星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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とても、難産でした。




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 ーーアマケン外観ーー

 

 それは、星河スバルがまだアマケンで治療を受けている頃……

 

「ミソラ!!本当にえらいことをしでかしてくれたな!この損害はキッチリお前の歌で稼いでもらうぞ!」

 

 わ、ワタシは……もう……

 スバルくんだって……あんなにしてしまって……うぅ……

 

「も、もう、イヤなの!!ワタシ、もうお金のためなんかに歌いたくない!ワタシの歌は、ママを喜ばせるために……ママのためにあるのよ!」

 

「いつまで夢みたいなコトを言ってるんだ?……お前の歌は商品なんだ!お前が歌わないと、俺はメシが食えなくなるんだよ!……歌え!歌え!…俺の金のために!」

 

 もう……もう、限界ッ!……ワタシはッ!!

 

「イヤァァァァッッッ!!!」

 

 こんな、車なんか、マネージャーさんなんかっ!出ていってやるっ!……うぅ……

 

「ハァハァ……ママ……助けて……助けてよ……!ワタシはもう、歌いたくない……!」

 

『ポロロン……お金儲けのために歌を歌わせようとするなんて、ヒドイ大人よね……』

 

 ………………この、声は……ッ!?

 

「だ、誰!?」

 

『ポロロン……ワタシはここよ……』

 

 ……また、まただ。この声、それに、ここ……?

 ……………………あっ!

 

「ワタシはハープ……音楽を愛する者よ。ミソラ、アナタは音楽をチカラに変えることの出来る選ばれた人間……アナタの音楽はアナタだけのモノ……」

 

 天地研究所の……巨大な望遠鏡?の上にいる。

 今ワタシがいる場所からして聞こえない距離のハズなのに、不思議とあのハープに顔が付いたような奇妙な存在の声ははっきりと聞こえてくるのはどうしてなんだろう……

 

「ミソラ、アナタに歌うことを強要し、アナタの歌をお金で汚すヤツらをみんな始末すれば、アナタの歌はアナタのモノ……ママとの思い出も美しいままよ……」

 

 ………………。

 

「アナタの音楽は、アナタ自身の手で守るのよ」

 

 …………ワタシは、どうすれば……

 

「ワタシの音楽を……守る。けど、そんなこと、どうやって……」

 

「ワタシを受け入れなさい」

 

 ………………ッ!?

 あんなに離れていたのに、一瞬でここまで!?

 ただの現実逃避が見せた幻じゃない……!

 

「そうすれば、ワタシがアナタにチカラを貸してあげるわ……アナタの音楽を、守るチカラをね」

 

「………………」

 

 ……スバルくんなら、何て言うだろうな。

 まだ会ったばかりで、お互いの趣味もわからない、そんな関係の女の子が、チカラを欲してる。きっと、危ないことをするんだろう。

 このハープ擬きのチカラは普通じゃない。それは今までのやり取りではっきりしてる。また、助けに来てくれるかな……?

 ……違う。スバルくんは、普通の男の子だ。ちょっとわからないトコロもあるけれど、初対面のワタシとも、物怖じせずに話せる、優しい子なんだろう。

 だからこそ。ワタシはスバルくんに頼っちゃいけないんだ。

 ……もうママが、親しい人が、居なくなるなんて嫌だから。

 だから、ワタシ一人で。

 

『ミソラ!!』

 

 マネージャーさんが追いかけてくる。

 でも、もう怖くない。

 

「もう、逃げられないぞ……お前にはまだまだ稼いでもらわないといけないからな」

 

 ……ふふっ。運が良い。きっとワタシは、彼にチカラを振るうことに何の躊躇いも持たなくて済む。

 

「………………」

 

「クスクスクス…………どうやら、ワタシを受け入れる気になったようね。音楽のチカラを思いしらせてやるのよ……!」

 

 ……そうだね。この人は、許せない!

 

「ミソラ!帰るぞ!次のライブの準備をするんだ!」

 

「…………ハープ擬き」

 

「ヒドイわね…………『ハープ』よ」

 

 わかった、ハープ。ワタシ受け入れるよ……

 ………………っ!ハープがワタシに溶けていく。

 ……これは、融合……?

 

「な、なんだ!その姿は!?」

 

「クスクスクス……ミソラ、ワタシたちとっても相性が良さそうね」

 

「何のつもりかは知らんが、帰るぞ、ミソラ!」

 

 …………本当に、反省すらしていない……。ワタシと同じくらいの子供を警棒で殴ったというのに!

