星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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な、長かった……


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 ーー翌日・星河家ーー

 

「スバルー!母さん、パートに行ってくるからね」

 

 あかねさんの声がする。

 どうやらいつもより寝坊してしまったようだ。昨日は中々ハードだったからね。仕方ないね。

 …………っと、そうじゃない。あかねさんに言わなくちゃいけないことがあったんだ。

 

「母さん、ちょっと待って!」

 

 慌てて引き留めにかかるボク。そうだ、復学のコトを話さないといけないんだ。

 

「どうしたの、スバル?何かあったの?」

 

 最近は朝食を一緒に食べる機会が増えたことから、あかねさんと会話する頻度も上がっている。なので、記憶にあるあかねさんよりは元の調子に近くなってきているようなんだ。食欲に負けた、なんて考えていたけれど、思わぬ副産物があったらしい。

 

「実は、その……また学校に行ってみたいんだ」

 

「……そう!直ぐに復学の用意をするわ。でも、無理はしないでね……?」

 

「うん、わかってる。ありがとう、母さん」

 

「スバル……」

 

 何だか気恥ずかしくなってきちゃったな。

 ウィルスバスティングでもして気を紛らわすか……

 

 ーー十分後ーー

 

「さて、オマエのオフクロは行っちまったが……どうするんだ、今日は?」

 

「そうだね……もう決めてあるよ。今日は残留電波を狩りにいく」

 

 具体的にはオックスだ。あんまり放置してると危害が出るかもしれないし。正直、メガクラスカードとかどうなっているんだろうと考えたことはあるけど、暗転しない時点で大して役には立たないだろうと踏んでる。

 ま、慈善事業みたいな感じで。

 ゼニーが入ればそれでいいかな……

 

 ーーコダマタウン・トラックの電脳ーー

 

 例によって展望台のウェーブホールで電波変換したボクたちは、今まであえて避けていた暴走トラックの電脳にウェーブインした。ゲームのようにウェーブロード上の特定の場所で遭遇したり、とはいかなかったよ。

 

「しっかし、残留電波ねぇ……」

 

「どうしたの、ロック?」

 

 何やら引っかかることがあるようだ。

 まぁ、ボクとしては今日を除いてもあと二回はオックス・ファイアの残留電波にお世話になるわけだから、あんまり感動とか、思うことはないんだけども。

 さっさと片付けるか……ぐらいだろうね。だってゴン太入ってないし……実際どんな感じなんだろう。残留電波には意識とかあるのかな?

 

「いや、残留電波がこんなトラックに残ってるってんならよ、あのゴン太とかいうヤツにも残留してるんじゃないのか?」

 

 す、鋭い……しかし、3でハンターVGが出るまではオックスを完全にデリートするわけにはいかないんだよね。

 

「まぁまぁ、その時はその時ってことで……」

 

「ナンか怪しいな……」

 

「そんなコトないって」

 

 何で今日はこんなに鋭いんだよ!?

 

「…………………………まぁ、いい。とっとと行こうぜ」

 

 ……ふぅ、危なかった……

 

 ーートラックの電脳・最深部ーー

 

 ……いた。オックス・ファイアだ。以前見たようなはっきりした姿ではなく、所々揺らめいているように見える。まさに残留電波というトコロなんだろう。

 ……しかし、さっきから微動だにもしないな。どういうコトなんだ?暴れていないのは嬉しいんだけど……

 

「…………………………」

 

「(オイ、スバル。コイツさっきから全く動かねーぞ!)」

 

「(うーん、どういうコトなんだろう。キャノンでも撃ってみる?)」

 

 ひそひそ話しながら、オックス・ファイアに近づくボクたち。電波体は呼吸の必要がないので、息を荒くすることは興奮作用以外にないのだが、あのオックスはブルブル言っていた。ボクは青いので、あの牛を興奮させる要素はないんだけど……

 

「……………………!!」

 

「うわぁっっ!!キェェェェアァァァァウゴイタァァァ!!」

 

 何か無言で襲いかかってきたぞ!

