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ーー翌日・放課後ーー
さて、今日は金曜日。ツカサくんと諸々あったのが月曜日だから、既に4日経っていることになる。FM王が配下のFM星人たちを復活させるまで、あと3日といったところだろう。
そろそろ本格的に準備しないといけないな。でもミソラちゃんにもヤシブタウン行くって言っちゃったんだよなぁ……どうしよう。いや、土日の間に行っておくべきか。約束を破られた女の子は、超怖いからね。誰だってそうする。ボクもそうする。
そうと決まれば、早速電話を入れよう。しかし、百合子さんに遭遇しないといいんだけど……ヤベーんだもん、あの人。
「えぇっと、ミソラちゃんのトランサーの番号は……」
ピ、ポ、パっと。
ーープルルル……
『もしもし……あ、スバルくん?』
喜色の滲み出たような声が聞こえる。良かった。機嫌は良さそうだ。
「うん、そうだよ。こんにちは、ミソラちゃん」
『こんにちは、スバルくん!それでどうしたの?珍しいじゃない、スバルくんから電話をかけてくるなんてサ』
最後の『サ』だけ茶目っ気たっぷりといった感じに話すミソラちゃん。相変わらずテンション高いっすね。
「あぁ、えっとほら、前にミソラちゃんとも約束したじゃない?ヤシブタウンに行くって。その約束を消k……じゃなくて果たそうと思ってさ」
危ない危ない。消化って言いそうになったよ……
『スバルくん?今、消化って言わなかった……?』
ヤバッ、気づかれてる!やっぱり女の勘ってヤツか!?
「言ってない、言ってないよミソラちゃん!」
『本当……?ならいいんだけど……』
ボクの必死の弁明が功を奏したのか、渋々引き下がってくれたようだ。
「そうそう!で、今度の日曜日とか、どうかな?」
『それって、明後日のコトよね?……いいよ。でもワタシ、午前中は用事があるから、午後に集合でもいい?』
「もちろん!あ、そうだ。ミソラちゃんは何かしたいコトとかって、ある?」
『そうだね……今度は映画でも見に行く?』
お、ミソラちゃんって結構映画とか見たりするのかな?
「いいね、じゃあ今度やる映画で……」
『ダーメ。ワタシが決めるわ。フフッ、スバルくんはただ楽しみにしてればいーの!』
何だか悪巧みでもしていそうな、愉快な声だ。ど、どんな映画を見せられるというんだ……!?
「それじゃ、前回と同じ忠犬バチ公の像前集合で!」
『はーい、楽しみにしてるね!』
ーーガチャッ!
よし、ミッションコンプリート。今日と明日はバトルカード集めや、調整に使おう。
「ロック」
「なんだ?」
「提案なんだけど……」
ーー十分後ーー
「チッ、だがそれは最後の手段だからな!いいか、オレは反対だぜ、そんなコト……!」
ま、そうだよね。現状のままの方がいいに決まってる。でも、それじゃダメなんだ。どうしてもアイツを……あのアンドロメダを破壊しない限り、FM王に言葉を届かせることは出来ないと思う。絶体絶命で、藁にでもすがるような気持ちでなきゃダメだと、ボクは思ってるんだ。
今話したのはカギが奪われ、アンドロメダを起動させてしまった時の対応だ。この方法は体にかなりの負担がかかる。だけど、やる。折角選択肢があるんだ。最高のモノを選びたいじゃない?
「まぁまぁ……最終手段だからね、コレは」
「ケッ……」
ロックも、ボクを思いやってくれているのだろうか。そうなら嬉しい。
「ほら、今日はウィルスバスティングしに行くよ!気合い入れてよ、ロック?」
「おう!そんな方法に頼らなくてもいい位には、鍛え込んでやるぜ!」
そ、それはちょっと遠慮したいかな……
ーー二日後・天地研究所ーー
「これでよし……と」
ふぅ……と一息着いて、作業を止める天地守。彼は今、新型のエンジンの開発を行っていた。開発、と言うよりも組み立てと言ったほうが近いが。
『天地さん!!天地さん!!』
同室で同じく作業中だった宇田海君が声を張り上げる。珍しいな、彼がこんなに取り乱した声を上げるなんて。
「天地さん、大変です!」
こちらに駆け足で向かってくる彼の動きも普段の不健康そうな歩き方と違って覇気に溢れている。いや、必死なのか?……こんな言い方だと、失礼だったかな?
