星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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何だか、久しぶりにちゃんとした戦闘描写を書いた気がします。


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 ーー5-Aのウェーブロードーー

 

 チカラが溢れてくる。背中の翼が震えだす。今にも弾けそうな勢いだ!

 ボクは、コイツを退けて委員長を助けるために行かなくちゃいけない!そこをどけぇッ!

 

「うおぉっっ!」

 

 肉薄し、シールドバッシュを敢行する。ベルセルクよりも出力が高い!やはり宿したチカラの総量の違いってヤツか!300%は固い……これなら正面からでもッ!

 

「チッ、このパワー……!何なんだ!?」

 

「まだまだァッ!」

 

 休む暇など与えない!

 既にチャージは完了しているぞ!アイススラッシュ(射撃)を食らえッ!もちろん動きを封じるため、足狙いだ!

 

「こ、これは……凍結!?」

 

 ゲームと違って現実で凍結状態は中々解除されはしない。そして、ベルセルクよりも余剰エネルギーが多い今、SFB(スターフォースビッグバン)を放てる頻度も上がっている。威力もだ!この状況、外す訳にはいかないッ!

 

「覚悟しろ……!ボクは、急がなくちゃいけないんだ。邪魔するって言うのなら……!」

 

 かなり昂っていることを自覚しながらも、コイツへの戦意は衰えるコトを知らない!氷漬けにしてくれるッ!背中の羽を振るい、ウェーブロード上から飛翔する。これでアイツの攻撃は届かない……!体に纏う、冷気の流れをイメージ……対象の範囲に魔方陣が出現、発動する。

 

「ハァァッッ!!マジシャンズ!フリィーズッ!!」

 

「ガアッ!く、くそ……ジェm……」

 

 魔方陣から発生した氷柱に飲み込まれ、完全に動きを停止するジャミンガー。分厚い氷に閉じ込められ、あとは回りのウィルスによってデリートを待つばかりだろう。

 そこで凍ってろ!永遠に愉快なオブジェとしてなぁ!

 

「スターフォース、凄いチカラだったぜ」

 

 予想以上のチカラだったよ。でも、ありがとう委員長。キミの声、確かに聞こえた。とても心に響いた。だから頑張れたんだ。

 

「いくよロック!助けを求める声を、放っておくことは出来ない!守りきってみせるぞ、絶対に!」

 

「おう!」

 

 飛翔したまま、放送室へ向かう。これが、三次元機動。今までとは、まるで世界が違う……

 

『いま……の……こえ…………ロック…マン……?』

 

 

 ーー学習電波の電脳1ーー

 

 ……周囲には数式や四字熟語、化学式などが飛び交っている。学習電波の電脳らしいといったらそうなんだろうか。

 

「先生はこの奥か……」

 

「ひとっ飛びだぜ、スバル!」

 

 わかってる!けど、流石にセキュリティはかかっているだろうな……一々解除して回らなきゃいけないのは、苦労しそうだ。

 

「フゥ……飛ぶよ、ロック!」

 

 いきなり体に新しい器官が増えたんだ。まだ慣れていない翼の動きを意識し続けるのは、中々苦労する。これも要練習だね。

 

「なんだ、アレ?」

 

 視界の先では、ウェーブロード上にデフォルメされた恐らく初代校長のモノと思われる顔が見える。これはまさか……アレか?

 この先のセキュリティ突破のためにクリアしなきゃいけないとか……

 

「やるしかないね……行くよ、ロック」

 

「おう!」

 

 デフォルメされた校長の顔……デフォルメ校長の前に降り立ち、破壊を試みる。何だ?テストペーパーに顔がついたようなヤツが出てきたぞ。

 

「河童の……」

 

「何だ、コレは!?」

 

「5、4、3……」

 

「これはことわざだね……ええっと、川流れ!」

 

 ーーピンポン!

 

 軽快な音とともにテストペーパーのオバケのようなものが四散する。これで、オーケーみたいだ。そしてロックバスターを放つ。

 

「やったぜ!」

 

 今は急がないと……!幸いペガサスは負担も小さいようで、そこそこ長く続けていられる。リブラまで持てばいいけど……

 

 ーー五分後ーー

 

「1+2+3+4は?」

 

 こんなの間違うかっ!

