星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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ゴン太の発言は、意図的にひらがなを多用しています。

6/22、修正しました。


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 ーー自動車の電脳ーー

 

 自動車の電脳は、以前訪れた機関車の電脳に似た構造で、中央に正方形のパネルとそこから伸びるいくつかのウェーブロードで出来ている。

ただし、伸びたウェーブロードの1つが自動車のコントロールシステムに繋がっており、敵のFM星人も、恐らくはそのコントロールシステム付近にいるだろう……

 

「……ここが、自動車の電脳世界。機関車の電脳世界に似ているね」

 

「ああ、まだ機関車の電脳以外の電脳世界に入ったことがないから何とも言えないが……構成されている電波が似通っているからなのかもしれないな」

 

 …ロックの真面目な考察が聞けるとは思わなかったが、腐っても戦士ということか。

……凄い違和感だったけれども。

 

「この電脳の何処かにFM星人が……」

 

「昨日の雑魚よりは確実に強いってことは伝わってくるぜ……!」

 

 不安はあるけど興奮のほうが大きいって自覚はある。オックスって、FM星人の中じゃあ普通にエリートだからな……今までのようにはいかなそうだ。

 

「うん、わかってる。行こう、ロック」

 

 

 あまり大きくない電脳世界だから、すぐに見つかると思うけど……っ!来た、ウィルスだ……!

中央のパネルにいるのはメットリオと……しっぽに火の着いたトカゲ?新ウィルスか!キタコレェ!

 

「スバル、フォルダにバトルカード、『プラズマガン』があるから、なんとなくわかっていただろうが、ウィルスには属性をもつヤツがいる。わかりやすいのが今戦っている火トカゲだ。こいつらは見てわかるように、炎属性をもっている。そういうヤツらには水属性のバトルカードがよく効くぜ……水属性のバトルカードを手に入れたら、ここに来て試し撃ちしてみるってのもアリだな」

 

 …それは流石に火トカゲ、もといメラマンダさんに悪いんじゃないですかねぇ……いや、ウィルスだから駆逐するけれども。

 

「そういえば、まだ攻撃を食らったことがないからわからないんだけれど、このメラマンダみたいなウィルスの火炎攻撃を食らったら火傷しちゃうのかい?」

 

「いや、電脳世界の戦い、ウェーブバトルでは火傷することはない。衝撃で吹っ飛んだりはするが、切り裂かれて真っ二つになったり、火傷したりすることもないぜ……痛みも軽減されるため、ダメージを負っても全く動けなくなる、なんてことは起こりづらいがHPはオレたちの体を構成するシステムを守っているから、これが0になると体を維持出来なくなってオダブツってわけだ」

 

「HPが0になったらすぐに死んじゃうの?」

 

「いや、体の崩壊が終わる前にリカバリー系のバトルカードやエネルギー系の回復手段をとれば復活は可能だ」

 

 なるほど……ゲームではHPが尽きてもデリートする場合とイタタタ……で済ませる場合があったけど、現実的には手加減抜きならこんなものか。

つまり、だいじょうぶだ、リカバリー300で生き返れるってことね……いや、カカロットじゃないけれども。

 

 

 …メットリオのグランドウェーブをシールドでガードし、カウンターとばかりにパワーボムを放り投げ、メットリオに着弾、デリートする。

このパワーボムは、トランサーの中を探っている最中に出てきたウィルス、キャノベースをデリートした際のリザルトで手に入れたバトルカードだ。

手投げボムと聞くと起爆が遅いと先入観を抱いてしまうのは、向こうの世界のゲーム脳過ぎるだろうか。

しかし、そんなパワーボム、実はかなり使い勝手が良いことがわかった。

 

…まず威力が高いので、普通に当てればここまで戦ってきたメットリオ、キャノベース、メラマンダは一撃で倒すことが出来る。

キャノベース、メットリオに関しては動きが鈍いため、適当になげても命中するがメラマンダはチョロチョロ動くために、なかなか当たらない。しかし動きを誘導出来るため、避けた先にウォーロックアタックで突っ込み、ソード系のバトルカードで倒せるのはとても助かるのだ。

あとはある程度だが、カードの発動から起爆までのタイミングを選べるので、目前まで近づいてきた敵にパワーボムを放り、直ぐ様ガードするという戦法をとることもできる。

 

「(やっぱり楽しい)」

 

「おいおいスバル、絶好調じゃねぇか!このまま頼むぜ!」

 

 パワーボムの爆発から逃れたメラマンダにロックオンカーソルを合わせ、加速っ!目前まで突っ込んでワイドソードで切り捨てる……

リザルトデータが半透明で視界に表示され、テイルバーナー1のデータがバトルカードとしてトランサーに収納される。……戦闘が終了したようで、増援の気配もない。

 

 ーー自動車の電脳・コントロールシステムーー

 

「……着いたよ、ロック」

 

「ああ、やっと件のFM星人とご対面、だぜ」

 

 ウェーブロードの先、コントロールシステム用の大きめの正方形パネルの上に立っているのは、草色の装甲で身を包むまさにしたっぱ怪人といった風貌の電波体だった。

 

 …あれぇ?オックスじゃなかったっけ?

