星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 端的に言って、ムー大陸は荒廃していた。

 高い技術力の産物らしい建築物は所々崩れ落ち、辺りにはもはや物言わぬ石像と化したエランドが乱雑に捨て置かれている。

 それらはこの地で激しい抗争が起こったことをはっきりと匂わせていた。……しかし、どこか物悲しい。

 そんな文明の末路とでも言うべき場所に僕達は今、乗り込んでいる。

 

「ここがムー大陸……」

 

「何だか寂しい場所、だね」

 

 普段から『他人』を感じる機会が多い、彼女だこその言葉だ。

 人が暮らしていた確かな名残を見せながら,亡骸の気配すらないムー大陸の惨状は一際寂しく見えたのだろうか。

 

「寂しいってより、妙な感じだぜ。あちこちボロボロになってやがる……ただ封印中の年月で痛んだにしちゃあ、不自然なくらいにな」

 

「じゃあ、封印される(こうなる)前に何かがあった……って、こと?」

 

「ああ。十中八九、戦争の類いだろうな。しかもこの荒れ具合……推測だが、使われたのは電波兵器の類いだぜ」

 

 うんざりしたような口調でロックが語った。

 考えてみれば、この地球には今よりずっと前から電波兵器が存在していたということになる。

 流石にムー帝国が栄えていた頃からアンドロメダ級の兵器があったとも思えない。

 もし、ムーの文明が現在まで途絶えずに発展し続けていたとすれば……攻め込まれていたのは、FM星側だったという可能性すらある。それを考慮すれば、ロックとしても生きた心地がしないのは当然だ。

 

「ポロロン……真面目にやっていては長くなってしまいそうだから、歴史の考察はここまでね。とりあえず、今は先に進むことが先決よ。オリヒメが最深部にいるのなら、まずは内部に繋がってるルートを探しましょう?」

 

「だな。考えたって、向こうが道案内してくれるわけでもねぇ……っとオイ、スバル。通信みたいだぜ」

 

「ホントだ。しかも音声通信。誰からだろう……はい、もしもし」

 

 まさか、オリヒメからってことは無いよね……?

 そんなあり得ない想像を浮かべながら、回線を開く。

 しかし、飛び込んできたのは聞き慣れたあの声だった。

 

『やっと繋がったわ!スb……いえ、ロックマン様!』

 

「委員長!?……どうして急に?」

 

 なんと、通話の相手は委員長だった。

 流れてきた声に、側で聞いていたハープ・ノートも目を丸くした。

 どういうことだ……?

 

『ワタシ達もあの放送を聞くために外に出ていたんだけど……ムー帝国の国民を募集するとか言い出した辺りから、おかしなことを言い始める人達が出てきたのよ!自分のことばっかりな人もいて……建物に逃げ込もうともしないわ』

 

 そりゃそうだ。

 誰だって、子供一人があの物量に対応出来るなんて思わないだろう。

 しかも、海中に大穴を空けるという芸当すらやって見せた後だ。

 それならいっそ……と、なる人が出るのは予想に難くない。

 ただ、あの宣言の内容なら相当数が試練から降りそうなものだけど……。

 

「そんな!だって外にはまだ電波体が……危険じゃない!」

 

『その声……アナタも無事だったのね?良かった……』

 

「って、人の心配をしてる場合じゃないでしょ!……委員長達の避難は?」

 

 委員長達が外に出ていたなんて、とんだ想定外だ。

 声色からして、三人とも直接的な被害はないんだろうけど……。

 しかし、返ってきたのは想像以上に悪い報告だった。

 

『その……実はまだ、出来てないの』

 

「なっ……何だってそんなことになってるんだ!?」

 

 嘘だろ!?

 あの宣言を委員長達が聞いたなら、絶対にまっすぐ屋内へ逃げ込むハズだ。

 向こうは、わざわざ建物に被害は出さないと言ってくれているのに。

 

『実は……』

 

 逸る口調で告げられた委員長達の現状は、考えたくもないようなものだった。

 まとめると、コダマタウンのムーの電波体達が現れたのは委員長のマンションのすぐそば。そのせいで、委員長の部屋に向かうことが出来なくなった。

 仕方が無いのでキザマロかゴン太の家に向かおうとしたら、既にムーの電波体達は建物周辺に目を光らせていた、と。

 今は、同じように逃げそびれた人達と固まって行動しているらしい。

 ……酷い状況だ。

 

「でも、固まって動いていたらムーの電波体達のいい的じゃないか!」

 

『幸い、警察が各地にガードマンのマテリアルウェーブを派遣しているから、今はそれに守ってもらいながら学校を目指してるわ。あそこなら、大人数でも問題無く収容出来るでしょうし。でも、例の試練から降りたくないって人達が抵抗してて……』

 

「何だよそれ……」

 

 こんなんじゃ僕達、地球を守りたくなくなっちゃうよ!本当に!

