星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 ーー翌日ーー

 

 委員長にリボンを送った翌日。ボクは爽やかな気持ちで目を覚ますことに成功していた。やっぱり女の子の笑顔って、人を元気にさせる何かがあるんじゃないかと思う今日この頃。

 

ーーチュンチュンチュン……

 

「……ふぁーあ、今日はミソラちゃんか……」

 

「呼んだ?」

 

「え」

 

 ーーバサッ!

 

 体にかけていた布団を翻し、颯爽と現れたのはミソラちゃんだ。ボクの布団の中からでなければ、とても幻想的な雰囲気になっていただろう。しかし、もう慣れっこだ。

 

「響ミソラ、推参!」

 

「ミソラちゃん、何してんの?」

 

「エヘヘ……」

 

 ボクが()めた目を向けると、ミソラちゃんは苦笑しながら頭を掻いた。そんな仕草も絵になるのは、響ミソラが響ミソラであるが故の芸当なのだろうか。

 

「エヘヘじゃないよ、もう……」

 

 ステーションから帰ってきた翌日に、二人を隠したままあかねさんをやり過ごすのがどれだけ大変だったと思うんだ!

 

「だって、久しぶりじゃない?たまにはサプライズでも~って思ったんだけど……ダメだった……?」

 

 目を潤ませて上目遣いのミソラちゃん。だから慣れっこなんだって。

 

「サプライズって、元々週1で潜り込んでるじゃないか……」

 

「それは……だってスバルくん、暖かいし。一緒に寝てギューってすると、とっても幸せになれるんだよ!」

 

 だよ!とばかりに息荒く語ってくる。いや、知らないってば。ちょっと、ハァハァしない!

 

「まぁ、今更か……」

 

 はぁ、と幸せが一つ抜けていく。

 

「フフッ、そーいうスバルくんも大好きだよ~?」

 

「ハイハイ……」

 

 ようござんすね。

 

「し、信じてないね……!?」

 

 だから慣れっこなんだってば。ボクを取り乱させたくば、緩急をつけなさい、緩急を。

 

「ほら、ミソラちゃん。そろそろ……」

 

『スバル~!朝御飯よ~!』

 

「……ね?」

 

「はぁーい。……ちぇっ」

 

 何かに邪魔されたような顔をしながら持参したと思わしき私服に着替えていくミソラちゃん。肌色が眩しいけれど、なんだかもう慣れてしまった。枯れてるのかな、ボク。

 

 

 ーー星河家・リビングーー

 

 リビングに降りると、あかねさんが朝食の準備をしていた。基本的に休日は、三人分の朝食が用意されている。

 

「おはよう、母さん」

 

「おはようございます!」

 

「あら、今日はミソラちゃんも居たのね。おはよう、ミソラちゃん」

 

「はい!」

 

 元気よく返事をするミソラちゃん。何かがおかしい気がする。なんだろうか。

 

「それじゃあ、いただきます……」

 

「いただきます!……ッ!この卵焼き、スッゴく美味しいですね!」

 

「ウフフ、ミソラちゃんはお上手ねぇ……」

 

 ボクをそっちのけに、二人の間で会話が弾む。なんでこんなことで孤独を感じなきゃいけないんだろうか。因みに朝食中は、ボクの部屋にいるようにロックとハープに頼んでいるため、ここには地球人しかいない。地球人しかいないって、違和感が凄いな……。

 

「フゥ、それじゃご馳走さま。美味しかったよ、母さん」

 

「お粗末様~!」

 

「あ、食器洗うの手伝いますよ!」

 

「ウフフ、それじゃちょっとだけ、お願いしちゃおうかしら!」

 

「はい!任せてくださいね!」

 

ーーキャッキャッ!!