「どうしたんだい、宇田海君?」
「と、とにかく来てください!」
そう言って促す宇田海君。そっちには確か、レーダー関係の設備があったような……
「レーダーが捉えた、宇宙からの電波です」
何だって!?
「こ、この電波は……!!」
ーー星河家ーー
「スバル~!母さん、友達とヤシブタウンにお買い物に行ってくるからね~!」
……う、嘘でしょ!?まさか、ずれ込んだっていうのか……!?
「わ、わかったよ!気をつけてね!」
ーーピピッ!
め、メールだ。送信元は、天地さん。
……と、いうことはつまり、今日なのか!?
「内容は……『キミに伝えたいコトがあるんだ。今からボクの研究室に来てくれないか?』か……」
「なんだ?行かないのか、スバル?」
大丈夫、大丈夫だ。ゲームでは駆けつけた時でもまだ、あかねさんが電波化する事態は避けられたはず。即行で行って、ヤシブタウンに向かえば。それに、ミソラちゃんが解決してくれるかもしれないし……
「行くよ。急ごう!」
「オ、オイ!待てって!」
ダッシュでバス停まで向かうボク。今は一秒でも惜しい……!
ーー天地研究所・研究室ーー
「ハァ、ハァ……き、来ましたよ、天地さん!」
「あ、あぁ、よく来たねスバル君」
少し引き気味の天地さん。しょうがないよ。全力で走って来たんだから。
「そ、そんな、ことより、早く、用件を……」
息が切れているので、途切れ途切れにしか喋れないのはご愛敬だ。
「あぁ、わかった。……キミに伝えるべきか悩んだんだけど、やはり伝えておくべきだろうと思ってね」
「な、何ですか……?」
わかってはいるけど、早く喋ってくれ!
「昨日、この研究所のレーダーが宇宙から発信されたある電波をキャッチしたんだ。実はその電波というのが、NAXAの宇宙ステーション『きずな』……つまりはキミの父さんの乗っていたステーションの認識信号だったんだ。そして、その信号はゆっくりと地球に近づいているコトがわかった」
「父さんの、ステーションが……」
「(オイ、スバル。今のオマエにはあんまり関係ないんじゃねぇのか?)」
ボクの事情を知っているロックが聞いてくる。
「(いや、この体……星河スバルとしては、知っておかなきゃいけないことだと思う)」
「(ヘッ……オマエのそういうトコロ、オレは好きだぜ)」
なんか照れ臭いから止めてよ!
『我々としては、あまり近づいて欲しくないシロモノだがな……』
この声は……五陽田さんか。
「キミの父上が例のステーションの乗組員だったコトは聞いた。父上の生存を期待する気持ちはわかるが、今やあのステーションは……巨大なゼット波のカタマりだ」
「……じゃあ、父さんは……!」
こういう演技をしていると、委員長やミソラちゃんの存在がどれ程ありがたいか思い知る。人は誰でも、自分を明かせる誰かを望むものだから。
「……わからん、しかしあまり期待はせんほうがいいと思う」
「そんな……!」
ーーピーピーピー!!
何だ!?
「ムッ、新たな電波をキャッチしたみたいだ。どれどれ……」
研究室に備え付けてあるPCに向かう天地さん。カタカタとキーボードを叩く音が聞こえる。これは実際にカタカタ言ってるわけじゃなくて、押したことを知らせるための音声なんだけど。
「フム、音声電波のようだ。解析してみよう……」
これはアレだ。ケフェウスの宣戦布告というヤツだったはず。
「解析が完了……再生するよ」
流石に仕事が早い。あちらも解読に手こずるような電波にする意味はないんだけど。
『……ザザッ…………ザッ……ザザッ…………地球人たちに告ぐ。余はFMプラネット王……地球は余の手によって、滅ぼすこととした。地球人よ、FMプラネットの王の手によって直々に滅ぼされるという栄誉に預かるがよい。……ザザザ……』
「……な、何だと!?これは……宣戦布告じゃないか……!」
「FMプラネットと言えば、大吾先輩がブラザーバンドを結ぼうとコンタクトをとった星。ま、まさか……大吾先輩はFM星人に……」
惜しい、ちょっと違う。AM星人に、電波化されたんだ。この、ロックにね。
「……うわっ!こ、これは……!?」
ーーゴゴゴゴゴ!!
