星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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本日2話目です。
精根尽き果てました。


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 ーースペースコロニーの電脳ーー

 

 ウィルスは……ええっと、メットリオ3とビリージョーカーのGタイプが一体ずつ、それにアイズのノーマルサイズが一体だ。

 ビリージョーカーというのは、以前科学館でバトルしたビリーエースの上位個体で、体色は紫と強者オーラを身に纏っている。相変わらずノロいので、いい的なんだけど。

 アイズは色違いのモンスターボールにアンテナと目がついたようなウィルスで、カーソルを飛ばして遠隔攻撃をしてくるのが特徴だろうか。

 全体的な講評としては、あんまり苦戦はしなさそうだ。機動力のあるウィルスはいないため、ヒット&アウェイがテンプレかな。

 

「行くよ、ロック!」

 

「おう!」

 

 この掛け声も慣れたもので、ロックは素早くウォーロックアタックの態勢に入ってくれる。阿吽の呼吸ってヤツだ。

 

「疾ッ!」

 

 まずはロックオンされると回避が難しい、アイズを葬ることにする。ウォーロックアタックで急加速した体をアイズの正面で停止させ、ロックオンカーソルを飛ばしてくる目にリュウエンザンを突きいれる。目が、目がァァ!(アイズ視点)

 

「よし次……ハァッ!」

 

 巨体故に小回りの利かないメットリオ3をライメイザン、スイゲツザンと連続で斬りつけ、デリートする。ぶっちゃけGじゃない方がやりにくいよ。的の大きさがダンチなんだもん。

 

「後は……」

 

 残ったのはビリージョーカー。雷球は既に発射しているが、動体にヒットさせるには……あまりに遅い!

 

「これでッ!……ッ!……ッ!」

 

 連続してヘビーキャノンを撃ち放つ。残ったHPはチャージロックバスターで削りきり、戦闘は終了した。

 電磁波が、晴れるぞ……!

 

 

「……終わったね。あ、これが例の……『NAXAデータ』みたい」

 

「ああ、取り敢えず調べてみようぜ」

 

 ええっと……

 

「何々……例のモノはドリームアイランドの地下深くに埋めた……。入り口はゴミで塞いでいるが、何かで退かせば入れるようになる。だってさ」

 

「そんじゃ、とっととドリームアイランドに行こうぜ!」

 

「了解!」

 

 

 

 ーードリームアイランド・廃棄物置き場2ーー

 

 さて、淀みない足取りで向かうは以前色々あった、あの廃棄物置き場2……つまり最奥だ。場所には大体の検討がついているので、この目前にあるショベルカーを使えば発掘することが出来る。

 

「おっと。このショベルカー、動きそうだね」

 

「ああ、ショベルマンのカードを使ってみたらどうだ?」

 

「よし、それじゃあ……カードイン!」

 

『ショベーーール!』

 

 酷い掛け声だ。さっさと操作してしまおう。

 

「ええっと、こうしてこう……っと」

 

 トランサーに映る、単純にして明快な操作方式。つまるところレバーを動かしてショベルカーを操作する。黄色の機体に映える鋼鉄の巨爪が、スクラップの塊を一掃していく。見ろ、ゴミがゴミのようだ。あれ、何かおかしいな。というか、回りくど過ぎだ!

 

 ーーガラガラガラ……ガッシャーーン!

 

 よし、入り口を発見したぞ。何だかピラミッドの入り口でも探すような気分だったな……

 

「おっ!どうやら当たっていたようだぜ。……入ってみるか、スバル?」

 

 酸素とか大丈夫だよね……?

 

「うん、行こう。あのデータからして、修理を施してからはほったらかしにされていたはず。システムが生きているかぐらい、確かめないと……」

 

「おう!行くぜスバル!」

 

 

 ーーアイランド地下ーー

 

 扉はエレベーターになっていて、三年の年月が経っていても正常に作動してくれたのはラッキーだった。途中で止まっちゃうんじゃないかと、ヒヤヒヤモノだったけどね。

 

「これは……結構な規模だね」

 

「ああ、一個人に用意できたとは、とても思えねぇな」

 

 確かに。これだけの規模だ。用意するだけでも、かなり目立つはずなんだけど……元々管理していた場所だったとか?まぁ、所詮は憶測だね。

 

「あ、通路の終わりが見えてきた……」

 

