星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 ーーアイランド地下のウェーブロードーー

 

「ここからステーションまで、ダイレクトで行けるんだよね……」

 

 目前には、宇宙から近づいてきている『絆』へとウェーブインするため射出装置が見える。射出装置と言っても、ウェーブロード上にあるウェーブホールの色違いと表現するのが正しいだろうね。

 

「ああ、覚悟はいいよな?……行くぜ!」

 

「FM星人たちに、殴り込みと行こう!」

 

 さぁ、人類の存亡を賭けた、決戦の始まりだ!

 

「よし、外に出るぜ!」

 

 ドリームアイランドの海面に構築されたゲートから超スピードで上空へ飛んでいく。

 イヤッホォォォォォ!

 

「次は……大気圏を抜けるぜ!宇宙ステーションまで一直線だ!」

 

 アチチチチチ!!!!……何てことはなかった。でも凄い。グングン昇っていく。昇っていくというよりは、地球の重力から解放されて大宇宙へと飛び立っていくという感じかな。ペガサスになっとけばよかったかも。まさしくギャラクシーペガサス!ゴーシュート(shoot)されそう。ショット(shot)されてるけど。

 

「凄い……地球は青かったんだね」

 

 お決まりだけど、言わずにはいられない。ボクたちの世界は、まさに青い宝石だ……!

 

「知ってるだろ、そんなこと。何ならオレたちの方が青いぜ?」

 

 そんな人工色じゃなくってさぁ……

 あーあ、ミソラちゃんとでも一緒に見たかったよ。ハープ・ノートなら、大気圏も突破出来るだろうし。

 

「ロマンだよ、ロ・マ・ン!」

 

「しまった、ロマンか……!しかし、こうして客観的に地球を見ちまうと、確かに欲しくなるよなぁ……スゲーキレイなんだからよ」

 

 キミたちの王様は、破壊しようとしてるんだけどね。

 まったく美的センスのない王様だよ。配下のFM星人も苦労しそうだよねぇ……

 

「おっとロック、不穏な発言はNGで。それにそろそろ着きそうだ……」

 

 こうして話してる間にも、宇宙ステーションはどんどん近づいてくる。いや、ボクたちの方が向かっているのか。

 

 

 ーーサービスモジュールのウェーブロードーー

 

「……着いたね。ここが、宇宙ステーション『絆』……」

 

「ああ、下を見てみな」

 

 あ、まだモニターやシステムは生きてるみたいだ。

 

「そういえば、空気は……」

 

 あるんだよね、確か。

 

「今は電波状態だから空気は関係ないが、現実世界はどうだろうな……。恐らく、空気は残ってると思うが降りてみないとなんとも言えないぜ」

 

 そういえば、電波状態だと空気は要らないんだよね。でも、解除したときには正常に呼吸を再開する……。何だか怖くなってきた。あんまり長く電波変換していると、体が呼吸を忘れてしまいそうでヤバいんじゃないのだろうか。

 

「まぁ、大丈夫じゃない?何とかなるって」

 

「オマエなぁ……いや、多分大丈夫だろう。スバルが言うんだ、それにどっち道空気がないと何も出来ないしな……」

 

「あはは……取り敢えずウェーブホールから降りてみようか」

 

「だな」

 

 ーーサービスモジュールーー

 

「宇宙、キタァーー!!」

 

 取り敢えず何か叫びたかったんだ。他意はないよ。

 

「ッ!何だよいきなり、騒々しいな……」

 

 ロックの方が、いつも騒がしいじゃないか!

 

「まぁまぁ……それにしても、凄いね。何故か重力がある。宇宙空間なのにね」

 

 不思議なこともあったもんだね。一応、天地研究所の疑似宇宙空間でトレーニングしてきたというのに。

 

「そういえばそうだな。この辺りにも、FM王のチカラが及んでいるというワケか……気は抜けねぇな」

 

 あ、そっちに考えがいくのか。便利だな~くらいしか思ってなかったボクが恥ずかしいな……

 

「それにしても、結構ハイテクな雰囲気だね。三年も前のモノなのに」

 

「一応は当時最新のテクノロジーが、惜しみ無く使われてるってことなんだろうな」

 

 ほうほう……しかし中々興味深い。

 

 ーーパシャ!パシャ!

