星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

29 / 131
29

 ーー翌日ーー

 

「ふぁーあ、眠いな……」

 

 そろそろ起きよう。既に育田先生はリブラに取り憑かれているんだろうか。

 正確な日時はわかっていないハズだから、どうなんだろう。ボクが復学した日になっていたハズけど、多少ずれ込んでいるかもしれない。ボクはもう少し先生の話を聞いてみたいけど。

 正直コナン君の気持ちが少しわかった気がするよ。学ぶことはあると言っても、小学生向けの授業なんだ。段々飽きてくるのは仕方ないとボクは思う。だからこそ、育田先生の話がより面白く聞こえるっていうのもあるんだろうけど。

 

「行ってきまーす!」

 

「いってらっしゃい、スバル」

 

 ーーコダマ小学校ーー

 

 入る前からわかる。この異様な雰囲気、間違いない。既に育田先生はリブラに取り憑かれている!

 電波変換する前にリブラだけ倒せたら最高なんだけど、そんなうまい話なんてないんだろうなぁ……

 

 さて、ダークサイド・オブ・育田先生とご対面といこうか……!

 

 ーーコダマ小学校・5-Aーー

 

「遅いぞ、スバル。早く席に着きなさい」

 

 君をつけろよデコ助野郎!

 

「はい、すいません」

 

 とっとと席に着いてしまおう。まだ始業時間でもないんだけどね。謂れなき叱責にスバル君は心が痛いです。

 

「……じゃあ、早速算数の授業を始めるぞ」

 

 算数!算数だって!そういえば小学生だと算数なんだよね。忘れちまったよ、算数なんて言葉……

 

「え?でもまだ授業の時間じゃないぜ?」

 

「私語は慎みなさい」

 

 ゴン太の正論をばっさり切り捨てる育田(アベンジャー)。これは酷い。

 

「え?……ご、ごめんなさい」

 

 何だか今日は調子狂っちゃうな。

 まさかゴン太が素直に謝るなんて……

 

「そうそう、今日からこのクラスも『学習電波』を導入することになった」

 

 ざわ……ざわ…………

 

 そして再びのカイジタイム突入。でもこのノリ嫌いじゃないよ、ボクは。

 

「どうして、急に……?」

 

 委員長が疑問を唱える。

 

「何か、文句でも?」

 

 しかし今は登校時間だ。

 

「い、いえ……」

 

 そこで引き下がらないで欲しかったよ。こっちが正しいんだから。

 皮肉にも、逆の立場で実感することになってしまったわけだ。生徒との距離がありすぎると、生徒の声が届かなくなる、ってね。

 

「準備はいいか?学習電波、オン・エア」

 

 お、始めてオン・エアって聞いたぞ。意外と普通に使われていたんだね、知らなかった。

 

 ーーブーーーン

 

 お、始まった。どんな感じなんだろうか。

 

「……あら。不思議……頭に数式が浮かんでくるわ」

 

 へぇ…………って、これは、確かに妙な気分だね。頭に入ってくるような、そんな感じだ。でも既知なので、大して頭が圧迫されるような感覚はない。

 

「本当ですね」

 

「1×1は1、1×2は2、1×3は3……」

 

 キザマロも反応が鈍い。流石に九九は知ってるよね。

 て言うかゴン太ェ……

 

「オイ、スバル。ちょっとビジライザーかけてみろ」

 

 ロックがボクに声をかけてくる。なんだろう、ウィルスでもいたのかな?

 

「ほいっと。……変なのが浮いてるね」

 

 これが学習電波。デフォルメされた教師の顔をしているように見えるね。ダサい。

 

「あんまり、いいカンジの電波じゃないな」

 

 そりゃ人体に影響があるからねぇ……

 

「いいカンジじゃないって?」

 

「カラダに悪そうってコトだ」

 

 というかこの学習電波って教師殺しじゃない?