 

 こんな光景も既に慣れてきている。ミソラちゃんが、母性全開のあかねさんに懐くのに時間は要らなかった。だって、朝起きたら既にリビングで一緒に朝御飯つくってたんだもん。唐突過ぎて開いた口が塞がらなかったのをよく覚えている。

 話を聞くに、朝起こしにきたあかねさんがベッドに眠るミソラちゃんを発見したそうな。そして何がしかの話し合いの後、このような光景が許容されることになったのである。ボクは全く着いていけなかったよ……

 

 ーー30分後ーー

 

 取り敢えず日課のカード整理をした後、そういえば今日はミソラちゃんとデートだったと思い出す。朝起きたら既にいたから忘れていたね。仕方ないよ。

 

「ミソラちゃん、今日のことなんだけど……」

 

 完全に寛いでいるミソラちゃんに向かって問いを投げ掛ける。割とボクもテキトーだ。

 

「ヤシブタウン!」

 

 左様ですか……

 

「どこか行きたいところとか……」

 

「映画館!前に見たい映画があるって言ってたよね!それがいいかな……」

 

 あぁ、何か見たい映画があるとか、言ってたような気がするな。でもどんな映画を見たいかってのは教えてくれなかったんだよね、確か。

 

「どんな映画なの?」

 

「ん~?それは……ヒ・ミ・ツ!」

 

 超ノリノリだ。楽しそうでいいね。(棒)

 こうして頻繁に家で一緒に過ごしていると、デートとか要らないんじゃないかと思ってしまう。こうして、一緒に寛いでいるだけで…………寛いでいるだけで、なんだろう。よくわからないけど、安心はする。それでいいと思うんだけどなぁ。

 

「まだ結構早いけど、出発しちゃう?」

 

「んーん。まだ行かない」

 

 ?

 

「じゃあ、何するの……って、わわっ!」

 

「こうする!」

 

 ミソラちゃんは、バトルカードを並べてその前に座っていたボクの後ろから勢いよく抱きついてきた。ミソラちゃんの顔が肩の上に乗っている。あったかくて、柔らかい……

 

「どうしたのさ、いきなり……!」

 

「ちょっとだけ、もうちょっとだけ……」

 

 抱き締める力が強まる。肩や首の辺りにミソラちゃんの息が当たり、ゾクゾクッとする。

 

「……………………」

 

「もうちょっとだけだから……んっ…………」

 

「いいよ、好きなだけどうぞ」

 

 あかねさんの優しさに触れて、母恋しくでもなったのだろうか。今止めるのは、ちょっとね……

 

「スバルくん、スバルくん…………!」

 

 よしよし。しょうがないにゃあ。

 

 

 

 

 ーー1時間後ーー

 

 

「…………フゥ!もう大丈夫!」

 

「お役に立てたようで何よりですよ、お姫様(ミソラちゃん)?」

 

「もう!からかわないでよぉ……!」

 

 むすーっとした表情のミソラちゃんは、全身で不機嫌を表現している。何だかそっちのほうが可愛いや。

 

「アハハ……悪かったって!」

 

「ふんだ!」

 

「ごめん、ごめんってば……」

 

 ありゃ、結構怒らせてしまったかな?

 

「……でも、アリガト。ワタシ、時々寂しくなっちゃう時があって。でも、そういうときにスバルくんが居てくれると、ホントに助かる……」

 

 しんみりした雰囲気のミソラちゃん。

 ああ、もう!

 

「よし、出発しよう!」

 

「え!?」

 

「ほらほら、早く!ヤシブタウンは待っちゃくれないよ!?」

 

「ヤシブタウンは逃げないよ!?」

 

「いいからいいから!今日は楽しもうよ、ね?」

 

 そう言ってミソラちゃんの手をとる。 既に準備は出来ているから、後はバス停まで行くだけだ。

 

「あっ、もう…………スバルくん……!」

 

 いざ、ヤシブタウンへ!

 

 

 

 ーーヤシブタウンーー

 

 

 昨日に引き続き、今日もヤシブタウンに来たけれど、相変わらず大勢の人で賑わっている。さて、目的の映画館は……

 

「よし、行こっか?」

 

「うん!」

 

 女の子は笑顔が一番だよね、やっぱり。

 

 ーー映画館ーー

 

 うわっ、結構混んでるな……何か新しい映画でもやるのだろうか。ボク自身はあまり詳しくはないために、その辺の事情はよくわからない。

 

「それで、ミソラちゃんはどの映画が見たかったの?」

 

「ええっとねぇ……あ!アレだよ!」

 

 ミソラちゃんが指した方向にあったのは…………昨日委員長と見た映画だった。ええ!?何でェッ!?

