星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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6/25、修正しました。


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 ーーアマケン玄関ーー

 

「…ここが研究棟の玄関だよ。……そっちは科学館…一般解放を目的とした展示スペースだ。…あっちの方は、職員専用のスペースに繋がっているんだ。……おや?」

 

 入って右側のゲートを通ると科学館、左側を通ると職員スペース……ということらしい。職員スペースの入口付近に昨日の宇田海さんの姿が見える。

 …ロックの反応がないってことは、まだ取り憑かれていないのかな?

 

「(ねぇ、ロック。……良い設備が揃ってるってことは、見たことないウィルスとか、いるんじゃないかなぁ…)」

 

「(おお…それは思い付かなかった。だが、最新のファイアウォールでも搭載されていたら、内部の電波だけで撃破できるような雑魚か、最悪ウィルスゼロって線もあるぜ?リスクに見合ってるかってなると……微妙な線だな)」

 

 …最近のロックが理でボクを制してくる……

 こんな知的キャラじゃなかったはずなのに……

 

「(そっか、じゃあ諦めるよ。……頼りになるね、ロックは)」

 

「(もっと誉めてもらっても構わないぜ!)」

 

「(はいはい、凄いねロック)」

 

「(おざなりっ!?)」

 

「ああ、彼は僕の助手なんだ。……スバル君は昨日会ったね……おーい!宇田海くん、こっちに来てくれないか……?」

 

 天地さんの呼び掛けに従って、宇田海さんが此方に向かってくる。天地さんの隣に並び、少し窮屈そうに見えるのは、二人の性格比からかな?

 

「改めて紹介しよう。彼は僕の助手である宇田海君だ。……って、宇田海君……なんか顔色悪いけど大丈夫か?」

 

「…え、ええ、まぁ……」

 

 今に始まったことじゃないような気がするけど……

 

「昨日は夜遅くまで、残業してたみたいだけど、カラダには気をつけてくれよ」

 

「し、心配には及びません……」

 

「そうか?……ならいいけど。じゃ、話を進めよう…………今日は特別だ。キミたちには、この科学館へ無料で招待しよう」

 

 おお、気前いい!…というか入場料があるとか聞いてなかったんですけど、天地さん……

 

「イエーイ!」

 

 無料と聞いてゴン太も大喜びだ。彼は牛丼に小遣いを捧げているようなモノだからなぁ……

 

「ラッキーですね!」

 

「感激ですわ!」

 

「いろいろ見ていくといい。きっと楽しめると思うよ……あ、そうそう。後で研究室にも案内しよう。……まだ誰にも見せていない、僕の最新の研究を見せてあげるから……」

 

 ところで、さっきから宇田海さんが喋ってないことが気になる……。

 

「……(さ、最新の研究を見せるって……?私のフライングジャケットは今も研究室に置いたままです…………まさか)」

 

「…さぁ、これが入場パスだ。そこの読み取り機(リーダー)でパスをかざせばOKだから、慌てないでね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「いいんだ、スバル君は僕が呼んだってのもあるしね。……その友達に便宜を計るのは当然だよ……。スバル君も楽しんでいってね……!」

 

 各々天地さんに感謝を述べて、科学館に入っていく。

 

『入場パスヲ、カクニンシマシタ……ドウゾ オトオリクダサイ』

 

 ガチャン!、と改札型の読み取り機が入場パスを確認し、通行が可能になる。ボクが最後だったな……

 

 ーー科学館ーー

 

「へぇ、結構色々あるんだね」

 

「…お!アレ見ろよ、スバル!隕石なんか飾ってあるぜ!」

 

 …ええぇ、そんな貴重っぽいものがなんで一般公開されてるんですかねぇ……

 …惑星探査機も改良されてるらしいし、隕石の入手は難しくなくなったのかな?

 

「(それより、こっちのブラックホール発生装置とか、凄いよ!)」

 

「(ブラックホールか……宇宙にはブラックホールの内部にあるサーバーも存在していると聞くが、地球人は既にブラックホールの人工発生に成功していたのか……)」

 

 …ブラックホールサーバーのことかな?

 多分又聞きで、正確なソースがあるわけじゃないんだろうけど……

 あ、ウェーブホール発見!……微妙な位置だな……

 すぐ側で展示されているロケットの影に隠れられれば、何とか見つからないかな?

