星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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初ルビ使用にちょっとビビってます。


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 ーー廃棄物の電脳3ーー

 先程ウェーブアウトしたウェーブホールとは別のウェーブホールからウェーブインし直し、ボクたちは廃棄物の電脳に来ていた。

 

「……この奥に、ツカサ君が……!」

 

「よし、気をつけて進めよ!」

 

 当然!誰に言ってるんだ!

 

 ーー二十分後ーー

 

「……プハァ~!アリガトウゴザイマシタ!コノゴオンハ ワスレマセン ケッシテ……」

 

 じゃあもう少し、トレーダーの中のメットリオを減らして下さいお願いしますから!

……さて、これで終了!多分、ここまでと同じように道を塞いでいたゴミの山が片付けられているハズだ。

 

……ようやく、ようやくここまで来た。後はツカサ君……ジェミニ・スパークに勝つだけ。その後は、その後だ。

 

 

 ーー廃棄物の電脳3・最奥ーー

 

 大型アンテナの電脳の最奥、そこには此方に背を向けコントロールパネルを操作するジェミニ・スパークの姿があった。

 ……ここからプラス電波とマイナス電波を飛ばしているのか。

 

「ツカサ君!」

 

 此方の声を聞き、振り替える二人のジェミニ・スパーク。相変わらず好戦的なヒカルと対称に、ツカサくんの顔は暗い。だからツラいならやめろよォッ!

 

「スバルくん……」

 

「もうやめるんだ!こんなこと……キミたちが吐き出した憎しみは、また別の誰かが心に宿すことになるんだぞ!?関係のない、誰かだ!」

 

「そいつは無理な話だぜ。オレたちは既に、優先順位を決めている。……地球をブッ壊して、オレたちの両親に復讐するってなァ!この広い世界だ。何処かにいるアイツらも死んぢまうだろうさ!……オレたちを捨てるようなクソ親が、地球の外に出ていけるようなエリートのワケはねぇだろうからな。エェ?父さんが宇宙飛行士のスバルくんみたいにはなァ!!」

 

 クソ!ヒカルのヤツ、予想より口が悪い!煽ってるな……このボクを!

 

「この……!」

 

「スバルくん、ボクは……ボクはボクのことを捨てた親が憎い。この憎しみは、復讐を果たすまでは消えないと思う」

 

「クックック……そういうワケで、オマエたちの持つ『アンドロメダのカギ』がどうしても欲しいってわけだ」

 

「ボクは決めたんだ。復讐のためなら……キミですら利用させて貰うって……!」

 

「ツカサ君!ボクはキミとブラザーになりたいんだ!ヒカルがいたっていい!ありのままのキミと、ブラザーに……!」

 

 継ぎ目なく交互に話す二人のジェミニ・スパーク。

 ……もう、いい。対話はここまでだ。交渉決裂、相互不理解。なら、ボクの思いを……戦って押し通すだけだ!

 

「……さぁ、お喋りはここまでだ。そろそろ決着を着けようか!」

 

「ツカサ君……この、この…………わからず屋ァッ!」

 

「やるぞスバル!ここは退くなよ!何があってもだ!」

 

 わかってる!

 

「ゴメンよ、スバルくん」

 

 その言葉を放っていいのは地に倒れ伏してからだァッ!

 

「この戦い、ボクの全てをぶつける!ウェーブバトル、ライドオォォォン!!!」

 

 だが、落ち着け。落ち着くんだ星河スバル。このパターンは前にもあった。そう、ハープ・ノートの時だ。あの時はハープが元々ロックを知っていたが故の対策だったけど、今回は違う。今回は大量のジャミンガーを有した人海戦術によって採取したデータによる対策をとってくるハズだ。なんせジェミニがバックに着いてるんだ。勝率なんて、当然疑って計算するに違いない。だから……

 

「ロック!」

 

「あぁ!」

 

偽装血族(トライブ)内包(オン)……ベルセルク!」

 

 未知のチカラで圧倒する!目には目を、歯には歯を、雷には雷を、だ!

