星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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少し地の文を増やしてみました。

皆さんのありがたい評価により、日間ランキングに載り続けさせて頂いています。心より感謝を……




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 ーー翌日・星河家ーー

 

 目が覚める。昨日はあまり動かなかったためか、いつまでも布団に籠っていたい、なんて思うことはない。

 

「朝か……昨日みたいに居なくならないでよ、ロック」

 

「ククク……いいのか?あのオンナにまた会えるかもしれないんだぜ?」

 

「だから、茶化さないでってば……」

 

 ……昨日はロックが居なくて、久しぶりに一人で散歩できて、リラックス出来たハズなんだけど……

 最近はいつも側にロックがいるし、居ないと落ち着かなくなってきてるのかな……?

 

 ーーピンポーン!

 

「何かこの展開、前にもあったな……ロック、一応隠れておいて。五陽田さんだったら、ゴヨウされちゃうよ」

 

「何だそのゴヨウってのは?」

 

「相手をゴヨウし過ぎたあまり、牢屋にぶちこまれた哀れな守護者だよ……今度釈放されるらしいけど」

 

 ゴヨウ・ラリアットォ!

 

「……?警察もタイヘンなんだな」

 

「そうだね……捜査行為自体が犯罪にならないようにしなくちゃいけないんだもの」

 

 五陽田さんの捜査ってかなりギリギリだからなぁ……

 勘は良さそうなんだけど。

 

「へっ!あのオッサンだったらオレがおねんねさせてやるぜ」

 

 おねんねって……フフッ……!

 

 ピンポーン!ピンポーン!

 

「また、マナーのない人だな……母さんへの用事だったら大変だし、出ようか……」

 

 ……ノロノロと玄関の戸を開ける。……もちろんチェーン付きだ。

 

「はぁい、どちらさま?」

 

 ガチャッ!

 ……また足を入れて来やがった!……でもこれは五陽田さんじゃないな。……スーツを着ている。趣味悪いけど。

 

「ミソラ!ミソラは居ないか!?……ミソラはどこだ!?」

 

 本日未明、怪しげなスーツを着た男が無断で住居に侵入したようです。容疑者は自称響ミソラのマネージャーだと供述しており……なんて。

 

「失礼ながら、どちらさまですか?」

 

「あ、またやってしまった!おじさん、人を探していて、その……」

 

「そのミソラって人を探しているんですね?」

 

「何でそれを知ってるんだ!?ま、まさかミソラを匿ってるとかじゃないな……!?」

 

 話が飛躍し過ぎじゃない?……それだけ焦ってるってことかな?

 

「知りませんよ、そんなの。おじさんが自分でミソラ、ミソラって言ってたじゃないですか」

 

 興奮して我を忘れてたってことにしといてあげよう……

 

「おぉ、そうだったのか、それはすまなかった!……そ、そうだキミ、響ミソラをこの辺で見かけなかったか?キミも顔位はしってるだろう?」

 

「名前は知っていますが、歌を聴いたことがあるわけじゃないので、何とも……」

 

 嘘は言ってない。聴いたのはあくまでも演奏、だ。

 

「何!?ミソラを見たことがないのか!?……キミ、もっとテレビを見たほうがいいぞ!じゃないと、学校の会話についていけなくなるからね」

 

 …………不登校児ですが、何か?それにテレビ位見ているよ。この世界のことについて知れるからね。

 

 ……最近だと『危ない暴れん坊ウルトラ大将軍』が中々面白い。何やら200年以上前から続いているらしく、噂のモンドコロニウムレーザーの威力は冗談抜きで半端じゃなかった……大河ドラマのハズなんだけどね。

 

「キミのことはいいとして、ミソラだ!ミソラを早く見つけなくては……今日はライブだってのにドコ行ったんだよ!キミ、ワタシは響ミソラのマネージャーをやっている者だ。……もしそれらしい子を見たらワタシに教えてくれ!……それでは失礼した!」

 

 あぁ、忙しない人だったな!

 

「ミソラって、昨日のあの子だよね」

 

「オマエが一目惚れしてたオンナだろ?」

 

 だから違うって!

