ーー疑似宇宙の電脳・最深部ーー
「ウェーブバトル、ライドオン!」
バトルスタートとともに、キグナス・ウイングは、その代名詞とも言える背中の翼、『キグナス・ウイング』を大きく羽ばたかせ、空中に滞空した。ウォーロックアタックで届く距離でもないし、ロックバスターでは、いつまでかかるかわからない!
…ゲームのようには行かないか……!
「ワタシの行為を邪魔すると言うのなら……アナタにも痛い目に遭ってもらいましょうか……!」
…そう言って背中の翼に生えている羽を発射してくる。
…あまり高精度ではないけど、誘導攻撃のようでこちらを追って来るのがわかる。
……しかし、これは思っていた以上にヤバイ!こちらの攻撃は届かないのに、相手の攻撃は通るなんて……
…ここまで、この電脳で手に入れたバトルカードは四枚、『ワイドウェーブ』、『サンダーボール』、『ジェットアタック』、『ゴーストパルス』……今までのバトルカードでは、上空で滞空しているキグナスに当てることが出来ない。
………この中で何か使えるカードは……
「(オイ、スバル!ベルセルクを使え!)」
「(ダメだ!ベルセルクなんて使ったらアイツに警戒されてしまう!……最悪、今よりもっと高度を上げられて、手が付けられなくなるかもしれない!)」
向こうがギリギリこちらの攻撃が届くかもしれない位置にいるのは、あの羽の射程があの辺りまでだからなんだろう。でなかったから、もっと離れているはずなんだ。宇田海は疑り深い性格……つまりは慎重だ。そんなヤツが、倒すべき邪魔者に対し、まずは安全圏を確保することは、簡単に予想できる。
…誰だってダメージなんて受けたくないんだから。それが戦闘初心者なら当然だ!
「(だからこそ……!)」
そう、だからこそ……向こうがこちらの排除を断念し、より高く飛翔される前に、倒す!
……この組み合わせなら!
「フフ……ウォーロック、そちらの攻撃は届いていないようだけど……?この豆鉄砲みたいな攻撃をチマチマ続けてボクを倒すつもりかい?」
「うるせぇ!スバルは勝てる……!何故ならオレの相棒ってヤツだからな……信じてんぜ!」
…ふふっ、ロックの信頼が厚くて困っちゃうよ。ホントにさぁ……
なら、見せてやるとしようか!ロックマンの真骨頂、多彩なバトルカードによる極められた汎用性を!
「まずは、コレだ!ロック!」
まずはワイドウェーブを発射し、キグナスに回避運動を強制させ、誘導する。
「ウオォッ!」
次に、ウォーロックアタックでキグナスのいる方向に突進パワーで跳躍する!だけど、キグナスの滞空高度にはまだ足りない……それ、今だ!
「ジェットアタック!」
ジェットアタックはその名の通り、左腕にジェット……まぁ、ロケットのような円錐形に似た推進機関を展開し、左腕に引っ張られる形で高速突進を行うバトルカード。このとき、バトルカードの使用者は発動中のみ僅かに滞空し、重力の影響を受けなくなる!
……そうじゃないと、左腕に推進機関とか、怖くて使えないしね。
「何ッ!この、高度まで……ッ!」
今さら慌てても、もう遅い!既に追撃のバトルカードはセレクトしている!
「ハアッ!」
あまり、正確に狙いをつけられないので疑似範囲攻撃のバブルフックを展開、キグナスに向かって腕を振るう。
「……ッ!?」
泡に閉じ込められたキグナスが、バトル開始時に居た、疑似宇宙コントロールシステムのあるウェーブロードのひらけた場所に墜落する。
…手間取らせやがって……!
「ハァッ!ハァッ!何だったんだ……アレは、バブル……!クソッ!動きを封じてワタシを引きずり落とすために……」
「考察してるとこ悪いけど、斬らせて貰うよ……天地さんとの話は、それからだ」
グラビティプラスがないので、再び飛翔する前に片付けなくては……!
…ベルセルクッ!!
「うおぉっ!」
サンダースラッシュ!
「グハッ!ウィングフェザーで攻撃を……」
サンダースラッシュ!