 おい、オックス!倒した後に寄越してきたメールで語っていた、あの意気込みはどうしたんだ!そうだ!炎なんて捨ててかかってこいよ!うおぉぉぉっ!

 

「炎には炎!ロック!」

 

「おう!」

 

 ヒートォォアッパァァァーー!!

 ウォーロックアタックによって思いっきり加速した状態でオックス・ファイアの拳に叩きつける!当然競り合うことなど出来ないので、後方に吹っ飛ばされる。

 ウェーブロードの端で危なげなく着地し、一息つく。

 ……何でこんなに熱くなってるんだろう。

 まぁ、いいや。うおぉぉぉっ!何だか思いっきり暴れたい気分だっ!

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァッッ!!」

 

 右手にヒートアッパーを、左手にシンクロフックを展開し、反応の鈍いオックス・ファイアをタコ殴りにする。

 どうやら残留電波のクセに本家より装甲が硬いようだ。

 あんまり攻撃が通っていない。

 

「今日のスバルはいつもより熱いぜ!オレも血が騒いできたぞ……!!」

 

 それウルフ!あぁ、あの気恥ずかしさをすべてオックス・ファイアにぶつけてやりたい!殴り勝ってやるぞ!

 

 ーー三十分後ーー

 

「うおぉぉぉぉっ!」

 

 バブルフックだオラァ!

 バブルに包まれたな……ト ド メ だ!!

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」

 

 ……勝った。

 オックス・ファイアはついに、このロックマンの下に破れ去ったのだ……

 

 フゥーッ、スッとしたぜ!

 

「お疲れロック!いやー、ナイスバトルだったね」

 

「オレは時々、オマエが怖いぜ……」

 

 何言ってるのさ!ロックだってノリノリだったじゃないか!……あ、リザルトだ。

 

「バスティングレベルは……1。リザルトは……オックス・ファイア?」

 

 まぁね、三十分もかけたからね。仕方ないね。

 

「おおっ!ソイツはメガクラスカード!中々強力なバトルカードだぜ!」

 

 ロックが嬉しそう。そういえば、自分をモデルにしたメガクラスカードってあるんだろうか?OSSでは普通に『SSロックマン』渡してたしなぁ……あれはナビチップか。でも二百年前の環境に合わせたバトルチップを置き土産にしていく辺り、WAXAって凄くない?

 

「メガクラスカード、ねぇ……どうなの?」

 

「あぁ、ソイツは一時的に戦闘体を再構築するカード……そのスペックはグレードによって変化するがな……あ、フォルダには入れておけよ。一応普通のカード扱いだからな」

 

 へぇ……そうなってたんだ……まぁ、召喚なんて無理そうだしね。

 

「じゃあ、早速使ってみようよ……カードイン!」

 

 ……おおぉ!これは、凄いぞ!目線が高くなってる。

 つまりボクは今、オックス・ファイアになってるんだ!

 

「ブルルルルッ!」

 

 しかし、ブルブルとしかしゃべれないぞ!

 これは欠陥過ぎやしませんか……

 

「ブルルルルッ!…………あ、戻った」

 

 大体十数秒といったトコロか。

 まぁ、技一発くらいだね。オックスフレイム!

 

「あぁ、凄いチカラだが、電波体への強制力は低い……直ぐに戻っちまうってわけだな」

 

「でも凄いよ、コレ!耐久力は上がってたからね……

 壁くらいにはなるんじゃない?」

 

「オマエも結構酷いな……」

 

 そんな!ボクは正直に言っただけじゃないか!

 

「今日はもう疲れたよ、BIGWAVEに寄ってから帰ろっか?」

 

「ガチャは程々にしておけよ」

 

 あれぇ!?新カード欲しくないの!?

 

「フフフ……そう言ってられるのも今の内さ。見てろよ!今日こそは……」

 

「ハイハイ……ほら、ウェーブアウトするぞ」

 

 ああ!もうちょっとちゃんと取り合ってよ……!

 

 ーーBIGWAVEーー

 

 …………………………………………………………ふっ。

 余りカード、全部スッちまったぜ……

 

「(さ、帰ろうぜ)」

 

 最近のロック酷いよ!

