星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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つ、疲れました……


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 ーー第二実験モジュール・最奥ーー

 

「グオロロォォォン!」

 

 吸引力の変わらないただひとつの掃除機のようなチカラを見せてくれるかと思ったけど、普通に戦闘モードも存在していたらしい。推進機関もないのに凄いスピードだ。……って、そうじゃない!回避ィーッ!

 

「ロック!」

 

「おうよ!」

 

「「スターフォース!」」

 

 青き賢者のチカラを纏い、アイスペガサスここに推参!

 

「うおぉぉぉっ!」

 

 背中の翼を全力で振るわせ、遥か上空へ羽ばたかんばかりに飛翔する。流石に兵器、こちらの準備を悠長に待ってはくれないか……!

 

「オロロォォォン!」

 

 今度は……隕石!?頭頂部から露出している砲身の射出口から隕石型の砲弾……確かリュウセイグンだっけ?使う度に威力の落ちそうな名前だけど、数撃ちゃ当たるの精神なのか連続して撃ってくる!その内の一発がここにくるために通った実験モジュールの壁に直撃し、盛大に爆発する。ドカーン!と、ありきたりな音だけに、その凄まじい威力を物語るには十分だ。

 

「うわわわっ!セィッ!ハァッ!トリャッ!」

 

 迫り来るリュウセイグンを左腕に展開したリュウエンザンで斬り裂いていく。固そうだけど、斬ることは可能なようなのでこれ幸いと、除けていく。しかし、これは遠ざかってると損をするタイプの敵っぽい。火力と射程に差がありすぎる。ダンチだ!それでも接近系は温存するんだけども。

 

「取り敢えずは削っていかないと……」

 

 第二形態を引っ張りださないことには、コアと思わしき部分へのダメージが入らない!HPも全く減っていないし、外殻をいくら攻撃しても中心にダメージはいかないってことか……!クソッ、何でラ・ムー仕様なんだよ!

 

「ハァッ!……ッ!……ッ!」

 

 ヘビーキャノンを連続して放つ。全く抵抗せずに砲撃を受けるが、むしろチャンスとばかりに攻撃が激しくなる。どうしろってんだ!

 

「グオロロォォォン!!!」

 

 またリュウセイグン!……ヘビーキャノンの射程まで近づいているから、この量はマズイ!

 

「うわぁぁぁっ!」

 

 グッ!対処仕切れずに一発貰ってしまった。イッタいなぁ……!変身が解けないだけマシだけど。

 誰だよ!ダメージ40の雑魚技なんて言ったのは!

 グラン・ミラオスより高威力、高速度で撃ってくるんだけど!

 

「ハハハハハハ!!やはりアンドロメダの前には全てが無力!残念だが、ここで朽ち果ててもらうぞ!」

 

 ちくしょう!好き勝手言って……!

 

「まだまだぁッ!」

 

 持ち得る限りの中遠距離バトルカードを撃ち込んでいく。まさに古龍でも狩ってる気分だよ、これ。

 

「グオロロロォォォォッ!」

 

 今度はミサイルか!瞳っぽい意匠のパーツのサイドに取り付けられている……ええっと、ガンダムでいうバルカンみたいな場所からミサイルが発射されている。そこはマシンガンじゃないのか!?非誘導性のミサイルだから鬱陶しくはないけど、当たるとリュウセイグン以上の大爆発だ。やっぱり鬱陶しいなコレ!

 

「ハァァァァァ!!!!」

 

 とにかく撃ち落とすしかない!幸い誘爆するみたいで、近くのミサイルごとまとめて落とすことが出来た。ロックバスターに大感謝!

 

「グオォォォォォッ!!」

 

 結構効いているのか、咆哮が荒々しくなってきた。プログラムにしては必死な感じだな……。いや、寂しいのか。自分がいなくなることが、何よりも寂しいんだ。

 だけど。

 

「そんなの知るかァッ!」

 

「どうした!何かあったか!?」

 

「何でもない!アンドロメダの気持ちまで汲み取ってられるかってことだよ!」

 

「それは道理だ!行くぜスバル!」

 

「ああ!」

 

 冷気を集約し、即席のウェーブロードを精製。それを足場にしてウォーロックアタックを敢行、一気に近づく。ゼロ距離ならァッ!

 

「グオォォォォン!!」

 

 ビッグバンイーター……コイツ、読んでいたんだ!それにこれは補食体勢……ボクたちを飲み込んでしまうつもりか!?

 

「ウグッ!ま、マズイ……」

 

 アンドロメダの巨大な口に挟まれてしまった。こ、こうなったら、アレをやるしかない!やらなきゃ……殺られる!