 誰でも操作出来て、本人が授業する必要はない。コレが導入されたクラスに必要なのは、壊れても直ぐに直せるエンジニアだけだよ、まったく。

 

 ーー数分後ーー

 

『ブツブツ……』

 

 みんな小声で入ってきた内容を口に出して反復するだけだ。感情がこもっていないと、嫌に静かに感じるのはなぜだろう。

 

『ボソボソ…………こんなのつまんない』

 

「誰だ!?つまらないだと……?結構だ!授業は面白い必要などない!大事なのは成績だっ!もっと成績を上げろっ!もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっとォーー!」

 

 いきなり教室が閃光に包まれたかと思うと、そこには電波変換したリブラ……リブラ・バランスがいた。

 自分の炎で火傷とかないんだろうか、別に体が炎で構成されているわけでもないのに。

 

「キャーーー!!」

 

「ゲゲゲゲッ!」

 

「セ、センセーー!!」

 

 委員長の十八番に続いてゴン太とキザマロが驚きを示す。こんな展開に二度も遭遇したからね、流石に反応が早い。

 

「おいでなすったぜ!」

 

 ロックの興奮した声が聞こえる。最近は特に苦戦もしていなかったから、刺激でも足りないのだろうか。

 

「私は、変わった。理想など何の役にも立たず、大事なのは如何に世の中を上手く渡っていくか、だ。学習電波、出力最大!」

 

 ーーバチチチ!!

 

 なんかヤバイぞ!次から次へと……

 ウッ!歴史はキツイ……でも、一教科だけなら耐えられる!いい機会だ、覚えきってやる……!!

 

「これは、次から次へと……頭に直接問題が……」

 

「1×4は4、1×5は5、1×6は6、1×7は7、1×8は8、1×9は9……あ~目が回る~!!」

 

 ゴン太さん出力最大でも1の段なんですか……

 

「アイ ハブ ア ペン、アイ ハブ ア ペン、アイ ハブ ア ペン……い、意識が……!アイム フロム コダマタウン、アイム フロム コダマタウン、アイム フロム コダマタウン……遠くなっていく……助けて、誰か……」

 

 委員長は英語のようだ。小学生なら妥当、かな?

 

「…………」

 

「……オイ」

 

「わかってる。もう迷わない」

 

 リブラと育田先生は電波変換したまま教室を出ていってしまった。放送室にいるんだっけか……

 

「(オイ、スバル!!)」

 

「何だよ、今歴史の確認を……」

 

 貴重な詰め込みの機会じゃないか!ボクにとっては死活問題だぞ!?本能寺の変みたいな常識を知らなかったらそれはそれで問題じゃないか!

 スバル君はあまり歴史に興味がなかったようだから、薄ぼんやりとしか記憶にないみたいなんだよ!

 

「(そんなコトしてる場合か!)」

 

 ……わかったよ。委員長たちに影響が出る前に止めようか。でも、もうちょっとだけやりたかったな……

 

「わかったよ、FM星人なんでしょ?」

 

「(ああ、取り憑いているのは見る限り天秤座のFM星人、リブラの野郎だ)」

 

「オーケー、じゃ行こうか」

 

「何を一人言言ってるんだい?」

 

 あ、カヲルくん!じゃなくてツカサ君。

 そういえば影響を受けてないんだよね。ヒカルに負担全部押し付けたのか、それとも、ジェミニによる保護を?

 しかし、ジェミニが出てこないコトを見るに、単独行動中なんだろうね。そういうの、結構あったっぽいし。

 

「ツカサ君、大丈夫なの?」

 

「うん、何でだろうね……先生、どうしちゃったんだろ?」

 

 やはり影響を受けていない。

 

「そっか、よかったよ」

 

「それより、みんなが危険だ。早く学習電波を止めないと……」

 

「多分放送室だよね?他所のクラスでも流してるって言っていたし」

 

「そうだね……多分先生もそこにいるんじゃないかなぁ……」

 

「了解。止めに行ってくるよ、ボク」

 

 ここから先はジェミニか、その部下に見られていると思って行動したほうが良さそうだ。ベルセルクは使えない。何せ同じ雷のチカラ、あのジェミニが警戒しないはずがないんだ。どうせキグナスからバレるだろうけど、復活するまでは大丈夫だろうし、何よりボクはロックと形だけでも別れたりはしない。

 

「気をつけてね……」

 

 やだ、ツカサくんマジヒロイン。

 

 ーー放送室ーー

 

 放送室は5-Aと同じ2階にあったので、直ぐに追いつくことができた。育田先生は学習電波を操作しているようで、こちらを向いてはいない。今の貴方って指、無いよね?