 ボクの挑戦を軽く扱いやがって………!

 

「そうだね。急いては事を仕損じるとも言うしね」

 

「(強がんなよ)」

 

「ううっ……」

 

 ロックが優しい……のか、これは?

 目から汗が……いや、これは汗だから。絶対涙とかじゃないから。ホントだから。

 

 ーー星河家・夜ーー

 

 ボクは灰になった自分を奮い立たせ、なんとか家に帰ってきた。ベッドに寝転がり、愚痴を吐く。

 カードトレーダーに挑戦した日は、いつもこうだ。

 

「はぁ……最近ツイてないなぁ……」

 

「自業自得だと思うぜ」

 

「酷い!酷いよロック!ううっ……ボクの味方はミソラちゃんだけだよ……」

 

 ああ、ミソラちゃんの笑顔が恋しい……

 

「呼んだ?」

 

「うん、ボクの味方はミソラちゃんだけだよって話してたんだ……今何してるのかなぁ……」

 

 突然聞こえた声と会話を続けるボクは、壊れかけているんだろう。もう寝るか……明日は良いカードが出ますように。

 

「ボク、もう寝るよ……」

 

「ふふふっ……って、ちょっと待ったーっ!」

 

「何さ……ってミソラちゃん!?……ゲェッ!また不法侵入したの!?」

 

 もうホント、心臓に悪いので急に来ないでください……

 

「ええ、そこ!?それにしても、ブラザーが会いに来たのに不法侵入扱いは酷いよ、スバルくん……」

 

 いや、だってさぁ……ねぇ?

 

「ゴメンゴメン、それでどうしたの?こんな時間……って言うにはまだ早いけれど」

 

 また下らない理由そうだけど……

 

「遊びに来たんだよ!」

 

 えぇ……いや、確かに小学生だけどさぁ……

 普通に連絡してから来ればいいのに……

 

「…………そうだね……じゃあ、ウェーブバトルの練習しようか」

 

「ウェーブバトル?」

 

「うん。ボクはキミを守るけれど、キミにもある程度強くなって欲しいんだ。だから、練習……というよりは、訓練だね」

 

 以前バトルしたときのような事前準備は、ハープがロックのコトをよく知っていたが故の芸当だと思う。

 だから、汎用性のある戦術やバトルスタイルを身につけてほしいんだよね……

 

「うん、いいよ!スバルくんと訓練かぁ……なんだかドキドキしてきたよ」

 

 とても眩しい笑顔だが、あと何分続けていられるかな?

 こうして、たまにボクとミソラちゃんで戦闘訓練をすることになった。頻度は週一回くらい。ただ、前よりも家に来る回数が増えたコトだけが計算外だった……

 

 ーー数日後・星河家ーー

 

 そして、ボクの復学手続きが済み、この意識になってからの初登校の日がやって来た。

 

「スバル、今日から学校だけど……本当に大丈夫?」

 

「うん、大丈夫。クラスの人とも知り合いになれたんだ。……いい人ばかりだったよ。だから心配しないで、母さん。……じゃ、いってきます」

 

「そう……いってらっしゃい」

 

 さぁ、今日から登校だ。通ってる時は毎日ダルい思いで行ってるのに、いざ長期間休んでみると、途端に学校が恋しくなる……なんてこと、ないかな?

 

 ーーコダマタウンーー

 

 うん、今日はいい天気だ。絶好の初登校日和ってヤツだね!登校時間にはまだ余裕がある。ゆっくり行こう。

 ……おっ!校門前に委員長さんがいる。ご苦労様だなぁ……こうして毎日生徒たちに挨拶しているのだろうか。

 確か生徒会長になりたいという野望があったはず。

 

「委員長さん、おはよう!」

 

「ええ、おはよう。……話は聞いたわ。今日から登校するそうね!……改めてコダマ小学校へ、ようこそスバルくん。フフ、これもワタシの優しさのおかげよ、感謝しなさい!」

 

 なるほど、わざわざボクのために。それは悪いことをさせちゃったかな?

