星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 ーーナンスカーー

 

 ゴンターガ様の御成で、大変喧s……賑やかな舞台型の祭壇に近づくと、ナンスカ族の盛り上げ役……と言うか音頭をとっていたナンスカ・オサ・アガメさん(天狗似な人のことだ) がボク達に気づいたようで、杖を軽く振ってくる。多分、こっちに来いという意味なんだろう。

 

「……オマエ達も、ゴンターガ様に祈りを捧げに来たのか?」

 

 うーん、この雰囲気で、アナタ方の神様を浚いに来ました……なんて茶化せるとも思えないし、素直に言った方がいいのかもしれない。

 

「極めて説明の難しい状況ですよね、これ。……ど、どう説明しましょうか?」

 

「ほ、ほらスバルくん! こういうの、得意でしょ!?」

 

『悲報』突然の裏切りに遭った件について。

 ……さっきまでの威勢は、一体何処に雲隠れしたって言うんだ!

 

「えぇ……なんで……」

 

「早くなさい!!」

 

 うんざりしたような顔(になっていると思う)のボクを、委員長は怒鳴るように急かして直ぐ後ろへと引っ込んでいく。これを激励とは呼びたくないなぁ……

 

「…………その、ゴンターガ様なんですけど……彼の本名は牛島ゴン太と言いまして、ボク等の友達であり小学生という社会的身分をですね…………」

 

「はっはっは!! 面白いことを言いますな!」

 

 若干しどろもどろになっているボクの説明を鼻で笑いながらナンスカ・オサ・アガメさんは否定してしまう。

 こやつ、ぬかしおるわ……という心の声が聞こえるようだ。……何だか腹が立つな。いや、ボクの勝手な被害妄想なのだけれどね。

 

「随分笑わせてもらったので教えてさしあげるが……ゴンターガ様は、遥か大空に浮かぶムー大陸からこのナンスカ村に遣わされた、謂わば『使者』なのだぞ! それはあり得ませぬな!」

 

「だ~か~ら~!!なにがどうしてそういう話になってるのよ!?」

 

 クラスの委員長としてどうなのそれ……?と先程まで思っていたけれど、初対面の大人にも怒りをぶつけられる程度には、覚悟があるらしい。見直したよ、委員長!

 ……我ながら、手のひらドリル感は否めないが。

 

「ゴンターガ様は、空よりこのナンスカ村へと落ちてこられた。人が空から振ってくるなど有り得ぬコトだ」

 

「つまり、ゴン太くんはムー大陸から落ちてきたとおっしゃってるんですね。もうワケがわからないです」

 

 同感だよ。いや、空中に浮かぶ文明都市の方が有り得なくないか……?実際には浮かぶのだけど……それでも、ねぇ?

 

「そういうことだ……さぁ、用が尽きたなら早くキミ達の国へ戻るといい。ゴンターガ様には、これから我々の支配者としてナンスカを盛り上げていただかなくてはならんからな」

 

 見知らぬ他人を勝手に神認定して崇めるとか、羅列するとかなりヤバイ民族に見えるような……どこぞの動画投稿サイトのコメント欄のようだ。人は、神にもなり得る……って、何を突然悟っているのだろうか。いけない、今は目前のコトに対応しなければ。

 

「支配者だなんて。ゴン太は、ごく普通の小学生五年生だってのに……」

 

「さっきからまるでラチがあかないわね……!! もう限界よ! ゴン太! いつまでそんな所でお肉囓ってるの!!……さっさと降りてきなさい!!」

 

 糠に釘な村長に見かねたのか、舞台の上で骨付きカルビをムシャムシャと頬張るゴン太……ゴンターガ様(笑)へと声を張り上げる。どうやら委員長も、暑さで余裕というものが、大分無くなってきているらしい。

 

「…………」

 

 ムシャムシャ、バクバク……と、委員長の御言葉にも全く耳を貸す様子を見せないゴンターガ様は、ただひたすらに両手に保持した肉を貪っている。

 ……誰も盗らないっつーの!