 

「FM星人がくっついているのかと思ったが、ザコか……」

 

「FM星人じゃないの?」

 

「……だが、気を抜くなよ、スバル」

 

 したっぱ怪人がこちらに気づいた……!

 

「なんだ?お前も車泥棒か?……悪いがこの車はオレの獲物だ」

 

 …何?車泥棒?ロック関係ないじゃないか……!

 

「邪魔するってんなら痛い目にあってもらうぜ……ウキョキョキョキョーーーッ!!」

 

 …鳴き声キモッ……っとこっちに向かってくる。

 

 強そうだから言っとくか……

 

「行くよロック!ウェーブバトル、ライドオン!」

 

「おう!」

 

「ウキョキョキョキョーーーッ!!」

 

 奇声を発しながら左腕を四連装のマシンガンに変化させ乱射してくる。あまり威力が高そうに見えないのはロックバスターと同じで、恐らくは牽制目的の装備だろう。

 多分シールドでガードできるはず。それよりも……

 

「こいつ、ウィルスの癖に機動力が高い……!」

 

 まずは足止めをしないと……。やはり人型は強敵というテンプレは正しかったよ……その内ロックのコピーでも現れて同型機同士の決戦でも起こりそうっていうか3でディーラーがロックのコピーつくってるんだよな……

なんで完全に同じなのに、電波変換機能付けなかったんだろう?FM星人は地球上では単体で十分な力を発揮できないのに。

組織にはその電波人間が二人もいるのに。

 

「ウキョキョ!遅ぇなぁ、青いの!このオレに勝とうなんて百年は早いんじゃねぇのかぁ!?」

 

 …なんて、確かにこいつ自体は普通のウィルスより早いけど人の形をしているなら動きはウィルスよりもよっぽど読みやすい。それに……

 

「うおぉぉぉっ!」

 

 ウォーロックアタック+ソード!

 

「ウヒャァッ!あ、危ねぇ……この、調子に乗るんじゃねぇ、よっ!」

 

 ソードによる斬撃をおっかなびっくり避け、崩れた体制を無理やり整えながらマシンガンを乱射してくるしたっぱ怪人。うーん……やっぱり弱いなぁ……

 

「そっちは余裕がなくなってきたんじゃない?ボクは昨日電波体になれるようになった新参だよ?……いきなり押されるなんてマズいんじゃないかなぁ?セ・ン・パ・イ?」

 

 …フハハ!ここぞとばかりに煽ってやる!まぁこんな雑な煽りでキレてくれるわけないんですけとね。(フラグ)

 

「調子に乗りやがってぇ……!絶体絶命ボコボコにしてデリートしてやるからなァ!」

 

 マジで乗ってくるとは……だけど、好都合ッ!選択するバトルカードは……

 

「行くよロック!ウォーロックアタックだ!」

 

「おうよ!だがそのバトルカードは……」

 

 ロックちょっと黙ってて!ロックオンカーソルをしたっぱ怪人(仮称)に合わせ、一気に接近するっ……!

 

「うおぉぉぉ!」

 

「ウヒョォっ!?」

 

 シールドを展開しながら突進、シールドバッシュで弾き飛ばし、体制が崩れたところにパワーボムを投擲、シールドを張り直して爆発の衝撃をやり過ごす……これで!

 

「ウキョキョキョキョーーーッ!!??」

 

 したっぱ怪人(仮称)の上部に表示されている数字が0を刻み、電波体が崩壊していく……っとこれはウェーブアウトのエフェクト。

……まさか自力で脱出を!?

 

「ウィルスに取り憑かれた人間か……」

 

 …そういえばボクもスバル君に取り憑いたウィルスみたいなもんなんだよな。……ロックの言葉が心に響くよ……

 

「この町にもずいぶんFMプラネットの手が延びてきているようだな……」

 

「今の、人間、だったの……?」

 

「ああ、オマエが電波化しているのと同じ原理だな。ただし、ヤツの場合は低級なウィルスに取り憑かれていたようだが……所謂『ジャミンガー』ってヤツだ」

 

「どうしよう……普通に爆撃しちゃったよ」

 

「多分、大丈夫だろう。命まではとっちゃいない……よし、一旦オマエの家に帰るぞ」

 

「わかったよ……」

 

 その後は少し休憩をとって約束通り電波化し、コダマタウンでウィルスバスティングを行った。

…今日1日でかなり戦闘に慣れた気がする……そういえば、さっき家で小休止中にロックが何か言おうとしていたけど、あれはなんだったんだろう……

 

 

「もう夕方か……」

 

 まさかぶっ通しでウィルスバスティングをやる羽目になるとは。

……これ明日筋肉痛になったりしないといいなぁ……

ウェーブホールが公園にあるから電波変換するのも、ウェーブアウトするのも一苦労だよ……やっと家に着きそうだ。

……まずはシャワーを浴びて少し眠「お待ちなさいっ!」

 

 …なんだっ!?