 

「そっか。わざわざボクのために校門前で待っててくれたんだ。ありがとう!委員長さんのおかげだからね……これからは委員長様って呼ぶことにするよ」

 

「や、やめなさい!……もうちゃんと登校するのだから、同級生に敬称をつけるのは関心しないわよ。普通に呼びなさい、普通に」

 

 何故普通を強調するんだろう。

 なんだか照れ臭いけど、そういうことなら。

 

「じゃあこれからよろしく、ルナ」

 

 うむむ……これはかなり恥ずかしいぞ。委員長さんも照れているようで、顔が赤い。普段は委員長って呼ばれてるからかな?

 

「え、ええっと……そ、そうね。よろしくスバルくん」

 

 何だか二人してもじもじしていると、変な人として見られそうだ。ここはただでさえ人通りが多いのだし。

 

「別に『くん』はつけなくてもいいよ?ゴン太やキザマロにはつけていないんだし」

 

「えぇ!?い、いや、それもそうね……では改めて、よろしくね、スバル」

 

 ブハッ!……本当に言ったよ!……凄い顔真っ赤だけど。

 いや、うん。からかうのも止めにしておこう。

 

「ゴメンゴメン……いきなり名前呼びはちょっとね。よろしく、委員長」

 

 もう委員長でいいだろう。あえてさん付けするのも違和感があったし。

 そして、委員長の感情が急激に沸騰していくのを感じる。からかい過ぎたかな?

 

「…………ッ!!!……す、スバルくん……アナタねぇ……」

 

「アハハ、ゴメンね!」

 

「グヌヌ……ッ!!……ハァ、ハァ!!もう、大丈夫よ。……取り敢えず、教室に行く前に先生へ挨拶してきたらどうかしら?」

 

 何とか感情を押さえ込んだ委員長が、教えてくれる。

 不登校からの復学だから、気を遣ってくれたのかな?

 

「うん、ありがとね!」

 

 そう言って校門から敷地内に入る。思ったより校庭が広い。きっと、生徒の娯楽を大切にしている人が設計したのだろう。

 

 ーーコダマ小学校・正面玄関ーー

 

 目当ての人物は職員室の前で見つかった。

 以前会った、聖人育田先生だ。ボクとしても、育田先生の話には大変興味がある。これから楽しみだ。

 

「おお、スバル君!話はお母さんから聞いているよ。キミが決断したことなら、私は最大限サポートするつもりだ。だから安心して、学校生活を楽しんでほしい……さ、もうすぐ授業がはじまるぞ。キミのクラスは2階にある5-Aだ」

 

 うーん、やはりぐう聖……というか、委員長と話しすぎたかな?もう少しゆとりがあると思ってたけど……

 

「はい、ありがとうございます」

 

「いいんだ、もう少し砕けても。我々は教師だが、教える者との距離がありすぎると、私たちの言葉が耳に入らなくなるからね。ほどほどに気安くすればいい」

 

「そうですね……じゃあ、また会いましょう」

 

「ああ、キミを紹介するのを楽しみにしているよ」

 

 ーー5-A教室・朝会ーー

 

「えー、今日はみんなに報告がある。新しい仲間の紹介だ……さぁ、入っておいで」

 

 育田先生の声を聞いて教室に足を踏み入れる。何だか緊張するな。

 あ、委員長だ。最前列とは、期待を裏切らないね。

 小さく手を振っておく。委員長が遠慮がちに手を振り返してきた。恐らく、ボクを鼓舞してくれているのだろう。がんばるぞい。

 

「星河スバル君だ。今日から復学することになった……みんな、仲良くしてあげてくれ。じゃあ、スバル君、自己紹介を」

 

 ううん、何を言えばいいんだろう。

 まぁ、適当でいいか。

 

「星河スバルです。星を見たり、機械を弄ったりするのが好きですよ。……あと、バトル用のナビを持っているので、電子機器のウィルス除去に役立てるかも?」

 

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

 

「よろしく~!」

 

「仲良くしてね!」

 

「ウィルス退治とは、中々凄いヤツがきたね!」

 

