星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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圧倒的委員長。砂糖吐きそう、私が。


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 ーー放課後ーー

 

「し、しまった!もう放課後だよ……」

 

 授業中は白目を剥いたまま寝ていたために、意識はなかったのでバレていたかも……。いや、育田先生のことだ、確実にバレているだろうね。

 ……後で謝りに行くか。

 

「(そういえばよ、スバル。あのツインドリルのオンナとカフェに行くんじゃなかったのか?)」

 

 あー、うん。すっかり忘れてたね、こりゃ。今日は授業時間の少ない日だし、丁度いいかな?あ、丁度委員長が荷物を纏めてる。纏めるといっても、トランサーの他にはデータとして取り扱えないモノだけなので、あんまり大荷物にはならないのが電波社会の現状だ。

 

「委員長っ」

 

「ヒャッ!……って、なんだスバルくんね。まったく後ろから耳元で囁くのは止めてちょうだい。心臓に悪いわ」

 

「ロックマン様に囁かれたコトを思い出しちゃった?」

 

「~~っ!……で、何かしら?」

 

 ロックマン様カッコいいもんね。しかたないね。(棒)

 

「あ、ほらこの前さ、ヤシブタウンでカフェご馳走する……みたいなコト言ったじゃない?」

 

「えぇ……そうね」

 

 途端にツインドリルをいじり出す委員長。委員長がヤシブタウンに行きたいって言ったんじゃなかったっけ?

 

「で、今日は授業時間が少ない日じゃない?」

 

「そうね」

 

 興味無さそうにしているが、ツインドリルをいじる速度が上昇しているので満更でもないはずだ。

 

「ボクも一杯寝てスッキリしたし」

 

「アナタねぇ……」

 

 何だか嬉しそうにため息を吐く委員長。なんで嬉しそうなの?世話焼きが好きとか?

 

「だからさ、今からヤシブタウンのカフェに行くってのはどう?」

 

 そう言った瞬間、委員長の目がパァーッと煌めいたのが見えた。ま、眩しいよ委員長……

 

「しょ、しょうがないわ!スバルくんが行きたいって言うなら、ワ、ワタシはいいわよ?」

 

「よし、決まり。じゃ、早速行こうか」

 

「え、あ……うん」

 

「ほら、どうしたの?……エスコートでもしてあげようか?」

 

「い、いらないわよ!」

 

 冗談めかして言うと、顔を赤くしながら憤慨する委員長。やっぱりエスコートは恥ずかしいよね。ボクも恥ずかしい。

 委員長なら似合いそうではあるんだけど。ほら、割と高貴なイメージあるし。ボクだってそれなりの格好をすれば……いや、止めとこう。小学生同士だから微笑ましい光景になるだけだね。

 

 

 ーーヤシブタウン・カフェーー

 

「おぉ……」

 

 なんというか、新鮮だ。実は件のカフェにはツカサ君と話した時に一度来ているのだけど、純粋にティータイム(なのかな?)目的で来たのは初めてだ。トランサーのデジタル時計を見るとまだ3時を過ぎた辺りで、他の客の姿も少なくあまり人の目を気にしなくていいのはラッキーだと言えるのだろうか。

 

「どうしたのかしら?」

 

 優雅に注文したケーキを食する委員長。動作が洗練されていて美しいので、ついつい目がいってしまう。

 

「あ……うん。実はこういう店って、あまり来たことがないんだよね」

 

「フフッ……そうなの?」

 

 なんだろう。調子狂うな。ボクは今、錯乱しているに違いない。委員長が、とても輝いて見える。なるほど、動作一つでここまで印象を変えるのか……少し、勉強してみようかな。

 

「それに委員長って、キレイだし……」

 

「え?あ……ス、スバルくん?」

 

 年相応に可愛らしい狼狽え方をする委員長。

 

「いや、マナーっていうの?凄く優雅っていうか……」

 

「あ……そうよね!マナーのことね、アハハ……」

 

 何故乾いた笑いをするんだろう。正直に言ったのに。

 

「うん。ボクもちょっと練習してみようかなって」

 

「な、なら……ワ、ワタシが教えてあげましょうか?」

 

 おぉ……助かる。いや、迷惑になっちゃうよね。

 

「そういえば、委員長は誰から教わったの?」

 

 両親は遅くまで帰ってきていなかったから、両親は除くとして……誰なんだ?

 

「あぁ……マナー専門のティーチャーマンがあるのよ」

 

 なるほど。そういうタイプのティーチャーマンもいるのか。そういえばウチにあるティーチャーマン、暫く使ってないな……

 

「へぇ、便利だねぇ……そのティーチャーマンって借りてm」

 

「ウチでしか使えないわ!」

 

 食いぎみにティーチャーマンの不便さを語る委員長。流石に用途が違うと仕様も違うらしい。委員長の家の電波にしか反応しない、とか?