 

「オイ、スバル。……何で写真なんか撮ってるんだ?」

 

「だって折角宇宙ステーションに来れたんだし、写真でも撮っといた方がお得じゃない?それに皆へのお土産にもなるし……」

 

 まぁ、モニターに映ってる文字を記録するってのもあるけどね。……一々見に来るのって、結構面倒くさいんだもん。

 

「すっかり観光気分だな……」

 

 いいじゃない!趣味と実益を兼ねた行動だよ!

 

「まぁまぁ……って、この扉は……こっちからの操作を受け付けないね」

 

「ってことは、電脳世界から解除するしかないってコトだな」

 

「でもさ、来るときに使ったウェーブロードはこっちの方には繋がっていなかったよね」

 

「うーむ、お!もうひとつ扉があるぜ!コイツは電子ロックだな……って、違うぞ!洒落じゃねぇからな!?」

 

 ニヤニヤしながら見てたのを気づかれてしまった。いや、ロックは何も間違ってないよ、ホント。……クスッ。

 

「べ、別に気にしてないよ……フフッ」

 

「オマエなぁ!ケッ、何だよ……!」

 

 ありゃりゃ、ヘソを曲げてしまった。め、めんどくさいな……

 

「ゴメン、ゴメンって!ボクが悪かったよ、ね?」

 

「フン!……まぁ、今はケンカ何てしてる場合じゃないしな……」

 

 よし、なんとか怒りを納めてくれたか。って、あれ?ロックの自爆じゃなかったっけ?まぁいいか……

 

「あはは……取り敢えず、オープンマンのナビカードを使ってみるね」

 

「おう、それがいいと思うぜ」

 

 ロックの賛同も得られたことだし、早速やろう。

 

「それじゃ、カードイン……オープンマン!」

 

『オープーン!扉を開けるのは、オレにお任せ!』

 

「……で、何を打ち込めばいいんだ?」

 

「と、取り敢えず扉を調べてみようか……あ、何か書いてある。……赤の周波数、だって」

 

「赤の周波数……さっきのモニターに映ってたやつか?取り敢えず戻って確認してこようぜ 」

 

「フフン!こんなこともあろうかと写真、撮っておきましたよ?ロックの旦那」

 

 圧倒的ドヤ顔!

 

「お、おう……頼もしいな。それじゃ早速、入力してみようぜ」

 

「りょーかい!ええっと……2、1、8、3……っと」

 

『オープーン!』

 

 それって掛け声なのか解除に成功したのか、はっきりしないんだよね……

 

「よし、解除成功!」

 

「先に進もうぜ!」

 

「うん……って、おお~!凄い、宇宙服だ!コレって確か、一着10億ゼニーするんだよね……!」

 

 施錠(ロック)が解除された扉の先には、船外活動用の設備が揃っていた。あまり使われた形跡はない。新品同様だ。ビジライザーをかけると、ウェーブホールを発見することが出来た。

 

「ああ、確か……『極小の宇宙船』だったか?とにかくウェーブインして扉のセキュリティを突破しようぜ」

 

「うん、了解」

 

 ーーサービスモジュールのウェーブロードーー

 

「よし、繋がってるね。これなら行けそうだ」

 

「おう!とっとと進もうぜ!」

 

 オッケー!

 

 ーーステーションの電脳1ーー

 

「何か、ヤバい空気を感じる……」

 

 キグナスのことかな?

 

「ヤバい?」

 

「この先に、何か居やがる。まぁ、スバル程じゃねぇが……ヘッ、よく考えりゃあ、ここは敵の本拠地だ。何もいないほうがおかしいぜ。とにかく気を抜くなよ!」

 

「何か聞き逃しちゃいけないセリフがあったような気がする……」

 

「気のせいだよ、気のせい!」

 

 ホントかなぁ……?なんかヤバいヤツ扱いされたような気がするんだけど……

 

「ほら、ボケッとしてる暇はないぜ!?急いだ急いだ!」

 

「ロック!?あんまり急かさないでよ……!」

 

 ちょっ!引っ張らないでぇッ!

