浮気性な私を許して下さい。
ーードリームアイランド・ゴミ集積所ーー
やはり、廃棄物置き場への道はショベルカーによって塞がれている。先ずはショベルカーを退かさなければ。
確か、都合よく作業員が持っていたショベルマンのカードを無くしていたはず。それの捜索に手を貸せば、貸し出しの許可が降りたはずなんだけど……あ、いた。作業員だ。困っている様子なので、やはりカードを紛失したらしい。……それって管理問題じゃない?
「おかしいなぁ……この辺に落としたと思うんだが……」
「あの、ちょっといいですか?」
「ん?私に何か用かい?」
多分この人、昨日ヒカルに暴行を受けた人だ。分かりにくいが、顔が少し腫れているし動きもどこかふらついている。もしかして、ヒカルに襲われた時に紛失した、とか?そこまで見越して廃棄物置き場に来いよって言ったのなら、最早策士じゃない?流石はFM王の右腕ということか…………いや、ないな。たまたまでしょ、多分。
「ええ、ショベルカーを退かしたいんですけど……あの通路の向こうに行きたいんです」
「いや、いや、実はね。そのショベルカーを動かすカードを落としてしまって……昨日この辺で不審者に襲われて気を失ってね、そのときに落としたと思うんだ。キミも一緒に探してくれないかな?」
「ええ、もちろん。協力させてもらいますね」
さて、向かうは最も近くで稼働しているクレーン。
操縦室を保護している、窓ガラスに張り付いていたショベルカードを発見した。
「ありました!これですよね?」
ショベルカードを見せ、確認を取る。ショベルカードじゃなくてシャベルカードだった、なんてオチはなかったようだ。
「おお!見つけてくれたのかい!?丁度いい。ショベルカーの方もキミが動かしといてくれないかな?私もちょっと忙しくて……頼んだよ」
「わかりました、では!」
急いで先程のショベルカーが塞いでいる道に戻る。
カードイン!ショベルマン.exe、トランスミッション!
『ドガガガ!!このショベルカーを動かすのか?ならばレバーを動かすといい!!ドガガガ!!』
邪魔なモノはオレのショベルが退かしてみせる!ドガ!ドガガガ!!……という触れ込みらしい。トランサーにレバーが表示され、このレバーを操作することで、ショベルマンに指令が行き渡る、という仕組みのようだ。
ええっと、左側に寄せてっと……よし。これでOK。
……先を急がないと!
ーー廃棄物置き場1ーー
この先のエリアにジェミニ・スパークが……しかし、ゲームでは通ろうとした時に崩れ落ちたタイヤは、既に崩れて道を塞いでいる。思ったより規模が大きい。通るのは難しそうだ。
「オイ、スバル。ビジライザーを……って既にかけてるか」
「うん。ウェーブロードが隣のエリアに繋がってる……いけそうだね」
「そうとわかりゃあ、早速ウェーブインだ!」
「了解!」
ーー廃棄物置き場のウェーブロードーー
道が途切れている。電波が乱れているようだ。
「何か原因があるはずだぜ。……ん?あのデッカい廃棄物が怪しいな……スバル、アレにウェーブインだ」
「アレだけウェーブイン出来るしね。怪しんで下さいって言ってるようなモンだよ」
「クククッ、違いねぇ!」
今回の戦いでは、なるべくジェミニ戦まで、ペガサス系のパワーアップは控えておきたい。
何せ変則的な2対1のバトルを強いられるんだ。体力を温存しておいて損はないだろう。それに、直前の戦闘データでも採られていたら困るしね。ジェミニにはそれが可能な手下がわんさかいるんだから。
ーー廃棄物の電脳1ーー
これは……ブルドーザーか。廃棄物の電脳なのに、背景がブルドーザーに処理されるゴミとはこれ如何に。
「あ……あれは、ジャミンガー?」
廃棄物の操作パネルをいじっているように見える。コイツいっつも悪さばかりしてるな……
「電波が乱れているのはアイツのせいかもしれん、というかアイツのせいだろ」
「だよね。んじゃ、デリートで」
「おう!」
しかし、ジャミンガーの元へ向かうウェーブロードは、ゴミの山が塞いでしまっている。このゴミも一種のセキュリティらしく、上空を通ることも出来なさそうだ。
「タ、タイヘンデス~!ヘンナデンパガ シンニュウシタセイデ、デンノウガ パニックデス!」
確か埋まってるデンパ君を探すんだっけ?苦労しそうだな……
「どうしたの?」