 …なるべく外にあるウェーブホールで電波変換して入ったほうが良さそうだ……

 

「(さて、大体見終わったし、天地さんのトコロに行く?)」

 

「(そうだな……入口近くの展示ロケットにさっきの女がいるから、声でもかけてきたらどうだ?)」

 

「(?……何で?)」

 

「(さっきのオマエ、結構楽しそうだったぞ?……相棒のコンディションはバトルに影響するからな……余計なお節介だったか?)」

 

 いや、まぁ、楽しかったけどさ……あ、委員長さんの方を見てたら目が合ってしまった。

 

「………」

 

 う、うーむ……気まずいぞ、これは……

 

「え、えっと、委員長さん。……さっきから結構熱心に見てるけど、何か気になるモノでもあった?」

 

「……!そ、そうね……ココ、中々の施設だわ。……社会見学に良いかもしれないわね……今度先生たちに提案してみようかしら」

 

 …予想以上にしっかりしているね……

 

「そ、そっか……アハハ……そうだ、ボクはそろそろ天地さんに、研究室を案内してもらいたいと思ってるんだけど、そっちは、どう?合わせるよ」

 

「アラ、以外と我が強いわけじゃないのね……もっと自分勝手かと思ってたわ」

 

 …この、女、は……!!

 

「……そんなことないさ。……団体行動位できるよ。……それで、どうなんだい?」

 

「そうね……ゴン太!キザマロ!展示は見終わったわね!?そろそろ天地さんに研究室を案内して貰いに行くわよ!」

 

「ウヒィッ!?了解だぜ、いいんちょう」「ハ、ハイ!」

 

「・・・別にボクの言う通りにしなくてもいいのに」

 

「アラ、勘違いしているようね……ワタシはおじさまをあまり長く待たせたくなかっただけよ?」

 

「それなら今は、天地さんに気を使うんじゃなくて、館内の人に気を使うべきだったね……さっきの大声で、皆こっちを見てるよ」

 

 さっきから無言の視線が痛い……

 

「…え?あ…………ッ!スバル君!?」

 

「それじゃあ、先に天地さんのトコロに行って待ってるから……」

 

 ……ふふっ。

 

「(オイ、スバル。やっぱり楽しんでんじゃねぇか?)」

 

「(……黙秘で)」

 

 ーーアマケン玄関ーー

 

 あ、天地さんだ。さっきの宇田海さんは……どこかに行ったのかな?

 確かもう既に研究室の物陰にスタンバってるんだっけ?

 

「…おっ、もう科学館の見学は終わったのかい?じゃ、次はボクの最新の研究を見せてあげよう……場所は研究室だ、スバル君のクラスメートたちが来たら、案内しよう。……来たようだね、どうだった、科学館は?中々楽しめただろ?」

 

「はい!今度先生方に社会見学の実施地として提案してみようと思いますわ!」

 

「それは良かった……!いつでも大歓迎だよ……さ、では案内しよう……と、これが『職員パス』だよ。これを入口でかざせば入れるから、僕の後ろについてきてね」

 

『職員パスヲ、カクニン シマシタ。ドウゾオトオリクダサイ』

 

 …ガチャン!

 

「さぁ、この先のエレベーターに乗って上に上がるよ……みんな入ったね……?」

 

 ーーアマケン玄関・二階ーー

 

「ここが職員の休憩スペース……まぁ、憩いの場ってヤツさ。……そしてあそこのエレベーターから、僕の研究室に行けるんだ」

 

 ーー研究室ーー

 

「ここが研究室、僕の仕事場だ。……自由に見学して行ってくれ……中々見れるモンじゃないぞ。まだ発表前の発明もあるからね」

 

「(わ、私のフライングジャケットも発表前です)」

 

「この壁に掛かってるのは何ですか?」

 

「おっ、良いものに目をつけたね……キザマロ君っていったかな?……それはまだ発表前だから大きな声では言えないけど……」

 

 ・・・ドクン ドクン ドクン

 

「…………ケットだよ。僕が開発してるんだ」

 

「ッ!(い、今なんて!?もしかして『ジャケット』って言ったんじゃ……そ、そんな……」

 

 …宇田海は『…………ケット』という言葉を自分のフライングジャケットのことだと思い込み、研究室にある、別の勝手口から屋上へ出ていってしまった。勘違いとも知らずに……

 

「なるほど……これが最新の『ロケット』の設計図ですか……ん?……これは、何ですか?……このロケットの設計図の隣に掛けてあるヤツです」

 