 

「10!」

 

 ーーピンポン!

 

「やったぜ!」

 

 更に2つのデフォルメ校長を破壊した。このエリアにはもう無さそうだ。先へ進もう。

 

「スベテ ノ カダイ ヲ クリア シタヨウ デスネ……ヨクデキマシタ!」

 

 セキュリティを突破した!やっぱりあのデフォルメ校長がカギだったのか!

 

 ーー学習電波の電脳2ーー

 

 まずは空高く飛翔し、エリア内のデフォルメ校長を探す。……あった!3つだ。やっぱり、次のエリアは封鎖されている。あそこからしか、次のエリアには入れないみたいだ。

 

「とっとと破壊しちまおうぜ、スバル!」

 

「ああ!」

 

 学習電波の前に降り立ち、ロックバスターを構える。

 チッ!また出てきたか……

 

「臭いモノに……」

 

「蓋!」

 

 ーーピンポン!

 

「よし、やったぜ……次だ!」

 

 よし、順調だ。落ち着いて、冷静に、冷静に……!

 時間制限があるんだ。落ち着いて解かないと……

 

 ーー五分後ーー

 

「風が吹けば……」

 

 さっきからことわざ多いな!

 

「桶屋が儲かる!」

 

 ーーピンポン!

 

 よし、これで全部だ!

 

「スベテ ノ カダイ ヲ クリア シタヨウ デスネ……ヨクデキマシタ!」

 

 さぁ、次へ!

 

 ーー学習電波の電脳3ーー

 

 よし、見つけた。四つだ。それに、このセキュリティを突破した先に、恐らくリブラ・バランスがいる。急がなくちゃ!

 

「桃栗三年、柿……」

 

「八年!」

 

 よし、クリアだ。あと3つ……!

 

 ーー五分後ーー

 

「りゅああうあせああああああい……あを抜くと?」

 

 え、えっと……

 

「りゅうせい!」

 

 ーーピンポン!

 

 よし、これでクリア!リブラ・バランス……育田先生が待っている。止めないと!

 

 ーー学習電波の電脳3・最奥ーー

 

 セキュリティを突破した後に続く長いウェーブロードを進んだ先に、リブラ・バランスはいた。先程よりも落ち着いている。持ち直されたか……

 

「おや、何者だ?」

 

「ボクは、ロックマン!貴方を止めに来ました。もう止めてください!」

 

「よぉ、リブラ!オマエだろ?」

 

 ロックが声をかける。結構ロックの人脈って広いのね。他のFM星人の時も思ったけど。

 

「その声……裏切り者のロックではないカ。随分と妙な姿をしているが……所詮は忠誠とウラギリの天秤が測れぬ愚か者ヨ」

 

「ヘッ、だからってな、炎と水の重さが測れても、全然嬉しかねぇぜ、オレはよ」

 

 全くだ!早く学習電波を止めたい……

 

「何にしてモ……これで此方から探す手間が省けたというワケだ」

 

 やはり、こちらを追っていたのか。しかし、まずは宿主の確保が最優先なんだろうな、きっと。

 

「あまりナメるなよ……!こっちは新しいチカラを手に入れたばかりでな、全く負ける気がしないんだよ!なぁ、スバル!」

 

「今すぐ、学習電波を止めてください……!」

 

「そうはいかない。……生徒の成績を上げねば、私はクビになってしまう」

 

 それも、わかるけど……!

 

「貴方は、それでいいんですか!?あんなに大事にしていた生徒たちを、苦しめて……!貴方は先生でしょう!?それに、掲げた目標があるのなら、やらなきゃいけないコトだって成し遂げてみせろ!貴方の話は評判なんだ!なら、授業に活かせばいいじゃないか!貴方の言葉は、この学校にいる、教師の誰よりも生徒に届くんだぞ!?それをよく考えもせず、流されて……!カッコいい大人の見本だった、あの育田先生はどこにいったんだ!」

 

「……そ、それは……」

 

 頼む、このまま……!

 早く学習電波を止めなきゃならないんだ!

 

「オイ、何度同じコトを言わせる気ダ?何かを守るには、何かを犠牲にせねばならナイ。それがこの世の真実なのダ!」

 

 また、邪魔をして……!まずはリブラをやらなきゃダメか……ッ!

