星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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オリジナル展開、全開です。

難しいですね、やっぱり。


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 ーーアマケン・研究室ーー

 

 …………マズイぞ……。ウェーブホールが近くに、ない。

 ……エレベーターは当然止まってる。生身のボクが使えるのは、屋上への階段だけだ。

 

 ーーアマケン・屋上ーー

 

 ……ここがアマケンの屋上か。……風が気持ちいい。今日は晴れやかな天気で何やらポカポカしている。

 ……眠気を誘いそうな、何と言うか昼寝日和ってヤツなんだろう。

 

「さて、取り敢えず人目を避けてみたけれど、どうしようか?」

 

「そうだな……今日は一般解放はしていなかったハズだから……見たところ周りに人の目はなさそうだ」

 

 ……そりゃ屋上に人は居ないだろうさ。だって天地さんの研究室と繋がってるんだもの。

 ………………いや、周りにって、まさか………………!?

 

「まさか、アマケンの外にあるウェーブホール目掛けて飛び降りるつもり!?」

 

「おうよ!ある程度……つっても空中なら5~6メートルの高度で電波変換は出来るぜ」

 

 ……無茶言うなよォッ!ボクにヒモなしバンジーの経験はない!

 

「無理でしょ……ロックは飛べるからいいけどさぁ……」

 

 ……もうロックをトランスミッションして送り出したほうがいいんじゃなかろうか?

 いや、でも信じて送り出したロックがデリートされました……じゃ、地球滅亡待ったなしなんだよなぁ……

 

「さぁ、準備は出来たな!?いくぞ!」

 

 ……失敗しませんように……

 

「いざ……南無三ッ!」

 

 フェンスから飛び降り、いや、研究所の壁を蹴って加速するっ!……何とか行けそうか……

 

「準備は!?」

 

「もちろん……行くよ!電波変換!星河スバル、オン・エアァッ!」

 

 ……もう、こんなダイナミックウェーブインはしたくないよ……

 

 ーーアマケン外観のウェーブロードーー

 

 ………………何とか、成功したようだ。実際他に方法がなかったからね。仕方ないね(泣)

 

「あとで返しておかないと……」

 

 因みに、電波変換時に所持していたモノはある程度収納出来るらしい。収納っていっても、電波変換を解かないと触れるようにはならないので、注意が必要だ。

 勿論トランサーやバトルカードの類いはその限りではないが。

 

「よし、アマケンの電子機器にウェーブインして内部に侵入しよう」

 

 やっとデンジハボール退治か……

 

 ーーアマケン内部・科学館ーー

 

 ……やっぱり一般客が来ないと、静かでちょっと不気味だな…………なんか、あの白鳥擬きの残留電波でも出てきそうだ。……気をつけないと。

 

「……………………おい、スバル!あったぜ、アレだ!」

 

「……何か、っていうかウィルスがいそうな感じがするね」

 

 うーん、デンジハボールを発見したけど、どうやって破壊すればいいんだろう……

 

「で、どうすればいいの、ロック?」

 

「そうだな……バスターをブッ放してみるか」

 

 ……そんな感じでいいの?ならバスターじゃ足りねぇ!

 レーダーミサイルをぶちこんでやろうぜ、ヒャッハーッ!

 

「レーダーミサイルでいくよ!」

 

 ーーピピッ!……ドカァァン!

 

「ふふっ、汚い花火だね」

 

 ウィルス、即、散!

 

「やり過ぎだろって……オイ、まだ生き残りがいるぞ!?」

 

 チッ、無属性じゃなかったか……おっと、これはビリーエースのGタイプだ。ここまでしたのに、既知のウィルスか……

 

「片付けるよ!」

 

「ウオォォッ!」

 

 ウォーロックアタックを発動!相変わらずノロノロ飛行、というよりは浮遊しているビリーエース(G)に一気に突進し、ロングソードを振り抜く。確かに斬り裂いた手応えを感じ、バックステップで距離を………いや、まだいける!

 

「疾ッ!」

 

 袈裟に斬り裂いたビリーエースを、逆袈裟で斬り返す。

 ……普通ならここで体制を立て直すんだけど、ビリーエースホント遅すぎんよ……

 

「……終わっちゃったね」

 

 リザルトでゼニーがトランサーに振り込まれるのを確認して、ロックと一緒に溜め息を吐く。……最近手応え無さすぎない?

