星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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オヒュカスに黙祷……

文字数少なくてすいません。


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 ーーステーションの電脳4・最奥ーー

 

「……………………」

 

 氷漬けのヘビを前にして、ボクは思った。高機動高火力って、もしかしなくても強すぎない?

 バトルスタートと同時に上空へ飛翔して、上からキャノン祭りをするというオックスの二番煎じな展開。為す術無くマジシャンズ・フリーズによって凍結させられた時は正直、こんなモンかと思ってしまった。スターフォースでファイアレオになっていたら、こうはならなかったのかな?いや、オヒュカス・クイーンは木属性。よく燃えていたかどうかの違いしかないか。ドラゴンは知らん。

 

「それにしても……虚しいね」

 

「ああ、本来スターフォースなんてモンは、オレたちにとって過ぎたチカラだったのかもしれないな……」

 

 ああ、ロックが悟りを開きかけている。仕方ないよ。勝負にならないんだもん。ゴルゴンアイなんて撃ってくる隙もなかったからね。やはり1は遠距離ゲーだったか。もしかしてAM三賢者たちは、遠距離に頼りすぎて地力が身に付かないまま決戦に臨むことを恐れていたのかもしれない。遠距離だけの舐めプで勝てる相手ではなさそうだからね、アンドロメダは。

 

 

 ーーパキパキパキ…………パリィン!

 

 あ、氷柱が砕けた。既にHPが0を刻んでいることは確認済みなので、辞世の句でも聞いてあげるべきなのだろうか。

 

「FM王……お許し……を!!おのれ……ウォーロック!キ、キサマなぞ……アンドロ……が……ギャァァァァッ!!」

 

 さようならオヒュカス。キミのことは2ヶ月位忘れないよ。多分。

 

「煩悩を封じたスバルの敵ではなかったな」

 

 どこかからかうような口調のロック。何かしたっけ?

 

「何かを得るためには、何かを捨てなくてはならない。悲しい闘いだったね……」

 

 残念ながら、真理の扉を拝むことは出来ないけどね。

 

「クククッ……ほら、残るはFM王とアンドロメダだけだぜ?」

 

 どうしてそんなに笑っているのさ。

 

「うん、行こっか」

 

 扉のセキュリティをロックオープン!

 大将軍とはいかないけれどね。

 

 

 ーー居住モジュールーー

 

 遂に、来た。この先のウェーブホールから行ける場所に、FM王がいる。思い返せば、長いようで短い宇宙旅行だったな。

 

「FM王は、この先だ。目と鼻の先ってヤツだぜ。しかもこの先の空間はハザマの世界。FM王の放つ強烈なゼット波が現実の物質に干渉して電波化させてしまっている。つまり、半分は現実世界だが、半分は電波世界だ。今までのように、危なくなったら現実世界に逃げるなんてコトは出来ないぜ」

 

 そんな状態になってたのか。不便な体質だなぁとしか感じないけれど、腐っても王ということなんだね。

 

「このウェーブホールからウェーブインして、再び現実世界に戻ってくるためには……」

 

 少し、言いづらそうに説明するロック。何だよ、そんなに頼りない?

 

「FM王とアンドロメダに勝てばいいんでしょ?」

 

「お、おう……だがよ、スバル。そう簡単には……」

 

 珍しくロックが弱気だ。流石に慎重にならざるを得ないといったところなのかもね。でも少し悲しい。ボクたちが揃っていて遅れを取るなんて、ありえないってのにさ。

 

「やれるさ。ボクとロックならね。……違う?」

 

「…………」

 

 ボクの言葉にロックは呆けたような表情になり、次いで目を閉じた後、深呼吸をした。電波体に呼吸は要らないんじゃなかったの?

 

「すまねぇ、もう大丈夫だ。オレ、オマエを巻き込んだ負い目もあってよ……頼りきれなかったんだ。だけどそれも、もう止めにする。だからよ……頼むぜ、相棒!」

 

 ロックの目は、今までにないくらい真剣だ。最後に茶化した時は凄く嬉しそうだったけど。それにもちろん、ロックはボクの相棒だ。そんなこと、今更確かめることもない!

 

「こっちこそ頼むよ、相棒!」

 

 ーーバチィン!

