ゴンターガでおじゃる~!!善きに計らえ、でおじゃる~!!』

 

 

『うおぉぉぉーーっ!!ゴンターガ様ー!!ゴンターガ様ー!!』

 

 ゴンターガ様のお言葉を受けたナンスカ族の皆さんは、踊ったり、膝をついて崇拝したり、ワーワー叫んだりと様々な反応を見せる。

 

 

『ふぉっほっほ~!!ワレは満足でおじゃるぞ~!!』

 

 観衆の反応を見てご機嫌なゴンターガ様は、何処からか取り出した骨付きカルビを、満足気に食べ始めている。人を騙して食う飯は美味いか?ゴン太よ……

 

 

「こ れ は ひ ど い」

 

「ワタシだってぼやきたいわよ! どういうこと!? なんでゴン太があんなコトになってるわけ!?」

 

 そんなこと言われても……おのれムー!としか。

 

「完全に神様扱いですね。ゴン太くんも恥ずかしがっているようにも見えませんし……多分なりきってるんですよ。なんか『おじゃる~』とか言ってましたし………ブフッ!」

 

 あ、キザマロが吹き出した。自分で言っててシュールなことに気がついたんだろうなぁ……

 

「『ムー大陸の使者』って呼ばれてたけど……どういうコトなんだろうね?」

 

「まぁ、何にしても……ゴン太くん本人に聞いてみるのが、一番早いんでしょうね」

 

「それじゃ、直接話を聞きにいってみよっか」

 

「まったく……ワタシのブラザーは世話が焼けるのばっかりね!」

 

 いつもは世話を焼き時はなんとも思っていそうな顔なんだけど、今回ばかりは混乱しているみたいで、ヤケクソって表現がしっくりくる荒れようだ。

 友達が行方不明になって、手がかりを追って来たら現地で神様扱いを受けていた……って、これやっぱりおかしい所しかないじゃないか!




いつも感想・評価ありがとうございます。

GET DATA……
『ゼニーサーチング』『HPメモリ10』

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