 割と長い地下廊下を進んだ先に、ステーションの一部はあった。多くのパーツやパネルがスクラップと化している中、最奥に位置しているほぼ無傷に近いパネルが異様に目立っているのを感じる。乗組員たちの執念が乗り移ったかのようにも見えるのは、流石に考えすぎだろうか。

 

「どうだ?動きそうか?」

 

 ロックの声をBGMにシステムの損傷具合を調べていく。特に大きな損傷もなく、しっかりとした知識のある人間なら問題なく復旧出来るだろう。

 

「うーん、損傷は小さいから、あとは専門知識を持った人が復旧させればなんとかいけるかも……?」

 

 ボクの言葉に、ロックが難しい顔をする。そろそろ、天地さんがボクたちに追い付く頃だろうか。来なかったら呼びに行くけど。

 

『……スバル君。まさか本当にここを見つけ出すとは驚いたよ……』

 

「天地さん……どうして、ここに?」

 

「あの後、シゲさんから連絡があってね……キミに手を貸してやってほしいって、頼まれたんだよ」

 

 シゲさん……?もしかして、うっかりシゲゾウだからシゲさん?

 

「あのお爺さんが……」

 

「それにしても……こんなトコロに隠してあったのか。よし、取り敢えずコイツを動くようにしてNAXAに連絡を入れないとな……」

 

 ある意味当然の反応なんだよね。この件は、一般人に対処できる限界を越えている。

 

「まって下さい!NAXAには……」

 

「スバル君、自分で何とかしたい気持ちはわかるけど、実際の話、どうやってFMプラネットと戦うんだ?我々には戦う術はないんだよ?」

 

 ーーゴゴゴゴゴ!

 

 まさか、もう来たのか!?はえーよジェミニ!

 

「この揺れ……!」

 

 やはりこれはデンジハボール!

 

「あ、あれは!」

 

 今しかない!多分ツカサ君はこの近くに来てはいないだろうし、これを逃せばジェミニに殺られる可能性は跳ね上がる!

 

「ロック!」

 

「(ここでやんのか!?)」

 

「今対処できる人間はいないんだ!それとも、今からサテラポリスの五陽田さんに連絡する?ゼットイレイザー付きのトランサーを持ってきて下さいってさ!」

 

「さっきから、誰と話しているんだい?」

 

 天地さんが訝しんでいるぞ。そろそろジェミニも来そうだ。やるしかないって!

 

「行くよ!電波変換!星河スバル、オン・エア!」

 

「オレは知らねえからなっ!」

 

 

 ーーアイランド地下・電波世界ーー

 

「そ、その姿は……!」

 

「少し黙ってて下さい、天地さん!……来るッ!」

 

 閃光を纏って現れたのは、やはりジェミニだ。コイツだけはオラオラじゃ済まさないと、そう決めていた!

 

「ジェミニ!」

 

「クククク……悪いがオレたちの邪魔はさせないぜ!」

 

「コイツをデリートします!……天地さんは隠れてて!」

 

 敬語を使う余裕もない!

 

「あ、ああ。わかった……」

 

 よし、これで戦える!

 

「調子に乗っていられるのも、今のウチだけだぜ?……まぁ、こっちもロックマンが相手なら本気にならざるを得まいが!ハァッ!」

 

 またフラッシュ!ピカピカ眩しいんだよ、さっきから!

 

「ツカサ君なしで、その姿に……!」

 

 視界に映ったのはご存知、ジェミニ・スパークだった。

 しかも以前より感じるチカラが大きい!

 しかし、どうしてツカサ君と合体しないんだ……?(遊星感)

 

「オレの記憶の中のデータを使って具現化させたのさ!もうツカサの存在は必要ない。行くぜロックマン!」

 

「憑代無しで電波変換だと!?インチキ能力もいい加減にしろ!」

 

 こんな時にネタに走りやがって!

 

「こっちだって、負けられない!ヒカルに取り憑かなかったこと、後悔させてやる!」

 

 粉砕!玉砕!大喝采だ!

 

「くっちゃべるのは、勝者の特権だ……!お喋りはここまでにさせてもらうぜ!」

 

 全身から雷を撒き散らすジェミニ・スパーク。電子機器が……!

 

「来るぜスバル!」

 

「オーライ!ウェーブバトル、ライドオン!」

 

 ジェミニ!アンタはボクを、怒らせた……!