 

「……昨日演奏してた子だよ……まぁ、いいや。ロック、外に出ようよ」

 

「何だ?オマエもあのオンナ探しか?意外とミーハーなんだな」

 

 最近のロックはそういうのばっかり口達者になっちゃって……

でも、少し気になっているのかも。ゲームのキャラクターとしてではなく、この世界に血縁が居なくなった人間として……ボクにはあかねさんがいるけど、本質的には星河あかねの息子ではない。その記憶をもっているだけだ。

 

「違うって。BIGWAVEに行ってみようよ……昨日は行けなかったでしょ?」

 

「おっ、それもそうだな……じゃあ行こうぜ」

 

 ーーコダマタウンーー

 

 …………チュイン!チュイン!チュイン!

 

「ヘルプシグナル?」

 

 ヘルプシグナルって結構適当な理由で鳴らすヤツもいるんだよね。……以前のサッカーボールが良い例だよ。だから実はそんなに助けに行く人は多くない。それどころか、トランサーの設定で、ヘルプシグナルをキャッチしない設定にしてる人も居るんだよね。

 

「助けを求めてるってヤツか?たまには人助けってヤツに勤しんでもいいぜ、オレは」

 

 ロックも結構、何て言うの?慈愛の心を持つようになったよね。……昨日のほっとけばいいじゃないか、は忘れないけど。

 

「ふぅん。まぁいいよ、助けに行こう。……ウィルスバスティングとランニング漬けじゃ、変わり映えしないからね」

 

 ーー展望台ーー

 

 ボクたちは今、以前暴走した機関車の前にいた。こんなトコロに隠れるなんて……やはり普通じゃない……

 

「ヘルプシグナルはここから出てるね……誰か、いませんか?」

 

 ……機関車で遊んでて、足を挫いたとかだといいんだけど……あっ!……これ、ゲームの展開だったのか。

 

「あっ、キミは!……お願い!ワタシを何処かに匿って!」

 

 別にいいんだけど、プロ意識足りなくない?

 

「キミは、昨日の……響ミソラ」

 

「……うん」

 

 普段は溌剌とした笑顔を浮かべているであろう響ミソラが、俯きがちに首肯してくる。これはこれで庇護欲を誘いそうだけどなぁ……いや、違うな。そうじゃない。もっと深いトコロで、ボクは彼女に何かを感じている。

 ……これは……孤独?いや、当然か。FM星人は人間の発する孤独の周波数に引き寄せられる。

 それはこの世界に疎外感を感じているボクも例外では無かったんだろう。

 

「さっきマネージャーだって人がキミを探しに来てたけど……ライブがあるんじゃないの?」

 

「ライブなんて中止になればいいんだ……!あの人の頭の中には、お金のコトしかないのよ……お願い、ワタシ、帰りたくないの。何処か人目のつかない場所に連れていって……」

 

 ・・・・・・・・・。

 

『ミソラーー!!どこだー!!』

 

「ヤバッ!こっちに来て!!」

 

 …………ミソラ……ちゃんに連れられて機関車の影に隠れる。

 ……ここ、ピッチングマシンの時も思ったけど、結構死角になるな……

 

「くそ、何処に行ったんだ……ライブが中止になれば、オレの首が飛んじゃうよ……何が何でも見つけ出してやる……!」

 

 誰に言ったのか、まだ諦めていない旨を喋り、マネージャーさんは行ってしまった。あのマネージャーさんの首が飛ぶのか……まぁ、担当歌手は大切にすべきだよね。

 

「……行ったよ」

 

「お願い……何処かに連れてって……ワタシ……歌いたくない……」

 

 …………アイドルで騒ぎそうにないのは……天地さんか、宇田海さん辺りかな?まさか家に招くわけにもいかないし……いいスキャンダルだ。

 

「…………そうだね、知り合いの研究者なら匿って貰えるかも?」

 

「(ヤケに親切じゃねぇか。オマエらしいっちゃあ、らしいが……やっぱりホの字か?)」

 

「(……恩を売るってわけじゃないし、人助けは悪いコトじゃない。真剣に頼んでいるなら、尚のことさ。それに、FM星人を引き寄せるかもしれないんだろ?なら、わかる場所にいたほうが対処しやすいよ)」

 

 …………ゲームでスバル君が、どこか他人として割りきれなかったのが、今ならわかる気がする。

 見ていてとても心に響くんだ。自分の孤独や、寂しさが胸を圧迫するようで……だから、かな。

 もうボクは、あの世界で経験したコトを思い出すことも出来ない。ただこれはこう、っていう認識があるだけだ。その認識も、日々実感として感じられなくなってくるのが怖い。

 そもそもボクは、本当にあの世界にいたのか……?