「ジ、ジツハ……ブルドーザープログラムガ、カッテニ アバレダシテ コチラノセイギョガ マッタクキカナイノデス。ヒェ~~!」
(>_<)……といった顔で訴えるデンパくん。これは後のコトを考えてもやったほうがいいな……
「どうしたら、元に戻るの?」
「ワタシト、ワタシノナカマガ チカラヲアワセレバ、タブンセイジョウニ モドリマス」
「で、その仲間はどこにいるの?」
「ブルドーザーガ、アバレタセイデ……ゴミノナカニ ウマッテシマイマシタ……」
うわぁ……やっぱりか……
「ソトカラデハ ドコニウマッテルカ ワカリマセン。デモコレヲ ツカエバモシカシテ……」
そう言ってプログラムを渡してくれるデンパくん。これは……ソナー?レスキューソナーか。
「トランサーノ マップガメン ニ フレルト、ソナープログラムガ キドウシマス。ナニカガ ウマッテイルバショニ チカヅクゴトニ アオ→キイロ→アカ ノ ジュンデハンノウシマス」
なるほど、リアルだとこんな感じなのか。トランサーのマッププログラムと連動した仕組みになっているとは知らなかった。このプログラム、何かに使えないかな?埋蔵金発掘とか?いや、非現実的過ぎるか。
「コレハ ヒントニナルカ ワカリマセンガ……ワタシノナカマハ クルマノカイタイ ガ シゴトノデンパト……テレビノ ハイキガ シゴトノ デンパデシタ…ゼヒ、タスケテクダサイ!!」
「オッケー!ロックも、わかった?」
デンパくんの話って聞き取りづらいから、長い会話だとよく伝わらなかったりするんだよね。
「あぁ、だいたい理解したぜ」
んじゃ、レッツ、トレジャーハント!
ーー十分後ーー
「プハーッ!タスカリマシタ!」
よし、これで最後。
「「「ミンナ、ソロイマシタネ!……デハ、セーノ!」」」
よし、ゴミの山が取り除かれたぞ。コントロールパネルに行かなくちゃ!
ーー廃棄物の電脳1・コントロールパネルーー
「そこのジャミンガー!」
「……ん?キ、キサマはロックマン!ジェミニ様の敵!」
「やっぱりジェミニの手下かよ……」
「先には進ません!」
お、コイツはやる気十分らしい。
「行くぜスバル!」
「もちろん!ウェーブバトル、ライドオン!」
見たところ、このジャミンガーは以前戦ったジャミンガー2のようだけど、あの時はあっちがビビりまくってたからねぇ……
「オラオラオラァ!」
テンプレ通り、ジャミングマシンガンを連射しながら突っ込んでくる。動きながらの射撃なので、狙いはブレブレだ。それでも牽制する程度の意味はあるけど。
「ロック!」
「おう!……ウオォォォォッ!」
久しぶりに聞いたロックの雄叫びと共に、テレポートと見紛う速度で突進し、ジャミンガーに突っ込む。多少のダメージは計算内だ。別に痛くもないし。虚を突かれるカタチとなったジャミンガーは、未だに右手からマシンガンの弾を吐き出し続けている。咄嗟には反応出来なかったらしい。
「ハァッ!」
左腕にライメイザンを展開し、斬りかかる。やっぱり行動阻害って最強だと思うんです。特にハメはね。
「ッ!?グァッ……グググ……」
特段耐久力があったわけでもないらしく、あっさりとマヒにかかるジャミンガー。本格的に縛りを検討してみようかな……
「ハァッ!ハァッ!ハァッ!」
「ギャァッ!ギャァッ!ギャァッ!」
フェイバリットに入れていたライメイザン以外にも、ヘビーキャノンが三枚来ていたので連続発射する。並のウィルスじゃあ、データの欠片も残らない程の砲撃だ。ジャミンガーのご冥福をお祈りします……。
「ふぅ、いい的だったね……」
「流石はスバル。やることに容赦とソツがない」
……それって褒めてんの?
「ジェ、ジェミニ様ーーッ!ウガガァッ!」
「よし、早いとこ正常に戻しちまおうぜ!」
「了解!」
……うわ、酷い。滅茶苦茶に設定されている。いや、でも初期設定ボタンで……
ーーブーーン!
「これで、外の電波も大丈夫になったろ。渡れるようになってるハズだぜ」
「よし、じゃあウェーブアウトしよう」
ーー廃棄物置き場のウェーブロードーー
よし、通れるようになってる。しかし、少し行った先も道が途切れてる。また探し回らなくちゃいけないのか……
「また途切れてるね……」
「ここも原因はさっきと同じだろ。……あのデッカイ廃棄物が怪しいぜ」
今度はスペースシャトルみたいなヤツだ。何でこんなモノが廃棄物扱いされているんだろうか?