 

「あ、そうなの?」

 

「ええ、そうよ!ウチでしか使えないわ!」

 

 フフン!とばかりに胸を張る委員長。どこに誇れる要素があったんだろう。ただ持ち運び出来ないってだけじゃない?

 

「じゃあ、委員長が迷惑にならない時にでも、訪ねさせてもらってもいい?」

 

「フフフ……しょ、しょうがないわね……!」

 

 ニヤケ顔を抑えきれないといった様子だ。ボクが四苦八苦する様子でも見て、からかうネタにするつもりなんだろうか?

 

 ーー五分後ーー

 

「ふぅ……そろそろ会計しない?」

 

「あ、じゃあ103デパートに寄ってもいいかしら?ついで、なんだけどね」

 

 何か用事でもあったのかな?まぁ、ミソラちゃんの時みたいに一日中……とかじゃなければ大歓迎だけど。

 

「いいよ」

 

「フフフ……!」

 

委員長が悪い顔をしている。嫌な予感が……

 

 ーー103デパートーー

 

「……あっ!ママ!」

 

ゲェッ!委員長のお母さんだ……。何だか気まずいな。

 

「あら、ルナ。どうしたの?」

 

「フフフ……実は今日はね……」

 

「あら、そうなの……あのときの彼が……」

 

 母娘の会話だ。聞き耳を立てるのは無粋だろう。しかし何を話しているのだろうか。

……取り敢えず一段落したらしい。挨拶位はしないと。

 

「こんにちは。えぇっと……白金、さん?」

 

 ちょっと躊躇いがちに言うと、白金さん(人妻)は首を傾げ、それから意味深に微笑んだ。

 

「キミはあのときにいたスバル君ね?ルナからよく話は聞いているわ。何でもルナのヒーローなんだとか……?」

 

 ちょっと、委員長!?ロックマンの正体は秘密なんじゃなかったの!?あ、でも委員長、親御さんと話す機会は増えたんだ。それは良かった。

 

「いやいや、大げさですよ!ちょっと委員長が困ってた時に助けただけ。それだけです。……家から引っ張り出してくれた恩もありますしね」

 

「フフフ……そう。まぁ、いいわ。これからもルナのコト、よろしくお願いするわね……?」

 

 あかねさん然り、百合子さん然り、どうもボクは大人の女性に弱いらしい。……変態みたいだな、ボク。

 

「ええ、わかりました。でも委員長はしっかりしてますからね。ボクなんかで助けになるかどうかわかりませんけど。それで良ければ」

 

「そう、良かったわね、ルナ」

 

 そういえば、さっきから委員長が喋ってないな。どうしたんだろう。

 

「~~~~っ!」

 

 顔を真っ赤にして白金さんの後ろからチラチラとこちらを窺っている。いや、親の前でいろいろ話されると恥ずかしくなるよね。ボクなら逃げ出してるよ。

 

「あ、そうそう。白金さんじゃ他人行儀だし、百合子でいいわよ?ワタシって基本的に夫と共同で仕事をすることが多いから、あまり白金って呼ばれ慣れていないのよね……」

 

 へぇ、なるほど。確かに夫婦で仕事をするのに、名字呼びじゃあ何かと不便なんだよね。

 

「そう、ですね。わかりました、百合子さん」

 

「それで、ワタシのことは名前呼びなのに、ルナのコトは委員長呼びなのかしら?」

 

 うわっ、百合子さんめっちゃ策士だ!こ、これは断れないぞ……!

 

「い、いや、スバルくん?無理をしなくても……」

 

「ルナは黙ってなさい」

 

「ハイッ!」

 

 委員長が即座に従った、だと!?こ、これは……委員長以上のカリスマ性!流石に親子というわけか。というか委員長って将来こんな感じになるのか。こえーよ。

 

「さぁ、スバル君……?」

 

 まるで蛇ッ!既に獲物を締め上げ、あとは飲み込むばかりといったところだ!いや、実際に締め上げられたのは百合子さんの方だったんだけど。

 

「ぐぬぬ……」

 

 おのれおのれおのれおのれ!!無限の剣製に囚われた英雄王の気分だぞ、これは!

 

「ル、ルナちゃん……?」

 

「ちゃんは要らないわ。クラスメートでしょう?」

 

 百合子さん追い込み過ぎィ!

 

「ル、 ルナ……?」

 

「~~~~っ!ハ、ハイ……」

 

 なんだこの雰囲気。周囲の視線を感じる。顔から火が出そうだ!だ、誰か……!

 

「(ロック!助けて!)」

 

「(オレは今、ハープが言っていたセイシュンってヤツが何か、わかってきたような気がするぜ)」

 

 悟ったようなコトを言うなよロォォック!あの猪突猛進なロックは何処に行ったというんだ!