「グハァッ!!ダ、ダンシングスワンを……」
サンダースラッシュ!
「グゥッ……し、シタッパーどもを盾にして脱出する…!」
サンダースラッシュ!
「く、クソ……」
よし、今だ!ヤツはサンダースラッシュのマヒ付与で動けない……ト ド メ だ!
「これでぇッ!消えろォッ!」
ライトニングゥッ!エクスタァミネェトォォッ!!
「グハッ…や、やるね、ウォーロック……」
「う、うう……」
まだデリートされない……?
…こっちはリカバリー待機入ってるのに!
『…聞こえるかい?宇田海君……もうやめよう。……僕の話を聞いてくれ』
天地さん……説得フェイズ!?
『宇田海くん、キミは何か勘違いしてるよ……』
「…あ、天地さん……そうですか、躍りは解けてしまいましたか……」
こっち側から確認できる……皆ダンスをやめてるぞ!
『僕は人の発明を横取りなんてしない』
「ウ、ウソをつかないでください……ワタシは聞いたんですよ……アナタが子供たちにフライングジャケットを自慢しているのを……」
『それは違うわ!』
委員長さん!
『フライングジャケットは助手が作ったモノだ……天地さんはそう言ってました』
『よくできてるって、ほめてたぜ』
ゴン太!キザマロ!
「ウ、ウソだ……!そ、そうか……キミたちもグルになってワタシを騙そうとしているんですね……!」
『どうしたら……どうしたら、信じてくれる?僕の言葉を……』
「信じられるモノか……人の言葉なんて……そ、そうだ、こうしましょう……天地さん、これからワタシが証明してみせますよ、人なんて信じたらどんな目に遭うか……を!」
『どうするんだ?』
「…ヘルメット、脱いでください、今そこで」
「何だって!?」
『ヘルメットを脱ぐって……ここには酸素が無いのよ!』
スタッフの人が非難するけど、当たり前なんだよなぁ……気圧とかあるし……
「『今さっき、ワタシが酸素を充満させた』もしそう言ったら、信じてもらえますか?ワタシの言葉を……!」
『……』
『酸素を充満ですって?この疑似宇宙にはそんな機能、付いてないわ!』
「…昨日のうちに装置を取り付けたと言ったら?」
『ウソよ……』
「ほら、やっぱり。信じられないでしょう?信じられるわけありませんよ……ワタシがウソをついているかもしれないと……そう疑ってるんですよね……そうですよ!そういうものなんですよ!この世に信じていいものなんて何一つ、存在しない!ましてや、他人なんて……!!」
『ヘルメットを取るのか?』
「そうです、それだけのコトです。……でも出来ないでしょう?できっこないんですよ!」
『信じるよ、宇田海君……』
『ちょ、所長!?……ウソでしょ……?』
「(無理に決まってる!)」
『キャーーーッ!!って、あら?』
「!!!!!」
『……フーー、確かに酸素だ。……でもちょっと薄いぞ……まだまだ改良の余地はありそうだな、その装置』
『ウソ……ホントに酸素が……』
「バ、バカな……も、もし……もしウソだったらどうするつもりだったんですか?」
『そのときは、その時だよ。……でも、これだけは言えるぞ……僕はキミを信用してる』
「し、信用って……!たったそれだけのことでアナタは命をかけるというんですか!?」
『僕の知ってる宇田海君は、発明で人を死なすようなコトを絶対にしない』
「そ、そんな……」
『何度でも言う。僕はキミを信用してる。……だからキミもボクを信用してくれ!……って、このセリフ、ちょっと臭いか?フフフ……』
「…ウゥ」
「あんなの、信じちゃダメだよ……」
「コイツ、まだくたばってなかったのか!」
「(ダメだよ!ロック、ここは宇田海さんと天地さんに任せよう……ダメージを与えすぎると、宇田海さんをホントに殺しちゃうよ!)」
「チッ!」
「…ああやって、またキミを騙す気さ」
『宇田海君、一つ聞くが、なんでこの世にブラザーバンドがあるか……キミは知ってるか?』
