星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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やっぱりオリジナル多めだと疲れますね……


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 ーー翌日ーー

 

 こうして、今回の事件は解決した。事件後、直ぐに騒動の原因究明が行われたけど……結局学習電波の操作を育田先生が誤ったから、と判断された。誰も電波変換して暴走してたなんて信じないだろうから、当たり前だけど。

 それを受けて、学習電波の使用は見直されることになったんだ。そして育田先生は、今回の騒動の責任を取る形で辞表を出した。

 このままじゃ、先生が学校からいなくなってしまう。ボクたちは行動を起こすことにしたんだ。

 

 ー5-A・放課後ーー

 

「皆、少し残ってもらえるかしら?」

 

 きっかけは委員長の提案だった。

 

「みんなも知っての通り、育田先生が辞表を出したわ……このまま学校が受理してしまったら、育田先生はコダマ小学校の教師を辞めることになる。……皆は、どう思ってる?これはただの質問よ。正直に答えてくれて、構わないわ」

 

 きっと委員長も腹に据えかねているんだろう。あの育田先生が自ら辞表を出して、コダマ小学校から出ていってしまうなんて。

 

「……そんなの、イヤだ」

 

 教師の居ない生徒だけの教室で、誰かが呟くような、そんな声がした。それが呼び水になったのだろう。教室は育田先生の辞任を惜しむ声で溢れることになった。

 

「こんなの間違ってる!」

 

「あの育田先生が辞表なんて、おかしいに決まってるよ!ワタシたちを、自分の子供たちと同じくらい大切にしてた先生が……こんな、途中で放り出すようなこと!」

 

「そうだ!そうだ!」

 

「僕は育田先生以外の授業なんて、もう受けたくないぞ!」

 

「育田先生は、色んなクニのウマそうな料理の話をしてくれるんだ!」

 

「ぼ、ボクだって知らないような、興味深い知識を披露だってしてくれます!」

 

 教卓に立つ委員長も、満足そうだ。ホント、良いクラスだよ、まったく。

 

「みんな、ありがとう!ワタシも、これで覚悟が決まったわ……!覚えておいて。この件に関して、ワタシたちは、決して一人じゃない!いいわね、取り戻すわよ!育田先生を!」

 

『うおぉぉぉーーーっ!!!』

 

 クラスのみんなが声を大にして叫ぶ。委員長ってやっぱり凄いや。こんなのボクには真似できないよ。

 

 クラスが気持ちを一致団結し、落ち着いた頃、委員長が再び話し始めた。

 

「さて、特に大きな権限をもっているワケでもない、ワタシたちが出来ること……それは、大多数の意思を示すコトよ!」

 

「だいたすうのいしをしめす?」

 

 ゴン太が、あまりよくわかっていないような反応を返す。ゴン太にはちょっと仰々し過ぎたかな?

 

「そうね、簡単に言うと、生徒の署名を集めるわ。但し!学校側の人間に見られないよう、学外でね!」

 

 なるほど、学校の意思にそぐわないコトをしていたら、止められるかもしれないからね。上手いことを考えたモンだ。

 

「具体的には、どうやって署名を集めるんです?」

 

 キザマロの疑問は最もだ。どうやって短期間に学外で多くの署名を集めるというのか。しかも生徒限定だ。

 

「フフフ、よく聞いてくれたわ!それはね……スバルくん!」

 

 えっ!?ボク?

 

「どうしたの?」

 

「貴方、天体観測が趣味とか言ってたわよね?星座や、星に関する知識は多少なりとも、あるんでしょう?」

 

 まぁ、スバル君の記憶としては頭に星に関する知識は入っているけど……

 

「まぁ、そうだね。あんまり誇れるようなモノではないけど、多少は」

 

「なら、十分よ!多くの生徒たちを学外に集める、その方法は……!」

 

『その、方法は……?』

 

 クラスのみんなが唾を飲むようの音が聞こえる気がする。やっぱりノリがいい。

 

「生徒主催の、天体観測よ!」

 

 なるほど、この町には中々立派な展望台もある。夜中とはいえ集団で行えば、危険も減るだろう。それに、子供が夜にクルマを運転出来る時代だ。親だって大勢で参加するなら、反対もしづらい、のか?