 

「うおぉぉぉぉっ!ロォォック!!」

 

「オラァァァッ!」

 

 ロックの雄叫びと共に、ウォーロックアタックで突っ込んでいくボク!ベルセルクの大剣で斬りかかる。当然狙いはジェミニ・スパーク(ブラック)……ヒカルだ!コイツを、コイツを先に倒せば!

 

「…………」

 

「クッ!」

 

 ツカサ君がロケットナックルを放ってくる!アレはガード不可だけど、弾速が遅いので動きの遅いヤツか、動きを牽制するために使用するのが主なはずだ。

 

「ハァッ!」

 

 慣れ親しんだモーションでロケットナックルを斬り裂き、再び攻撃を開始する……が、流石に体勢を立て直すには十分過ぎる時間を与えてしまったようだ。ジェミニ・スパーク(ブラック)もエレキソードを展開して鍔迫り合いとなる。

 

「よぉ、岩男……!ナンだよ、そんなチカラ、こっちのデータには無かったぜ?」

 

「こっちも警戒してたんだよ!あれだけジャミンガーがいたら、偵察役もいるって思うだろ!!」

 

「クックック……まぁ、そう、だよな!それにしても……」

 

 それにしても、何だ!?

 

「?…………グハッ!」

 

 クソッ!背中に着弾……ツカサ君か!

 

「…………」

 

 無言で腕を構えるジェミニ・スパーク(ホワイト)。既に発射した腕は再生している。

 

「クソッ!」

 

「クックック…………オマエって結構周りが見えなくなる

 タイプなんだなぁ……背中がお留守だったぜぇ!?」

 

「オマエは一度、そのよく喋る口を閉じる、努力をした方がいい!」

 

「そいつは無理な相談、だっての!」

 

 跳躍し、斬りかかってくるジェミニ・スパーク(ブラック)。遅い、遅いが故に長く注意し続けなければならない!さっきからずっと、ツカサ君が死角に入り続けているんだ。気を抜くとロケットナックルがヒットしてしまう!

 

「そらッ!……セァァッ!!」

 

 ツカサ君がいるであろう方向に、ここまでの戦闘で手に入れたパワーボム3を投擲する。パワーボム系統では最大の威力・範囲を誇るそれは、辺りを爆煙で包むという役割をきっちり果たしてくれる。そしてそのままジェミニ・スパーク(ブラック)の斬撃を受け止め、弾き飛ばす。今の内だ!

 

「(チッ!この状況じゃあ、オレの不利か……だが!)オラァッ!」

 

 今度は跳躍し、真上から突きこんでくる!そんな攻撃でぇッ!!

 

「無駄だ!」

 

「ぐあっ!」

 

 情けない声を出し、吹き飛んでいくジェミニ・スパーク(ブラック)。あの方向にはまだ、パワーボムの爆煙が残っている……

 

ーーゾクッ!

 

 マズい!よくわからないけどマズい!……取り敢えずシールドを!

 

「……うわぁっ!グググ……」

 

 爆煙を切り裂いて発射されたのはジェミニサンダー。そうだ、あっちにはツカサ君がいたんだった!なんとかシールドでガードできたけど、今のはかなりヤバかったぞ……!

 

「チッ!これも防ぐってのか……」

 

「…………」

 

「………………強敵だ」

 

 これは、今までの敵とはまったく違うパターン。

 このコンビネーションは厄介だ……!ならばこちらも!

 

「ロック、頼むよ!」

 

「ヘッ!任せとけ!」

 

 ボクたちは電波人間になるにあたって融合しているため、口頭で話さなくとも意志の疎通が可能なんだ。今回は、それを活かす!

