ーー???ーー
ここはとある空間に作られた玉座。そこで王は一人、熟考していた。無論、現在侵略を目論む星についてだが。
「オックス、キグナス、ハープ、リブラ、オヒュカス、ジェミニ……余が送り込んだ戦士たちが悉く返り討ちに遭い、ハープに至っては敵に寝返る始末……やはり信頼できるのは己だけということか」
とある星の王は自らの手を握りしめ、決意をあらわにした。疑惑、恐れ、悲しみ、怒り。王のこれまでの人生が語っていた。疑わしきは罰せよ。容赦はしない、と。
「見ておれ、ウォーロック……いや、地球人ども。このFMプラネットの王自らの手で地球をかのAMプラネットのように死の星へと変えてくれよう!アンドロメダよ……もう一度、余にチカラを貸すのだ……!」
ーー翌日ーー
「ふぁ~あ……うう、もうこんな時間か……」
夕べは遅くまでツカサ君と話し込んでたからなぁ……ツカサ君の話では今暫くは国内にいるけれど、いずれは国外に出て多くのモノを見て回りたいそうだ。世界を知って、それからヒカルともう一度話し合うらしい。大変だけど、今のボクはこれまでの人生で一番ワクワクしている、とはツカサ君の弁だ。そんなツカサ君を、ボクは尊重していきたい。
「スバル~!ルナちゃんが来たわよ~!」
「はぁーい!」
ーーガチャッ!
「おはよう。今日もいい日だね、委員長」
何だかとっても気分が軽い。自然と口角が上がってしまう。あぁ、そうだ。ボクは新しいブラザーを手に入れたんだ…………ハッ!し、しまった。委員長とミソラちゃんにも言わないと……
「ッ!……え、ええ。おはよう、スバルくん。どうしたの?何かいいことでもあった?」
朝から顔を赤くする委員長。ボクの顔を見て赤くなったので、ニコニコ笑ってるボクにイラついたのだろうか。以前はニコニコしながら手を振ったらガチギレされかけたし。あのときは煽ってるように見えたんだっけ?
「あ、うん。そうなんだ。実はね……」
ーー少年説明中ーー
「ええっ!?ツカサ君とブラザーに!?」
愕然とした様子の委員長。まぁ、言わなかったのは悪いと思ってるけどさ……
「うん。ゴメンね、言えなくて」
「えっと、その……双葉ツカサ君のことよね?また国民的アイドルとかじゃないわよね!?」
何故か涙目の委員長。いったいボクが何をしたって言うんだ?(棒)
「ほらほら、落ち着いて……委員長らしくないよ、そんなに取り乱すなんて」
こういう委員長にはコレだ。
「ううっ…………んっ、ちょっとくすぐったい……」
あら不思議、頭をナデナデするだけで落ち着きました!きっとボクの左手には、人を落ち着かせるチカラが宿ってるに違いない。電波化するとロックの顔が宿るけど。早くハンターVG欲しい。
……いや、冗談だよ。委員長はこれまで、あまり親の愛情を受けられなかったんだ。最近関係が改善したとはいえ、まだまだ甘えたい年頃なんだろう。
「ん…………ハッ!ス、スバルくん!も、もういいわ!」
「はぁーい、それじゃ、行こうか?」
「ええ、そうしましょう。……おばさま!行って参りますわ!」
「フフッ、行ってらっしゃい。ルナちゃん、スバルをよろしくね」
圧倒的あかねさん!もう最近は見られてもどうってことなくなってきたような気がするよ。
「お任せくださいな!スバルくんはこの私がキッチリ面倒見ますので!」
「そう……ならこのままスバルのコト、お願いしちゃってもいいかしら~?」
「それは……!ス、スバルくんの了承がないと……えっと、その……」
もごもごし出した委員長。何だか歯切れ悪いな……
「ハイハイ、それじゃ行ってきます!ほら、委員長も」
「スバルくん、これは、えっと、別に嫌ってわけじゃなくて……その、お互いに……あぁ、もう!行ってきますわ!」
「フフッ、気をつけてね~」
やはりラスボスはあかねさんかもしれない。
ーー5-A教室ーー
「ええ~、今日はみんなにお知らせがある。昨日、ウチのクラスの双葉ツカサから、休学したいという申し出があった」
帰りのホームルームで、突然語りだした育田先生。周りがざわめく中、不思議と育田先生の声は教室に響いた。
「先生が対応したが、本人の意志は固かった。どうしてもやりたいことがある……ということだ。なので、暫くはツカサに会えなくなるが、必ず戻ると本人は電話で言っていた。……だからな、ツカサが帰ってくるまで、みんなで待とうじゃないか!そして、戻ってきたツカサに言ってやろう!おかえりーッ!!ってな」
「そうだ!ツカサはいいヤツだったんだ!」
「アイツはいつまでも、5-Aのクラスメートだぜ!」
「オレ、アイツが帰ってきたら牛丼おごってやるんだ!」
「ボクたち5-Aの絆は不滅ですよ!」
凄いよ、やっぱり。このクラスは凄い。ボクはこんなクラスで学校生活を過ごせて、本当に幸せだ……!