 霧は出ていないが、外に残ろうとしている人達はきっと、頭に霧がかかったように混乱しているのだろう。

 

『だから、そっちの対応にもガードマンの戦力を割いちゃってて……正直、ギリギリの状態ね。この状態もいつまで保つか……』

 

 人が集まっているんじゃ、嫌でもムーの電波体の注目を集めてしまう。

 そもそも、逃げようともしないんじゃ事態が改善する可能性も何も……

 

「っ!どうすれば……?ここからじゃ、助けるも何も……」

 

 こんなことならいっそ、アンドロメダの時みたいに、ハープ・ノートを防衛戦力として地上に残してくるべきだったか?

 でも、一人いたところで圧倒的物量はカバー出来ないだろう。最悪、デリートされてしまう可能性すらある。

 それはダメだ。認められない。許容なんて出来ない。

 だけど、どうする?どうすればいい?どうすればすべてが都合良く進んでくれるっていうんだ?

 ……そんなもの、あるはずがない。

 ちくしょう。ああ、自分の無力さが呪わしい。

 

『むむむ……流石に、この状況でアナタ達に何とかしてもらおうってのは出来ない相談よね。……OK、わかったわ。こっちは自力でなんとかしてみせる。アナタ達は……先を急いで!』

 

「いやいやいや!自力で何とかって!そんなの出来るわけ……!」

 

 ほとんど暴徒と化しているだろうに、説得なんて聞くわけがない。

 最悪、委員長達に危害が及ぶ可能性だってある。

 

『何とかしてみせるわよ!……取り敢えず、ワタシ達だけでも説得を続けてみるつもり。ロックマン様達が必ずなんとかするから、皆で協力して乗り切ろう、ってね。だからアナタ達は、早くあのオリヒメとかいう悪の親玉をとっちめてやりなさい!』

 

 止めようにも、既に委員長の声色には強い決意が全面に押し出されていた。こうなった委員長は、件の暴徒より他人の話を聞き入れやしないだろう。

 諦めと僅かな期待がないまぜになって、乾いた笑いが僕の口から溢れ出てきた。

 

「……あはは、さすがは委員長。こんな時でも委員長してる」

 

『何?喧嘩なら言い値で買うわよ?』

 

「申し訳ありませんでした」

 

『よろしい。じゃあ通信を切るけど……二人とも、頼んだわよ』

 

「任せて!」「りょーかい!」

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 

 通信を切った後、僕達はひとまずムー大陸内部へと繋がるルートを探すことにした。

 大陸と言うだけあって、これまでのどんな電脳よりも広大だ。たとえまっすぐ直進したとしても、中枢にたどり着く前に日が暮れてしまうだろうこと請け合いである。

 ……つまり、ワープホールのようなショートカットがないか探していたのだ。

 

「さて、どうやって内部に忍び込むかだが」

 

「いや、忍び込むも何もないでしょ……」

 

 どうせ向こうはこっちの動向なんて全部お見通しなのだろうし。

 

「……だよな。ってことは、正々堂々正面突破しかないワケだ。と、すると……」

 

「アレしか、ないよね?」

 

 ハープ・ノートが指し示したのは、異様な雰囲気を放っている壁だった。

 近寄ってよく見ると、青いバリアを連想させる半透明の壁には何かの文字を書けと言わんばかりのスペースがある。

 きっと、この大陸中を走り回ってムー文字を集め、正しい順番で並べろと言いたいのだろうが、あいにくとそんなことに費やす時間はもうあまり残されていない。

 

「コイツを正規の手段で解除するのは骨が折れそうだぜ……」

 

「そんな……ハープ、どうにかならないの?」

 

「見たところ、対応したパスワードを入力出来るみたいね……ってことくらいかしら。でも、今回のワタシ達はあまり周りの被害を気にする必要がないわ。ポロロン……なら、手荒だけど確実な方法を採るべきね」

 

「手荒って……」

 

 軽く調べてみると、この壁自体はただの硬い壁らしいことがわかる。

 これがギミックによって対象を転移させるものだったなら、おとなしくこの大陸を駆けずり回る羽目になっていたのだろうが。

 

「どうだ、いけそうか?」

 

「……うん。よかった、これなら何とかなりそう」

 

 ベルセルクのカードを読み込ませ、その鎧を纏う。

 多少強化率は落ちているが、概ね問題無く使えそうだ。

 ……これならッ!