「な、何を急に……そんなの便利だからに決まってるじゃないですか……!」
『…違うよ。……ブラザーバンドが必要とされる理由、それは……繋がりこそ人の本質だからだ』
「…!」
『キミの過去は知ってる。だから、キミが世の中に失望してしまうのもわかる。……でもそれが、この世界の全てだと思わないで欲しい』
「耳を貸すな!裏切りこそが全てだ!」
『もっとよく、目をこらすんだ……そうすれば、見えてくるはずなんだ!……裏切りとは違う、この世界の明るい部分が……!!』
『この世界は、そんな悪いもんじゃない!!』
『キミも、きっとそう思える!……僕の言葉を信じるんだ、宇田海君!』
「ううううっっっ!!!」
変身が解けていく……っ!リカバリー30!……間に合ったか……
「な、何で!!ギャーーーーっっ!!」
「元に、戻った……」
「心に巣食っていたキグナスを、自分の意思で葬ったんだろうよ……これが、人の意思が持つチカラか……中々侮れねぇな」
「ロック……」
『宇田海君!大丈夫か!?宇田海君!?』
『宇田海くん!』
「おい、騒ぎが大きくなる前にここからずらかろうぜ……コイツなら大丈夫だ。……いずれ目を覚ますさ」
「あぁ!」
ーー数時間後ーー
宇田海さんが目を覚ましたが、記憶は曖昧で、少し混乱してるらしい。
…でも、天地さんが言った、あの言葉ははっきりと覚えてるみたい。
『繋がりこそこの世の本質』って。
いい言葉だと思う。
…ボクはこの世界の人間と、本質的に繋がっているのだろうか……?
ーーアマケン外観ーー
「今日はすまなかったね、……危険な目に遭わせちゃって」
「そんなコトないですよ」
「まんぞく、まんぞく!」
「また、遊びに来てくれよ!」
「ええ、是非!それでは……」
号令らしきものを掛けた委員長さんたちの後ろを歩いていこうとすると、天地さんに話しかけられた。
「お母さんによろしくな!」
「……っ!ハイ!」
「あ、そうだ……『繋がりこそこの世の本質』というセリフ、実はある人から教わった言葉なんだ。……NAXA時代の僕の先輩……つまりキミのお父さんだよ」
「父さんが……」
「どうだろう?キミの心にも届くといいけど……あの子たちがいるなら、余計なお世話だったかな?」
「アハハ……ありがとうございました、では、ボクも帰ります」
「ああ、気を付けるんだぞ!」
「オーイ!」
…ゴン太の声がする……
「置いてくわよ!」
「あ、ちょっと待ってよ!……置いていったのかと思ったよ」
「ふふん!委員長がクラスメートを蔑ろにするはずないでしょう?」
「いいんちょう、ないがしろってなんだ?」
「自分で調べなさい!」
「アハハッ!……やっぱり面白いね」
「アナタねぇ……ところで、アナタ……さっきまでどこに居たの?……見当たらなかったような……」
ゲェッ!勘がするどい!
「…偶々あのダンスを見ずに済んだから、外に助けを呼びに行ってたんだ」
嘘はいってない、嘘は・・・
「そう、でも青いヒーローが現れて全部解決していったわよ?……結構ステキな感じだったわね……」
…照れ臭いなぁ。今までは誰かに戦った結果誉められたことなんてないし……
「そうなの?……実は着ていた宇宙服が破れちゃってさぁ……」
こんな日常も、ありかもしれない。
「あ、ところで委員長さんたちは大丈夫なの?無重力とはいえ、ずっとダンスし続けたんでしょ?」
「ええ、もうクタクタだわ……」
「委員長さんの白鳥の舞は綺麗だったからねぇ……何かやってたの?」
「……!……いえ、もう疲れたわ。帰って休みましょう……」
「そっか……あ、バスが来たよ」
…帰りのバスで、何故か委員長さんと隣の席になって、睡魔に負けた委員長さんの頭が肩にもたれ掛かってきたのはナイショだ……
いいニオイでした、まる。
感想・評価お待ちしております。
いよいよ次は、皆さんお待ちかね!そして作者的には難産決定の、ミソラちゃん邂逅回です……