ーー放課後・星河家ーー
ツカサ君の休学という一騒動があった後、ボクはミソラちゃんにもツカサ君のコトを告げるべく、震えながらトランサーの操作パネルをいじっていた。
ーープルルル……
こちらから電話をかけているため、その音は控えめだ。さて、そろそろ……
ーーガチャッ!
『はい、もしもし』
出た!
「あ、ミソラちゃん?」
『スバルくん!待ってたよ!私、待ってた!』
……なんでこんなにハイテンションなんだろう。
「ゴメンね、連絡するの遅くなっちゃって……」
『ううん、いいんだよ!それで、話しておきたいコトって何かな!?』
あ、そんなに気にしてくれたんだ。なんだか申し訳ないな……
「えっとね……」
『うん、うん!』
「その、実は……」
『(フフフ……ルナちゃんには悪いケド、やっぱり初めてのブラザーの存在は大きいってコトね)』
「実は、新しくブラザーバンドを結んだんだ」
『』
「え?」
『…………』
反応がない?いや、委員長の時は大丈夫だったし……
『…………どんな子なの?』
あ、確かに。気になるだろうし、普通の反応か。
「えっと、『双葉ツカサ』って名前の子なんだけど……」
『(ツ、ツカサ!?は、判断に困る名前ね……いや、でもどっちなんだろう?ここまでの傾向を振り返ると……お、女の子の可能性が高い、よね……)も、もしかして、クラスの委員長やってるようなしっかりしてて、それでいて手の出しやすそうなコ?』
……何処かで聞いたことあるような特徴なんだけど。
「イヤに具体的だね……」
なにやら長い葛藤があったような声だった。
……大丈夫、だよね?
『アハハ……つ、続けてスバルくん』
ーー少年説明中ーー
『なるほど、そういう子だったんだ……その子のブラザーは、スバルくん一人だけなんだよね?』
実は、ボクのブラザーに限ってツカサ君の出生や二重人格のコトを話す許可はもらっている。昨日話した時に、ツカサ君のほうから申し出てくれたんだ。ボクのせいでキミに迷惑はかけたくない、ってね。
「うん、そうだよ。ツカサ君は今、自分の中の人格を制御するために頑張ってる。ボクは彼を応援したいし、そんな彼のブラザー……友達でいたいんだ」
『なるほど……むむむ、わかったよ。でも、今度またヤシブタウンに付き合ってもらうからね!』
あ、委員長の時は結構大変だったからなぁ……また行こうっていうなら悪くはない。あっ、そうだ。
「もちろん、喜んで!ついでに委員長も連れてっていいかな?カフェで奢る約束があるんだけど……」
『スバルくん?』
地の底から響くような声だ。この声には、逆らっちゃあいけない。
「すいません冗談ですハイ」
『フフッ、ならよろしい!いい?女の子の誘いは、大事にしなくちゃダメなんだからね?』
「わかっておりますとも!」
いやぁ、なんでこんな馬鹿げたことをしようと思ったんだろう。きっと錯乱してたんだね、うん。
『それじゃ、ヤシブタウンのコト忘れないでね!……あと、ちゃんとルナちゃんにも付き合ってあげること!わかった?』
「ハイ!」
『……うん。じゃ、またね!』
「またね……」
ーープツッ!
「……はぁ」
なんだかドッと疲れた……
「クックック……自業自得ってヤツだな、スバル」
なんだよ!ロックまでさぁ!
