星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 ーーコダマ小学校・5-A教室ーー

 

さて、今のうちに挨拶回りってヤツだ。

ちょっと違うかな?ま、気楽にいこう。

 

「やぁ、キザマロ。おはよう」

 

 今日は珍しく3人一緒ではなかったようで、各々教室に散らばっている。まずは知り合いに声をかけるのは常套手段ってヤツだね。近かったし。

 

「おや、スバルくんですか。おはようございます……ところで、『学習電波』って知ってますか?ウチの学校がもうすぐ導入するとウワサの装置です」

 

 キザマロの言う、『学習電波』っていうのは確か、頭に直接電波を流すとかいう、危険な側面もある装置だったハズ。というか、歴史以外は流石に小学生レベル程度なら大丈夫とたかをくくっているけど、どうなんだろう。

 

「へぇ、そんなモノが……そういえばテレビでやってたよ、ソレ。確か操作をミスすると危ないとか、何とか……」

 

 マイクロウェーブで電子レンジは勘弁してください……

 

……次はゴン太だ。

 

「ゴン太、おはよう。これからよろしくね」

 

「おう!よろしくだぜ!……そうだ、休み時間にいつもドッジボールやるんだけど、オレのチームに入らないか?」

 

 おお、ドッジボールとかやるのか……楽しそうだ。

 

「いいよ!それにゴン太が相手じゃ、中々当てられなさそうだからね」

 

「言うじゃねぇか!……じゃ、そういうコトでな!」

 

 ゴン太も結構ノリのいいヤツだったんだね。

 さて、次は……

 

 ーー五分後ーー

 

 ふぅ、粗方話しかけたかな。

 みんないい人そうでよかった。あと話しかけていないのは……

 

「やぁ、委員長。さっきぶりだね……おはよう」

 

「アナタ、挨拶して回っているのはいいけど、ワタシが最後とは、どういう了見かしら?」

 

 微妙に不機嫌だ。まぁ、自分が引っ張り出してきたという自負があるので、最初に挨拶しにくると思ってたんだろうね。

 

「そんな……ボクは委員長と長く話していたいだけだったのに……そんな言い方ないよ……」

 

 よよよ……とばかりに、委員長に泣き言をいう。

 演技だけど。

 

「そ、そう……なら、仕方ないわね。ともかく、これでクラスメートが全員揃ったわ!これは学校への復帰祝いよ!……確か、バトル用のナビを持っているんだったわね?それに役立つんじゃないかしら」

 

 そう言って渡してきたのは……フォルダ、フォルダだ!

 これは凄い嬉しい!残弾を確保したぞ!

 ……いや、嘘だよ?流石に、人からもらったモノでガチャったりしないさ。

 

「(それはどうかな……?)」

 

 ロックからの信頼が厚い……別の方向で。

 ボクはギャンブラーじゃないぞ!

「……魂を、賭けよう!」なんて言ってみたくないんだからね!いやでも、ちょっとだけ……うん。

 

「ありがとう、委員長!ボクはとても嬉しいよ……わざわざ欲しいモノをくれるなんて、もはやボクたちは以心伝心の仲と言っても相違ないね!」

 

 取り敢えず全身で喜びを表現する。今ならミソラちゃんの前でも、委員長に抱きつけそうだ!

……その後が怖いけど。

 

「そ、そうかしら……いえ、喜んでくれてワタシも嬉しいわ」

 

 ボクからの誉め殺しに照れ始める委員長。

……おかしいな、完璧と名高い委員長はいつも誰かから賞賛を浴びているハズ……可愛いからスルーするけど。

 

「うん、ボクも。きっといい仲になれるハズさ!」

 

「いい仲…………え、ええそうね。……もうそろそろチャイムが鳴るわ。席に着いておきなさいな」

 

 あ、確かにそうだ。もうすぐ時間になりそう。

 いやー、委員長と話すのは楽しいね。表情がコロコロ変わるのは、見ていて面白い。あと可愛い。

 ま、秘密を話さないなら、ブラザーにもなれそうだ。

 

 ーー5-A・午後の授業ーー

 

「午後は劇の練習よ。すぐに準備して、体育館に集合。いいわね!」

 

 教室のあちこちから、はーい、なんて返事が返ってくる。今教卓に立っているのは委員長だ。

 まぁ委員長の全面プロデュースという話だし、当然だろう。

 さて、移動しないと……不用意にセットでも触らないように、みんなの後ろを歩いていこうか。

 

 ーー体育館ーー

 

「じゃあ、昨日の続きから!……今日は衣装無しでいいわ」

 

 委員長の掛け声とともに、劇の練習が始まった。

 意外と役自体は少ないんだね。代わりにセットの交換やら、製作班やらの人材には不足していなさそうだ。

 

「シーン35、ロックマン登場!……スタートッ!!」

 

 ええ……シーンそんなにあるの……?

