今後は気をつけます。
ーー翌日・コダマ小学校・放課後ーー
「よ~し、これで今日のホームルームは終わり。週明けだからって、寄り道せずに真っ直ぐ帰るんだぞ~?」
『ハァーイ!』
よし、やっと終わった。さっさと元上司の人にコンタクトをとらなくちゃ……。
今日は学校のサーバーにウィルスが見つかったそうで、急遽午前授業になったのは僥倖だった。本当に。何でも、これを期に電子機器を一通り調べ直すらしい。とにかく、これで時間は確保出来た。さっさとステーションの残骸を、天地さんに直してもらわなきゃ!
「(よし、ロック。人探しだよ、わかってる?)」
「(おう!行くぜライザー刑事!)」
おっと、そういえば最近のロックのマイブームは刑事モノだった。確か……『全然危なくない
「(フフッ……確かにロックのハナは、頼りになりそうだ。よろしくね、ロック刑事)」
「(ヘヘッ、わかってるじゃねぇかスバル!行くぜ!探し人がオレたちを呼んでいる!)」
ノリノリじゃないか。いや、賑やかでいいんだけど。
「ス、スバルくん。よかったら一緒に帰らない……?って、もう行ってしまったわ。…………はぁ」
ーーコダマタウン・ウェーブロードーー
「さて、それじゃあレッツトランサー捜索タイムなワケだけど」
ーーーーついて来れるか、この発見スピードに!
「オイ、スバル!もうちょっと裏取りとかをだなぁ……!」
「何言ってんのさ。トランサー内の情報こそが、何よりも確かな裏取りじゃないか」
「いや、そうだけどよ……なんかこう、もうちょっと刑事っぽいことをだな……」
何だよ、これが一番手っ取り早いってのに。
「ほら、いいからいいから。時間だってあんまりないんだ。取り敢えずこのコダマタウンにいる人は根こそぎ調べていくよ。こういう地味な聞き込み(物理)も、刑事っぽくない?」
「何か、不穏な響きを感じる聞き込みだが……まぁ、いいぜ。やってやる!先にヘバんなよ、スバル!」
残念、実は一人目でヒットするんですけどね。
「わかってるって。……お、あのお爺さんとかいいんじゃない?いかにもな老紳士だよ」
「何?……確かに匂うな。このオレのハナも、コイツがそうだと言っているぜ!」
へぇ……ロックも怪しいって感じるのか。まぁ、当たってるんだけど。
「それじゃ、ウェーブイン!」
「おう!」
光の速さでイントゥ・ザ・トランサー!語呂悪いな……
ーーうっかりした老人のトランサー内部ーー
「何々……何やら妙な胸騒がする……この胸騒ぎ、まるで三年前のあの日のようじゃ……こんな日は大好きな酒、『ハードトロピカル』でも飲んで眠るのが一番じゃ。しかしあの酒は中々手に入らんでのう……確かBIGWAVEの店長が持っておったようじゃがカードショップに正面から行って、酒を売ってくれと言うのも気が引けるしのう……困ったものじゃ……だってさ、ロック」
「イヤに自分語りの多い老人だな……。しかし、やはりこの老人怪しいぜ!ここは一つ、ジジィの好きな『ハードトロピカル』とやらをチラつかせてみるというのはどうだ?」
「まずは本人を問い詰めるのが先さ。子供に酒を買うリスクを負わせるつもりかい、ロックけ・い・じ?」
「ウグッ…………チッ、しょうがねぇな。ウェーブアウトして直接聞き込みといこうぜ」
「それじゃ、ウェーブアウト!」
ーーコダマタウン・現実世界ーー
「あの……」
「なんじゃな……?」
「実はちょっと、聞きたいことがあるんですけど……」
「悪いが今は誰かと話す気にはなれんのじゃ……」
ちぇっ、ま、いいけどさ……
「(よし、それじゃBIGWAVEの店長のところに行こうぜ!」
はぁーい。ボク未成年なんだけどなぁ……
……あ!あれは……委員長!帰宅途中だったのかな?何だか沈んでいるように見えるけど……
しかし助かった。やはり委員長はボクの女神だったのか……!
「委員長~!」
「はぁ…………って、この声……スバルくん!?」
手を振って此方の存在をアピールする。委員長も手を思いっきり振る。なんだろう、コレ。
「委員長助けてお願い!」
うがーっ!っと、委員長に詰め寄る。いや、ホント助かったよ……!