 しかし、全ての生徒を引っ張ってこれるわけではないハズだ。来れなかった生徒の分はどうするんだろう。

 

「委員長、質問いい?」

 

「何かしら、スバルくん」

 

「来れなかった人はどうするの?」

 

「それは、来なかった人の友達に署名の用紙を届けてもらうわ。それで恐らく、生徒のほぼ全体に行き渡るハズよ」

 

「なるほど……わかったよ、委員長」

 

「わかればいいわ。さぁ、大天体観測会の段取りを決めるわよ!」

 

 この後、日が沈みそうになるまで会議は続けられた。

 そして……

 

 ーー二日後・展望台・夜中ーー

 

「みんな、今日は参加してくれて、ありがとう!話はこれくらいにして、今日はみんなで星を見ましょう!帰りにチラシを持っていくのを、忘れないでね!」

 

 このチラシというのが、署名用の紙ってワケ。

 

「それじゃあ、スバルくん。解説よろしく!」

 

 なんと委員長は、星座の解説をするという大役を、ボクにやらせたんだ!恩があるから引き受けたけど、中々大変そうだな……

 

「ええっと、解説をします。星河スバルです、よろしく。早速ですが、まずはあの春の大三角について話したいと思います。あの大三角は牛飼い座のアルクトゥールス、乙女座のスピカ、そして獅子座のデネボラを結んだ図形で……」

 

 ーー十分後ーー

 

「……と、いった感じで、星と言えば夏に見える天の川などが有名ですが、春には春の星空があるので興味を持った人は是非、この展望台に足を運んでくださいね。……以上です」

 

 パチパチパチパチ……!とそこそこの拍手が上がった。まぁ、無難にこなせたかな?

 横で聞いていた委員長が褒めてくれる。

 

「(中々良かったわ!またお願いするかもしれないわね!)」

 

 えぇ……またやるの?

 

「ゴホン!さて、では次は各々自由に星を見ていきましょう!三十分後にまた声をかけるので、そのときに今みたいに集合ということで!」

 

 委員長の号令とともに、展望台のあちこちへ参加者が散らばっていく。結構来ていたんだね。なんだか嬉しいな。

 

「スバルくん……何してるのかしら?」

 

 委員長が話しかけてくる。ちょっとボーッとしてたかな?

 

「あぁ、委員長。えっと、結構人が来たなーって」

 

「そう……ところで、暗いのによくワタシが話しかけたってわかったわね。夜目がきくほうなの?」

 

「何言ってるのさ。あんなに夜空で主張してるでしょう?見失うワケないよ」

 

 中々上手いコトを言った自覚があるね!

 

「…………」

 

 ちょっと、黙らないでよ!表情とかまではよく見えないんだからさ!

 

「え、えっと……アハハ……」

 

「そ、そうね、ありがとう……」

 

 こんな感じでボクたちの計画したイベントは割と上手くいった。つまり署名は集められたんだ。

 

 ーー二日後ーー

 

 そして、集まった署名によって校長先生を説得することができた。流石にほぼ全校生徒分の署名は無視出来なかったらしい。校長先生は渋々それを受け入れることになった。

後で聞いた話だと、同期の人たちが学校の成績を上げている中、自分の担当するコダマ小学校の成績が中々振るわなかったことで焦っていたらしい。プライドも大事だとは思うけどね。

 そして、育田先生が帰ってきた。これでこれからも先生を続けることができる。

 いいことをすると、気分が晴れやかになるね!

 

 ーー数日後ーー

 

 そして、学芸会の本番を迎えたんだ。

 

「え、ツカサ君休んだの?」

 

 やっぱりこうなったか。

 

「本番の日に風邪を引くなんてワタシの計算外よ、まったく……」

 

「それで、劇の代役は?」

 

「……考えは、あるわ。さ、ちょっとコレに着替えて……」

 

「ここで?委員長そういう趣味があったの!?」

 

 いや、流石に恥ずかしいから。

 

「え?い、いや、違うわよ!さっさと着替えてきなさい!」

 

「はーい」

 

 ーー五分後ーー

 

「ピッタリじゃない」

 

そこには、ロックマンのコスプレに身を包んだボクがいた。せめてバイザーくらいは欲しかったよ……

 

「路傍の木からヒーローまでこなすとは、ボクの演技の幅、広すぎない?」

 

「もう諦めなさいな!アナタしかいないのよ!あっ、それから台本に新しくセリフ追加したからね。この場面で……」

 

「『助けを求める声を、放っておくことは出来ない。守りきってみせるよ、絶対に!』?」

 

 何だか近いセリフを言ったような……

 

「……この前の騒動の時なんだけど、ワタシが『助けて』って言ったら、それに近い言葉が返ってきた気がしたのよ。確かに、ロックマン様の声で……って、何でそんなコトまでアナタに説明しなくちゃいけないのよ!」

 

 ………………………………。

 

「(ククク、聞かれてたみたいだなぁ?)」

 

 うっさいロック!

 

 ーー学芸会本番ーー

 

「キャー!助けてェッ!」

 

 委員長迫真の演技が体育館に響く。今はまさに劇本番の真っ最中だ。

 

「お、大人しくしろ!」

 

 ゴン太も中々の演技力。

 

「イヤ!!誰かーッ!(ここでロックマン様の登場よ!しっかりやりなさい、スバルくん!)」

 

 準備はオーケー。照明の仕込みも終わってる。んじゃ、いきますか!