 

「先生!」

 

 育田先生がこちらに気づいたようだ。いや、既に気づいていたのかもしれない。ボクを、子供を傷つけまいと……いや、考え過ぎか。

 

「おや、授業を抜け出すとは悪い子だな」

 

「こんなことをして、何になるというんです!?」

 

「説明出来るコトなんて、何もない。大人の事情ってやつだよ。ただ、言えるのは……私はこの学校が進学校を目指すことに賛成する、それだけだ」

 

 全く、育田先生がこのままじゃ、ボクが学校に行く意味が一つ、減っちゃうじゃないか!

 

「貴方は……それでいいんですか?この前言ったじゃないですか、『公式以外にも大事なことはたくさんある』って」

 

「そ、それは……」

 

「それに、この授業みたいなナニカを、本当に続けていいんですか?今日の授業で貴方がしたことは、学習電波を流したことだけ……貴方が教師である必要なんて、どこにもない。今の貴方は、まさしく吐いて捨てるほどいる人材の一人ってヤツですよ」

 

 この体制を続けていたら、いつか学校の先生とはエンジニアを示す言葉になっちゃうよ!宇田海さんは喜びそうだけど。学習電波に触れられる!ってね。

 

「うぅ……私は……」

 

「しっかりシロ。またココロの天秤が、傾き始めたぞ」

 

 チッ、持ち直したか……

 

「あぁ、心配するな。……ところで、スバル君。キミはどうして自由に動ける?そうか、まだ学習電波が足りないのだな。ならば……」

 

 フン、小学生の授業内容程度でボクを拘束しようなんて、不可能だね。でも、歴史はもう少し……

 

「ならば、もっと強めるだけだ。今度は装置の内部から!」

 

 ………………。

 

「チッ!電脳の中に入りやがった!こうなったら、オレたちも電波化して追うぜ。スバル、ビジライザーだ」

 

「うん。……ウェーブホールがないね。他の場所……確か教室にあったような」

 

 バレないかな?劇のセットで隠れて見えないはずなんだけど……

 

「おう、なら教室へ急ぐぞ!」

 

 その前に……さっきから何か光ってる。

 あれは、カメラ?おっ!HPメモリ、ラッキー!

 

 ーー5-Aーー

 

 教室に戻ってわかったけど、みんなの状態が思ったより悪い!またタイムアタックかよっ!

 

「(電波変換!星河スバル、オン・エア!)」

 

 ーー5-Aのウェーブロードーー

 

「学習電波の電脳へ急ぐぜ!」

 

「わかってる!」

 

 しっかし、迷路然としてるなぁ……動きづらいったらありゃしないよ。

 それに……みんな真剣だった。本気で助けを求めているようだった。なら応えなきゃ、いけないだろ!みんな生きているんだ、ゲームとは違う。誰かの本気は、それをボクに確認させてくれる。だから助けたいって、思っちゃう。こんな理由で、ホントにゴメンね……

 

「そういえば、教室からあのツカサってヤツが居なくなってたな……アイツ、どこかで見たような気がするぜ」

 

 前にドリームアイランドに行った時だろうね。

 

「今、そんなコト考えても仕方ないか。とにかく、リブラを一刻も早く倒すんだ」

 

「わかってる……何か、来る?」

 

『そう上手くいくかな?』

 

 この声……生きていたのか、あのときのジャミンガー!

 ミソラちゃんに追われて生き残るとは……っと、落ち着け。今は急いでる。委員長が危ないんだ。コイツの相手をしている暇は……!ゲームのように、スターフォースに覚醒するなんて、そんなラッキー期待出来ないんだ。

 

「アンタは……この前の!」

 

「チッ!リブラだけでも手一杯だってのに!」

 

「……ニヤッ」

 

「オイ!オマエ何者なんだ!?リブラの手下か!?」

 

 違う、違うんだ。コイツはジェミニの……

 

「今度は、逃がさない」

 

 前みたいにミソラちゃんは来ないだろう。今日は1日音楽と学校の勉強があるって言ってたし。

 

「く、来るぞ!構えろスバル!」

 

 クソッ!ベルセルクなしでは!……最悪、ベルセルクを晒さないとダメか……!

 

「……いくぞ」

 

 クッ!向かってくる!何とか捌ききらないと……!

 

「ロック!」

 

「ウオォォォ!!」

 

 リュウエンザンで斬りかかる。が、腕を交差させたジャミンガーGタイプに防がれる。……相変わらず、凄い耐久性だ!