「オッケー、んじゃウェーブインしようか……」
ーー二十分後ーー
埋まっていたデンパくんを発掘し、ついでにまたコントロールパネルをいじっていたジャミンガーをデリートしてボクたちは、再び廃棄物置き場のウェーブロードに戻ってきた。リカバリー200を発掘出来たのはラッキーだったよ、うん。
「よし、この先のエリアにツカサ君がいるハズだ!」
「あぁ、ジェミニのヤロウをぶっ飛ばしてやろうぜ!」
ロックの気合いも十分だ。
「いいかい、行くよ……!」
ーー廃棄物置き場2・現実世界ーー
遠目でジェミニ・スパークの位置は確認出来たけど、電波体のままでは向かうことは出来なかった。ウェーブロードが繋がっていないからだ。
なので、電波変換を解いてツカサ君の元へ向かう。
ここで戦闘が始まるわけじゃないのを知っていなかったらとても出来ない芸当だ。
「ツカサ君!」
「スバルくん……」
「来たな!!」
ボクの声に反応したツカサ君とヒカルがこちらを振り向く。ツカサ君が苦しげな顔をしているのに対し、ヒカルの方は好戦的な雰囲気だ。いや、平常運転ってところかな?
「先に言っておくよ。ボクはまだ、キミとブラザーになることを諦めていない。ジェミニを引き剥がした後に、改めてブラザーになるつもりだよ、ツカサ君」
「……キミとブラザーになりたかったのは本当なんだ。でも、ボクはもう……だから、それは無理なんだ。ゴメンよ、スバルくん……」
裏切ったコトを、気にしているのか。
大丈夫、ボクは大丈夫なんだ!……人は何時だって過ちを犯す。だけどそれで終わりなんて、悲しすぎるじゃないか!
「……キミに理解してくれとは言わない。これはボクが決めたコトだから」
「クックック!そういうコトだ。ザァーンネン、諦めるんだな!岩男さんよォ!!」
ヒカル。お前の挑発には全力で応えてやる。……後悔、するなよ?
「オイ、ロック。『アンドロメダのカギ』は持ってきただろうな?」
「フン、そう簡単に渡すと思うか?」
「だろうな。ならばチカラづくで奪うまでだ!」
ジェミニも簡単に渡さないことは理解していたらしく、戦う意思を明らかにした。
「こうするしか、ないんだ。ゴメン、スバルくん……」
「オレたちを止めたければ、さっさと『アンドロメダのカギ』を寄越すんだな!……ハッ!」
二人は浮遊し、ここからでも大きさのわかる大型アンテナにウェーブインした。あそこで、二人と戦うのか……。
「チッ!電脳の中に逃げやがった!」
ロックが推測するけど、それは違う。
「逃げる?そいつは違うぜ!……こうするためだ!」
大型アンテナから、ヤシブタウンの時に見たプラス電波とマイナス電波が大量に放出される。
「そういうことか……!あの廃棄物を利用して電波が届く範囲を広げる気だ!このままだと、被害がデカくなっちまう……」
ーープルルルル!
着信?これは……ミソラちゃんか!
「もしもし、ミソラちゃん?」
『スバルくん!?大変よ!』
もう既に、ジェミニのチカラが効力を発揮しているのか!……流石に早すぎるぞ!?
「どうしたの!?」
『た、大変なの!周りの人が……』
ま、待てよ?ミソラちゃんは確か、委員長とブラザーバンドを結んでいたハズだぞ!?
「大丈夫!?ミソラちゃんは今何処にいるの!?」
『ワ、ワタシはヤシブタウンにいるんだけど、急に周りの人たちがケンカしだしたの!さっきまで、あんなに親しそうにしてたのに……』
よ、よかった。ミソラちゃんと委員長の衝突は避けられたらしい。
「そっか、教えてくれてありがとう、ミソラちゃん。それと、後で話しておきたいことがあるんだ」
『え?それってもしかして…………エヘ、エヘヘ……』
何だか妄想モードに入っている気がするんだけど、どうしたんだろう。
「ごめん!時間がないんだ!後でね!」
『え、あ……うん。頑張ってね、スバルくん……』
「ありがとう!じゃね!」
ーーブツッ!
「……どうする?」
「決まってるでしょ!止めに行くんだよ!」
「ヘッ!そう言うと思ったぜ!なにせ……お前のダチだもんな!」
フフッ、ありがとうロック。
……よし、ツカサ君とブラザーになりに行くぞ!これは曲げない、曲げられない!
「あぁ!電波化してウェーブインだ!」
「おうよ!」
ここからは実力行使、お話をしようか!ツカサ君……いや、ジェミニ・スパーク!
結構原作と解離しているような気がします。
原作沿いのタグを返上した方がいいですかね?
感想・評価お待ちしております。