 いくらへっぴり腰だとしても、警棒の威力なら、スバルくんに痕が残るかもしれないのに!

 

「思いしれ!」

 

 鼓膜を破ってやる!歌が、声が聞こえるありがたさを、その身で思いしれ!

 

「ギャーーーーッッ!!!」

 

「クスクスクス……アナタの音楽を汚すファンたちを始末するのよ!」

 

 ……………………ちょっと、ワタシのファンでいられなくするだけだから。大丈夫だよ……ママ。

 

 

 

 ーーコダマタウン・星河家前ーー

 

 ……やっと、家に着いた。何だか凄く長い間バスに揺られていたような気がする。帰り道に、ミソラちゃんを見かけることはなかった。きっと、もう取り憑かれてしまったんだろう。

 彼女が亡き母を想う気持ちは、何よりも真剣だった。

 ボクは、彼女の事情を知っていると、自惚れていただけだったんだ。あの顔は、ボクが時々あの世界に思いを馳せるときの、届かないモノに手を伸ばすような、そんな顔だった。ボクに、彼女を止められるのだろうか……

 

『ちょっと、待ってください!!』

 

 何だ?……この声は……キザマロ?

 

「スバル君、キミは今日、天地研究所行きのバスに乗りましたね?」

 

 うるさいなぁ……

 

「……………………」

 

「一緒にいたのは、誰ですか?……響ミソラと、一緒だったんじゃないんですか!?」

 

 ………………………………。

 

「ミソラちゃんのライブが中止になったのは、キミが関係していたんじゃないんですか?」

 

「オイ、何とか言ったらどうなんだよ!?」

 

「…………ちょっと、早計なんじゃないの?」

 

 ……なんとか喉の奥から捻り出したような答えに、キザマロはどこか自身を納得させるように溜め息を吐いた。

 

「……まぁ、確かにキミがミソラちゃんと知り合いだなんて、ありえませんけどね」

 

「そりゃそうだよな。ホンモノのミソラちゃんがこのあたりをうろつくはずないだろ?……それにしても、今日はついてないぜ。ライブは中止になるわ、委員長にはこっぴどく叱られるわ、もう踏んだり蹴ったりだぜ」

 

 ああ、そういえば、委員長さんにゴン太とキザマロが帰ったって教えたんだっけ……

 

「確かに……けど結構似てたんですけどねぇ……ミソラちゃんを探してたマネージャーさんには悪いコトをしたかもしれませんね……バスに乗り込むミソラちゃんを見たなんて言ってしまって……」

 

 …………お前、だったのか!

 

「……どうしたんです……何だか険悪ですよ?」

 

「もしかしてホントウにミソラちゃんといっしょだったとか?」

 

「……違う、けど」

 

 …………いや、悪気があった訳じゃない。

 ファンとしては正しい行動だ。でも……クソッ!

 

「(オイ、スバル。なんか来るぜ……気をつけろ)」

 

 …………クルマ?あ、五陽田さんだ。なんだろう、また見回りかな?

 

「キミたち、この辺りで何か変わったことが起こっとらんか?高いゼット波を感知したので急行したが、特に何も起こっとらんのだ」

 

「いや、べつになにもおこってないぜ」

 

「あっ!そんなことより、アナタが委員長のご機嫌を損ねたせいで、ボクたちエラい目にあったんですよ!……スバル君!キミもですからね!」

 

 ……からかったことは悪いと思ってるよ。でも可愛かったし……反応が面白かったんですすみません。

 

「本官は職務を忠実に遂行したまでだ……スバル君の件は悪かったと思ってるがな…………ムッ! ?ゼット波の数値が急激に上がっておる!……あっちだ!」

 

 …………何だ?

 

「ウワァッ!」

 

 ……音波が飛んできた!これは……ハープ・ノートか!

 クソッ!もう電波変換してしまったのか!ということは、この近くに……

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

 ……また飛んできた!これは、キザマロに直撃コース!

 そしてもう一発……今度はゴン太だ!

 

「来やがった!スバル!ビジライザーを掛けろ!」

 

「わかってる!」

 

 ………………やはり、既に来ていたのか!

 

「アラ、あのボウヤ……こっちが見えるみたいね」

 

 ミソラちゃん……ハープ・ノートのハープ兼ギターから、声が聞こえる……。クソッ、楽しんでいるな!声が愉悦に満ちているぞ……!