 

「うぉぉぉっ!ペガサス・マジックGXッ!」

 

 アンドロメダの喉奥に向けて虎の子の一発を叩き込む。クソッ、第二形態で使う予定だったのに!

 

「グオォォォォロロォォォン!!」

 

 悲痛な叫び声を上げるアンドロメダ。どうやら喉奥に当てた攻撃は通っていたらしく、HPが減少している。ラッキーだ。

 

「オォォォォォォン……!」

 

 遂に来るか。第二形態が。ここからが対アンドロメダ戦の大一番。かなりヤバイぞ……!

 

 

 ーーガシャッ!ガコン!ギギギ……

 

 

 やはり変形したか。顔から人型になるなんて、何か戦隊モノのロボットを彷彿とさせるな。因みにさっきからずっとロックバスターを撃ち込んでいるけど、効いた様子はない。人型の胸部にあるシェルターが閉じている以上こちらの攻撃は通らないようだ。それにリュウセイグンの量も1.5倍になるかもしれない。ゲームじゃ2発から3発だったけど。

 

「チッ、どうやら胸部シェルターが開いている時じゃないと攻撃は無効化されるらしいな」

 

「ある程度のタイミングが読めればいいんだけど……」

 

 シェルターが開閉するタイミングを読めれば、先んじてウォーロックアタックで切り込むことも出来る。しかしそんなこと、あのアンドロメダがさせてくれるのだろうか。因みに現在は、少し離れた場所からアンドロメダを観察している。

 

「ウオォォロロロォォォン!」

 

 ゲッ、あの動き……初手ネビュラブレイカー!?初手ぶっぱは反則でしょう!や、ヤバイ。ビームが太過ぎて撃ってから回避余裕でしたなんてことは出来なそうだ。なら出来ることは……

 

「ロック、シールドを!」

 

「回避運動は!?」

 

「多分無駄!受けきるしかないと思う!ビーム系ならシールドでやり過ごせる……ハズ」

 

 正直自信はないけどね!巨大な右の掌にある射出口が輝き、エネルギーの充填が済んだことをボクに知らせてくれる。親切設計だなぁ、なんて呑気してる余裕はない。個人で有していいチカラじゃないよ!あんなのは!

 

「オォォォォォォン!!」

 

 

 雄叫びを上げて右の掌から特大・極太のビームを吐き出してくる。ビームの範囲、スピードから判断するにボクの予想は正しかったらしい。眩しくて、キレイなビームだ……!

 

「ぐっ!うぅおぉぉぉっ!」

 

 ビ、ビームの威力が強すぎる!受けきれないィッ!あ、足が地面を離れそうだ!……ッ!うわぁぁぁっ!

 

 

 

 

 

 ーー……ガラッ!

 

 

「うぅ…………」

 

 威力が強すぎて、壁に叩きつけられてしまった。やっぱり遠距離は止めた方がいいみたい。取りついてから近距離系で地道に斬っていったほうがいいのかな……

 

「スバル、大丈夫か?」

 

「あぁ……うん、何とか。でも凄い威力だったね」

 

「あの攻撃は何度も食らえねぇ。早々にケリをつける必要があるな」

 

 ロックも近距離への切り替えには賛成みたいだ。まぁ、何発も食らっていられないから仕方ないんだけど。

 

「うん賛成。それじゃアレ、やってみる?」

 

 アレとは、アレだ。合体、融合。ロマンである。

 

「……おう。だがよ、アレはオマエの体に負担が……」

 

「水くさいこと言わないでよロック。それに、以前ペガサス・マジックが言ってたでしょ?『親和性(・・・)を上げてやった』ってね。今なら多分、やれると思うんだ。どう?」

 

 ずっと考えてたんだ。ペガサス・マジックは親和性を上げたと言っていた。では何の親和性を上げたのか?彼らはボクをずっと見定めていたんだ。ボクが戦う姿を、だ。つまりは……

 

「スターフォースとベルセルクのチカラを融合することによる、新しいチカラ……!」

 

「キサマら、何を喋っている!?もう終わりだ!そこで最期の時を待つがいい!」

 

 FM王の罵声すら、今は気にならない。

 

「ぶっつけ本番だぜ!?……いけるか?」

 

「ロックがいて、ボクがいるんだ。失敗なんて、するはずもないよ!」

 

 ボクはロックを信じてる。一蓮托生ってヤツだ!これ以上の出会いはもうないだろうね。ボクにとって一番の幸運は、ロックと出会えたことだった!

 

「お互いに思い、守り、競い、高め合う。それこそが最高の相棒ってヤツなんだ!だからボクは、いやボクたちは……勝つ!」

 

「何をふざけたコトを!」

 

 最も身近な誰かの為に戦うボクらを、止められると思うなよ!

