星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 次の日、早朝に起床し不登校児童用のナビ『ティーチャーマン』を起動し、歴史以外の学習をサイレントモードにして速攻で終わらせ、静かにここ数百年の歴史について学んだ。

どうやら、この世界の歴史は向こうの世界とは全く異なるようで、勉強をサボっていたらしいスバル君のツケを払わされる羽目になってしまったのだ。

昨日から起きていたウォーロックが内容を覗いてくるが、無視だ、無視。

 

「おいスバル。何をやっているんだ……?」

 

「静かに。母さんが起きちゃうじゃないか……母さんは今日もパートがあるから、あまり苦労をかけさせたくないんだ」

 

「そうじゃなくて、このオーパーツってのは……?」

 

 それと、余った時間でウォーロックにボクのことを伝えながら、いくつかの調べものをしなくてはいけない……キーワードは、古代、オーパーツ、展示っと……どれどれ…………

 

 ーー二時間後ーーー

 

 朝5時から勉強を始めて、今現在は午前8時。

母、あかねさんは既に起きて朝食でも作っている頃だろうか。

先ほどからこんがりと焼いたベーコンの香ばしい香りが漂ってくる。

……お腹減ったな……スバル君の記憶では、朝食はあかねさんがパートに行ったあとに一人で食べているらしいので、出来立てを食べれないことが歯痒いが、あかねさんの料理は絶品が多いらしいので、多少冷めていても美味しく頂けそうだ。

それに現在では、食品の生産技術や、加工技術も向上している為、食材の味自体も良くなっている。

ああ、しかし三時間も頭を使った後なんだ、お腹が減ってしょうがない。

……多少怪しまれるかもしれないが今日の朝食は一緒に摂ることにしよう……ウォーロックは部屋で待っていてもらうか……

 

 ーーリビングーー

 

 星河家のリビングは、キッチンやテーブル、じゅうたん等、一通りの家具が揃った共有スペースになっている。

比較的広いため、二人で暮らしていると少々寂しく感じるのはこの体の記憶に精神が引っ張られているからだろうか……?

キッチンではあかねさんがベーコンを焼いている。調理中の音に紛れて、ボクが降りてきたことには気づいていないようだ。

 

「母さん、おはよう」

 

「っ!あら……スバル。珍しいわね、こんな時間に起きてくるなんて。久しぶりに一緒に食べない?もうすぐ出来上がるわよ……?」

 

 嫌みに聞こえなくもないが、スバル君の生活習慣をしっかり把握している場合、全く嫌みではない。

しかしあかねさん優し過ぎる……普通三年も学校サボってたら愛想だって悪くなるだろうに……しかも自宅学習だってサボり気味だ。

 

「ちょっと早く目が覚めちゃったんだ。ティーチャーマンをサイレントモードにして勉強していたら、お腹空いちゃって……我慢出来なさそうだから食べに来たんだ」

 

 …これはスバル君っぽくないかも……

 

「あら、そう。偉いわね……じゃあ一緒に食べましょう?」

 

「……わかったよ」

 

 ーー朝食後ーー

 

「……ご馳走さま、美味しかったよ」

 

「ありがとう。……毎日この時間に起きてくれば出来立てを食べられるわよ?」

 

「……うん、考えておくよ……」

 

 …今のはスバル君っぽくなかったが、つい口をついて出てしまった。あかねさんの料理、とても美味しかった……

こんなに美味しい出来立てを毎日食べ損なっていたなんて……スバル君め……勿体ないことを……

 

「スバル、母さんはパートにいってくるわね」

 

「……うん、行ってらっしゃい、気を付けてね」

 

「ええ……」

 

 何か迷ってる?そんな表情をあかねさんはしている……

 

「どうしたの……?母さん」

 

「ええと、スバル……アナタ、また学校に行ってみない?アナタには友達が必要だと思うのよ……無理にとは言わないわ。どうかしら…………?」

 

 …反応しづらいなぁ、この話題……

 

「……昨日、新しいクラスの人が学校に誘いに来たんだ……多分、良い人たちなんだろうと思う」

 

「なら、スバル、学校に……」

 

「でも、まだ怖いんだ、周りの人が居なくなっちゃうことが……」

 

 すまないが暫くは勉強はティーチャーマン任せで自由時間を確保したいので学校はNGだ。

あかねさんに嘘をつくのは心苦しいんだけれども……

 

「そう……そうよね。ごめんなさい、余計なお節介だったわ……」

 

「うん、じゃあ部屋に戻るよ……行ってらっしゃい、母さん」

 

「ええ、行ってきます」

 

 ーー自室ーー

 

 部屋に戻るとさっき出たときと変わらない、でも昨日までの朝とは決定的に違う要素がこの部屋にはある。それは…………

 

「おう、スバル。メシは食ったのか?」

 

「うん、食べたよ」

 

 当初ウォーロックは星河家の朝食に着いていこうとしたが、ジロジロと見られながら食べる趣味はない。なので、町の案内と電波変換してコダマタウンの散策、ついでにウィルス退治で暴れさせることを条件に部屋でおとなしくしてもらった。

 

「よし、それじゃあ行こうぜ!」

 

「ちょっと待ってよ、まだ食べたばかり……」

 

「いいじゃねーか、案内位できるだろ?」

 

「お腹痛くなりそう……」

 

 食べてすぐ運動したら吐いちゃうって!