 

「イテテ……ロック、ちょっと強すぎじゃない?」

 

 手がヒリヒリする……。あんまり気にならないけどね。

 

「ヘヘッ、気つけってヤツだよ」

 

 そういうモノなのかな?だとしたら、ちょっと嬉しい。ツカサ君とじゃこういうの、出来なさそうだしね。

 

「フフッ、それじゃあ行くよ!」

 

「ばっちこいや!」

 

 ロックの気合いも十分!

 スゥゥ……ハァ、と一度、深呼吸する。

 

「電波変換!星河スバル、オン・エア!」

 

「首洗って待ってろよ、FM王!」

 

 ここからが本当の決戦だ!

 

 

 ーー第二実験モジュールーー

 

「ここが第二実験モジュール……ハザマの世界。随分酷い様相だ。こんなトコロにいるなんて、FMも変わっているんだね」

 

 モジュール内にあった現実世界の物質は触ってみた感じ、ウェーブロードに近いような気がする。周囲には固形化した毒々しい色の電波も所々浮いているようだ。触ってみたいけど、こんなところでリスクを負うのはゴメンかな。

 

「地球の物質が脆いのかもしれないがな……だが、この先にFM王がいることに変わりはない。慎重に進んでいこうぜ」

 

「わかってる。油断はしないよ」

 

 油断出来るハズもない。こんな危険な空間なんだから。

 うっかり気を抜いて、ウィルスにデリートされましたじゃお笑い草だ。

 

 

 ーー二十分後ーー

 

 凄まじいゼット波の中を慎重に進んだボクたちは、遂にFM王の待つと思われる場所に通じる階段へとたどり着いた。

 

「いるな、この階段の上だ」

 

「やっぱり?更にゼット波が強くなってるような気がするよ……!」

 

 肌にピリピリとくる。これがFM王のゼット波か。生身に影響がないといいんだけど。

 

「いよいよ王様の登場ってヤツだぜ……!」

 

 興奮を押さえきれないロックの言葉を遮るように、階段の上から偉そうな声が聞こえてきた。

 

『ウォーロック……卑しい身分でありながら、余に弓引く愚か者よ。特別にその階段を登ることを赦してやろう。さぁ、登ってくるのだ……』

 

 ふーん。

 

「アンタに言われるまでもなく、そうさせてもらうつもりだぜ。スバル行くぞ……ってオイ、スバル?」

 

「ふん、ほら行こうよロック」

 

「あ、あぁ……どうしたんだよ、スバル?」

 

「相棒をコケにされたんだ、タダじゃおけないね」

 

「お、おう……」

 

 ロックは悔しくないのかよ!?卑しいって、卑しい身分って言ったんだぞ!?アンドロメダに頼りきって戦闘力0のクセに!……許せるか!決めた、一発殴る!ツカサ君の時とは違う、ボクがムカついたから殴ってやるんだ!

 

「はぁ、これじゃヒカルを笑えないね……」

 

 後悔はしないだろうけど。その自信だけはある。

 

「何だよ急に」

 

「何でもないさ。ただ、あの裸の王様をぶっ飛ばす理由が一つ、増えただけ……」

 

 何でドン引きするのさ!?

 

「あぁ、そうだな……」

 

 

 ーー第二実験モジュール・最奥ーー

 

 第二実験モジュールの最奥は、FM王の座す玉座の間。玉座の背後からは道が途絶えており、恐らくはアンドロメダが眠っていると思われる。

 

「よく来たな……ロックマン、そしてウォーロック。余の前に現れた敵が、よもや我がFMプラネットの戦士だとは……飼い犬に手を噛まれるとはこのことか。AMプラネットには余の前までたどり着けた戦士はいなかったが流石は我がFMプラネットの戦士……と、褒めておこう」

 

 アンタの称賛なんて要らないんだよ!