 

「そこまでだ!牛オトコ!」

 

 衣装ナシのツカサ君が登場する。すでに衣装着ているような服装だけどね。

 

「だれだ!オマエは!?」

 

 牛オトコ役のゴン太が迫真の演技をする。

 ……そりゃ本人だもん。

 

「助けを呼ぶ声が有る限り……私は必ず現れる!青き戦士!ロックマン参上!」

 

 これは……笑いそうだ……まぁ、200年前に行ったときは、静かな青!ロックマンブルー!とか言っちゃってるんですけどね。

 この世界に文献とか残ってないといいなぁ……

 

「(ククッ、スバル……笑いを堪えてんのか……オレもヤバい、吹き出しそうだ……っ!)」

 

 二人してプルプル震えながら、シーン35を見ることになってしまった。(傍目には一人だけど)

 

「カーーット!!」

 

 委員長のストップがかかる。どうやらゴン太の動きが気にくわなかったようだ。

 しかし、怪物の気持ちになれって……なったことないからわかんないや(すっとぼけ)

 オックス・ファイアは、あの言語制限さえなければなぁ……

 

「……それと、照明係のキザマロ!ちょっとタイミングが早いわよ!」

 

 鋭いね。

 

「き、厳しいですよ」

 

「ねぇ、委員長」

 

「何かしら、スバルくん」

 

「ロックマンのセリフ、少しカッコつけすぎじゃない?」

 

 いや、妄想でも中々言えないぞ、あんなセリフ。

 

「ワタシの脚本に文句があるっていうの?」

 

「ちょっとカッコよすぎて、逆にキザになっているような気がするんだけど……」

 

「そんなことないわ!あの方はどんな時でも絶対に来てくれる……ヒーローなのよ!」

 

「(クククッ……物凄い信頼だな、スバル)」

 

「(信頼や本気には報いるよ、ボクは。……出来る限りだけど)そうだ、ボクの役っていうのは?」

 

「あっ、そうだったわね……忘れるところだったわ!アナタの役は……」

 

 はい、路傍の木ですねわかります。

 実際ボクじゃなかったら、また不登校になってそうな仕打ちに見えるのは気のせい?

 

「やっぱりピッタシよ!」

 

「そうだね……他のクラスの人に顔も売れるし、流石委員長だよ。ボクは感激で木のセットを持ってる腕がプルプルしてきたね、これは間違いない」

 

「そ、それもそうね……ハハハ……」

 

 体育館に委員長の乾いた笑いが響く。

 鍛えているとは言っても、これはキツイ。廊下で水入りバケツを思い出してしまうのは、何故なんだろう。

 

 ーーキーン・コーン・カーン・コーン

 

「じゃあ、今日の練習はこれでおしまい。明日もあるから、各自準備しておきなさい」

 

 委員長の解散宣言とともに、ボクは解放された。

 う、腕が……

 

「(そろそろ家に帰ろうぜ)」

 

「(そうだね、疲れちゃったよ……)」

 

 もうクタクタだ。BIGWAVEによる気力もないよ……

 あ、明日は確か育田先生がリブラに取り憑かれて『学習電波』を流すハズ……気絶しないといいんだけど……

 

 ーー職員室・夕方ーー

 

 生徒たちが下校した後に廊下を歩く教師がいる。

 5-A担任の育田だ。彼は本日復学した生徒の様子に満足しながら、家に帰って子供たちの世話をしようと張り切っていた。

 

「さて……そろそろ子供たちが腹を空かせているころだろう。へそを曲げる前に帰ってやらなければな」

 

 ……そう思って帰路に着こうとしていると、進行方向に今年赴任してきた校長先生の姿が見えた。

 私はあまり、この校長が好きではない。勉強、勉強と進学校への切り替えを叫ぶばかりではなく、あんな装置まで導入し出したのだ。

 確かに勉強は大切だろう。個人の努力を測るという意味では、これほどわかりやすいモノはない。しかし、勉強は柔軟な想像力や、行動力を生み出してくれるわけではないのだ。社会に出れば答えのない問いや、出来ないコトというのは必ずある。そんなときに、決められたルートをなぞるだけの人間にはなってほしくない。

 一人一人が生き生きと、確固たる自分を持って生きて欲しい。……私が子供たちに共通して願うことだ。

 どうか、健やかに。

 どうか未来ある子供たちに、幸あれ、と。

 

「育田先生……」

 

 何だろう、また嫌味でも吐いてくるのだろうか。

 この校長の指導に従わない私を、良く思っていないのは確かだろうしな。

 

「校長先生……」

 

「ちょっと話がある。ついてきなさい」

 

 やはり、またお小言か。まったく嫌になる。

 

「はぁ、お話ですか……」

 

 ーー放送室ーー

 