 

「行くぜ岩男ォッ!」

 

「(スバル、もう片方のジェミニが右腕を構えてる。剣を振り切ったら発射してくるぜ)」

 

「(オッケー!)……!」

 

 エレキソードを避け、ジェミニ・スパーク(ブラック)の背後に回り込む。

 

「(よし、射軸を合わせて)」

 

「(白ジェミニと!)」

 

「(同時攻撃を!)」

 

「うおぉぉぉっ!」

 

 下から掬い上げるようにジェミニ・スパーク(ブラック)……黒ジェミニを打ち上げる。不意を突けたようで、慌てて姿勢を直しているのがわかる。……今度はチャージショット!ボクの死角に立ち続けているが故に、その居場所には検討をつけられる!

 

「グッ!」

 

 チャージショットを食らってマヒするツカサ君……白ジェミニ。今の、内ィ!

 

「サンダァッボルトォッブレイドォッ!」

 

 空中に打ち上げられ、身動きの制限された黒ジェミニに向かい、ベルセルクのKFBを叩きつける!二度、三度と巨大化させた大剣で切り裂き、最後に振り抜いた剣から膨大な雷撃を発射する。サンダーフォース!……これはオシリスか。

 

「ガッ……グハッ……」

 

 よし、黒ジェミニは倒したぞ。ダメージが大きかったのか、気絶しているように見える。どっちみち戦線復帰は不可能だろう。

 

「ツカサ君!ヒカルは倒したんだ!……もういいだろ!?」

 

「…………ゴメンよ、スバルくん」

 

 クソォッ!!一人でもやるつもりか!

 

「なら、せめて終わらせる!……すぐにでもだ!」

 

「スバル!油断はすんなよ!」

 

 当たり前だ!

 

 ーー二分後ーー

 

「グッ……ハァ、ハァ、ハァ……」

 

 ツカサ君との戦闘は直ぐに終わった。当たり前だ。今まで暴力を振るってきたのはヒカルで、ツカサ君は心の奥に引っ込んでいたんだから。そろそろ黒ジェミニも目覚めるだろうか。

 

「……ハッ!ち、チクショウ、こんなハズじゃ……!」

 

「……ううう」

 

 二人は完全に限界だ。

 

「く、くっそ……!ぐあぁぁぁぁ!!」

 

 ジェミニが消滅し、二人の電波変換が解かれる。ここからだ。ツカサ君とは。ここからなんだ。

 

「ジェミニめ……ようやくチカラ尽きたようだな」

 

「よし、ウェーブアウトしよう……」

 

 ーー数十分後・廃棄物置き場2ーー

 

「……ううう」

 

 ツカサ君を担いでウェーブアウトしてから数十分。ボクはひたすら考えていた。ツカサ君に言葉を届かせるためにはどうすればいいのかを。未だにはっきりした答えは出ない。でも、気持ちをはっきりと示すことが事態を良くすることだってあると、委員長が教えてくれた!

 

「……ううう……ハッ!」

 

 どうやら、気づいたようだ。

 

「こ、ここは……?そ、そうか……負けたのか」

 

 脱力したようにふらつくツカサ君。

 

「キミは……ツカサ君のほうかな?」

 

 わかっていても聞かなくちゃいけないことだ、これは。

 

「うん、ボクはツカサだよ。ヒカルは……今、大分弱ってる。チカラを使いきったんだと思う」

 

「そっか……」

 

「うん……もう、キミの前には現れないよ。キミと一緒にいるのはツラいから……」

 

 そう言って立ち去ろうとするツカサ君。このまま行かせて、いいわけないだろ!

 

「ツカサ君!ボクはまだ、諦めてないぞ!……今日ボクは、キミとブラザーになるために来たんだ!」

 

「ボクだって、キミとブラザーになれると、なりたいと思ってた。でも……ボクはキミを、手酷く裏切ったんだ。今更……」

 

「バカ言うな!こんなの気にしちゃいない!友達って、ブラザーって、過ちを犯しても、お互いを許せる間柄ってことなんじゃないの!?」

 

「所詮、こんなものかもしれないね……人と人との関係なんて」

 

 フッ……っと、投げやりに笑うツカサ君。ボクはそんな顔を見に来たわけじゃない!