 

「一応聞いておくけど、FM王。地球への攻撃を止める気は?」

 

「黙れ!FMプラネットに害をなす星は、全て滅ぼすのだ!」

 

 聞く耳持たず、か。都合がいい。

 

「父さんたちは、アンタたちとブラザーバンドを結ぶためにそっちまで赴いたんだけど、そこのところわかってる?」

 

 ダイゴさんの目的を知らなかったワケじゃ無さそうだけど、きっと信じてなかったんだろうな。

 

「黙れ黙れ!何がブラザーバンドだ!!どうせ建前……我が星を侵略するつもりだったのだろう!余は騙されん!」

 

 なんて横暴な王様だ。部下も失っているのによく吠えるもんだ。

 

「ケッ、とりつく島もねぇな。スバル、ヤツを止めるには方法は一つしか……って、わかってるみたいだな」

 

 ロックにも伝わってるみたい。ボクの、押さえきれない闘志が!

 

「方法は一つ……?何を言っている。キサマらに余を止める方法などありはせん!!」

 

「なら出しなよ。いるんでしょ?アンドロメダ。デリートしてリザルトデータでも見せびらかしてあげる」

 

「キサマ、余を愚弄するか!?」

 

 そろそろ我慢の限界だ……!

 

「……王様よぉ、さっき言ってたよな。アンタの前にたどり着いたAMプラネットの戦士はいないってよ……。だったらオレが一人目だ」

 

「……キサマ、AMプラネットの生き残りか……」

 

 ロックの言葉を聞いて、一応の冷静を取り戻したFM王は確信のこもった呟きを漏らす。

 

「…………」

 

「驚かねえのか?」

 

「だって、スターフォースはAM三賢者から受け取ったものでしょ?なら可能性としては考えてたよ」

 

 多分誰でも気づくだろうけどね。

 

「そう、だからオレの大事なモンは全部、コイツに奪われちまったのさ……。だからよ、()のオマエの気持ち、少しはわかるんだぜ……」

 

 そんなことはない。ロックの方が辛いに決まってる。

 

「ボクとは違うさ。ロックは大事なモノが奪われる様を、実感しながら耐えてきたんだ。強いよ、ロックは」

 

 ボクは唐突に失ったように感じたけど、命が消える様を見たワケじゃない。言うなれば失った妄想に過ぎないんだよ。だからこそ、ロックはボクなんかよりずっと強い。そして今は、きっと復讐だけに囚われてはいないはずだ!

 

「ヘヘッ……とにかく、このままじゃ地球はオレの故郷、AMプラネットと同じ末路をたどっちまう。だから今ここで、ヤツを止める!!」

 

「わかってる!」

 

 ボクたちの会話が、FM王には余程滑稽に聞こえるらしい。自分は戦わないクセに、随分と偉そうなことだ。

 

「ハハハハハハ!!AM星人の生き残りと地球人一人に何が出来ると言うのだ!余を止められるものなら止めてみるがいい……目覚めよ、アンドロメダ!」

 

 

 ーーゴゴゴゴ……

 

 第二実験モジュール全体が揺れているような衝撃を放ちながら、玉座の背後にある空間から現れるアンドロメダ。なるほど、確かに凄いプレッシャーだ。

 

「これがアンドロメダ……」

 

 今は巨大な顔のような形態をしている。確か追い詰められると、より戦闘に適した準人型形態になるはずだ。なるべく準人型形態とはやりあいたくない。デカいってのはそれだけでアドバンテージだと、誰かが言ってたな。誰だっけ?

 

「ヤツの正体は孤独な心の塊だ。寂しくて寂しくて、自分と同じ電波体を片っ端から飲み込みやがる!」

 

 そういう仕組みか……だけど片っ端とは、まったくもって不完全な兵器だよ、ホント!

 

「アンドロメダよ!地球を片付ける前のオードブルだ!余に逆らう愚か者を倒せ!」

 

 こっちだって、負けられるかァっ!

 

「ロック!この大勝負、勝ちにいくよ!ボクらの戦いに、地球の未来がかかってる!」

 

 敢えて最後の戦いとは言わない。ボクたちはずっと、相棒なんだから!

 

「おう!他人が信じられないお坊ちゃん王に見せてやろうじゃねぇか、絆のチカラをよ!」

 

「あとあのバカ王は一発殴るからね!ウェーブバトル、ライドオン!」

 

「この不敬者が……!余に楯突いたコトを後悔するがよい!!ゆけ、アンドロメダ!」

 

戦いはポケモンじゃないってコトを教えてやる!




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