 

「(バカ!そうじゃないって!)」

 

 チクショウ!頼れるのはボクだけか!?

 ボクは、ボクだけを信じる!今なら孤独のカケラにも反応しそうだ!

 

「フフ、青春ねぇ……」

 

 アンタが仕組んだんじゃないか!アンタが!

 

「ママ、ワタシ、そろそろ帰るわ……」

 

 何だかポーッと上気した委員長の言葉を聞いて満足したのか、委員長の背中を押してボクの方に押しやる百合子さん。相変わらずニヤニヤしている。クソッ、今日は完敗だ。何に負けたのかはわからないけど。

 

「ホラ、しっかりエスコートしなさいよ、スバル君?」

 

「……わかっていますよ、百合子さん」

 

「スバルくん、いきましょう……?」

 

 何だかちょっと舌足らずな感じ。普段は大人っぽく見えるけど、今は年不相応に幼く見える。

 

「フフ……今日は帰らない方がいいかしら……?」

 

 アンタは小学生に何を言ってるんだ!

 

「委員長、大丈夫?ちゃんと歩ける?」

 

「……うん」

 

 ダメだね、こりゃ。

 

「……ほら、引いてあげるから、手を握って」

 

「……アリガト」

 

 差し出した手をとる委員長だけど、俯いていてその表情はよくわからない。

 

「それじゃ、今日はこの辺で失礼しますね」

 

「フフフ……ええ、また会いましょう……?」

 

 ボク、この人苦手だよ……

 

「ええ、機会があったら、ですけど」

 

「わからないわよ?でも、そうね……いつか、ルナが紹介してくれる男の子がスバル君みたいなコだったら、ワタシは嬉しいわ」

 

「アハハ……」

 

 この人怖い。というか、何て紹介するんだろう。電波変換出来る時点でサテラポリスには戦力扱いされるし、そのままサテラポリスに就職とか?いや、考えてみると、結構悪くないかもしれないな。電波人間は貴重だし、数少ないAM星人との融合例だ。ぶっちゃけ将来は安定だろう。一応エリート、にはなるんだろうか?いや、今考えても栓なきことか。

 

 ボクたちは手を繋いでバス停まで行くことになったんだけど、途中でもかなり周囲の注目を浴びていた。し、視線が痛い……。しかし、微笑ましいものを見るような視線だったので、ただ恥ずかしいだけだ。これなら何とか……

 

 ーーコダマタウンーー

 

 多くの視線を浴びながら、ボクたちは何とかコダマタウンへと帰ってきた。つ、疲れたよ……

 

「ほら、委員長。着いたよ」

 

「…………んっ……」

 

 委員長が手を離してくれない。困ったなぁ……

 

「ハイハイ、もう少し付き合ってあげるから……」

 

「…………アリガト」

 

 マンションの内部、白金家の前まで来ても委員長は手を離してはくれなかった。いや、ボクもう帰りたいんですけど……

 

「ほら、後は一人で大丈夫でしょう?」

 

「……ダメ……!」

 

 今日の委員長は駄々っ子だな……

 

「…………中、入って」

 

あかねさんがそろそろ心配してるんじゃないかなぁ……

 

「ハイハイ…………はぁ」

 

 委員長はちょっと待っててと言って自分の部屋に引っ込んでしまった。え、ボクはこれから何をさせられるの!?スッゴい不安なんですけど!

 

「スバルくん」

 

「ヒャァッ!」

 

……変な声が出た。何だよ、もう……って、パジャマ?あ、このパターン知ってる。添い寝させられるヤツだ。ミソラちゃんで経験済み、なんて言ったらぶん殴られそうだけど。

 

「こっち……きて?」

 

「え、いや、その……ボクそろそろ……」

 

「いいから、きて……!」

 

 そのままフラフラと誘われるように、ボクは委員長の部屋に入っていった。先を行く委員長はベッドに入り、何かを期待するようにこちらを見ている。

 

「委員長が寝ちゃったら、ボク帰れないんだけど……」

 

「オートロック、あるから……」

 

 あ、そうですか。便利ですね。

 

「手、にぎって……?」

 

 うわ、これ委員長が寝るまで帰れないパターンだ。でも仕方がないので、ベッドの近くに椅子を持ってきて座り、委員長の手を握ってやる。あったかい。

 

「ほら、これでいい?」

 

「うん……今日はありがとね…………ワタシ、たのしかったわ………………スゥ、スゥ……」

 

 穏やかな寝息を立て、委員長は眠ってしまった。まさに、眠り姫だ……!いや、変態フラッグファイターの言葉を借りている場合じゃない。早く帰らないと……




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