星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

38 / 131
38

 ーーヤシブタウン・カフェーー

 

 ヤシブタウンの街道沿い、先程倒したジャミンガーがいたウェーブロードが見えるだろう位置(もちろん、ビジライザーをかける必要はあるけど)にあるカフェに、ボクたちは向かい合って座る。 先に口を開いたのはツカサ君だった。

 

「スバルくん、ここ最近は特に表情が明るくなった気がするけど……気のせいかな?」

 

 ええ?ボクの表情をよく見ていたんですか?それってもしかして……いや、邪推はよそう。きっとツカサ君は純粋に復学したばかりのボクを気にかけているに違いない。以前の委員長と同じように。

 

「そうだね……ボク、ブラザーが増えたんだ。今まで学校に行ってなかったのが不思議な位、今は学校生活を楽しんでるよ」

 

「へぇ……じゃあ差しつかえなければでいいんだけど、スバルくんが学校に来れなかった理由を聞いてもいいかな?」

 

 なるほど……そりゃあ、気になるよね。好奇心ってヤツなんだろうか。

 

「いいよ。父さんが事故に遭って行方不明なんだ。そのショックで、ちょっとね」

 

 表向きの理由を話すボク。ま、四年生までの『星河スバル』なら間違っていないんだけどね。

 

「……そう。ゴメン、あまり聞いちゃいけないことだったかな?」

 

 誰だって、不登校児からこんな重い話が出てくるなんて思わないだろうし、仕方ないと思うけど。

 

「大丈夫、もう折り合いはつけてるんだ」

 

 苦笑しながら答えたボクの言葉が意外だったのか、目をパチクリさせるツカサ君。

 

「そうか……それにしても驚きだよ。キミはボクと境遇が似ているみたいだ」

 

 ……確かに。血縁的な意味でツカサ君は両親を、ボクは父を失っている。そして体には本来あるはずの無い人格……ツカサ君には『ヒカル』が、星河スバルには『ボク』が宿っているんだ。ツカサ君の言葉は結構、的を射ていると言えるだろうね。

 

「境遇が似ている?」

 

 まだ知らないハズのことを仄めかすわけにもいかないので、惚けるフリをするボク。段々この演技が板についてくるようで、嫌になる。

 

「ボクもね、親がいないんだよ。ボクの場合、両親の二人ともだけど……」

 

「…………」

 

 ツカサ君の言葉を促すように黙って聞く姿勢をとる。ツカサ君もボクのスタンスを理解したらしく、話を続けてくれる。

 

「初めてキミと会ったときから思ってたんだ。他人とは思えないって。もっと聞いてもいいかい、キミの話を……。それに、ボクの話も聞いてほしい。……キミに」

 

 ボクとしては構わないんだけど、何だか一方的に思いの丈を聞くようで申し訳なく感じる……

 

 ーー数分後ーー

 

「時々、失ったコトを思い出して胸が痛くなるんだけどね、そんなときは思いっきり風に当たれるような場所に行ったりするんだ。体に当たって流れていく風が気持ちよくて、なんだか暗い気持ちを吹き飛ばしてくれるような気がするからね。コダマタウンだと……展望台かな。あそこは夜に行くと星も見えるし、気晴らしや考え事にはぴったりなんだ」

 

「悲しみを癒す場所か……ボクにもそれと同じような場所があるよ」

 

 ドリーム公園だったよね、確か。あそこにはサワニガーが出ないから以前は行っていなかったような気がする。

 

「それは……どんなトコロなんだい?」

 

「そうだね……口で説明するよりは、実際に見たほうが伝わると思う」

 

 時刻は大体4時を回ったところか……今は5月で日が長く、まだ子供が出歩いていても大丈夫だろう。

 

「いいよ、乗り掛かった船だし。付き合うよ」

 

「フフッ、ありがとうスバルくん……それでね、その場所はドリームアイランドというところにあるんだ。ドリームアイランドへはバスを使えば行けるから、早速出発しよう」

 

「うん、了解」

 

 ボクたちは静かにバス停まで歩き、ドリームアイランドへと向かった……

 

 ーードリームアイランドーー

 

 このドリームアイランドは元々海が広がっていただけの場所だったんだけど、ごみ処理で周辺の海を埋め立てていくうちに広大な敷地が生まれるようになり、それがドリームアイランドと呼ばれるようになった、らしい。