 等と、案外好評のようだ。一応、バトル用のナビは普及していて、一般人でも扱えるようになっている。

 じゃないとバトルカードだけ持ってても仕方ないしね。

 とは言え、お粗末な操作性のモノが多く、あまり役に立っていないのが現状なんだけど。そこら辺は、ハンターVGが出るまでしょうがないか。

 

「みんな、よろしくね」

 

 取り敢えず愛想よく、は基本だよね。

 あかねさんと、ダイゴさんから受け継いだと思われる優しげな笑顔を振り撒いていれば、問題はないだろう。

 

「先生」

 

「どうした?委員長」

 

 先生からも委員長って呼ばれてるのか……

 

「クラスのみんなに追加の報告があります。……スバルくんには、学芸会の劇で例の役をやってもらいます」

 

 ざわ……ざわ…………

 

 何だ!?人生奪還にはまだ早いぞ、ボクは!まだカードトレーダーの沼にハマリきってはいない!カイジじゃないんだ!というか、路傍の木の役なんだよね……

 

「例の役って……」

 

「まさか……」

 

 思いの外、みんなのノリがいい。

 楽しそうなクラスでよかった。

 

「はいはい、静かに。劇の話は午後の練習の時間に回してくれ。それよりスバル君の席だが……最後列の空いている席が、キミの席だ」

 

「はい、わかりました」

 

 先生の指示に従って、席に向かう。隣は……カヲルくん、じゃなくてツカサ君だ。

 

「やぁ、スバルくん。また会えて嬉しいよ」

 

「こちらこそ。わからないこととか聞くかもしれないから、よろしくね」

 

 簡易の挨拶を交わし、育田先生の授業に耳を傾ける。

 

「さて、早速一時間目の授業を始めるぞ」

 

「先生!それよりも何か、おもしろいハナシをきかせてよ!」

 

 ゴン太が手を上げて、要求する。実際、かなり面白い話なんだろうね。ボクも聞きたい。

 

「オイオイ、ゴン太。つい昨日、怖い話をしたばかりじゃないか……まぁでも、今日はスバル君もいることだしなぁ。しょうがない、特別だぞ!よし、みんな教科書しまえ~」

 

 ここが、天国だったのか……!

 

「イエーイ!」

 

「やった!!」

 

 ゴン太やキザマロが喜びの声をあげる。委員長が何も言わないってことは、委員長も育田先生の話が好きなんだろうな。

 

「育田先生の授業は変わってるんだよ。教科書をあまり使わず、代わりにいろんな話を聞かせてくれるんだ」

 

 ツカサ君が説明してくれるが、やはりにわかには信じられないよなぁ……その面白い話を授業内容と絡められたら、疎まれることもなかったろうに。

 

「先生はよく言うんだ。勉強しか出来ない人間にはなるなって……」

 

 それはわかるけど、辛い勉強を乗り越えてきた人間同士には歪だけど絆ができるのも、本当だ。人は人の苦しみを体感することで、よりその人を理解できる。

 

「じゃあ、今日はブラザーバンドにまつわる話だ。みんな、ブラザーバンドは知ってるね……」

 

 ほうほう、なるほど。へぇ、そういう見方もあるのか。

 

 ーー約一時間後ーー

 

「……というワケで、どんなにテクノロジーが発達したとしても……『絆』の大切さを忘れてはいけない……そういう願いがブラザーバンドには込められているんだ」

 

 うん、これは有意義な話だった。聞く価値アリだ。

 

 ーーキーン・コーン・カーン・コーン

 

「ちょうどいいところでチャイムだ。この話はここまで!休み時間にしていいぞ」

 

「(これが授業ってヤツか、中々面白いモンじゃねぇか……こんなに面白いんなら、もっと早くに来とけばよかったじゃねぇか)」

 

「(育田先生は特別だよ。6年生になって担任が変わったらその意見を180度変えるに100000ゼニーかけるね、ボクは)」

 

「(そういうモンか)」

 

 さて、休み時間の間にクラスのみんなに挨拶しておこうっと……




流石に平日は遅くなりますね……

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