 

「ゴン太くん! まさか委員長の御言葉が聞こえないのですか!? これは折檻確定ですよ!?」

 

 ダメだ。完全に聞き流してしまっている。記憶喪失ということだから仕方ない部分もあるのだけど、これは解決した後の折檻が恐ろしいコトになりそうだ。ふえぇ……

 

「ねぇロック。ゴン太のアレって……」

 

「(いや、特に怪しい電波とかは感じねぇぜ。別の電波は感じるがな……)」

 

 ハイド達による精神干渉の可能性を否定しつつも、ロックの目は生暖かいモノになっている。これは……可哀想なヤツを見るときの目にそっくりだ。

 

「確かに。今のゴン太は、何か変な電波を発信してるように見えるよね……」

 

 納得の中二度であると言えるかもしれない。いや、高二、中二ときたら……小二病?何にせよ黒歴史確定だけは免れないだろうな。同情するよ、可哀想にね。

 

「(それに食いっぷりだけ見たら、いつもとまるで変わらないじゃねぇか。あのオンナの呼び掛けは現実逃避ってコトで、本人が意図的に無視している線すらあるぜ)」

 

「…………」

 

「コラァァァッ!ゴン太ァァァッ!!」

 

 喉を枯らさんばかりに叫び続ける委員長は、完全に年頃な女子の体を為していないと思う。……頼れる委員長であることに、変わりはないのだけどね。

 

「よくわからないけど、今ゴン太に話しかけても無駄なんじゃない?」

 

「ハァハァ……た、確かにそうみたいね…………ちょっと、二人ともついてきなさい」

 

 深呼吸を繰り返して無事に息を整えた委員長は、目付きだけは鋭いまま、祭壇から離れた場所まで先導していく。ナンスカ・オサ・アガメさんも、祭事中に場を離れるワケにもいかないと、直ぐに注意を逸らしている。これ以上、こちらに邪魔をする気がないことを悟ったのだろうね。

 

 

「このまま引き下がるワケにはいかないわ。何処か、人の居ない場所で策を練ってやるわ……!」

 

 手でパタパタと扇ぎつつも、その目に宿る闘志には些かの衰えも見せていない。単に、暑さで余計にカリカリしているだけなのかもしれないけれど。

 

「じゃあ、さっきの地上絵があった方へ行きましょう」

 

「賛成!」

 

 キザマロの提案に賛成する形で、ボク達は話を進めていく。委員長としても、祭事中のために人気が少なくなっていると考えたようで、異存はないようだった。まだこの辺りの地理に詳しい訳でもないし、妥当な提案だとは思うんだけど……

 

 

 ーーナンスカの地上絵ーー

 

 

「……さて、困ったわね。まずはどうにかして、ゴン太と直接話をする機会を設けなければならないわ。アナタ達、何か提案はあるかしら?」

 

 やはりと言うべきか、祭事中にまで地上絵のあるエリアへと足を運ぶ人はいないようで、先程までの賑やかさから一転、地上絵が不気味に映える秘境と化していた。

 

「うーん。そうだね、ゴン太なら……」

 

 牛丼しか無いのだけど、ここでボクが思い付かなくとも、キザマロ辺りが……

 

「……あっ!いい方法がありますよ!ゴン太くんの好物を用意して誘き寄せるっていうのはどうでしょうか?」

 

 ゴン太にしか通用しそうに無い仕掛けだ。匂いで誘き出せるって、それどんな超生物なんだよ……と思ってしまうが、そこはゴン太クオリティ。そんなに不思議ではないような気がする。だってゴン太だもの。

 

「それよ!」

 

「好物は……」

 

「牛……!」

 

「……丼!」

 

「だね!……フフッ…………それで、材料はどうするの?」

 

 こういうノリ、本当に最高だと思う。つい笑ってしまったけど、材料の方は大丈夫なのだろうか。いや、大丈夫だとは思うのだけど、衛生的に問題ないのだろうか……

 

「フフフ……こんなコトもあろうかと、ゴン太くんお気に入りの『紅生姜』を持ってきているんです!」

 

 何故故に、紅生姜……?そもそもゴン太お気に入りの紅生姜を、どうしてキザマロが知っているのだろうか。

 野暮な突っ込みなんだろうけど、デマキューのこともあるし、アイちゃんに対して過度に反応している素振りも見せていなかった。

 キザマロ=ホモ説が思い浮かんでしまったボクを、どうして責めることが出来ようか。いや、出来はしない。

 

「流石ね、キザマロ!……で、他の材料は?」

 

「…………さ、探しましょう!きっと、どうにかなりますよ……」

 

 委員長の指摘に冷や汗を垂らしたキザマロは、あらぬ方向を向いて、取り敢えずの方針を提案する。因みにボクは、牛丼の具材に関しては何一つ持ってきていない。だって、理由がないでしょう?ボクはナンスカに、誰が飛ばされているかも判らない状況だったんだから。