 らしいと言うのは、この情報が案内に書いてあった内容だからだ。しっかし、海を埋め立てる程のゴミか……電波技術が発達し排出されるゴミも減ったはずなんだけど、未だにこのドリームアイランドには多くのゴミが集まって来るらしい。悲しいなぁ……(ドルマゲス感)

 

「こっちだよ、スバルくん。この先にある場所が、ボクを癒してくれるんだ」

 

 バス停側の橋を渡り、道沿いを行くと看板が見えてくる。看板によるとこのまま道沿いでゴミ集積所、道路を渡って右手に公園があるとのことだった。ツカサ君は当然のように右の横断歩道を渡り、公園の入り口ゲートを指差して言った。

 

「公園、か……」

 

「そう、この奥にボクが連れていきたい場所があるんだ。……さ、行こうか」

 

 そう言って先にゲートを潜っていくツカサ君。きっと先を歩きながら、話すことを整理したいんだろう。

 

 ーードリーム公園ーー

 

「これは……」

 

「この花畑が、ボクの大事な場所……ボクの悲しみを癒してくれる場所さ」

 

「凄く、キレイだ……」

 

 言葉が出ない、とはまさにこのことなんだろう。公園……ドリーム公園の奥に広がっていたのは、それはもう、表現するのも難しいほどに美しい花畑だった。なんというか、センスのないボクには凄い……!としか言い様がないね、これは。

 

「こんな場所が、あったなんて……」

 

「差し支えなければ、さっきの話の続きをしてもいいかい?」

 

「うん、もちろんいいよ」

 

 ーー数分後ーー

 

「それで、宇宙飛行士だった父さんの乗っていた宇宙ステーションが行方不明になって、今もそのままなんだ」

 

「……それは、さぞショックだっただろうね」

 

 悲しそうな顔をするツカサ君。

 

「まぁ、うん。当時はね……。あの事故以来、ボクは人と関係を築くことを恐れていたんだ。いや、誰かを失うことを極端に恐れていたんだろうね」

 

「そう……」

 

 これは元々あったスバル君の記憶からの受け売りだったんだけど、きっと考えただけで恐ろしかったんだろう。大切な人を失う辛さは、失った人にしかわからないからね。

 

「スバルくん、こういうことを言うの、変かもしれないけどありがとう、色々話をしてくれて」

 

「いいんだ、もうボクは一人じゃない。だから心配は要らないよ」

 

「そうか。キミはもう、一人じゃないんだね……よし、今度はボクが話す番だ。ボクの両親がいなくなった理由……聞いてくれるかい?」

 

 ツカサ君は、一体何時自覚したのだろう。自分が捨て子だってことを。物心つかない内は何もわからず、ただ自分の父と母がいないことを疑問に思っていたのだろうか。それは一体、どんな気持ちで……?

 

「もちろん、こんなボクで良ければ話してほしい」

 

「そう自分を卑下することはないさ。さて、話をするならちょっと場所を変えたいんだ。そっちの方が説明しやすいからね……だから、ついてきてくれるかな?」

 

 公園を出て、先程の看板から道沿いにゴミ集積所へ向かおうとするツカサ君にホイホイついていくボク。早速ゴミ処理場の入り口にたどり着いた。ゴミ処理場の方を指差して、この奥までついて来てほしいと言うツカサ君。別に断る理由もない。

 

 ーーゴミ集積所ーー

 

 ゴミ集積所の名に違わず、辺りはゴミで埋め尽くされそうな勢いで溢れている。こんなところに産まれたばかりの子供を……いや、他人事だ。同情してもらうためにここまで連れてきたわけじゃないんだろう。

 

「ゴミだらけ、だね」

 

「この辺一帯のゴミがここに集められているんだよ。ゴミの処理は『分別ロボ』が自動でやってくれるようになってる。ボクが案内したい場所は、もう少し奥なんだ。……すすもう」

 

 

 ーーゴミ集積所・最奥ーー

 

 ゴミによって圧迫されつつも、一応舗装された通路を通り進んだ先にそこはあった。『そこ』と言っても何か特別な何かがあるわけじゃない。普通の行き止まりだ。でも、ツカサ君にとっては違うんだ。ここは、彼が家族から切り離された場所……ということになるのかな。

 

「結構奥まで来たね……ここは?」

 