 

「わかったよ、ゆっくり案内するからね」

 

「へっ!別にすぐ終わらせてウィルス退治でもいいんだぜ?」

 

「……はーい、ハァ……準備するから少し待っててね」

 

「早くしろよ!」

 

 もうちょっと落ち着きを持って行動してくれよ……が、しかし耐えるんだ星河スバル……早く案内を終わらせてしまおう。

…………ウィルス退治が楽しみなのはロックだけじゃないんだから。

 

 ーーコダマタウンーー

 

 現在は午前8時30分。既に多くの学校ではホームルームが始まっている頃だろう。

小学生である以上、通学で行動がかなり制限されてしまうのが低年齢主人公のネックだと思っていたが、考えてみるとスバル君が引き込もりだったのは製作陣に都合が良かったからなのかもしれない……

小学生が引きこもりである為に、三度も救われてしまう世界って……

 

「おい、スバル。適当に誰かと話してみろよ」

 

 …お前は引きこもりのコミュ力にいったい何を期待しているのか……!

 

「……わかったよ。でもトランサーの中で暴れたりしないでよ?周りの人に変な目で見られちゃうから……」

 

「別に、オマエはオマエだろ……誰かに変な目で見られたからって変わっちまうわけじゃないんだろ?」

 

「……そりゃそうだけど。ボクが悪目立ちすると母さんに迷惑を掛けちゃうから……」

 

「フン!……地球人ってのはよくわからねぇな」

 

「みんな誰かを尊重して生きているんだよ、ロック」

 

 

 

 ーー30分後ーー

 

「一通り話してきたけど……」

 

 流石にこの時間に町を歩いているのは老人か親子連れ位なんだよね……

 

「ねぇ、もういいだろ……っていうか、父さんの話もしてくれよ」

 

「わかったわかった……だがもう少し付き合ってもらうぜ」

 

「……次は何処に行くんだい?」

 

「あいつらのトランサーの中さ」

 

「トランサーの中?なんでさ……」

 

「トランサーの中といってもオレが見たいのは地球人たちのパーソナルページだ。普段、他人には見せないパーソナルページを見ればその人間がどんなヤツなのか、何を考えているかが大体わかるのさ、それに…………」

 

「それに?」

 

「いや、何でもねーぜ!」

 

「……けど、他人のパーソナルページを覗くなんて、あんまり気が進まないよ」

 

「オマエが嫌がっても、オレは行くぜ……オマエのトランサーを引っ張ってな」

 

 ちょっ、やめ、ヤメロォー!

 

「わかったから!けど、どうやって……」

 

「昨日と同じ手順で、電脳世界を経由してトランサーに入ればいいのさ」

 

 …はいはい、周りの人に見られないように電波変換しなきゃね……

 

「……電波変換。星河スバル、オン・エア」

 

 ウォーロックの力を宿したカードをトランサーに読み込ませ、融合を開始する。

……ああ、やっぱり電波体はいい。

……何者にも縛られない、真の自由を感じるよ……

 

 ーー30分後ーー

 

 ウェーブロードを伝ってトランサーを持った人に近づき、トランサーの中を覗きながらエンカウントするウィルスを退治してきたけど……

 

「これで一通り入ったかな……まだやるの、ロック?」

 

 メットリオがピッケルを突き立て、発生させたグランドウェーブを左に跳躍しながら回避し、キャノンを発動。ウェーブロードからピッケルを引き抜いているメットリオに狙いを定めて発射……最後のメットリオのHPが0になり戦闘が終了する。

……キャノンを解除し両足で着地、新手が来ないか確認するも、出現の気配はない。

この辺りにはメットリオとキャノンベースしか出ないから物足りなくなってきた。……そろそろ遠くまで出かけてみようかな……

 

「フム……やはりパーソナルページってのは直接喋った時とは違う情報が手に入るな」

 

 戦闘自体には慣れてきたけど、やっぱり興奮する。こりゃあサテラポリスが人工電波生命体をつくろうとするのも頷けるなぁ……

 

「そんなの当たり前じゃないか、ブラザーバンドを結んだ人同士にしか見せないページだからね……誰にでも全く同じ態度で接する人なんて……ボクは逆に信用できないよ」

 

「しかし、妙だな……」

 

 …あっ、もう次のFM星人が来たのか…確か、オックスだっけ?

ゲームではスーパーアーマー持ちだったからな……勝てるか?今のボクで……っていうか、仮にもFM星人の戦士ならもう少し危機感もってよ……

 

「妙って?」

 

「ああ、今朝からFM星人の気配を感じたもんだからよ、オレみたいに誰かのトランサーに隠れているヤツがいるんじゃないかと思ったんだが……少なくとも今出歩いているこの町の住人のトランサーの中に隠れているFM星人はいないようだな」

 

「……そういうことは先に言ってよ……もし誰かのトランサーの中でFM星人と鉢合わせしてたら……」

 

「間違いなく襲いかかってくるな」

 

「そんな他人事みたいに言わないでよ……!」

 

「…………シッ!静かにしろ」

 

「(なんだよ!いきなり!?)」

 

「オレが今朝感じたFM星人の気配がする」

 

「(でもトランサーの中にはいなかったよ?)」

 

「FM星人が入り込むのはトランサーの中だけじゃねぇ」

 

「ああ……機関車がそうだったね。……と、いうことは……」

 

「電脳世界だ。近くの電脳世界のどこかにFM星人に関係のあるヤツがいるはずだ!」

 

「そのFM星人は敵対してるんだよね……じゃあ戦うのかい?」

 

「おう!先手必勝、こっちから撃って出てやろうぜ!この辺りの電脳世界を探して回るぞ、スバル!」

 

「わかったよ、また機関車みたいになったら大変だもんね……」

 

 ーー5分後ーー

 

「ウェーブロードにいたデンパたちの話によると、この自動車に怪しい人影が入っていったらしいよ、ロック」

 

 初の電波変換体との戦闘……気を引き締めなくっちゃ…………さぁ、行くか!

 

「おう!行くぞスバル、突入だぜ!」

 

 いざ、自動車の電脳世界へ……


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