 

「あっけねぇな……あと4つだぜ」

 

 ……この調子だと他も似た構成のウィルスな気がする ……

 

 ーー十分後ーー

 

「セアァッ!」

 

 ナイナイのGタイプを、ロックバスターで蜂の巣(誇張)にして倒すことに成功し、やっと人心地着く。

 

「これで、5つか……結局たいしたウィルスはいなかったね……」

 

「そうだな……ケッ、久しぶりに新ウィルスとバトれると思ってたのによ!」

 

 あんまり気が乗らなかったのもあるけど。

 ブラザーバンド、ねぇ……ボクはどうしたいんだろう。

 誰かに話してスッキリしたいのかな?それとも……ミソラちゃんなら……って思ってるのかな?

 ボクの存在を受け入れてくれるか、なんてわからないのに。

 

 …………………………あっ。

 

「……停電が、直ったね」

 

「どうする?このまま家に帰っちまうか?」

 

 ……それはちょっと薄情なんじゃないかな……

 

「二人のところに戻るよ。ブラザーバンドは……うん」

 

「まぁ、オマエがいいならいいんだけどよ……っと、そういやあのミソラってオンナだが、ありゃなんか危険なニオイがするぜ……せいぜい気をつけるコトだな」

 

 ……え?

 

「危険って、何が?」

 

「さぁな、……そんなニオイがするだけだ」

 

 えええ、ちょっと大丈夫なの……?

 

 ーーアマケン・研究室ーー

 

 ……外のウェーブホールから走ってきたから、クタクタだ。最近は走ってるんだけどなぁ……やはり元がもやしだったと言うことか……!?

 

「天地さん、さっきのブラザーバンドの件ですが……」

 

「あぁ、どうだい……結ぶ気になったかい?」

 

 ……………………ボクは。

 

「……あの、もう少し、待ってもらえませんか?」

 

「そうか……いや、急かしたりはしないよ。キミの好きにしたらいい。強引だったね、悪かったよ」

 

「いえ、彼女とは気が合いそうではあるのですが……その、まだ……」

 

 もう少し、彼女の気持ちが知りたい。彼女の口からだ。それからでも、遅くはない、はず。

 

「ねぇ、この後少し、時間取れる?」

 

 ……なんて、考えていたら、ミソラちゃんに引き留められた。

 

「特に用事はないよ……どうしたの?」

 

「少し、屋上で話さない?」

 

 この機会に、ミソラちゃんの思いを聞いておくのも良いかもしれない。多分、まだボクは誰かに話すのが怖いんだ……

 

「いいよ……じゃあ一緒に行こうか」

 

「うん」

 

 ……ボクたちは、連れ添って屋上に向かった……

 

 ーーアマケン・屋上ーー

 

 屋上に続く扉は一人ずつしか通れなかったため、先に通ったミソラちゃんが申し訳なさそうに話しかけてきた。……やっぱり、良い娘なんだろうな……

 

「引き留めちゃって、ゴメンね」

 

「いや、構わないよ」

 

 ここでミソラちゃんは、思いを馳せるが如く、晴れ晴れとした空を仰いだ。……とても辛そうだ。ボクの気持ちをわかってもらえるかも、なんて考えてるのが浅ましくなってくる。

 

「キレイな、空だね……この空の向こうに、天国って、本当にあるのかな……」

 

 ……それは個人の思い入れの違い、だ。死んだ人間はどこにも居ないし、どこにだっている。胸に手を当てれば感じられるっていう人もいるし、お墓の前でやっと感じることの出来る人もいる。要は自由ってことなんだ。

 

「…………空を見上げるとね、ママの声が聞こえてくる気がするんだ……」

 

「……………………」

 

 今は、口を挟むべきじゃない。ボクは、聞かなきゃならないんだ。ボクの、ためにも……

 

「ワタシ、ママとずっと二人暮らしだったんだ。……ママはね、元々病弱で寝込みがちだったの……一年中、何も変わらない部屋の中で過ごす生活じゃ、ママが可哀想だって、楽しませるためにいろいろ考えたわ……それで思い付くことが、歌うことだった。」

 

 ………………ボクだって。いきなり誰のかもわからない知識が入ってきて……気づいたら、こんな風になってた。

 ボクは星河スバルじゃない、偽物なのに、あかねさんや天地さんに、甘えて……

 

「……ワタシが外で見てきた全部、歌にしてママに聞かせてあげたの。ママ、本当に喜んでくれて、それから一緒に歌を作って歌ったり……歌はね、ママとワタシを繋ぐキズナなの……」

 

「……………………」

 