 

「だからFM王……地球舐めんな!ファンタジー!」

 

「よく言ったァッ!」

 

「いくよロック!ダブル……いや、ツインだ!」

 

 二重(ダブル)じゃ足りない!……(ツイン)トライブだ!

 

高次元(ツイン)血族融合(トライブ)!……ベルセルクッ!」

 

 ーードオォッ!

 

 ベルセルクを読み込む(ロードする)と、上空から降ってきた稲妻が、ボクのカラダを貫いた。苦しくはない。痛みも感じない。天馬(ペガサス)戦士(ベルセルク)のチカラが、融け合うように混ざりあっていくのを感じる……!

 

 

 

「何が起こっている……!?」

 

 FM王の困惑した呟きが聞こえる。今ボクの周りは、凄まじい冷気とイカズチの混ざりあった暴風が吹き荒れている。チカラが溢れてくるようだ!それに知覚能力もペガサス、ベルセルクより拡張されている。周囲の状況が、手に取るようにわかる。

 ここまで圧倒的な性能だったなんて!

 

「……ベルセルク。ハザード、ベルセルク!いくよロック、ここからが本当の大一番だ!」

 

 地球の代表なんだ、地球のチカラであるベルセルクを名乗らせて貰ったほうが、格好つくハズだ!

 

「おうよッ!」

 

 右手に掴んだベルセルクブレードで、辺りを切り裂くように振るう。ボクのカラダから放出されていた冷気とイカズチを斬り払い、超速のウォーロックアタックを行う。超高速で突進しているというのに、軽く目で景色を楽しむ位の余裕はある。どれだけ強化されているんだか。

 

「セイヤァッ!」

 

 

「ッ!オォォォォッ!」

 

 右手にスタンナックルを展開し、コアを露出したアンドロメダに殴り込む。そこまで本気で殴ったわけでもないのに、低空飛行していたアンドロメダは物凄い勢いで吹き飛んでいく。完全にアンドロメダを圧倒しているようだ。

 ベルセルクのチカラが混じることで雷撃を迸らせる翼を展開し、通常のウォーロックアタックと遜色ないスピードで吹き飛ばされたアンドロメダを追う。

 

「逃がすかァッ!」

 

 ツイントライブによって強化されたロックバスター、『テンペストランチャー』で追撃しながら、アンドロメダを追い詰めていく。負ける気がしないぞ!

 

「グ、グオォォッ!」

 

 最後の足掻きとばかりに両腕からネビュラブレイカーを同時発射しようとするが、そんな隙など与えるワケはない。

 

「セアァッ!」

 

 右手のベルセルクブレードを、丁度露出したアンドロメダのコアに突き刺す。これだけでも、かなり効くハズだ。

 

「グウォォォォッ!!」

 

 コアに大剣を差し込まれて怯んだアンドロメダを尻目に、ボクは限界まで高く飛翔してからダイビングキックの体勢に入る。狙うはコアに突き刺したままのベルセルクブレード!

 

「うおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 

 

 ーードガッッ!!ギギギ……!

 

 これだけの勢いで蹴り入れているのに、貫通仕切らない!?背中の電撃を纏った翼が更なる推力を生み出し、押し進んでいく。もう、少しッ!

 おぉぉぉぉりゃぁぁァッ!!!

 

 

「ハァァァァァァッ!!」

 

 

「グッ、グオロォァァァァァァッ!!」

 

 

 ーーギギギギギギ……バギィッ!!

 

 

「うおぉぉぉっ!…………やった!」

 

 コアを貫通し、反対側から飛び出るボクたち。これ、ライダーキックじゃないかと今更気づいた。

 

 

 

 

 

「ば、馬鹿な!まさか、アンドロメダが……い、いやあり得ぬ!アンドロメダを打ち倒すチカラなど余は認めぬぞ!アンドロメダ!今一度立ち上がり、こやつらを打ち倒すのだ!」

 

 既にHPは0を示しているアンドロメダだが、第一形態に戻ることで完全崩壊への時間を稼いでいるように見えた。

 

「グオロロォォォォン!」

 

 ここから再起動するっていうのか!?コアを完全に貫いたんだぞ!?

 

「ウオロォォォォォッ!!」

 

 クソッ、何て諦めの悪さだ!

 

「スバル、来やがるぜ!!まだ行けるか!?」

 

「やれるさ!今度こそ……ウグッ!」

 

 何だコレは!?か、カラダが……重い!これがツイントライブのペナルティ。なんて負担だ!こんなのを、親和性の低い状態で使おうとしてたなんて!

 

「ハ、ハハハッ!!先ほどの戦いでチカラを使いきってしまったようだな!アンドロメダ!トドメをさしてやれ!!」

 

 座るか煽ることしかしてないクセに!