 

「フン!」

 

 交差させた腕を勢いよく振りほどき、その勢いでボクをふっ飛ばす。やはりパワーがダンチだ!

 

「今度は、此方からいくぞ……!」

 

 ウェーブロードが軋むような踏み込みによって得た、純粋な突進力でボクたちに突っ込んでくる。ウォーロックアタックのような特殊性が無くとも、このパワーはとても厄介だ。何せ汎用性が高い。

 高度な特化型は、それだけで大抵の分野をカバーしてしまうのは、戦闘ならではということか……!

 

「オイ、スバル!このままじゃ、じり貧になっちまうぞ!(ベルセルクを使え!コイツを始末すれば、口は塞げるハズだ!)」

 

 ダメだ!ジェミニに狙われるかもしれない!戦って負けるとは思えないけど、ミソラちゃんやあかねさんを人質に取られたら、ボクは何も出来ない!

 痛いんだよ!やっと手に入れた絆を失いかけるのは!体を引き裂かれるより、ずっと痛いんだ!

 

 ーー精神世界ーー

 

 何だ!?ボクはあのジャミンガーと戦って……いや、これは精神世界?

 とても殺風景だ。まるでボクみたい。いや、今は違うか。それよりも。

 

「ここは……」

 

『スバルよ……』

 

 この声……ペガサス・マジック!

 

「ここで、朽ち果ててしまうのか?」

 

「オマエは……この前のヤツ!」

 

 ロックも来ていたのか。

 

「随分苦戦しているようだが……オマエのチカラはこんなものじゃないはずだ」

 

「今も、十分やってるさ!」

 

 思わず、声を荒らげる。クソッ、焦っているのか、ボクが……!

 

「フン……オマエには聞こえないのか?オマエを呼ぶ、あの声が……!」

 

 声?そうだ、教室には、委員長たちが……

 

『……す……て』

 

 よく、聞こえない。でも、ボクはこの声にしっかり耳を傾けなきゃいけない。そうじゃなきゃ、多分一生後悔することになる!

 

『……すけて』

 

『助けて……助けて、ロックマン……!』

 

「この、声は……」

 

 クソッ!何で泣きそうなんだ!委員長が、助けを叫んでるんじゃないか、必死に!不甲斐ない、ボクに……

 

「うぅっ……委員長……」

 

 そうだ。委員長は、本気なんだ。こんな時に、ロックマンに、心の底から助けを求めてる。存在すら確かではないって、誰も本気で信じていないというのに……

 あぁ……うん。もう、大丈夫。ありがとう、委員長。キミのお陰でボクはまだ、戦える。

 

「さて、もう一度言う。ここで、朽ち果ててしまうのか?オマエを呼ぶ、あの声を捨て置いて……」

 

 答えなんて、決まってる!ボクは、委員長を守るぞ!

 

「ありがとう、ペガサス・マジック。貴方のチカラ、お借りしますね。ボクの守りたいモノが、増えたんです」

 

「その言葉を、待っていた。大事な誰かのためなら、無限に強くなれる。それが『人』というものだ……さぁ!準備は整った!星のチカラ、『スターフォース』を今こそ解放させるのだ!」

 

ペガサス・マジックのカゲが、ボクの中に入っていく。これは、翼。……無限に羽ばたける、ボクの翼だ……!

 

 ーードクン!

 

 うおぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!

 

 ーー5-Aのウェーブロードーー

 

「何だ?急に立ち止まって……こ、これは!?何だ!?何が起きた!?」

 

「うおぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!」

 

 胸に埋め込まれたスターフォースの鼓動を感じる。

 スターフォースの輝きがボクを包む。溢れ出るチカラの奔流が止まらない。ボクは今、誰よりも強い!

 

「……この、姿。ペガサス。アイス、ペガサス……!!」

 

「……面白い」

 

 ボクは決めたんだ!覚悟を決めた男を、止められると思うなよ……!!

 

『スバルよ……』

 

 ……これは、ペガサス・マジックの声。そうか、スターフォースによって得たチカラを解説してくれるらしい。

 ……うん、うん。わかった。ありがとう。これで、心置きなく戦えるッ!

 

「いくぞ!」

 

 この戦い、絶対に負けられない!

 ウェーブバトル・ライドオン!




何だか出しきった感があります……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。