 

「こっちから行くぜェッ!」

 

 黒ジェミニがエレキソードで斬りかかってくる。白ジェミニは黒ジェミニの陰に隠れて目視することが出来ない。ジェミニだって、以前の戦法が通じるとは思っていないはず。いや、通じないと疑っているはずだ。

 と、いうことは……

 

「ッ!随分と、決着を、急いでるねっ!どうしたんだい!?」

 

 黒ジェミニのエレキソードをシールドで受けながら、言葉を交わそうとする。

 

「ククク、それを言うことは、出来ねぇなぁ……っ!」

 

 跳び退いた!?いや、このパターン……知ってるぞ。

 やはり黒ジェミニの陰にロケットナックル!安直だけど遣りにくいぞ、これは!

 

「フゥ……危ない危ない……」

 

「オイ、スバル!スターフォースは使うんじゃねぇぞ!」

 

 了解、トランザム!

 

「なら、いくよロック!派手にいこうか!」

 

古の導きを得て、ここに新たなる継承者とならん! 偽装血族(トライブ)内包(オン)!……ベルセルク!ちょっと、クサかったかな?

 

「そうだ……オレはこれをやりたかったッ!」

 

「ならお望み通り、斬り刻んでやる!今度は真っ二つを覚悟してもらうよ!」

 

「クックック……スバルを舐めんなよ、ジェミニ!」

 

 ロックからの信頼が厚くて照れる。というか、ベルセルクだと大剣の技量に左右されるのが難アリなんだよね。もっとこう、誰でも使えるようにだね……

 

「いくよロック!」

 

「おうよ!」

 

 高速で黒ジェミニにロックオンカーソルを合わせ、大剣で突き込むようにウォーロックアタックを敢行する。元いた足場にはバチチッ!っと静電気が走る。電光石火だね、まさに。

 

「うおぉぉっ!」

 

「ッ!?チクショウ!……グハァッ!」

 

「ウグッ!」

 

 コイツ、ロケットナックルを盾にしやがった!大剣の刺さったロケットナックルは爆発し、ジェミニとボクを襲う!……痛ッ!

 

「ハァ、ハァ……ククク、どうだ?久々のロケットナックルの味はよォ!?」

 

 既に黒ジェミニの右腕にはロケットナックルが再構成されている。今度は誘爆させてやろうか!?

 

「ツカサ君の方が上手かったね。……彼はボクのことをよく知っていた。ボクのクセも……」

 

 だからやり辛くて仕方なかったんだ!ホント、どうやったらあんなに死角に入り続けられるのか、知りたいくらいだよ!

 

「チッ、減らず口を……!」

 

「どっちが!」

 

「やっちまえスバル!」

 

 わかりきってるよ、そんなの!

 そろそろ決める!おあつらえ向きのカードは、既に来ているぞ!

 

「……よし、これでフィナーレだ!」

 

 ギガクラスカード『ペガサス・マジックGX』を発動(ロード)!凍てつく冷気に溺れてしまえ!

 

「うおぉぉぉっ!!」

 

「何だ、虚仮脅しか?……テメェ!やりやがったな!?」

 

 ボクが狙ったのは後方の白ジェミニ。アイツは残しておくと面倒だし、最悪持久戦に持ち込まれるかもしれない。ジェミニサンダーも封じられるしね。

 

「相方はデリートされちゃったけど……どうする?」

 

 この程度じゃあ、済まされないぞ!『アンドロメダのカギ』の件、忘れたとは言わせない!

 ミソラちゃんをあんな目に遭わせて……万死に値する!

 

「チ、チクショォォォォ!!!」

 

 破れかぶれというヤツか。でも勘違いしちゃあいけないよ。ボクは今キミ以上にキレてるんだからさぁっ!

 

「おりゃァッ!」

 

「グハァッ!」

 

 お前にバトルカードなど、生温い!殴り倒してくれる!

 

「ホッ!ハァッ!セイッ!」

 

「ガッ、グハッ、ゴホォッ!」

 

 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!

 

 最後はこれだァッ!