 

「そこまでだ!」

 

 舞台袖からロックマンの姿で登場する。もちろんコスプレのほうじゃない。多分ここはビジブルゾーンなんだろうね。

 

「……え?」

 

「誰だ、オマエは?」

 

「……青き戦士、ロックマン参上!」

 

「(ウ、ウソでしょ?これってホンモノじゃないの!?」

 

 驚愕の表情を浮かべる委員長にウインクし、照明の明かりが落ちるのを待つ。……よし、落ちた。

 

『……ザワザワ』

 

「ちょっと、何?アクシデント?」

 

 狼狽える委員長に近づいて耳元で囁く。

 

「委員長、ありがとう。キミのお陰で頑張れたよ」

 

「えっ?え?ロックマン様?」

 

 そして元の場所に戻り、電波変換を解除する。

 フゥ、これでお礼は言えたぞ。

 

「し、しまった!うっかりしてました」

 

 明かりが戻る。当然ロックマンのコスプレをしたボクが舞台に上がっているという構図ができることになる。

 

「(……ア、アレ?一瞬ホンモノに見えた気が……それにさっきの声。あれは……いや、気のせいよね、やっぱり。スバルくんがロックマンに見えるなんて、ワタシ疲れているのかしら?……でも)」

 

「(い、いいんちょう、セリフ!)」

 

「あっ!……え、えっと、助けに来てくれたのね!」

 

 あ、ボクのセリフだ。

 

「助けを求める声を放っておくことは出来ない!守りきってみせるよ、絶対に!」

 

 これは決まった!

 

「(でも、どうして?胸の鼓動がずっと早いまま、全然収まらないわ……)」

 

 この後、何とかキザなロックマンをこなして、学芸会は終了した……

 

 ーー一週間後・星河家ーー

 

 ーーピンポーン!

 

「スバル~!みんなが来てくれてるわよ~!」

 

 母さんの声がする。今日もいかなくっちゃ!

 

「はーい!行ってきます!」

 

「いってらっしゃい、スバル」

 

 

 ーーコダマタウンーー

 

 玄関を出たボクを待っていたのは、委員長たちだった。最近はよく誘いに来てくれる。なんだか嬉しい。

 

「いつまで待たせる気よ!このワタシが自ら迎えに来てあげてるんだから、もっと早く出てきなさいよ!」

 

 ええっ!?まだ2分くらいだよ!?

 

「待たせるって……まだ2分しか経ってないじゃないか。でもありがとう。よし、行こうか!」

 

「ワタシが号令をかけるのよ!まったく、スバルくんったら!」

 

「そうだそうだ!いつも号令は委員長がかけてるんだぞ!オマエも委員長のやさしさにこたえて、早くじゅんびをしろ!」

 

「朝は30分早く起きてください!」

 

 ゴン太とキザマロのペースに飲み込まれそうになる。コイツらも委員長と登校して起床時間が早まったクチだな……!?

 

「みんな、いつもありがとうね」

 

 玄関からあかねさんが出てくる。ホントにその気遣いが嬉しいよ……

 

「アラ、おばさま、おはようございます!」

 

 あかねさんにおばさまだとッ!?

 お姉さまだろうがこのスカタン野郎ッ!いや、冗談です。でも、他人におばさま扱いされるとちょっと悲しくなるのは何でだろう。

 

「この子、学校でうまくやってる?長い間学校に通っていなかったから、クラスに馴染めてるか心配だわ」

 

「おばさま、心配は無用ですわ。このワタシ、コダマ小学校五年A組クラス委員長、白金ルナが責任をもって面倒を見てますから!ね?スバルくん?」

 

「そうだね、よく話しかけてくれて、とても助かってるよ。ありがとう、委員長」

 

「……ッ!そ、そういうのはあんまり気にしなくていいのよ……?」

 

「フフッ、まぁそうなの!これからもスバルと仲良くしてやってね」

 

「もちろんですわよ……ねぇ、ゴン太、キザマロ?」

 

「オウッス!!もちろん!」

 

「当然ですとも!」

 

 二人とも、元気一杯だね。こんな朝っぱらから……

 

「まぁ!よかったわね、スバル。優しい友達が出来て!母さん、安心だわ!」

 

 いや、母さんが安心ならいいんだけど。

 

「ま、もうこんな時間!早く学校に行かなくては!」

 

 確かに、もう結構いい時間だ。歩いてギリギリといったところだろう。

 

「まぁ、引き留めちゃって悪かったわね。気をつけていってらっしゃい」

 

「おばさま、行ってまいります~!さぁみんな、行きましょ!」

 

 こうしてボクは、今日も学校に行く。

 育田先生の授業が楽しみだ。

 

「(そろそろ飽きてこないか?)」

 

 何で水を指すのさ!




委員長のヒロイン力が留まるところを知らない。

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