 

 こ、この声は……まさか……やっぱりあの3人組だ……うわぁ、委員長さんめっちゃ怒ってる……怒りを表すように金髪のドリルヘアーが高速回転しているように見えるのは錯覚なのか、委員長さんの怒りオーラがついに可視化したのか……?どっちなんだ……

 

「アナタ……昨日も来なかったわねぇ……!一体いつになったら学校に来るのよ?」

 

 うわぁ、怖い……美人だからより一層怖い……っ

 

「ゴン太!」

 

 ゴン太って確か将来的に電波変換体『オックス・ファイア』として共闘することになった……はず。あんまり悪印象は良くないかな?

 

「オイ、オレたちがわざわざ来てやってるっていうのに、だまってないでなんかしゃべりやがれ!」

 

「…………」

 

 …どう反応すればいいんだ?ボクが学校に行ってないのは大切な人を失うのが怖いからってことになっているけど、別にボクはスバル君ではないからそんなの一々気にしてはいない。だけどあかねさんは、その理由でボクが人と関わりたくないと思ってるだろうし……やっぱり、まずは家での態度から変えていこうかな?

 

「(うるせぇヤツだな、コイツ……こんなヤツに好き放題言わせておいていいのかよ?)」

 

 業を煮やしたロックがボクにだけ聞こえる程度の声量で話しかけてくる。

流石にボクは空中と会話する人認定はされたくないよ、ロック……

 

「(いいんだ、言わせておけば……学校に行くことになったらウィルスバスティングも中々出来なくなるし、宇宙人的に面白いモノもないよ)」

 

「(なんだよ、学校ってつまんねぇトコなのか)」

 

「(つまらないとも言い切れないけど、ボクたちは動き辛くなるし、FM星人に追われている今、あまり得策じゃあないね)」

 

「テメェ、さっきから聞いてるのか!?」

 

「……何?ああ、ごめんね」

 

 ロックと静かにしゃべっていたのが無視されているように感じたのか……ヤベッ、凄い嫌なヤツじゃん……

 

「このっ……テメェ!」

 

 ボクの対応に激情したゴン太君が興奮し、拳を振り上げる。ゴン太君の手綱を普段しっかり握ってる委員長さんはやっぱりカリスマもってるよな……って本当に殴るつもりなのかっ!?ヤバい、今までの戦闘で着いた癖がっ……

 

「うわぁっ!」

 

 殴りかかってくる右手に手を添え、右方向に体ごとながす。

勢いを持ったままぶつかる対象を失った腕の慣性に引っ張られ、足元の覚束なくなったゴン太君の右足が地を離れた瞬間に体を支えている左足を刈る……

すると支えを失った体は重力に引かれ、吸い込まれるように地面に顔面をぶつけて伸びてしまった……

 

「ゴン太!」

 

「ゴン太君!」

 

 …やってしまった……

 

「や、やっちゃった……ゴメン!誘いに来てくれたのに……」

 

「(スゲー鮮やかだったけど、ちょっとやりすぎじゃねぇか……?)」

 

 ヤバい、ヤバいぞ……元がどんな展開だったか覚えていないが、明らかに悪化していると断言できる……!

 

「ホントゴメン!今日はもう家に帰るから!今度ゴン太君にちゃんと謝るから!」

 

 焦って逃げるように家に入り、溜め息をつく。やってしまった……

 

 ーー30分後・展望台ベンチ付近ーー

 

白金ルナ、最小院キザマロ、牛島ゴン太は星河スバルの不登校を解消する勧誘に失敗し、反省会を開いていた。

 

「ゴン太!アナタのその体は見かけ倒しなの!?あんなコに一発でやられちゃうなんてだらしないわ!」

 

「め、めんぼくない……でもさっきのは結構マジだったんだ。あのモヤシ、何か格闘技でもやってるんじゃないかな……?」

 

「ふん、黙りなさい!アナタなんてワタシとのブラザーバンドがなかったらただの力自慢のバカなのよ!次あんな醜態をさらしたら、アナタとのブラザーバンドを切るかもしれないわ!」

 

「そ、そんな……」

 

「そこで頭を冷やしなさい!……行くわよ、キザマロ!」

 

「ハ、ハイ!」

 

 

 

 3人組のリーダーである白金ルナは牛島ゴン太をおいて行ってしまう。残されたゴン太は……

 

「ケンカだけしかとりえのないオレが、あんなモヤシヤロウにやられちまうなんて……このまま委員長にひつようとされなくなってしまったら……みんなに嫌われて一人ぼっちだったあの頃にもどっちまう……あんなコドクなおもいは……もうイヤだ……」

 

 …ブルルッ!感じるぜ…孤独の周波数…

 

 




登場キャラへのアンチはないように描いていきたいです……

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