これは……あ、停電だ。だけど、ここでは何もすることが出来ない。五陽田さんがいるからね。
「な、何が起こったんだ……?」
「気を付けろ……ゼット波がどんどん上がっている!」
ーーパッ!
あ、停電が止んだ。予備電源か。
「こっ、これは何事だっ!?」
ウェーブロードが見える。ビジライザーはかけていない。やはりゼット波の影響ってことだよね……
「ま、まさか……ゼット波が測定不能!?この部屋はゼット波で満たされておる!……ムゥッ!気を付けろ!凄まじいのが来るぞ!」
上だ!巨大なデンジハボール……!
「グゥッ!」
「な、何が起こってるんだ……!?」
「グググッ……あ、あのゼット波のせいだ……!あのカタマリの放つゼット波を浴び続ければ……危険だ!」
うわわわっ!体が軽い!いや、冗談じゃなく!
「カ、カラダが……!」
「(スバル!ヤベェぞ!早く電波変換して、あのデカブツを……!」
「(ダメだ!五陽田さんもいるんだ!バレるわけには、いかない!)」
「(クソォッ!)」
「いかん!!凄まじいゼット波を浴び続けたせいで我々のカラダの周波数が同調し始めている!!このままでは、我々のカラダがゼット波になってしまう!」
「何とか、ならないんですかァッ!?前にBAN!ってやってたじゃないですか!」
早く使ってくれェッ!
「ム、ムゥ……こうなれば、アレを使うしか……一発しか撃てんから外せんな……!」
そんなモノをトランサーに付けるな!別に用意してよ!
「ゼットイレイザー起動!アンチゼット波エネルギー充填!エネルギー90パーセント!98、99、100パーセント!……ゼットイレイザー、発射!」
な、何とかなったか……!
「イツツツ……何とか命中したようだな」
「た、助かった……」
ーー数分後ーー
「た、大変だ……他の場所でもさっきの電波化現象が起こっているようだぞ……!!」
「クソッ!一刻も早く現場に向かわねばならんが、さっきの一撃で本官のトランサーは使い物にならん……!!一旦本部に戻るしかないか……!それでは本官は、失礼する!」
また本部からトランサーを持ってくるのかな?
……一発しか撃てない、トランサーを。
「天地さん、電波化現象は、どこで起こっているんですか……?」
「そうだな……ニホン各地で起こっているんだが、ここから近いトコロだと……ヤシブタウンだ!」
クソッ!やっぱりか!
「ボク、行ってきますね!」
「お、おいスバルくん……!」
「母さんがッ!いるんだ!」
ーーピンポンパンポーン!天地所長、問題が発生しました。事務所までお願いします。
「……仕方ない。だが、ダメだ。ここで暫く休んでいきなさい。今外を出歩くのは危険だからね。……それじゃあ」
天地さんは行ってしまった。……よし、行かなきゃ!
「急ぐよ、ロック!」
「ヘッ、当然だ!」
ーーヤシブタウンーー
ヤシブタウンで出歩いていたと思われる人たちは全て、さっきのボクたちみたいに軽く……いや、質量を失いかけている!あかねさんの姿も、あるぞ……!
「やっぱり……!母さん!」
「スバル!早く電波変換だ!オマエのオフクロを助けるんだろう!?」
わかってるよ!ウェーブホールは……あった!忠犬バチ公の陰になっている場所!
「間に合え、間に合え……!」
電波変換!星河スバル、オン・エア!
「よし、電波化現象の元になっているデンジハボールを破壊しよう!……うわっ!」
コイツらは、ジャミンガー!?しかも、3体……クソッ!母さんが!
「何だコイツ……?ま、まさかロックマン!?」
びびるジャミンガーたち。
「アンタらに構ってる暇はないんだ!……そこを退けェッ!」
スタァァフォォス!