 普段ならウィルスバスティングで紛らわすんだけど……

 

「……誰と話してるの?」

 

 …………これ以上ロックと話すのはマズイか……

 

「……何でもないって。……ただの一人言だから!……それじゃ、案内するね……あ、マスクを着けてフードを深く被ると他の人にバレ難いかも?」

 

「……うん、ありがとう」

 

 ぐぬぬ、元気なイメージがあったから、何だか調子狂うな……さて、天地さんに連絡しないと……

 

 でも、ボクはこの時油断してしまった。

 

 

 

 

 

 

「………………………………………?アレは……ミソラちゃん?」

 

 …………バスに乗るところを見られるとは、思っても居なかったんだ!ファン恐るべし!だったね。

 

 

 ーーバス内部ーー

 

 幸いにして、ライブまでの時間はかなり余裕があるようなので、天地研究所までバスで行っても開始時刻までは時間があった。

 バスの中では、バレないようにするのが難しかったから、フードを深く被ってもらい、マスクをして、響ミソラに成りきっている少女を演出してもらっていたんだけど……

 

「(何か、見られているね)」

 

「(……ホントごめん。こんなことに付き合ってもらっちゃって……)」

 

「(いいよ。……何だか他人事に思えないんだ。どうせボクは不登校だしね)」

 

 きっと彼女の境遇もあるのだろう。

 血の繋がった、ただ一人の肉親を亡くし、自分がまるで世界に取り残されたように感じているのかもしれない。

 そんな境遇の彼女に、ボクは自己投影しているのかもしれないな……

 

「(そうだったの?あんまりそんな雰囲気には見えなかったけど……)」

 

「(ちょっと理由があって。……でも、クラスの人が連れ出しに来てくれるよ)」

 

「(……そうなんだ。そういう人、ワタシにはいないからなぁ……)」

 

「(アハハ、何だか意外だね)」

 

「(そうでもないよ。あのマネージャーさんがたくさんお仕事を持ってくるから、あまりそういう機会をつくれないってのもあるけど……)」

 

「(大丈夫、いつかそんな人が出来るさ……なんて、連れ出しに来てくれる人たちに、心を開いていないボクが言えることじゃないけどね……)」

 

「(…………………………)」

 

「(どうしたの?)」

 

「(いや、さっきから周りの人が、ワタシたちを生暖かい目で見てくるんだけど……)」

 

 あれ?なんだろう、この雰囲気……

 

「(なんだろうね?)」

 

「(さぁ?)」

 

 そんな感じでアマケンまでの時間を過ごした……

 

 ーーアマケン・研究室ーー

 

 天地研究所は今日の一般解放はしていないらしく、職員の人たちの不思議そうな目線を浴びながら、足早に天地さんの研究室に向かうことになった。

 

「あ、天地さん。この子がさっき言ってた匿って欲しい子です……出来ますか?一晩でいいんですけど」

 

「スバル君からそんなお願いをされるとは、ちょっと驚きだな……家出でもしたのかい?」

 

 この反応は、響ミソラを知らない?

 研究に没頭し過ぎて世間には疎いのかな?そもそも響ミソラは同年代の少年少女に大人気!って話だったから、大人の世界ではそこまで有名ではない……?うーむ、わからない……

 

「……みたいなものです……だ、ダメですか?」

 

「フム、何か悩みがあるみたいだね?……いや、言わなくていいよ。人間生きていれば何かしらの悩みは抱くものさ……僕もキミぐらいの時に何度か家出をしたことがある。今日はゆっくりしていったらいい」

 

 天地さんの頼りがいが凄い。きっと職場でも頼りにされてるんだろうなぁ……。

 

「……ホントですか?ありがとうございます!」

 

「だけど、明日になったらちゃんと家に帰るんだぞ……キミが思っている以上に親御さんはキミを心配しているんだからね」

 

「……ハイ」

 

「スバル君、キミも泊まっていくかい?」

 

 おおぅ、ボクに振ってくるとは……

 

「い、いえ、母さんに心配させたくないので……」

 

「スバルって言うんだ……助けてもらったのに、名前も聞いてなかったね……ゴメン。それと、アリガト……」

 

「どういたしまして。ボクもキミと話すのは、結構楽しかったよ」

 

 ……これは本当だ。しかし、最近の小学生のコミュ力はバケモノか!?

 あまり知らない人とよく会話が続いたもんだ……これで孤独の周波数放ってるって、凄いな……いや、表面的なものなのかな?