 

「ちょっと、何してるの!?」

 

「……危ないから、下がってて。やるよ、ロック」

 

「おう!思いっきりブチ込んでやれ!」

 

 右手に握りしめた大剣を内側に引き、全身に沸き上がるチカラを巡らせる。

 ───雷光一閃。

 鞘がないので居合い斬りとはいかないが。それでも支障なく出せる中では最高のスピードで切り払う。

 

 手応えは……十分だ。

 

「……うわぁ、これはまた見事にスッパリ斬ったねぇ……」

 

 ハープ・ノートが半分呆れ気味に言った通り、強固な壁として侵入者を阻んでいたであろう青い障壁には見るも無惨な傷跡が出来ていた。しかし、これでは人が通るにはまだ小さい。

 なので、出来た斬痕に大剣を突っ込み、全力の電撃を流し込む。

 すると、電撃の負荷に耐えられなかったのか、障壁はバチバチ火花を立てながら解けるように消えてしまった。

 

「こんなとこで止まってられねぇからな。ガンガン進んでいくぞ」

 

「化けて出てきたり、しないよね?」

 

 こじ開けたセキュリティの先に続いていた通路を進みながら、身を搔き抱いた彼女がそう呟く。

 

「えっと……今は、生きている人のことだけ考えようよ」

 

 そもそもウィルス自体、化けて出てきたようなものでは……?

 数え切れない程の残留電波を狩ってきた身としては、今さらそういうことに頓着しても仕方ないと思う。

 今は、どれだけの人を生かすことが出来るかの瀬戸際であるのだし。

 

「……だよね」

 

「オイ、奥に何かあるぞ!」

 

「……ッ!?」

 

 身構えつつも、薄暗い通路を抜けた先には異質な空間が広がっていた。

 それなりの面積を誇る中心の広場から、無数の通路が枝を伸ばしている。

 また、壁中の至る箇所に収納スペースが設けられており、内部には比較的状態の良いエランドが収められている。

 まさに、『兵士の間』と言ったところか。

 

 だが、それら全てを置き去りにするほどの存在感を放つものが僕達の眼前にはあった。

 

「驚いたな……コイツはハイド達が使っていたシロモノにそっくりだ」

 

 そう、古代のスターキャリアーである。

 僕の予想が正しければ、この中には……

 

「って、オイオイオイ……コイツ、なんか急に光り出したぞ!?」

 

「きゃあっ!?」

 

 古代のスターキャリアーが放った閃光が収まると、雪男のモチーフを持った一体の電波体がこちらを睨みつけていた。

 体の随所を覆うプロテクターを、不定形な電波の流れが纏ったような姿。イエティだ。

 

「侵入者を阻むムーの障壁を、力尽くで破ったか……成る程、雑兵(エランド)では相手になるべくもない。ラ・ムー直々に命を下されるのも、納得といったところだな」

 

「……オイ、お前。その姿から察するに、ヤエバでゴリと電波変換していたヤツのようだが……」

 

「それは私とは別の存在だ。何故なら、我々はいくらでも代えがきくからな。別の個体と勘違いされるのが、玉に瑕だが」

 

「そうだ、オリヒメのヤロウに見せられた映像でも、お前と同じような姿をしたようなヤツが何体もいたな。だが、いくらでも代えがきくってのはどういうことだ?」

 

「簡単なことだ。我々は無限に生まれ続ける。ラ・ムーがいる限り、な。それ故に……ふむ、ラ・ムーより取得した貴様達の言葉で言うならば、まさに焼け石に水と言ったところだ」

 

「ラ・ムーだと?」

 

「……さて、これ以上語ることを、私は許されていない。故に……エランドよ!」

 

 イエティの言葉に応えるように、一体のエランドが姿を現す。

 

「何をするつもりだ……?」

 

「……電波変換!」

 

 出現したエランドに被さるようにイエティの体が溶け合っていく。

 完全に一つとなった二体から、やがて強靱な四肢が形作られ、プロテクターで覆われていく。

 イエティ・ブリザード。かつてヤエバリゾートで対峙した時よりも、明らかに強いとわかる。

 

「エランドを媒介に電波変換だと!?」

 

「成る程……あの妙な周波数は、ムーの電波体との親和性を高めるためだったのね。ポロロン……ミソラ、気を引き締めていくわよ!」

 

「りょーかい!」

 

「スバル!オレ達もやるぞ!仮面ヤロウとやりあった時のダメージはもう引きずってねぇだろうな!?」

 

「ばっちり平気!」

 

「ラ・ムーは言われた……侵入者は全て排除せよ、と」

 

 ゴリを素体にしたときよりも一回りは大きな体を揺らしながら、イエティ・ブリザードはそう言い放つ。

 よくよく見ると、プロテクターの随所に大小様々なキズが目立つ。

 歴戦の勇士、というわけだ。

 相手にとって不足はない……が、今は一秒でも早く先へ進むことが先決だ。果たして、正面対決に意味があるのだろうか……?

 

「ラ・ムーだかラム酒だか知らねぇが、立ちふさがるってんならブッ倒す!」

 

 ……っ!今は、目の前の障害を取り除かないと!

 

『ウェーブバトル!ライドオンッ!』

 

 




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