 そもそも小学生なんて、何か多数から離れた事情や特徴を持つ人間を排斥する傾向にあるのが普通だ。両親がいないというのは、中々言いづらい理由にはなるのだろう。

 

「ここは……ここは、ボクが捨てられた場所なんだ」

 

「…………」

 

 何でもないことのように語るツカサ君。しかし、声が震えていた。恐らく、両親への憎しみや怒りで……

 

「驚いたかい?ボクは捨て子だったんだ」

 

「…………続けて」

 

「うん。……十年前、赤ん坊のボクはここに捨てられた。タオルにくるまれたボクを、分別ロボが発見したらしい。そのタオルには『ツカサ』とかかれていたんだ。それがボクの名前さ。その後、ボクは施設に送られた。そして今日に至る……というわけだよ」

 

 ツカサ君が表面上でもおだやかでいられるのは、ヒカルのせいもあるけれど、コダマ小学校の人たちがツカサ君を暖かく迎えたからだろうね。

 

「やっぱりショックだったかい?今の話は……」

 

「そりゃあね。衝撃のカミングアウトってヤツだったよ。ツカサ君は?ご両親のこと、どう思ってるの?」

 

「それは……あんまり、考えないようにしてるんだ。とにかく一人でも生きていけるようにって……。ずっとそれだけ考えてきたから」

 

 やっぱり、両親への怒りや憎しみはあるらしい。

 

「そうか……ツカサ君は強いんだね。今だから言えるけど、ボクは自分が一人で生きていけるとは、とても思えないなぁ」

 

「強いだなんて……そんなこと、そんなことないんだ、本当に……」

 

 まぁ、別人格をつくっちゃうくらいだから逃避的な弱さはあるんだろうけど。

 

「それよりも、ボクの話を聞いてくれてありがとう。この話を自分からしたのは初めてなんだ」

 

 実は初めて人に話したというツカサ君。そんなにボクって信用できるのかなぁ?客観的に見て。

 

「キミになら話してもいい。ボクがそう思ったから……」

 

 ありがとう。とても嬉しいよ。でもボクを衆道に誘うのは止めてくれ!

 

「そうだったんだ……わざわざありがとう、ツカサ君」

 

「フフフ……今日はいろんなコトを話したね。もっと色々話をしたいけど、もう遅くなってきたし、帰ろうか?」

 

 ウググ……通路を封鎖しているショベルカーの先にはトレーダーSPがあるというのに。畜生。

 

「そうだね、帰ろうか。あ、ヤバい。早く帰らないと……」

 

 そんな理由をつけて、ツカサ君より先んじて前を進む。ほら、ヒカル。出てきやすくしてやったぞ。

 時刻は既に5時を回っている。そろそろ帰らないと、あかねさんに大目玉を食らいそうだ。ったく、ジェミニはまだなのか……

 

 ーープルルルル!!

 

 ツカサ君が完全に見えなくなった頃、ボクのトランサーに着信があった。そら、釣れたぞ。

 

「はい、もしもし」

 

『よぉ、岩男』

 

 ちょっと、最早それ挨拶と化していないかい!?

 

「ブフッ……その声は、さっきの。お久しぶり。まだ何か用?もしかして暇人かな?」

 

 ここぞとばかりに全力で煽るボク。

 

『チッ、この野郎……フン、まぁ聞けよ。いいことを教えてやるぜ。……オマエ、スクラップにならないよう、気を付けろよ。クククク』

 

 実はヒカル善人だった説。普通スクラップにしようとしてるヤツにこんなことしないって。

 

「予言者(笑)の類いかな?それとも今朝見た朝の星座占いで12位だったからかなぁ……親切にありがとう」

 

『ケッ!そんな態度を取っていられるのも今の内だぜ!……じゃあな』

 

 ーーガチャッ!

 

 こんなフレンドリーだっけ?ヒカルって。

 

「今のヤツ……スクラップとか言ってたな。意味がわからん……取り敢えずほっとけよ。今日は早いとこ帰っちまおう」

 

 おい、あの警戒していたロックはどこへ行った!?

 

「あっちの方から、トレーダーの匂いがする……」

 

 うう……やっぱり諦めきれない!