 

「ふふっ……ワタシも楽しかった。気をつけて帰ってね!ケガでもしたら、悪いから……」

 

「二人はもう結構仲がいいんだね……そうだ。いい機会だから、二人でブラザーバンドを結んでみたらどうだい?スバル君、キミのお父さん、いつも言ってたよ……『一人じゃ解決出来ない問題も、誰かと繋がれば乗り越えられる。……誰かが自分を強くしてくれるし、自分も誰かのチカラになれる。この星の全ての人がブラザーバンドで繋がって、お互いをチカラづけ合いながら生きている世界になればサイコーだ』ってね」

 

 …………………………それは。

 

「それは……」

 

 実のトコロ、ちょっと怖いんだ。だってブラザーバンドを結んで、アビリティが発現するトランサーは良いけど、スターキャリアー以降は、キズナリョクが表示される。だから、ボクと相手がお互いをどう思っているのか、数値化されてしまうんだ。

 それで自分が、やっぱり一人だって認識するのが怖い。

 きっと、ボクとのブラザーバンドで発生するキズナリョクはとても低いのだろう……

 

「フフフ、まぁいいじゃないか。ちょっとだけ考えてごらんよ」

 

「…………少し、考えてみます」

 

 こんなボクが、誰かとブラザーバンド、ねぇ……

 委員長さんとの絡みは表面的なものだし……

 でも。良い機会なのかもしれないな。

 ……ミソラちゃんの境遇を利用するようで気が引けるけど。

 

 ……いつかは、この心のことも話さなくちゃいけない。

 その時、ボクはどれだけあの世界に実感を持てるのか……?

 

「じゃあ、よろしくお願いしますね」

 

 さて、そろそろ帰ろう、コダマタウンへ……

 

 ーースバル退出後ーー

 

 スバル君がエレベーターを待っている姿を確認しながら、家出少女に話かける。もちろん声が聞こえないように小さくして、だ。

 

「あんまり悪く思わないで欲しい。あの子はある理由で他人と深い関わりを持つことに、少しだけ臆病になっているんだ……」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

「ブラザーバンドか……」

 

 天地さんの研究室の出口で、エレベーターを待ちながら考えてみる。

 

「へっ!ホントはブラザーになりたいんじゃねぇのか?」

 

 どうなんだろう。……ミソラちゃんは、こんな紛い物のボクを受け入れてくれるのだろうか。

 ………………っ!何だ!

 

「……………………あっ、停電!?」

 

「一体何が起こったんだ!?緊急用のバックアップ電源はどうしたんだ!?」

 

 天地さんの声で我に帰る。

 

「ククク、これはタダの停電じゃないぜ……」

 

「タダの停電じゃない?」

 

 ……どういうこと?まさかウィルス……?

 いや、FM星人の襲撃の可能性も……でも、ミソラちゃんはここにいる……と、いうことは。

 

「ビジライザーを掛けてみろ」

 

「うん」

 

 そうだ、こういうときはビジライザーだ。……何かわかるかもしれないし。

 

「……何か、プラズマボールみたいなのが浮いてる……?」

 

「いや、ヘイジとかいうサテラポリスのオッサンが言ってたゼット波ってやつだ!……ゼット波が一ヶ所に集まるとあんな感じになってウィルスを生み出す……放っておけばFM星人を呼び寄せちまうかもしれないぜ。……何にせよ、あのプラズマ……いや、デンジハボールはぶっ壊さないかぎり消えないな……へっ!新種のウィルスがいるかもしれねぇぜ、スバル!」

 

 ……そういうことなら!

 

「ロック、このデンジハボールがいくつ発生したかはわかる?」

 

「そうだな……ざっと5つってトコロだ。……全部潰さなきゃあ、停電は直らねぇ……へへっ、腕が鳴るってヤツだぜ!」

 

 よぉーし!久々に楽しそうな展開が来たぞ!

 …………最近はちょっと考え込みすぎなんだよね。

 それじゃ、まずはウェーブホールを……っと、その前に……

 

「キミは大丈夫!?」

 

 ミソラちゃんに声を掛けておく。勝手に解決したら、何だか変だしね。

 

「……暗いところは苦手なの……っ!コワいよ……!」

 

「スバル君こそ、大丈夫かい!?」

 

「大丈夫です!バトル用のナビを持っているので偵察に送ってみます!……じっとしていて下さいね!キミもだよ!」

 

 これで一応は動ける言い訳になっただろう。

 後はとっとと解決するだけ……お楽しみは、これからだ!

 

 

 




OSSネタありです。

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ここから難産になりそう……

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