「ちょっとくらい労ってよ……。相棒が大変な思いをしたってのにさぁ……」
「ま、これもハープの言う青春ってヤツなんじゃねぇの?」
「……ロックって、青春が何かわかってるの?」
「さぁな。だがよ、今のオマエを近くで見てるとな……まったく退屈しねぇぜ!」
ギャハハハハッ!っと笑うロック。酷いな、もう……
「あ、ロック。今日はどうする?」
「そうだな……お!いいコトを思い付いたぜ!」
ロックが方針を提案するなんて珍しい。別にやることもないし、話くらいは聞いてもいいかな。
「ホラ、オレたちのバトルスタイルって、基本は接近戦だろ?」
「まぁ、そうだね。どちらかと言うと、ロックの特性にあったバトルスタイルなんだけども」
だって遠距離系に補正とか、かからないし。強敵だと銃口の向きから避けられそうなんだよね……
「まぁ、そうなんだが……だがよ、常に接近戦ばかりだと雑魚の相手でも消耗するし、ここは中遠距離寄りのフォルダを組んでみる、というのはどうだ?」
ふむふむ、一理あるか。……それに、戦場を俯瞰で見る訓練にはなりそうだし。プラスもある。悪い提案じゃないな。
「いいよ、暫くはそっち系のバトルカードの収集を優先しようか。……今日からやるの?」
「当然!」
トホホ……
ーー星河家・夜ーー
つ、疲れた……あぁ、今日は『危ない暴れん坊ウルトラ大将軍』の放送日だったのに……ま、まだだ、モンドコロニウムレーザーをこの目で拝むまで、寝るわけには……
『ハァイ、スバルくんヤッホー!』
テレビに映ったミソラちゃんの幻影が見える。いや、現実逃避か……
「も、もうダメだ……」
い、意識が遠のいていく……
ーースバル寝落ち後ーー
「ス、スバルくんが倒れちゃった!ど、どうしよう!?ねぇ、ハープ!」
「クスクスクス……落ち着きなさい、ミソラ。ボウヤは寝ているだけよ……いや、コレはチャンスね」
「チャンス?」
「そう、あのルナってコに先んじるための……チャンスなのよ!」
「オマエら、オレがいるってコトを忘れちゃいないか?」
「アラ、年頃の男女の機微もわからない、ガサツなロックは黙ってなさい。ねっ、ミソラ!」
「ねーっ!」
「取り敢えずスバルの冥福を祈ってるか。強く生きろよ、スバル……」
主人が寝落ちした部屋は、暫く賑わっていた……
ーー翌日・朝ーー
ーーチュンチュン……
「……ハッ!し、しまった。『危ない暴れん坊ウルトラ大将軍』、見逃してしまった……!」
この星河スバル、一生の不覚!しかし、寝る前にミソラちゃんの声が聞こえたような……
「…………んっ」
「え?」
オイオイオイオイオイ、ちょっとなんでベッドに膨らみがあるんですか教えてくださいお願いしますからぁ!
そーっと、シーツをめくる。そこに眠っていたのは……
「…………んんっ……」
ギャーッ!未だ眠りから覚めないミソラちゃんの姿だった!しかもパジャマだ!どこから持ってきたんだよ!?し、しかしマズい。これはマズい。
「ロォォック!」
全力のウォーロックアタックの合図よりも全身全霊でロックを呼ぶボク。とにかく余裕がない。
「いるぜ」
あ、ビジライザーをかけてなかった。まったく、ソロが羨ましいよ。
「ロック!これは!?どういうことなの!?」
涙目になっている自覚がある。
「そこのオンナに聞いたらどうだ?」
え?
「え?」
「……うーん……あ、スバルくん、おはよ」
寝起きのため、眠たげな目付きがどこか妖しい魅力を醸し出していて、ボクは吸い寄せられるように……じゃない!落ち着け、落ち着くんだ。星河スバルは狼狽えないっ!
「あぁ、おはようミソラちゃん。ところで、夕べの記憶がないんだけど何で隣で寝てたのか、聞いてもいいかい……?」
恐る恐る、といった具合に問いただすボク。
「え……?スバルくんが一緒に寝ようって言ったんじゃない。……忘れちゃった?」
フフ……と妖しい笑みと共に衝撃の事実を告げるミソラちゃん。う、嘘だろ承太郎!
「な、何だって……!」
「フフッ、冗談だよ、冗談。スバルくんがテレビの前で倒れちゃったから、ベッドまで運んだんだけど、ワタシまでウトウトしちゃって……」
な、なんだ。ボクが誘ったとかじゃないのか。なら安心……は、出来ないな。それに今日は平日、学校があるんだった!
「ミソラちゃん!ボク、今日学校あるんだ!」
「あ、ワタシの学校は今日、創立記念日だから気にしなくていーよ?」
畜生!ミソラちゃんの余裕はコレが原因か!
あぁ、もうそろそろ委員長が……
『スバル~!ルナちゃんが来たわよ~!』
あ。
「ヤバい!もう行かなきゃ!」
「あ、ワタシも付いていっていい?」
「無理だよ!」
「大丈夫、電波変換してスバルくんのトランサーの中にいるから……ハープ!」
言うが早いか、ミソラちゃんはハープと電波変換して、ボクのトランサーに入ってしまった!
「ええぇ……嘘ぉ……」
トランサーの画面では、画面の大きさに合わせてデフォルメされたハープ・ノートがウインクしていた。
『スバル~!』
うわわ、あんまり待たせると委員長の機嫌がヤバい!
「はぁーい!今行くよ!」
こうしてボクの長い1日が始まった……
砂糖漬けになりそう……
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