「ま、待ちなさいスバルくん!ち、近いわ……!」
ハッ!……しまった。肩を掴んで揺らしていたらしい。これは申し訳ないな。
控えめに言っても端正な顔立ちをしている委員長だけど、今はアワワワ……!と普段の凛々しさが見る影もない。
「あっ……ご、ゴメンよ委員長……ボク、嬉しくて……」
ボクの反省を聞き入れた委員長だったけど、その顔は未だ赤いままだ。委員長は、あがり症ではないはずなんだけどな。
「あら……そ、そう。そ、それなら仕方ないわね……」
最近の委員長って結構ニヤけてること、多いよね。
「ところで、どうしたのかしら?……何か用事でもあったのではないの?」
気を持ち直した委員長の指摘によって、ようやく思い出す。そうだった。
「えっと、実はさ。ちょっとお酒を手に入れたいんだけど、ボク一人じゃあ売ってくれるかわからないんだよね……」
そこで委員長にも話してもらって、説得力を出そうという戦法だ。
「ふぅん……ま、スバルくんだものね。いいわ、ワタシはどうしたらいいの?……手伝うわよ?」
「ありがとう、委員長!……基本は、一緒にいてくれるだけでいいんだ。ただ、事情を聞かれたらボクに合わせて欲しいんだ。……出来る?」
「アナタ、ワタシを舐めすぎよ。それくらい、朝飯前ってところね」
フフン!と、自信満々に同行を表明する委員長。ロックとはまた違った方向で頼もしいね。
「いやぁ、ホント助かったよ……やっぱり委員長は、そうでなくちゃね!」
「フフフ……!ワタシも少しは成長しているのよ!(前に、明るい方が好きだって言っていたし……)」
再び胸を張った後に、少しだけ赤くなる委員長。見なかったことにしておこう……。
ーーBIGWAVEーー
「いらっしゃい!チョーイイモノ揃えてるから、ガンガン買っていってね!」
相変わらずハイテンションな人だ。騒がしいけれど中々憎めない、不思議な魅力があるのもこの人らしい。
「こんにちは!ええっと、今日は……」
ーー少年説明中ーー
「……え?『ハードトロピカル』?あー、アレね!一口飲むごとにココロが南の島に飛んで行っちゃう、甘くてハッピーでスパーキングなニュアンスのお酒のことだよね?」
その酒、結構ヤバくない……?甘くてスパーキング以外は信用出来ないぞ、これは……!
「ええ、多分それです……」
「その酒、店には置いてないんだけど……個人的には持ってるよ」
「どうにか、譲ってもらえませんか?」
「まさかキミたちが飲むわけじゃないだろうし……未成年なんだ。ワケくらいは聞かせてもらうけど、いいよね?」
ま、当然の対応か。ここで直ぐに渡してくるようだったら、逆に信用出来なかっただろうね。
「ええ、ちょっとした要件で必要なんですけど、その人が好きなモノがそのお酒ってことしかわからなくて……」
そこまで言って店長の南国さんを見ると、目を丸くしているのがわかった。その後はボクと委員長へと視線を右往左往させている。困惑しているようだ。何か変なコト、言ったかな?
「…………なるほど。その年でご挨拶とは、最近の子供は進んでいるんだねぇ……」
な、何だ!?急に遠い目をし出したぞ?
「ご挨拶……?えぇまぁ、そんなものです」
お爺さんへ、挨拶代わりの土産みたいなものだから間違ってはいないんだけど、何だか変なニュアンスだ。
「ス、スバルくん…………!?」
え?え?何!?何で委員長が赤くなるの!?ホントにどういうこと!?ワケがわからないよ……!
「いいねぇ、こういうの。応援したくなっちゃうなぁ……。よし、決めた!持っていきなよ、『ハードトロピカル』!お代は要らない。その代わり、その娘を泣かさないこと。……わかった?」
え?お代は要らない?ってことは……タダ?だけど何だろう、まったく安心出来ないぞ……!
「ええっと……ありがとうございます」
「いいっていいって!未来ある若者にエールを送るのは、ボクたち大人の役割さ!」
なんて言って、ウインクを飛ばしてくる南国さん。なんか釈然としないな……
「そうですか……委員長、ありがとね。付き合ってもらっちゃって」
「ワ、ワタシはそんな……ま、まだ早いわ……そんなの…………」
おーい、委員長さーん?……ダメだ、戻ってこない。
「ほら、行くよ委員長……」
仕方がないから、委員長の手を引いてBIGWAVEを後にする。南国さんまで、どうしてそんなにニヤニヤしてるんですか……!?
ーーコダマタウンーー
「付き添ってくれてありがとう。それじゃあまた明日、委員長」
「ええ、また明日……」
あ、明日ってもうステーションに飛んでるじゃないか。学校は休まないとな……
「さて、さっきのお爺さんのところに行かないと……」
「そうだな……ジジイは気分が変わりやすいらしいからな、急いだほうがいいかもしれないぜ」
ええ……わかったよ……
「こんにちは、お爺さん」
「なんじゃ……?」
「ちょっと、聞きたいことがあるんですけど……」
ーーチラッチラッ
「そ、それは……!」
効果は抜群だ!
「ワシの大好きな酒……『ハードトロピカル』ではないか!」
「ちょっと、聞きたいことが、あるんですけど?」
「は、話を聞くだけ聞いてやろうじゃないか……」
落ちたな。(確信)
「実は……」
ーー少年説明中ーー
「むぅ……いかにも。ワシは元NAXAで例の宇宙ステーションのオペーレションチームで指揮をとっておった……そうか、キミが星河君の息子じゃったか。星河君には悪いことをした……謝っても許してもらえるとは思っておらんが……」
「お爺さん、今は一刻を争うんです。どうか、地球に落下してきたステーションの一部がある場所を教えてください」
「も、もしや、ステーションにアクセスするつもりじゃなかろうな?」
そうしなきゃ地球はオダブツなんだよ!