「それは、さっきの助手が開発してるやつだよ。『フライングジャケット』って言ってね、結構完成度が高そうなんだ……うかうかしてると、僕も追い越されてしまうな、ハッハッハッハ!……さて、そろそろ疑似宇宙ツアーの時間だ」

 

「ぎじうちゅうツアー?」

 

「ふふふ、まぁ、見てからのお楽しみさ……科学館の展示スペースの一番奥が入れなかっただろ?……そこで見せてあげるよ、さぁ、行こうか」

 

 ーー科学館・疑似宇宙空間・入口ーー

 

「さぁ、受け付けは済んだかな?ここから先は宇宙空間を再現した場所になってるから、当然酸素もない、重力もない……と生身の人間では活動できないからね。さっき受付でもらった『宇宙服』を着ていくよ。……さぁ、疑似宇宙ツアーのスタートだ……!」

 

 ーー同時刻・アマケン屋上ーー

 

「同じです……同じですよ……あの時と……ま、またあんな思いを繰り返すなんて……ううう……」

 

 宇田海は悲しかった。やっと、今度こそは……!と思って信じた相手がまたしても裏切っていたからだ……

 

『だから言っただろう?フフフ……』

 

「裏切りこそ、この世の本質なんだって」

 

「お前は、さっきの……わ、私はどうすれば……」

 

「簡単なことだよ。……君を裏切ったヤツには罰を与えてやるんだ……そうすればキミの気分も一気に晴れるはずさ」

 

「天地さんに、罰を……私が…………?」

 

「フフフ……心配は要らないよ。……ボクがチカラを貸してあげるから……さぁ、ココロの闇を解放するんだ!」

 

 この、白鳥擬きを、受け入れて、天地さんに罰を、与える……

 そうだ、あの人が悪いんだ……!私を裏切って……

 …当然の報いを与えてやる!

 

 ーー疑似宇宙ーー

 

 …おお、浮いてる!

 

「凄いな、コレは……」

 

「疑似宇宙へようこそ!参加者はお客様で最後のようですね……それではトビラを閉めさせて頂きます」

 

 スタッフか……まぁ、宇宙空間の再現だもんね、監視をつけるのは当たり前か……

 

「ツアーは間もなく始まりますので、それまで暫くお待ちください……」

 

 やった、自由に動けるぞ!

 …お、木星のレプリカの側に光るモノが……

 お、HPメモリ。やったね!でも宇宙服じゃトランサーに読み込めない……後でまた取りにこよう……

 お、スタッフの人が集合をかけているぞ。

 …そろそろスタートかな?

 

「皆さん、疑似宇宙へようこそ!……って天地所長も参加するですか?」

 

「ああ、今日はこの子たちの付き添いでね…まぁ、僕のことは気にせず、いつも通りやってくれ」

 

「わかりました。では、改めまして……皆さんこんにちは。私はこのツアーの案内人です……どうですか、疑似宇宙は?本当に宇宙に来たみたいでしょう?……驚きはまだまだありますからね。それじゃ皆さん、私の後に着いてきて下さい」

 

 さっきのスタッフ、もとい案内人の女性の指示に従って、まずは入口だった地球のレプリカを見に行く……サイズ比を見るに、現実のサイズ比をもとに製作したようだ。

 …凝ってるなぁ……

 

「これは、地球を立体再現したものです。『地球は青かった』これは大昔の人が残した言葉ですが、確かに目を奪われるほど青く、美しい……それが私たちの星、地球です」

 

「これは土星です。土星は地球の周りを回っていることで有名ですが、このリングのようなモノはなんでしょう?」

 

「ハイハーイ!大きなドーナッツ!」

 

 ゴン太ェ…………

 

「中々ユニークな答えですね!でも、残念……えっと、じゃあキミ!」

 

 周りを見渡すが、案内の人が指す先にはボク以外誰もいない。

 

「この、わっかは何で出来ているでしょうか?」

 

 …ええっと。この体に憑依?したときに流れて来たスバル君の記憶に確かあったような……

 

「……土星のわっかは、小さなチリや氷などが集まって、わっかみたいに見えています……だったかな」

 

「お見事!大正解でーす!」

 

 …フゥ、ていうかテンション高いなこの人……

 

「やるじゃないの!」

 

 委員長さんが話しかけてくる。どうやら引きこもりが土星に詳しいとは思っていなかったらしい。まぁ、当たり前だよね……

 

「ちょっとは見直した?」

 

「……アナタねぇッ!」

 

 …このツアー、以外と楽しいな

 

「……」

 

 天地さん?