 

「ハアァァァッ!マジシャンズ!フリィィズ!!」

 

 既に死に体といった表現が相応しい黒ジェミニを氷像に閉じ込める。瞬間、氷像は四散し中の黒ジェミニも解放されるが、既にHPは尽きている。あとは消滅を待つばかりというところだ。

 

「チ、チクショウ……またしても負けるとは……か、勝てると思ったのに……!」

 

 電波体を崩壊させる黒ジェミニ。特に言うことはない。強いて言うなら、自業自得なんだろうね。

 

 

 ーーアイランド地下ーー

 

 ジェミニが消滅したことで、デンジハボールも消え去ってしまった。ここはまだ、ウェーブホールもまともに発生していない空間なので、デンジハボールの消滅とともにボクとロックの融合も解除されてしまった。

 

「スバル君……キミは一体……」

 

 天地さんが、未だこの状況が信じられないといった風に聞いてくる。

 

「青き戦士、ロックマンですよ天地さん」

 

 ちょっとふざけて言うと、天地さんもツボに入ったのかクスリと笑って頷いてくれた。

 

「確かに、さっきの姿は青き戦士といったところだったな……クフッ……」

 

「中々、気の利いたジョークだったでしょう?」

 

「そうだな……中々効いたよ。ところで、ちゃんと話してくれるんだろうね?さっきの姿を……」

 

「わかってますよ、天地さん……」

 

 ーー少年説明中ーー

 

「……俄には信じられない話だが、そのウォーロックってFM星人がキミと融合してさっきのロックマンという姿になるのか……しかし、キミがFM星人に対抗するチカラを持っていることはわかった。そしてボクがこの装置を修復してキミを宇宙へ送れば、FM星人の野望を阻止することができるかもしれない……」

 

 やはり理解力は高いな、天地さん。流石に科学者だ。

 

「そういうわけです。なのでこの装置の修理を……」

 

「悪いが、考えさせてくれ」

 

 やっぱりか。

 

「理由を、聞かせてもらっても?」

 

「FM星人と戦えるチカラがあるからといって、キミ一人を宇宙に送り込むわけには……行かない」

 

 それでもボクは、行かなくちゃいけないんだ。

…………ボクのために。

 

「……それでも、守りたい世界があるんです。ボクを支えてくれる、ボクの世界が!」

 

「だが、キミにもしものコトがあったら、キミのお母さんはどうなる!?大吾先輩に続いてキミを失ったら……ボクはキミのお母さんにどんな顔して会えばいいんだ!?ボクはキミのお父さんを宇宙に打ち上げたんだよ!…………この手で!」

 

 天地さんにとっても、大吾さんの事故はトラウマなんだろう。その息子を死地かもしれない場所に送り込むなんて、かなり苦しいに違いない。

 

「母さんだって、ボクの世界の一部なんだ!母さんを守れなかったボクに、天地さんは一体どんな顔して会いに来るって言うんですか!?もうボクは、ボクの世界を失いたくはない!父さんの時の様には!」

 

 最も天地さんに響く父さんというワードの部分だけが虚飾なんて、酷い皮肉だよまったく。

 

「…………1日、時間をくれ。明日には、コイツを使い物になるようにしよう」

 

 観念したらしい。良かった。多分ボクが大吾さんの言葉を借りても、天地さんには届かなかっただろうし。

 

「ありがとうございます!」

 

「但し、いいか……絶対に帰ってこい!男の覚悟を見せたんだ。最後までやり通して、何でもないようにお母さんには笑ってみせろ!……いいね?」

 

 クソッ、天地さんめっちゃ良い人じゃないか……!ああ、こんなコトを言える大人になってみたいモンだよ、ホント。

 

「ハイッ!!」

 

「よし、良い返事だ!今日は帰って、ゆっくり休め!明日の大勝負、妥協はするなよ!」

 

 そう言ってカラカラ笑う天地さん。こりゃあ宇田海さんも陥落するよね。しょうがない。

 

「わかりました!えっと、その…………ホント、ありがとうございました!」

 

 よし、さっさと帰って寝るぞ!一昨日までで、既にバトルカードやアイテムは揃えているから、あとはコンディションの問題だ。大丈夫。ボクはやれる。

 

 ーースバル退出後ーー

 

「……これで、よかったんですよね……大吾先輩……」

 

 そう言って天地守は背後のモニターに向かい、作業を開始した。彼の夜は、長い。




記念すべき50話なのにシリアス系で、すみません。

感想・評価が私のチャクラ量です。

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