 

「オマエがそう言うなら、本当にあるのかもな」

 

 遂にボクの嗅覚を信用しだしたロック。何がロックをここまで変えたんだ……?(すっとぼけ)

 

 ーーウー・ウー・ウー!

 

 これは……随分マイルドになった、サイレンだ!どっちかって言うと侵入者発見、侵入者発見!みたいなイメージが湧くような音だね。

 

「これは……」

 

『フホウトウキハッケン!フホウトウキハッケン!』

 

 うわわわわわ!同じ分別ロボが3体、来るぞ遊馬!

 

「同じ分別ロボが3体……来るぞスバル!」

 

 まったく同じことを考えてやがった!

 

「ロォーック!?何でそれを!?」

 

「いつものように、オマエの寝言だよ。中々汎用性あるな、コレ」

 

 そういう感想は要らないよ!

 

『タダチニショブンシマス』

 

 ゲッ!こっちに来た!……もう3体で合体する想像しか出来ないんだけど、どうしてくれるんだ!

 

『フホウトウキハッケン!フホウトウキハッケン!』

 

 うわっ!ゴミ処理場の入り口からも来たぞ。これじゃ出れないな……

 

「コイツら、ボクを徹底マークしている……」

 

 ゴミ処理場の最奥を見ても、既にツカサ……もといヒカルはいない。

 

「ツカサ君もいない……」

 

「スバル、それどころじゃねぇ!急いでビジライザーをかけろ!」

 

「オーケー!おっ、ウェーブホール!」

 

 Dゲイザー……もといビジライザーをかけるとウェーブホールを発見出来た。 ラッキーなんだろうね。ここで襲われたのは。

 

「一旦電脳世界に逃げるぞ!」

 

「ラジャッ!」

 

 ボクは人間を辞めるぞ、ジョジョーッ!

 

 ーーゴミ処理場のウェーブロードーー

 

 電波変換!星河スバル、オン・エア!なんて口上、要らなかったんや……

 

「よし、退避完了。あとはツカサ君を探してから、トランサーにでも潜んでバス停まで行こうよ」

 

「オイオイ、完全に帰る気じゃねぇか!まだだぞ。あのロボットは明らかにオマエを狙っていた。多分誰かが操っていたんだろうな」

 

 ヒカルですね間違いないない。

 

「ハイハイ、ヒカルヒカル」

 

 あー、トレーダーSP回したい。

 

「滅茶苦茶おざなりだな……まぁ多分そいつか、その関係者だろう。とにかくまだこの辺りにいるに違いない。探しだして相応の報いってヤツを与えてやれ!」

 

 スタンドはスタンドでしか倒せない……いや、電波体は電波体でしか倒せない、か。

 

「りょーかい」

 

 ーーゴミ処理場の電脳ーー

 

「あ……あれじゃない?」

 

 ゴミ処理場の電脳には、どうみても怪しい電波体が3体、話し合っていた。知ってたんだけどね。

 

「ン?お、お前は……ロックマン!な、なぜここがバレた!?ど、どうする?一先ず退散するか?」

 

 ちぇっ、ジェミニから岩男呼称が広がっているかと思ってたのに。まぁ、昨日の今日だし、仕方ないね。

 

『狼狽えるな』

 

 この声……ジェミニか?

 

「む、この気配……オ、オマエは!!」

 

 おはジェミニ。

 

「情けないヤツらだ。敵に怯えやがって……」

 

 それ、キミの管理責任じゃない?

 

「す、すいません、ジェミニ様」

 

「ジェ、ジェミニ?お前がジェミニなのか!?今まで散々オレたちにちょっかい出しやがって!」

 

 あぁ、ロックってジェミニに会ったことは無かったんだっけ。

 

「オマエがロックか……お互い、こうして顔を合わせるのは初めてだな。ただ、オマエのウワサはかねがね聞いているぞ。『アンドロメダのカギ』を盗んだ大罪人だ……とな」

 

「オレもオマエのウワサは聞いていたぞ。ただ、あまりいいウワサはなかったけどな」

 

「オレのウワサを聞いたことがあるというなら、この後オレがどういう行動をとるかわかるよな?……オマエら、やれ!『アンドロメダのカギ』を奪え!」

 

「来るぞ、スバル!」

 

「了解!」

 

 ウェーブバトル、ライドオン!




何と!流星のロックマンの新規小説が出ていてビックリです!何だか嬉しいですね。

感想・評価お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。