 

「違う!誰かのためなら、どこまでだって強くなれる!前に進める!それが人の絆で!誰もが心に持つ、スターフォースなんだ!」

 

「……それでもボクは、今更キミに合わせる顔がない。こうして話しているのだって、心が縛られるようで……ツラいんだ」

 

 胸を押さえ、所々つっかえながらボクに心情を話すツカサ君。多分、一刻も早くここから立ち去りたいんだろう。

 でも、ダメだ。ここは譲れない、譲っちゃいけない!

 

「ツカサ君」

 

「……何だい?」

 

「キミはボクを裏切って、心が苦しいんだろう?ボクという存在が、心を縛ってるんだろう?」

 

「そうだよ。キミにとても大きな引け目を感じてる。もう一生、キミの前には現れないつもりさ」

 

「……教えてあげる。ココロを縛られるのは、カラダを締め付けられるよりも苦しいんだ」

 

「……?」

 

 こんなときに、何の話だろうと首を傾げるツカサ君。

 

「ボクのブラザーの受け売りなんだけどね……だから、この一発で終わらせる!」

 

「え?」

 

 何となく悟ったのか、及び腰になり後退りするツカサ君。ハッハッハ、逃がさんよ!

 

「歯ァ食いしばれェッ!」

 

ーーバギッ!

 

「グハァッ!?」

 

 ツカサ君の顔面を、思いっきり殴ってやった。腰を捻り反動をつけて殴ったので、素人でもそれなりの威力が出たハズだ。

 

「ス、スバルくん……!?」

 

 困惑した様子のツカサ君。

 

「ほら、おあいこだ。電波体じゃないから、リカバリーでアザは治せない。……これで一方的な裏切りじゃなくなっただろ?キミはボクに危害を加える大義名分が出来たってことだ。……順序が逆だけどね」

 

「ボ、ボクは……」

 

「いいから!気にしないで!ほら立って!ブラザーバンドの契約!」

 

「え?あ…………うん」

 

 ツカサ君が茫然自失といった状態の間に、さっさとブラザーバンドを結んでしまった。後はどうにでもなる!

 

 ーー数分後ーー

 

 ようやく落ち着きを取り戻したツカサ君。しかし未だにボクとブラザーバンドを結んだことを信じきれていないようだ。

 

「えっと、スバルくん。その、ボクは……」

 

「いいんだ。これでいい、これでいいんだよ」

 

「……わかったよ。ありがとう、スバルくん」

 

「さ、今日は疲れたね。……帰って休もうよ」

 

 一件落着、とばかりに帰ろうとするボクに、ツカサが話しかけてきた。

 

「ホントにありがとう、スバルくん。でもボクは、キミの前から姿を消すよ」

 

 え?どうして!?

 

「な、何で!?」

 

「このままじゃ、キミに迷惑をかけそうだから……。いつか、ボクがちゃんとヒカルを制御できるようになった時、正面から会いに来るよ」

 

 ツカサ君の顔を見る。決意は固そうだ。でも……

 

「そんなの気にしないよ、ボクは」

 

「ううん、これはボクが決めたことなんだ。両親に復讐すると決めた時以来の、絶対にやり遂げるための決意。だからこればっかりはダメなんだ。ゴメンね」

 

 申し訳なさそうな顔をしているが、どこか吹っ切れたような気もする。うう……仕方ないか……

 

「……わかったよ。でも、ボクたちはブラザーだ。いつでも繋がってる。……具体的には週2で電話するからね!」

 

「プッ、アハハハハハ!あー、もうこんなに笑ったのは久しぶりだよ……。うん、ボク頑張るから」

 

「そうだよ、その意気だ!」

 

「うん。それじゃあ、ボクは行くから……」

 

「今夜辺り電話するからね~?」

 

「フフッ、わかったよ。楽しみにしてる」

 

 ツカサ君が行ってしまうことは防げなかったけど、彼は新しい絆を手に入れることが出来た。きっとこれでいい。これでいいはずなんだ。後は、委員長とミソラちゃんに話しておかなきゃ……




この終わりかたには賛否あるかもしれませんね……

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