 

「ああ、すまない。私はクビになるわけにはいかない。何故なら、私は……私は親として、自分の子供たちを守らなければならん!」

 

「こっちだって、譲れない!守りたい人がいるんだッ!」

 

「そうか……なるだけ乱暴なコトはしたくないが、こうなれば!」

 

「来るぞ、スバル!迎え撃て!」

 

 わかってる!ウェーブバトル・ライドオン!

 

「ロック……『アンドロメダのカギ』は返してもらうゾ!」

 

 リブラ・バランスは両腕が天秤になっている性質から、恐らくは後衛型。接近戦なら、ロックマンの独壇場だッ!しかしアイスペガサスはその飛行性能から、安全圏である空中で砲撃を行うのが得策のハズ。でも今のボクのフォルダは近接戦闘寄りの構成になっている。流石に今からフォルダを変える暇はない。何で気づかなかったんだ、ボクは!

 

「動かないのなら……此方からいくぞ!」

 

「ッ!」

 

 リブラ・バランスが右腕?に渦巻く水流を放ってきたぞ!不意討ちだけど、危なげなくシールドで防ぐ。

 なるほど、腕を振るう必要はないのか。まさに魔術師と言ったところだ!バランスというからには、炎に関しても同程度の威力、操作性を誇っているのだろう。コイツに近づくのは、容易じゃなさそうだ……!

 

「フン……反応は良いようダナ」

 

 反応はって!パワーだって張り合えるぞ、このアイスペガサスならッ!……落ち着け。ムキになっちゃダメなんだ。ここまでの移動で翼の扱いには慣れてきたけど、FM星人を相手取った戦闘機動はまだ無理そうだ。だから……

 

「食らえッ!」

 

 道中の戦闘で手に入れたバトルカード『パワーボム2』を投擲する。これは今までよくお世話になってきた『パワーボム1』の上位にあたるバトルカード。

 

「フン……こんなモノで!」

 

 左腕の天秤で発生させている炎を砲弾のような形状にして、空中のパワーボムを迎撃する。

 ……狙い、通りだ!

 

「ロック!」

 

「ウオォォォッ!!」

 

 ロックの雄叫びを置き去りにする速さでリブラ・バランスに突進する。心なしか、ノーマルのロックマンよりも速い!

 

「わざわざ死地に乗り込むとはなぁッ!……何!?」

 

 そうさ!パワーボムは攻撃用じゃない。両天秤に発生させている炎と水流を爆発でふっ飛ばして、一時的に使えなくさせるためだッ!

 

「うおぉぉっ!!」

 

 左腕にリュウエンザンを展開!ついでに翼で更なる加速をッ!直線なら今の練度でも出来る!速攻で決着をつけてやる!

 

「チッ!……ハアァァァッッ!!」

 

 クッ!体ごと天秤を回転させて範囲攻撃を行う気だ!一旦下がって……

 

「逃がさんぞッ!」

 

 回避先にカゲッ!?いやこれは分銅……違う、もはやこれはグリップのないハンマーだ!明らかに重力に従っている気配がしない。こんなモノまで操れるのかッ!?

 

「ウグッ!……こんなのでェッ!!」

 

 両腕でハンマーヘッドを受け止め、何とか左に逸らす。あ、危なかった……!

 

「フン、馬鹿力というヤツか……」

 

 クソッ!今の隙でリブラの炎と水流が再発生してしまった。仕切り直しか……!

 

「私は私の家族のために、キミを倒す!それが最も優先されるべきことだからだ!」

 

「そんな詭弁が通じるかぁッ!!」

 

 再びパワーボムをリブラ・バランスに投擲する。しかしリブラも先程のような焦りはない。この先の展開を読まれていなければ、まだ!

 

「二度も同じ手を!大人を舐めないでもらおうかッ!」

 

 再び回転する構えだ!

 

「ロック!」

 

「……あぁ、ウオォォォッ!!!」

 

 ありがとう、信じてくれて!ここで決める!

 

「突っ込むぞッ!!」

 

 ウォーロックアタックで突っ込み、リュウエンザンを展開。ここまではさっきと同じ。しかし、これからだ!