 

 

「やっぱり、憑かれちまったか……お前が殴られた時、凄い辛そうな顔してたからな。こうなるコトは予想できたぜ……見たところ、取り憑いているのはハープだな」

 

 ここでロックが珍しく苦虫を噛み潰したような顔をする。……ロックにも苦手なモノがあったんだね。

 

「オンナか……やりにくいな」

 

「目を覚ますんだ!キミは、そのチカラをもっと優しく扱えるハズだよ!」

 

 ーーバシュッ!

 何かが噴出する音と共に目の前にハープを象ったFM星人が現れた。……こいつが、ハープ!……今は敵なんだ。

 

「クスクスクス……カワイイボウヤ、ワタシたちのジャマをしないでちょうだいな……ハープ・ノート、あの子はワタシたちをジャマする悪い子よ。少しの間眠ってもらいなさい」

 

 ………音符の攻撃が来るぞッ!

 ……………………アレ?来ない?

 

「ダメ、ハープ……スバルくんにこれ以上、ワタシのせいでキズつけさせたくないの!……お願い、スバルくん。……ワタシたちのジャマをしないで」

 

 ………………ミソラちゃんは、真剣だ!

 操られている素振りは全く見えない……

 

「ハープは音波を操るFM星人だ!油断するなよ、スバル!」

 

 ……ボクに戦えって、そう言うのか!……でも、ゲームのスバル君のように、ボクが彼女を説得出来るとは思わない。なら、戦って止めるしか……

 

「本当に、お願い。ワタシはもう、キミに合わせる顔が……」

 

「そんなの、気にしてない!ボクは、ボクの意思で庇ったんだ!」

 

 そうだ!ボクはこれ以上、誰かに同じ思いをさせたくないって……そう決めたんだ!画面越しなんかじゃない、この世界に生きる、一人の人間として!

 

「……ミソラ、行きましょう」

 

「うん……スバルくん、さっきはカッコ良かったよ。……ホント、ゴメンね」

 

 そう言ってウェーブロードを駆けていく……

 

「ミソラちゃん!!」

 

『ウワーーッ!』

 

 くっ!やはり襲っているのか……無差別に……!

 

「どうするよ?後を追わなくていいのか?」

 

 そんなの決まってる!

 

「追うに決まってるさ!ウェーブインして追いかけるんだ!」

 

 …………うぅ………………………………!ミソラ、ちゃん……

 

 ーーコダマタウンのウェーブロードーー

 

 ……いつも通りの、ウェーブロードだ。デンパが少し騒がしいくらい。

 

「行くよ!ロック!」

 

 早く!止めないと……うわっ!音波攻撃っ!?

 でも、痛くない……少し痺れるだけだ。

 

「ロックバスターで撃ち落とせ!いいな!?」

 

 ……うん!

 

「ハッ!」

 

 近づいてくる音波にロックバスターを当てる。ロックバスターによって誘爆した音符型の攻撃は、消滅時に音を奏でるようだ。

 ……この音は……!

 

 ーーコダマタウンのウェーブロードーー

 

 展望台に続くウェーブロードに、ミソラちゃんは居た。

 さっきまでと同じ、ボクを見ると辛い表情をする。でも、どこか覚悟を決めたような顔だ。

 

「ミソラちゃん!もう、やめようよ……ボクはもう、ミソラちゃんと敵対したくない……」

 

 こんなに戦いたくないのは、初めてだ。さっきから、胸がズキズキ傷んで、どうしようもない。

 

「スバルくん……わ、ワタシは……!」

 

「お願いだよ!ボクたちは、ブラザーにだってなれたハズなんだ!……あの時言おうとしたことだって……」

 

 バスの中で話してわかった。優しくて、明るくて、歌うことが大好きな普通の女の子なんだって!ゲームなんて関係ない……!

 彼女なら、本当の意味でボクを受け入れてくれるって、理由はないけど、確信があるんだ!だから!

 

「ワタシは……ワタシの本当の気持ちなんて、わかりっこない!……だから、もうジャマしないで!」

 

 そう言って、彼女はハープ兼ギターを弾き、足場になるサイズの音波を空中に出現させた。

 

「ハッ!」

 

 サーファーのように音波を乗りこなし、離脱してしまった。……あっちは天地研究所だ……

 

「ロック!ボクらも行くよ!」

 

「オレだけなら飛んで行けるが、ロックマンの状態では無理だぜ?」

 

 わかってるよ!

 

「だから、バスの電脳にウェーブインして行くんだ……!」

 

 そら、バスが来たぞ!