 

「ええっと、牛丼の材料は……『牛肉』『玉葱』『ご飯』ってところかな?細かく言えば、調味料や器も必要になるけど……」

 

 ゲームじゃ、卵も入っていたような気がするけれど、実際牛丼に卵って要らなくない……?生卵とか、調達元の関係で危険過ぎるような。卵とじに使うつもりだったのかもしれないけど、ぶっちゃけ委員長が材料を知らなかった説が濃厚なんじゃなかろうか……

 

「……そうね、そんなところね!それじゃ、手分けして探すわよ!一時間後に、この場所へ集合…………で、いいかしら?」

 

「ハイです!」

 

「うん、一時間後ね……わかったよ」

 

「決まりね。牛丼…………作るわよ!!」

 

 ボク達の返事を満足気に聞き入った委員長は、右腕をギラギラと輝きながら熱を放出し続ける太陽に向かって突き出し、音頭をとる。どうやら、ボク達を鼓舞しているらしい。

 

「「オーッ!!」」

 

 

 

 ーーナンスカーー

 

 未だ祭事中ということもあってか、熱狂的な賑わいを見せる祭壇周辺だけど、地面と比較して高台になっている舞台の周りにはお供え物の食料が山程置いてある。これを少々、頂戴したいところだ。

 

「(……お、アレ『牛肉』じゃねぇのか?骨付きだから手間がかかりそうだが……そこら辺は、料理人次第ってヤツか?)」

 

 ロックも言ってて無理っぽいと思ったのか、段々口調が萎んできている。ボクは言わずもがな、キザマロに料理が出来るとは思えないし、委員長は…………委員長だし。確か、委員長が調理マシーンを持ってきているんだっけ?それに頼るしか無さそうだ。

 

「(でもちょっと難しいよ。その牛肉、祭壇の前面に置かれているんだもの。正面から取りに行ったら、村の人に捕まっちゃうかも……)」

 

「(それじゃ、電波変換してから拝借しようぜ。それならバレる心配もない)」

 

「(……了解。何だか最近、人目を忍ぶスタイルが板に付いてきたようで悲しいよ……)」

 

「(そんなコト言ってる場合かよ!おら、とっととウェーブホールに入ろうぜ。狙いは中央にある、特大の骨付きカルビだ……!)」

 

 おかしい。何故に電波体のロックが舌を鳴らしているのだろう。ウィザードでもないので、モノを食べることは出来ないはずなのだけど……

 

『ゴンターガ様!ゴンターガ様!今日の善き日に「ライスシャワー」を蒔きますわい!』

 

 ……なぬ?ライスシャワーとな?

 

「あの、すいません!そのライスシャワーに使ってるお米なんですけど……」

 

 周囲は大声でワーワー言っている為、こちらもそれなりの声量を出さないと相手に伝わらない。先程ライスシャワー云々を言っていたのは、ナンスカ族の民族衣装に身を包んだ壮年の老婆だった。

 

「……ん?ちょっと分けてほしいのかい?いいよいいよ!『ライスシャワー』のお裾分けだよ!」

 

「ありがとうございます!」

 

 イヤにテンションの高いお婆さんから望外のお米を大量に分けてもらい(総量からすれば少々だけど、食用ならお釣りがくる量だ)、意気揚々とウェーブホールを探す。幸先のいいスタートだ。これならすぐに集まるかもしれない。何せ、一番の難所である卵の回収に行かなくていいのだから。時間が余ったら、卵を取りにいくのも悪くないけれど。

 

 

 ーーナンスカの電波ーー

 

 お供え物の、特大骨付きカルビだ。こんがり上手に焼けている。某狩人ゲームなら、末尾にGを付けてもいいくらいの絶妙な焼き加減。

 食事を必要としない電波体でも食欲を刺激されるとなれば、その凄まじさが理解出来るはず。端的に言って、とても美味しそうだ。

 オレサマオマエ、マルカジリ(したい)。

 

「……よし、少しだけ拝借しよう。『ソード』で上手く切れるかな……」

 

「丸ごと持っていっちまえばいいんじゃねぇか?手間が省けるぜ」

 

「そんなことしたら、現実世界の方で大パニックになっちゃうよ。あんな目立つ位置の骨付きカルビが消えたりしたら、ね」

 

「ケッ、それもムー大陸ってヤツのせいにしちまえばいいのによ。アイツら、空から人が降ってきただけで神様扱いだからな。なら、宇宙から降ってきたオレは一体何様扱いなんだっての……」