 

 

 ーー十分後ーー

 

「取り敢えずこの電脳を見て回った限り、奥にあったセキュリティを突破するには星座の配置に関する知識が必要みたいだ」

 

 つまり余裕のよっちゃんだね。

 

「おう、サクサク進めるのはいいことだぜ」

 

 だよね。ボクとしても、手間がかからなくていい。

 

「中央にあった星座の配置を見る限り白鳥座……キグナスの線が濃厚ってところかな?」

 

「おう、だが以前とは違ってこっちにもスターフォースがあるからな。かなり楽に相手出来るハズだぜ?アイツは飛行能力に全振りだからな」

 

 酷い!シタッパーのことも忘れないであげてよ……

 ボクは思い出したくもないけど。だってアイツら五月蝿いし……

 

「シタッパーなんていなかったんだ……」

 

「そうだな……」

 

 二人揃って遠い目をし、あの喧しいアヒルたちを想起する。あの流れ星空間はホント、めんどくさかった。

 

「さて、ちゃっちゃと解いてしまうよ」

 

 流石に白鳥座の配置位はわかる。というかこのセキュリティの場合だと、プレイヤーの方がスバル君より星座の知識で足を引っ張ってるんじゃないかなぁ……

 

「……よし、先に進むぜ」

 

 では……くたばり損ないの姿を拝ませてもらおうか。

 

 

 ーーステーションの電脳1・最奥ーー

 

 セキュリティとも言えないお粗末なセキュリティを突破したウェーブロードの先には、やはりと言うべきかキグナスの姿があった。復活した時に強化されたためか、イヤに自信満々だ。

 

「ここまで来るとは大したものだ……褒めてやろう」

 

 何故一度倒されたのに、こんなに余裕なんだろうか。

 

「ご褒美を貰う相手には困ってないんだよ、ゴメンね」

 

「スバル……いや、そうだな。悪いが先を急いでいるんでな、道を開けてもらうぜ?」

 

 ロックが何故か呆れたような顔をした気がする。左腕はキグナスに向けているから、確認は出来ないんだけど。

 

「フフフ……道を開けろと言われて簡単に道を譲るワケにはいかないだろう!……ハァッ!」

 

 閃光が視界を塗り潰す。一々ピカピカ光らないと変身出来ないのだろうか。もう慣れそうだから、変身中に攻撃してみようかな?

 これは卑怯ではない、浅倉リスペクトだ。なら、初手不意討ちマジシャンズ・フリーズもアリなんだろうか。氷漬けにしてから現れてNDKするのも悪くない。

 

「なるべく美しくデリートしてあげよう!」

 

「凄く情けない理由でデリートされたヤツが、何か言ってるぜ?」

 

 ロックの煽り(スタンド)能力が全快だァー!まぁ、しょうがないよ。バトルで負けて、その上宇田海さんに精神力で葬られたからねぇ……同情するよ、可哀想にね。(焼け野原ひろし感)

 

「ダメだよロック。そんなコト言ったら宇田海さんに失礼じゃないか。こんな情けないヤツに取り憑かれてたなんて黒歴史モノだよ、ホント」

 

 ここぞとばかりにボクもロックをサポートする。問題はないよ。嘘は言ってないから。やっぱりパートナーに必要なのは、相手が今何をしてほしいか察し合う能力だと思うんだよねぇ……

 

「コ、コイツら……ワタシが黙っていれば、調子に乗りやがって……!」

 

 口調が崩れてますよ、バレリーナ?

 

「オレたちを邪魔するヤツは、何モンだろーとぶっ飛ばす!覚悟しなぁッ!」

 

 ロックが完全に悪役な件について。ダイヤモンド(小悪党)は砕けない。

 

「行くよロック!ウェーブバトル、ライドオン!」

 

「せめて、少しでも無惨に散れ!」

 

 ゲームより酷いぞ!せめて美しく散れ!とかじゃなかったっけ!?

 

「ロック!」

 

「おう!」

 

 スターフォース!

 

「ハァァッ!!」

 

「それがデータにあった、スターフォースによる強化形態……面白い。ワタシの翼とどちらが上か、はっきりさせるとしようか!」

 

 何か急にキグナス・ウイングのテンションが上がったな。もしかして翼に並々ならぬ思いでもあったのだろうか。ま、知らないけど。

 

「人の想像を越え続けるからこそ、幻獣は幻獣足り得るんだ。それを教えてやる……鳥人間(イカロス擬き)!」

 

  「ヘヘッ、いつも上から見下ろされてるヤツの気持ちを教えてやるぜ!」

 

 この勝負(バトル)、完全勝利することで証明してみせる!

 

「行くよ!」

 

 天高く飛翔する!着いてこい、キグナス・ウイング!