 

「あぁ、……今日のスバルは何だか怖いぜ」

 

「真剣にもなるさ!……やっとボクを理解してくれるかもしれない人に出会えたんだ!」

 

 彼女と対話するなら、しっかり聞いてもらえるように、戦闘が終わった後だ……!

 

「……そうかい」

 

 ゴメン、ロック。

 

「……うん。今回の件が終わったら、ロックにもちゃんと話すよ……ボクの本当を」

 

「へっ!ソイツは楽しみってモンだ!」

 

 ……さぁ、天地研究所へ!

 

 

 ーーアマケン外観ーー

 

 ……気配がする。やはりこのアマケンに来ていたらしい。

 

「……ロック、進むよ……彼女を止めなきゃ」

 

「あぁ、さっきの音符型の攻撃には気をつけろよ」

 

 ……来たっ!同時に他方向から音波攻撃が飛来してくることからして、恐らく設置型の攻撃……意志のない攻撃なんてッ!

 

「撃ちまくれ!」

 

「うん!」

 

 ……よし、これで終わりらしい。

 それにしても、悲しいな。あの時展望台で聴いた音は、曲はあんなに良かったのに……

 今は悲しみしか伝わってこないのが、何とも言えない。

 

「また来たぞ、スバル!」

 

「撃ち落とす!」

 

 だから……こんなところで止まっていられない!

 

 ーーアマケン外観のウェーブロード・最奥ーー

 

 天地研究所外観にあるウェーブロード。その最奥、パラボラアンテナの直上、大きめのパネル状になった場所に、彼女は立っていた。

 

「もう、ヤメなよスバルくん……なんでそんなにワタシのジャマをするの……?」

 

「ボクだって、守らなくちゃいけないモノがある……!キミが襲っていた町には、ボクの母さんだっていたんだ!母さんは……三年前、父さんを失ってから、まだ立ち直っていない……だから、ボクが守らなきゃいけないんだ……!」

 

「……!父さんを失うって、まさか……」

 

 ミソラちゃんの表情が驚きに変わる。

 ……スバル君の記憶からは、お父さんを失った時の気持ちは痛いほど伝わってくるんだ。

 でも、こんな言い方しか出来ないボクを許してほしい……

 

「ミソラ、いえ……ハープ・ノート。そんな戯言に惑わされてはならないわ。他人の心が本当にわかる人間なんて、居やしないもの……あの子はアナタを惑わす悪いコよ。今ここでやってしまわないと、必ず後悔することになるわ」

 

「わ、ワタシのジャマは、させたくない……いくらスバルくんでも……だから……」

 

 絞り出すような声と共に、彼女がボクに向ける圧力を増したのが伝わってくる。

 ……何でこんなに辛いんだ!?

 

「(ケッ、相変わらず取り入るのが上手いじゃねぇか……なぁ、ハープ)」

 

 ……ロックが何か喋っているが、気にならない。

 どうせ『アンドロメダのカギ』関係だろう。

 

「(お久しぶりね、ロック……悪いけど、ワタシのジャマはしないでもらえるかしら?これからが楽しいトコロなんだから……アナタこそ、そのコを使って何をするつもり?)」

 

「(オレの目的は一つ、FM王への復讐だけだ……と、言いたいが最近はコイツのことも結構気に入ってる。正直いいダチってヤツなんだぜ……)」

 

「(アナタがそんなコトを言うなんて、珍しいこともあったモノね……とはいえ、上の人たちが目くじら立ててアナタを探しているわけがわかったわ……)」

 

「(オレはオンナ相手にホンキで戦うシュミはねぇ。ヤツらの情報をオレに教えてこの場から消えるんなら、イノチだけは助けてやるぜ)」

 

「(クスクス……優しいのね。ヴァルゴのコトは黙っといてあげるわ……今回はワタシの趣味でやっているコトだから、アナタにはジャマさせないわよ)」

 

「ケッ、ならやるしかないな……オレの居場所を知られちまった以上、仕方がねぇ」

 

「ワタシをオンナだと思って甘くみたら、ヤケドするわよ」

 

「へっ、抜かせ!……宿主の違いってヤツを教えてやるよ!」

 

 どうやら話がついたらしい。

 ロックが止めてくれるかと、少し期待したんだけど……

 

「面白いわね……行くわよ、ハープ・ノート!」

 

「大丈夫、少し眠ってもらうだけだから……」

 

「ミソラちゃん!」

 

 ……ダメか!こっちに向かってくる!

 

「スバル、油断するなよ……来るぜ!」

 

 

……絶対に負けられない!ウェーブバトル、ライドオン!

 




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