 

 ぼやくロックを説き伏せ、左腕に展開したソードで慎重に削っていく。多分今日の晩御飯にもなるだろうから、気持ち多目に持っていこう。調理に失敗する可能性もあることだし。

 

「……よし、剥ぎ取り完了。最後は……玉葱だね。ロックは何か心当たりとかある?」

 

「そうだな……玉葱だろ?」

 

「そうそう、あの鼻がツーンとするヤツ」

 

「ツーン?それならさっき、オレがなったぜ。突然鼻がツーンとしてきてよ、えらく不快だった」

 

 鼻や目がツーンとするのって、玉葱の刺激成分が原因なんじゃなかったっけ?それより、今までスルーしてきたけれど、電波体に嗅覚があるってのもおかしな話だ。何で感じ取っているんだろう。

 

「へぇ……それ、どの辺でツーンとした?もしかしたら、もしかするかもしれないよ!」

 

「風に乗ってきたからな……風向きを考えると、あの辺りか?」

 

 そう言って左腕(ロック)が示したのは、ナンスカ村の片隅にある植物群だった。変わった形をしていて、実がプックリと膨らんでいる。近くに寄ってみると鼻の奥がツーンとしてきたので、これで間違いないと思われる。一応確認はとるけど。

 

「……これかな?」

 

「ああ……涙が出そうになってきたぜ」

 

 それはちょっと大袈裟じゃないかなぁ……いや、ロックの感覚が鋭いだけ?

 

「それじゃあ幾つか摘み取って……っと、これくらいでいいかな」

 

「時間にはまだ余裕があるな……少し早めに戻るか?」

 

「そうだね……そうしようか」

 

 地上絵の岩壁には、卵を産んだ鳥類の巣があったはず。鳥さんには悪いけど、卵を幾つかいただいていくことになりそうだ。

 

 

 ーーナンスカの地上絵の電波ーー

 

 一足早く作戦会議をしていた地上絵の隅に戻ってきたけれど、やはりまだ誰も来ていない。

 ……これなら、牛丼用(トッピングに使うと思われる)の卵を確保する時間がありそうだ。

 

「どうする?アイツら呼んじまうか?」

 

「それが良さそう……っと、見てよロック。鳥の巣だ。壁画の描かれてる岩肌に……」

 

「……おっ!しかもご丁寧に卵まであるぜ。でもよ、牛丼に卵なんて使うのか……?」

 

 ……一応の、理由はある。

 

「どちらかと言うと、トッピング的な意味合いが強いかな。それにゴン太って、生卵を上からかけるのがお気に入りだったような……」

 

 何度か牛丼を食べに出掛ける機会があったので、お気に入りの食べ方くらいは頭に入っている。流石に紅生姜のブランド?まではわからなかったけどね。

 

「じゃ、取りに行こうぜ。作戦の成功率を上げておくに越したことはないからな。集合時間にも余裕があるみたいだしよ」

 

「OK!それじゃ、早速ウェーブロードを伝っていこうか!」

 

 

 ーー三十分後ーー

 

「ゼェ、ハァ……や、やっとたどり着いた……」

 

 わ、忘れていた。ナンスカは電波の整備が遅れているから、ウェーブロードが迷路ように入り組んでいるんだと、スカイウェーブでデンパくんに教えてもらっていたというのに!……何であんなにグルグルしてるんだよ!

 

「ま、いい時間潰しだったんじゃねぇか?ほら、とっとと回収しちまおうぜ。産まれる前によ。……クククッ」

 

「それは割と洒落にならないかな……っと、鳥さんゴメンよ……」

 

 素人目でも、目の前の卵が新鮮であることは理解出来る。これなら、食材として利用しても問題ないだろう。巣の中に転がっている卵の幾つかを拝借し、その場を後にする。

 スターキャリアーのデジタルウォッチを確認すると、約束の時間まであと五分といったところだ。ウェーブアウトで帰還すれば、丁度いい時間に合流出来るだろう。

 

「それじゃ、集合場所に戻ろうぜ。この戦果ならきっと、あのオンナも満足するだろうさ」

 

「だといいけど……」

 

 自然由来過ぎて、後からお腹壊したりしないか心配になってきたような。何せ、ボクらの晩御飯でもあるのだから。




いつもありがとうございます。

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『グリーンカーペット』『パラライザー』
『マシンガンクロー』『タイフーンダンス』
『グリーングレネード』『アトミックマイン1』
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