「やっちまうぞ、スバル!」
即行でカタをつける!
「うおぉぉぉっ!」
マジシャンズ・フリィィ……
『星河スバル、助太刀をしよう……』
ーーチュィィィン!チュィィィン!チュィィィン!
そ、空からビーム!?しかも三発だ!これは……ペガサス・マジック!
「グ、グベベベベーーッ!」
「ホビョアーーッ!」
「シャガバラバーーッ!」
す、凄い……まさにサテライトキャノンだ……!
月は、出ているか……?いや、違う!母さ……あかねさんを助けないと!
ーーチュィィィン!
さっきのサテライトキャノン(仮)がもう一発、デンジハボールを貫くカタチで降ってきた。凄い威力だ……
「母さん!」
『案ずるな……気を失っているだけだ』
やはりこの声……ペガサス・マジックか!
「この声……アナタたちは、サテライトの管理者……!」
どんだけカッコいい登場の仕方だ!カゲとはいえ!
「星河スバルよ、我らは見ていたのだ。オマエの心が、最大に高ぶるのを、な」
「そうだ。スターフォースとは想いのチカラで、その出力を増す……!」
「この星に、かつてない脅威が迫っている……だからこそ、我らはオマエを見定めていたのだ……」
三人のAM三賢者が紡ぐように話を続ける。この展開は、知らない……!
「ど、どういうこと、ですか……?」
「今、その脅威に立ち向かえるのはオマエとウォーロックだけだ……」
「ボクと、ロック……」
「オイ、今回は何なんだ!AM三賢者のカゲが、揃いも揃ってよぉ!」
ロックが三賢者の言葉を聞いて憤慨する。難し過ぎるからね、彼らの話は。
「フッ、慌てるな。我らは見定めていたと言っただろう……?」
「そうだ。我らはオマエに、更なるチカラを託せると判断した……!」
な、何だ!?ただのギガクラスカード進呈式だよね!?
「……というワケだ。故に再び授けよう!我がチカラの一端を!この星の命運を握りし、新たなる英雄に!」
「うわぁっ!」
辺りが光に包まれる。周りの人たちは、デンジハボールから解放されてばかりで気を失っているため、誰もこの光景に気づく様子はない。
「うっ、何だったんだ、今のは……?」
視界が開けた時、目に映ったのはやはり、ギガクラスカード『ペガサス・マジックGX』だった。これが、見定めていた理由……?
「先ずはコレだ。……我がチカラを宿してある。好きに使うがいい……」
「ありがとう、ございます……?」
先ずは?まだ何かあるような口振りだ。
「そして次は……ハァッ!」
ーーチュィィィン!
ギャァァァァァ!!サテライトキャノン降ってきたァ!
……って、痛くない。というか、スターフォースに反応している……?
「
親和性?何のコト?さっぱりわからないぞ……
「では、さらばだ。地球を……頼んだぞ」
そう言って三賢者のカゲは消えてしまった。
なんだってばよ!本当に!
「あ、ミソラちゃんと待ち合わせの時間が来ちゃう」
取り敢えず、忠犬バチ公の像の前で待っていよう。
ーー三十分後ーー
「あれ……?ミソラちゃん、来ないな……」
ロックと仲違いしたわけじゃないから、探しに行ってFM星人にやられた……なんてことはないハズなんだけどな。
まさか、ミソラちゃんに限って約束をすっぽかすなんてないと思うし……
「(あのオンナ、おせぇな)」
「(うーん、女の子には色々あるってことなんじゃない?)」
「(ケッ、オンナの気持ちなんてこれっぽっちも知りたくはねぇぜ)」
「(まぁまぁ……)」
それにしても、どうしたんだろう。もうとっくに約束の時間は過ぎているのに……
ーープルルルル!
あ、電話だ。この番号は……ミソラちゃんのトランサーからだ。なんだろう、もしかして来れなくなったとか?
「もしもし、ミソラちゃん?どうしたの?」
『久しぶりだな、ロックマン』
サーッと、血の気が引くのを感じた……
甘い展開だと思いました?残念、シリアスでしたァ!
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