 

「ウオロォォォォォッ!」

 

「スバル!頑張れ!……もう一息なんだ!」

 

「ウググ……!カラダが重い!う、動けない!」

 

「クソォッ!こんなときに負担かよぉッ!FM王のゼット波の影響も、地球人には厳しすぎる!チクショウ……!」

 

 こんなところで再現なんてしなくていいってのに!

 

「観念しろ、ロックマン!!」

 

 ーーギュイィィィン!

 

 アンドロメダの目が再び輝き、FM王の命令を受諾する。は、早く崩壊してしまえよォッ!

 

「オロロロォォォォォッ!!!」

 

 第一形態の特徴たる大口を盛大に開け、変わらない吸引力を披露する。攻撃でなくてよかった、けど。

 

「や、やめろ!アンドロメダッ!!ウワァァァッ!!助けてくれぇぇッ!」

 

 やはりこうなったか!アンドロメダは既に暴走し、FM王を飲み込もうとしている。助けてやりたいけど、カラダが……!

 

「何とかしねぇとヤベェぞ!」

 

「か、カラダがもう……!」

 

 動け!動けってんだよ!

 母さん!委員長!ミソラちゃん!……チクショウッ!

 こんなところで……!

 

『スバル、お前は一人で戦ってるんじゃない。さぁ、立ち上がるんだ!』

 

 この声……まさかダイゴさん!?もしかして、残留電波か!?

 

『さぁ、立ち上がれ!みんながお前にチカラを貸してくれる!スバル、お前の紡いだ絆のチカラを、今こそチカラに変えてゆけっ!』

 

「そうだ……!わかってる、いやわかってたんだ!ボクは一人じゃない!ミソラちゃん、委員長とデートしてゴン太と牛丼屋に行くっていう約束が、あるんだァッ!」

 

 誰かの声が、こんなにもチカラになるなんて!

 まだだ、まだやれる!立てよスバル!

 

「うおぉぉぉぁぉっ!!!」

 

「な、なんだ……このチカラは……!」

 

 ケフェウスが何か言ってるけど聞こえない!今はボクの、全力全開をッ!!

 

「行くよッ!!」

 

 大上段に構えたベルセルクブレードから、爆発的にイカズチとブリザードが吹き荒れる。この、一撃ならァッ!

 

「これで終わりだ!」

 

「うおぉぉぉっ!!デッドエンドォォォ!ハリケェェェンッ!!!」

 

 一気に振り切り、アンドロメダにブチ当てるッ!もう、終わっちまえよォッ!

 

 

 ーーバリバリバリ……ドカァァァァン!!

 

「あぁ、アンドロメダが……アンドロメダが……!」

 

 衝撃で吹き飛ばされたFM王が嘆きの声をあげる。助かってよかったじゃないか。

 

「な、なぜ……余にトドメを刺さんのだ!?余に復讐するためにここまで来たのだろう……」

 

 これはロックに言ってるな。少しだけ、聞き流しておいてあげるよ。

 

「……いいだろう、苦しまねぇように一思いにやってやるぜ。……と、思ったが止めといてやる。復讐に身を焦がすオレなんぞ、相棒は見たくねぇだろうからな。それに部下を失い、アンドロメダも失った今、オマエに出来ることはねぇ」

 

 なんか照れるな。いやぁ、相棒って響き、良いよね。

 

「……確かにオマエの言う通り、余の負けのようだ。1つだけ聞かせてくれ。アンドロメダを倒す程のチカラをどうやって手に入れたんだ……?」

 

「ヘッ、よく覚えておきな。これが地球人たちの大切にしている絆のチカラってヤツだ」

 

「絆のチカラだと……?」

 

 …………はぁ。

 

「そう。さっきボクは、アンタがロックを卑しい身分何て言ったからキレたでしょ?そうやって互いを思い合い、支え合い、信頼することでどこまでも強くなっていけるんだ。それが、絆のチカラだよ」

 

 ……FM王、いや、ケフェウスはハッとしたような顔をした。そろそろ、いいよね?

 

「もう一度言うよ。ボクは、さっきアンタがロックにほざいた罵倒が許せない。今はね。でもボクは、キミを許せるよ」

 

「ど、どういうことだ……?」

 

 わかってないような顔。

 

「こうするのさっ!歯ァ食いしばれェッ!」

 

 ーーバキッ!

 

「グハァッ!」

 

「スバル……」

 

 フゥー、すっきりした。さぁ、友好関係(ブラザーバンド)を始めようか……!




ハザードベルセルクの姿はご自由に想像してくださって結構です。すいません。細かく描写できなくて。

感想・評価が私のスタンドパワーです。

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