「……そうです。お願いします、早くしないと……」
「……その目……覚悟は、あるようじゃの。……わかった。封印した場所を教えてやろう……」
「ありがとうございます!それで、その場所というのは……?」
よかった……。ここまできて、教えてもらえなかったらキツいよね。確か天地研究所にあるスペースコロニーの電脳だったっけ?
「それは……どこじゃったかのう?」
これは酷い。いや、自分から流出するのを防ぐため……とかだったはずだ。
「ええ……」
「実はワシの口から誰かにあの場所をいってしまわんように、手術を受けて封印した場所に関する記憶を消してしまったのじゃ。そのおかげで物忘れが激しくなってしまったがな」
それは正直、訴えてもいいと思う。後遺症酷すぎない?
「じゃあ、その場所にはもう……」
「いや、来るべき時の場所のために、ある場所にその場所を書き留めたデータを隠しておる。確か……そうじゃ、ワシの元部下の研究所の中、だったはずじゃのう。宇宙ステーションに因んだモノのプログラムの中に組み込んでおいたのじゃ」
隠した場所を記したデータの場所を覚えていたら、手術を受けた意味が、あまりないんじゃないの?
本当に隠したいなら、そのデータをNAXAとは無関係の誰かに預けて、その人に隠してもらうなりしてもらえばよかったんじゃないかなぁ……
「それって……天地研究所のことですか?」
「おお、そうじゃそうじゃ!」
他人のプログラムに無断で組み込むって、普通に犯罪なのでは……?いや、今はよそう。
「お爺さん、ありがとうございました!」
そう言って『ハードトロピカル』を渡す。さっきから目線がチラチラいってたもんね。
「それにしても、どうしてステーションの一部を隠したりなんてしたんですか?」
「……あの事件が起こった時、ステーションからの通信の一部始終を聞いておった。FM星人の地球に向けた敵意を知ったときは、戦慄が走ったよ……」
当時の恐怖を思い出したのか、若干震えているお爺さん。『ハードトロピカル』を飲んでいないことによる禁断症状だとは思いたくない。
「そしてステーションの一部が地球に落下した。調べてみると、ステーションの一部に生きている通信機能を見つけたのじゃ。破壊してしまうことも出来たが、アレは宇宙ステーションの居場所を知ることが出来る唯一の手がかりじゃった。しかし、通信ログからFM星人に地球の場所を突き止められる恐れがあるため、通信を遮断し誰にも場所を明かさずに封じ込めたのじゃ……いつでも通信を再開できるように、修理を施してな。ステーションのクルーたちには申し訳ないことをしたが、ワシは責任者として地球に危機が迫る事態だけは避けなければならなかったのじゃ……」
このお爺さん、ステーション本体にある航行データから逆算されるとは、思わなかったのだろうか。いや、されてないからいいんだけど……
「そうだったんですか……」
「キミにも、ツラい思いをさせたな。……すまんかった」
深々と頭を下げる老紳士。あんまり見られたくはない光景だね、これは。
「お爺さん、頭を上げてください。きっと父もわかってくれるハズですから……では、ボクは行きますね」
「そうか……いや、もうよそう。気をつけて行きなさい」
神妙な顔をするお爺さんと別れて、ボクたちは天地研究所に向かった。ロックはその間、ほとんど喋らなかった。何か感じ入ったものでもあったのだろうか?
「ロック……?どうしたの?」
「…………グガァ、スピー、グガァ……」
こ、コイツ、寝ていやがる!
心配しただけ損だったよ……
ーー天地研究所・科学館ーー
「(一通り探したけど、やっぱりあの『スペースコロニー』の展示が怪しいね。ウェーブイン出来るようだったし……)」
「(おう、それじゃウェーブインだ。とっとと見つけちまおうぜ)」
ロックも巻きをお望みだし、ちゃっちゃと進めてしまおう。
ーー電波変換!星河スバル、オン・エア!
ーースペースコロニーの電脳ーー
「さて、スペースコロニーの電脳に入ったワケだけど……」
「ああ、アレだな。間違いなさそうだぜ」
データはあった。あったんだけど……
「コイツはヒデェ!かなり電磁波を帯びちまってるな……まずはこの電磁波を何とかした方が良さそうだ。多分出てくるぜ?……ウィルスがよ」
「ウィルスかぁ……キグナスの残留電波でも出てこないかなぁ……」
もうウィルスなんかじゃあ、満足出来ないよ……
早く3環境になって、オックス・ファイアと好きなだけスパーリングしたいなぁ……
「物騒だなオイ……」
「さ、やってしまおうか。準備は?」
「いつでもオーケーだ!」
ウェーブバトル・ライドオン!
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