 

「フン、その程度のスピード……このキグナスの翼に出せない速度ではない!」

 

 背中の生物的な翼をはためかせ、猛スピードで追ってくるキグナス・ウイング。中々のスピードだ。

 ……でもね!

 

「セイッ!ハァッ!」

 

 展開したヘビーキャノンやガトリングを連射して牽制する。当然避けられるけど、追撃のスピードは緩まった。ここからだよ……空中戦は!

 

「うおぉぉっ!」

 

 空中で体の向きを反転させ、キグナス・ウイングに向かって左腕にリュウエンザンを展開して斬りかかる!リュウエンザンは羽のミサイルを切り裂くには有利なんだ。何せ羽だから、燃えるんだよ。

 

「チッ、だが抜かったな!」

 

 凄い……空中で回避するとは。流石にバレリーナ擬き、身のこなしは良い。左から袈裟に斬りかかったリュウエンザンを、ボクの後ろに回り込むように回避するキグナス。

 

「(後ろを)とった!」

 

「オイ、スバル!マズいぜ!」

 

 完全に後ろをとられている……けどねェッ!

 

「ハァッ!」

 

 周囲を流れる電波に冷気を飛ばし、氷結させる。簡易のウェーブロードを発生させ、それを足場として着地。そのまま瞬時に反転、ウォーロックアタックを敢行する!

 

「何……グハァッ!」

 

 よし、当たった!けど、これで終わるとは思ってない!既にキグナスとの距離は離れてしまっている……ならッ!

 

「そらっ!ワイドウェーブだ!」

 

「キサマ……以前と同じ手を!」

 

 低威力だけど、広範囲に広がるのが横波(ワイドウェーブ)。動きを誘導させるにはもってこいだ。

 

「うおぉぉぉっ!!」

 

 ペガサスの翼を振るい、再びキグナスに急接近する!

 

「ジェットアタックの代わりということか……二度も同じ手を使われるとはね……!」

 

 侮辱に感じるんだろうね。FM星の戦士としては。キグナスはワイドウェーブを回避するために減速しており、グングン近づくことが出来る。

 

「ッ!」

 

「バブルフック……ここまでボクを愚弄するなんてね!対処は出来るさ!何せ死因の一つだからねぇッ!」

 

 流石に一度デリートされたヤツは言うことが違う。何か悟ったのかな?しかし、発生させた泡をどう対処するんだろう。

 

「ハァァッ!!こんなモノ!」

 

 何と、背中から羽を飛ばしてバブルを割るとは……!確かにこれなら体勢も崩れない上に、運が良ければバブルを割った羽がボクに当たるかもしれない。流石にそんな幸運はなかったけど。

 

「わかってるさ、そんなこと」

 

 本命はバブルフックじゃない、チェインバブルだ。バブルフックの射程圏内で弾速の早いチェインバブルを外す道理はない。

 だからまだ、射程圏内ッ!……狙い撃つよ!

 

「ク、クッソォォォ!」

 

「対処出来るからこそ、油断する。戦士と言うには想像力が足りないね、キミは」

 

 ーーチュイン!

 

 弾速の早いチェインバブルがキグナス・ウイングにヒットして、その体をバブルが包む。既に()の中の鳥だ。退路は途絶えている。

 

「そしてこれが、ボクの全力全開。マジシャンズ・フリーズ……!」

 

 相手は死ぬ。それはエターナルフォースブリザードか。

 

「アァァァァァッ!!」

 

 空中に発生した魔方陣から生み出される氷柱に飲み込まれるキグナス・ウイング。……チェックメイトだ。

 

 ーーパリィン!

 

 氷柱が砕け散り、キグナスがウェーブロード上に投げ出される。既にHPは尽きていて、あとはデリートするのを待つばかりだ。

 

「うおぉぉぉぉ……まさか……まさかワタシが……せ、せめて夜空の星に……うわぁぁぁぁっ!」

 

 何が言いたかったんだろう……

 

「最後まで、ワケのわからないヤツだったな」

 

 ロックの総評が酷い!

 

「……扉のセキュリティを解除するよ、ロック」

 

「おう、頼むぜ」

 

 了解!ええっと、ここをこうして……ポチっとな。

 

 ーーピーピー

 

「よし、これで解除出来たはず。先を急ごう!」

 

 さて、ウェーブアウトして通れるか確かめないと……




ウェーブロードを氷結云々はオリジナルです。

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