 

「吹き飛ぶがいいッ!……何!?姿が消えただと!?……何処だ!」

 

 リブラ・バランスの回転に巻き込まれる瞬間!バトルカード『インビジブル』を発動する!見失った隙に、上空へ!回転とは言っても、その中心ならッ!

 

「…………ッ!!」

 

 喋って気づかれないように、無言でリブラ・バランスの遥か上空に滞空し、一気にダイブする!突き出した左腕にはリュウエンザン!これで決める!

 

「風切り音?まさかッ!?」

 

 もう遅い!脱出不可能だァッ!!

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 こちらを向いたリブラ・バランスの顔からリュウエンザンを突き入れ、貫通する!そのままウェーブロードに叩きつけ、リュウエンザンを引き抜く。HPはギリギリ残っているから、死んではいない、ハズ。

 

 そういえば、さっきの『インビジブル』は、委員長から貰ったルナフォルダに入っていたカード。委員長が、守ってくれたのかな?

……あぁ!何だか照れ臭くなってきたぞ!

 

「そうだ!今の内に学習電波を止めないと!ええっと、これで……」

 

 ーーピー!ガクシュウデンパ ヲ キンキュウテイシ シマス ガクシュウデンパ ヲ キンキュウテイシ シマス……

 

「フゥ……これで学習電波は止まったハズ」

 

「く、クソ!や、やられてたまるものか!」

 

「まだ動けるのか!?」

 

 痛みは軽減されてるとはいえ、顔から刀身が入ったんだぞ!?そんな馬鹿な!

 

「もうやめろよッ!」

 

「負けるわけには、いかない。ここでクビになってしまっては……」

 

 強情な人だ!だからこそ、今までやってこれたんだろうけど。その意志の強さには、敬服する。

 

『……せんせ~い!』

 

 !?

 

「……こ、この声は」

 

『……せんせ~!』

 

 ーー現実世界・放送室ーー

 

「ここにもいないわね、育田先生」

 

「先生、どうしちゃったんですかね」

 

「なんかヘンなものでも食べたんじゃないのか?」

 

「熱でもあったとか?」

 

「そうじゃないと、あの育田先生が、成績上げろー!!……なんて言うワケないしね」

 

「だったら、早いところ病気を治してもらっていつもの先生に戻ってもらわなきゃ。さぁ、手分けして探すわよ。……全く、スバルくんまで何処に行ったのかしら」

 

 

 ーー学習電波の電脳3・最奥ーー

 

「……そんな。まだ、信頼してくれると言うのか、こんな私を……」

 

「オ、オイ!動揺するナ!」

 

 リブラが焦っている。もう、ボクのチカラは必要ない。育田先生が自分で何とか出来るだろう。

 

「私はバカだった。……これじゃあ、生徒に顔向け出来ない……」

 

「それでは、オマエの子供たちはどうナル?一家共々路頭に迷う気カ?」

 

「いいや、子供たちも守って見せる。絶対に!」

 

「な、何を言っている?気でも触れたカ?」

 

「私は、教師を続ける。でも、私の哲学も曲げない。私に足りなかったのは、それを貫く『覚悟』だったんだ……生徒たちの優しさに触れて、やっと気がついたよ」

 

「そんなのは無理に決まってル!」

 

 もうリブラは動揺を隠そうともしない。無駄だよ。育田先生は強い人だ。本来、お前なんかが付け入る隙なんて無かったんだ。

 

「確かに。しかし、大事なのは『努力』を続けること。努力を続ければ、無理を可能にすることも出来るかもしれない。……何より、私はその事を子供たちにこの身をもって示す義務がある。私は親であり、教師でもあるのだから!」

 

「グオォォォォォ!!!」

 

 消えた……か。

 

「リブラのヤツ、ざまぁねぇな!さぁスバル、早いトコロ戻ろうぜ!」

 

「うん、そうだね。これならきっと、大丈夫」

 

 何とか解決出来たか。良かった。

 それにしても……スターフォースと合わせて、二度も助けてもらっちゃったな、委員長には。

 ミソラちゃん以外にも秘密を話すべきか、真剣に考えなければならないかもしれないね……




もう私を罵ってくれてかまいません!
私は感想乞食なんです!なので……

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