「そんなある日、テレビでやっていたオーディションが目に入ったの。……ママがワタシには音楽の才能があるから、チャレンジしてみたらどうかって言ってくれたんだ。……ワタシがホンモノの歌手になれば、ママ、きっと喜んでくれるだろうって、オーディションを受けたの……このギターはそのときにママが買ってくれたわ……」

 

 彼女は、ミソラちゃんは……まだ、立ち直れてないのか。……お母さんの死から…………

 

「必死で練習して、オーディションを受けて、練習の甲斐あって、オーディションには合格……デビューすることが出来たわ…………ママもハナが高いって喜んでくれた。ワタシ、もっともっとママに喜んで欲しくて、必死に歌ってきたわ……だけどもう、ママに歌を聞かせてあげられなくなっちゃった……」

 

「…………キミの、お母さんは……」

 

 きっと、本当に大切な人だったんだろう。ともすれば、彼女の全てで、生き甲斐だったのかもしれない。

 

「3ヶ月前にね、あの空の向こうに行っちゃった……ワタシ、ずっとママのために歌い続けてきたの。……ママを喜ばせたいから……だけど、ママはもう……。……マネージャーさんはファンのために歌えって言うけど、結局はお金儲けのためなのよ……」

 

「ワタシ、もう歌いたくない……」

 

 …………ボクが、今、やるべきことは。

 

「ボクは、キミの曲を一度聞いたきりで、多分まだわかってないと思う。……でも、それでも、お母さんのためを思って弾いたあの曲は、とても素敵だったよ」

 

「そんなコト……」

 

 ボクと同じように、世界に孤独を感じて欲しくはない。

 今の話を最後まで聞いて、やっと出た結論だ。

 そうだ。ボクは、ボクは……あかねさんやミソラちゃん、いや、違う。他人にまで、こんな思いにさせたくない……!だから……

 

「ボクは」

 

『ちょっと待ってください、困りますよ!……ね、ちょっと待って!』

 

 ……何だ?

 

 ーーガチャッ!

 

 あ、貴方は……ミソラちゃんの、マネージャー……!

 

「ミソラ!!大変なコトをしてくれたな!……お前が逃げ出したお陰でライブは中止だ!一体どれだけの損害が出たとても思ってる!!さぁ、帰るぞ!!」

 

「いやっ!これ以上ママとワタシの歌を汚したくないっ!」

 

 …………ミソラちゃん!……これ以上、彼女を追い詰めるなァッ!

 ……ミソラちゃんと、マネージャーの間に割って入る。

 ……頭が沸騰しそうだ!コイツは許せない!

 

「ここは、通さない!」

 

「お前がミソラを隠していたのか!」

 

「違う!けど、彼女は……ヘルプシグナルまで出していたんだぞ!?……放っとけるわけ、あるかッ!!」

 

 ここで見過ごしたら絶対に後悔する!

 ……彼女をFM星人に取り憑かせることになってしまうかもしれないんだ。それは、被害をコントロールするためにも、何より響ミソラ以外に周波数の合う人間がいたとしたら、完全に動きが読めなくなるかもしれない。それは困る……けど……

ボクは!自分の意思で……ッ!彼女を……守る!!

 

「そこを、どけっ!!」

 

「スバルくん……」

 

 ぐっ!重い……大人のパンチだ……ゴン太のそれとは違う……!でも、慣れてる!何とか、捌いたっ!

 

「チッ!ならこれでェッ!」

 

 何だ?黒い、棒……?

 まさかッ!

 

 ーーーガンッ!!

 

「うっ……」

 

 け、警棒を……

 

「スバルくんッ!!……マネージャーさんッ!」

 

「大丈夫か!スバル君!……アンタ、子供に何するんだ!……それにその子も嫌がっているじゃないか!」

 

「うるさい!そのボウズがミソラを匿ったお陰でこっちは大損したんだ!……今回出た、数千万ゼニー、アンタが肩代わりしてくれるのか?……それにオレはこの子の保護者だ!他人は口出ししないでもらおう!」

 

 凄い剣幕、だ……ううっ、血はでてないようだけど……意識が、朦朧とする……ダメだ、行かせるわけには……

 

「ミソラッ!行くぞ!」

 

 マネージャーがミソラちゃんの手を引っ張っている……!

 ……クソッ…………もう力が……

 

「大丈夫!?スバルくんッ!……うぅ……ゴメンね……」

 

 い、行かせるか……ッ!

 

「クソッ!スバル君、力になれなくてすまなかった……まずは医務室にいこう……さっきのはカッコよかったぞ。だが、無理はしないでくれ……いいね?」

 

 ……この後、医務室で治療を受けたボクはそのまま家に帰った。ボクは……無力だったんだ……




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