 

「お次はこちらです……流星群ですよ、ロマンチックでしょう?」

 

「うわぁ、ステキ!」

 

「委員長さんにも素直な部分があったんだね」

 

「…………ッ!!」

 

 あ、またキレてる……

 …だって委員長さん、いじりやすいんだもん……

 可愛いし。

 

「でも、確かに凄いな……」

 

「フフフ、どうだい?スバル君……中々いい笑顔しているよ」

 

「え、そうですか……?」

 

「やっぱりキミは先輩の息子だよ……宇宙のこととなると目の色が変わるもの」

 

「(それは、いつか宇宙にダイゴさんを連れ帰りに行くから、かな……あかねさんを立ち直らせるために……!)そうですか……?」

 

「次にお見せするのは……

 

『白鳥の舞です』

 

「そう、白鳥の舞です……ってそんなのはないわよ…!誰、今の声は…?」

 

 ブフッ!思わず笑っちゃったよ……このスタッフさん、ノリ良すぎない……?

 

『こっちですよ』

 

「う、宇田海くん?」

 

 って、ええっ!?

 

「バ、バカな!宇宙服も着ずに……」

 

「宇宙服なんて必要ありませんよ……私は新しく生まれ変わったんですから……」

 

 …え、それ理由になってるの?

 あ、変身した……

 

「キャーッ!」

 

「か、怪物ですッ!」

 

「あれは……」

 

「(ああ、おいでなすったな!)」

 

「う、宇田海君!一体どうしたんだ!?」

 

「どうした、ですって?……よくもそんなコトが平気で言えますね……人のコトを裏切っておいて……ッ!……私は、天地さん、あなたに罰を与えに来たんですよ。………さぁ、見るといいです!」

 

「やばい!スバル、ヤツから目を離せ!」

 

「もうやってるよっ!」

 

「ハッ!」

 

 …多分後ろの疑似宇宙装置の上で踊ってるんだろうな………

 

「な、なんだ?」

 

「あれは、白鳥の舞?………ア、アラ?変だわ……」

 

「カラダが……」

 

「勝手に………」

 

「うわぁぁぁ!」

 

 皆さんのコンビネーションに脱帽。そしてゴン太ェ……

 

「かかりましたね………」

 

「さぁ、チカラ尽きるまで踊り続けるがいい!」

 

「どうしたって言うんだ、宇田海君!こんなコトしてどうする!?」

 

「………わかったんです。裏切りこそこの世の本質だって……ホント、今更ですよ……直にその宇宙服の酸素は切れるでしょう。……それまでこの宇宙をさまよって下さい、踊り狂いながら……私が受けた苦しみに比べたら、まだ楽に決まってる」

 

「う、裏切り?苦しみ?一体なんのコトだ!説明してくれ!」

 

「そうやって、そうやって心配するフリしてまた私を裏切るんです……もう騙されない!」

 

 疑似宇宙装置の電脳に入った……

 

「ここから、ゆっくり見学させてもらいます……死の踊りを…ね」

 

 そう言って宇田海、いや、キグナス・ウイングはスクリーンに映りこんだ。やっぱり生物的で気持ち悪い…

 

「クソッ!……アイツはキグナスのやつに取り憑かれたのか……!」

 

「キグナス…白鳥?」

 

「ああ、白鳥座のFM星人だ………ヤツの踊りを一目でも見るとつられて踊りだしちまうんだ。……踊りを解くにはヤツを倒す以外に方法はない」

 

「そっか………キグナスは?FM星人としては強いの?」

 

「以前のオックスや、ウルフのようにパワーに優れているわけではないが、ヤツには羽がある。………機動力は高いハズだぜ。……正直、アイツらより遣りにくいハズだ」

 

「………やるよ、やらなきゃみんな死ぬ。………それに偶々今回は行き先に現れたけど、アイツもロックの『アンドロメダのカギ』を狙って追ってくるんでしょ?なら、電波変換に馴染んでいない、今が一番だ………それに軽口を叩ける相手が死ぬのは困るしね」

 

「フン!よく言った!………オレたちのチカラをあの鳥野郎に見せてやろうぜ!」

 

「うん、ベルセルクの雷撃で焼き鳥にしてやろう!」

 

 さて、ウェーブホールを探さないと………




ゴン太ェ………

感想・評価、お待ちしております。

委員長いじりが楽しくなってきた私がいる………(愉悦)

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