「何でしょう?お話とは……」

 

 ここで、嫌味な校長が振り向く。苦々しい顔をしているな。……そんなに私のやり方が気にくわないのか。

 

「キミの授業は相変わらず、学校が用意したカリキュラムに従っていないそうだな。……再三の注意にも関わらず、だ」

 

……きたか。だが、私にだってやりとおす意志がある。

 

「お言葉ですが、校長。私はあの偏差値を重んじるカリキュラムに賛成できません」

 

「キミも知ってるだろう?私が校長に就任するにあたって掲げた目標を!この学校を一流の進学校にすることだ!そうすれば入学者も増える、結果として入学金も増える。一体何の文句があると言うんだ」

 

「確かに勉強も大事ですが……それ以外に大事なコトもたくさんあるのです。勉強が出来るだけの人間を育てても、何の価値もありませんよ」

 

 そうだ。私は子供たちに……

 

「……キミがいくら理想を語ったところで、生徒の成績が悪ければ他の学校に入学者を取られてしまう……違うか?」

 

 それは……

 

「……………………」

 

「そういえば……キミは『コレ』の導入にも反対してるそうだな」

 

「『学習電波』……ですか?」

 

「そう、この学校が進学校に生まれ変わるための切り札だ。この学習電波の発生装置は全ての教室と繋がっていて、教室中に脳を活性化する電波を流す。キミのクラス以外はかなりの成果をあげているぞ」

 

「学校は人と人との触れ合いを学ぶ場でもあるハズです。なのに機械任せにするなんて……それに学習電波は操作を誤ると、人体に影響を与えると言われているじゃないですか」

 

 こんなモノに頼るなんて、教師としては認めることなど到底出来ないだろう。コレを使って、どんな子供になるかなんて、考えたくもない。

 

「だったら操作を間違わなければいいだけの話だ。いいか、直ぐにこの学習電波をキミのクラスでも使いたまえ。……さもなければ、クビだ! 」

 

「……!」

 

「キミの代わりはいくらでもいる。キミも生活するための金は必要だろう?それが現実だ!何の役にも立たない理想なんて捨てるべきなんだよ!」

 

 そう言って、校長は退室していった。

 

「…………私には、出来ない……成績を上げるためだけの授業なんて……そんなコトするくらいなら、いっそクビになったほうが……」

 

 しかし……

 

「もし、私がクビになったら…………私の、子供たちはどうなる。あの子たちを、生活させるお金は……?」

 

 そうだ、私は親だ。親には親の、義務がある。

 だが、しかし……5-Aの生徒たちは……

 

「しかし、あいつらだって我が子みたいなものだ。勉強だけしか出来ない人間には育てたくない……クッ!」

 

 私は、どうすればいいのだ……!

 

『……悩めるものヨ』

 

 ……声!?

 

「な、何だ!?」

 

 クッ!これは……眩しい……!何だ、閃光……?

 

「その悩み、我が天秤にかけてやろう」

 

「な、なんだ!?お前は!?」

 

 柱の部分が流動的な光の流れで構成されている、天秤のような不思議なモノがそこにいた。良く見ると、柱の上部にある、金属的なパーツには顔のようなものが見える。というか、喋ったな。この口が。

 

「私がナニモノか、などどうでもヨイ。それよりも、オマエが抱えている悩みのほうが大事なのではないカ?」

 

 ……どういうことだ?

 

「なぜ、知っている。私が悩みを抱えていると……」

 

「ワタシにはなんでもお見通しなのダヨ」

 

 聞かれた?……さっきの独白を?

 

「……そうだ。私は悩んでいる……理想を選ぶべきか、現実を選ぶべきか……」

 

「そんなコト、本来天秤にかけるまでもナイ。より確実な方をエラベ。……権力のある側につくのダ」

 

「し、しかし!!」

 

 それではあいつらが……!

 

「思い返してミロ。オマエはこの学校で浮いた存在になってはいないカ?」

 

「……そ、それは!」

 

……確かに。確かに私は他の教師連中に疎まれている。

『カッコつけやがって』『どうせ生徒の人気が欲しいだけじゃないの?』『……ヒソヒソ』

そんな会話を何度も聞いた。しかし、私は!しかし……

 

「うう……」

 

「大方、ホカのやつから疎まれ、孤独を感じているのではないカ?」

 

「ど、どうして、そこまでわかる?」

 

 コイツは何を知っている……!?

 

「理想を追及したニンゲンの末路など、大抵そんなものダ」

 

「わ、私はどうすれば……」

 

「この星には、こんなことわざがあるらしいナ『長いものには巻かれろ』と……ククク、まさにその通りダ。それが最も賢いやり方なのダヨ……ククククク……」

 

 私は、私は……子供たちを…………!!




やっとリブラ登場。長かったですね。
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