 

「何がそんなにいいんだろう……」

 

「あーっ!酷いよスバルくん!あの映画はねぇ、とってもロマンチックなんだって。まだ見たことないんだけど、スッゴく面白いってルナちゃんが言ってたよ!」

 

 委員長ェ……自慢したのね、ミソラちゃんに。

 多分一人で見に行ったことになってるんだろうなぁ……

 

「ソウナンダ……」

 

「どうしたの、スバルくん?」

 

 止めて!そんな純粋な目で見ないで!二回目かよ……とか思ってたボクが恥ずかしいよ……

 

「ううん、何でもない。いいよ!見よっか、あの映画」

 

「それじゃあ、決まり!並ぼっか……!」

 

 並ぶと言っても、人が多いから並ぶだけで、それもすいすい捌けていく。トランサーマジ便利。因みにロックは暇すぎてトランサーの中でぐだッとしているところを、ハープに連れられ離脱している。この裏切り者ォッ!

 

 

 ーー2時間後ーー

 

 うーん、やっぱりよくわからないよ。ラブロマンスとか、小学生には早すぎない……?

 

「スゴかったね!ワタシもあんな風に愛されてみたいなぁ……!」

 

 チラチラ見ながら言うと、途端にあざとくなっちゃいますよ、ミソラさん。

 

「ハイハイ、大好き大好き」

 

「むむむっ!ちょっとテキトーだよ、スバルくん!(冗談でも、ちょっと嬉しいケド)」

 

 少しだけ頬を赤くしながら、ボクに当たるミソラちゃん。 やっぱり怒ってる?

 

「劇場でポップコーン食べたから、お腹もいっぱいだし、そろそろ帰らない?」

 

「えっ、もう?」

 

「後は家でのんびりしない?たまにはそういう日があってもいいんじゃないかなって。ミソラちゃんが居ると落ち着くし……どう?」

 

「もう、しょうがないなぁっ!フフフッ……」

 

 まぁ、ヤシブタウンに二人で来るなんて、割とよくあることだからね。仕方ないね。

 

 

 

 ーー星河家ーー

 

「ただいま、母さん」

 

「お邪魔しまーす!」

 

「あら、ミソラちゃん。別に遠慮とかしなくていいのよ?将来的には、スバルがお世話になるかもしれないのだし。ねぇスバル?」

 

 どういうこと?お世話?

 

「あ、あかねさんっ!ま、まだそういうのは、ワタシ……!」

 

 何故ミソラちゃんが慌て出すんだろう。

 一つだけ言えるとすれば、それはあかねさんが大魔王だと言うことだ。こんなの、誰だって勝てないよ。

 

「まぁまぁ、落ち着いてよミソラちゃん」

 

「お、落ち着いてなんていられないよっ!」

 

 何がミソラちゃんをそこまで駆り立てるのだろうか。何か委員長と仲良くしつつも争ってる感あるし。女子の思考って、ホントわかんないよ……

 

「あ、ミソラちゃん。夕食は食べていくのかしら?」

 

「いただきますっ!」

 

 うわぁーん、とボクの部屋に突撃していったミソラちゃん。リビングに残されたボクとあかねさんに、何とも言えない空気が漂った。

 

「あーうん、それじゃあボクも行くから……」

 

「スバル」

 

「何?」

 

「しっかり、考えて選びなさいよ」

 

 今日のあかねさんはホントよくわからない。選ぶ?何を?ミステリアスなあかねさんとはまた、珍しいな。

 

「よくわからないけど、多分大丈夫だよ、母さん」

 

「そう……」

 

「それじゃあね」

 

「(いつか刺されないといいんだけど……)」

 

 

 ーー自室ーー

 

 

 自室に戻ると、既にパジャマに着替えたミソラちゃんがボクのベッドの上で突っ伏していた。いやまておかしいぞ。なんでやねん。

 

「ミソラちゃん?大丈夫?」

 

「うう……死にたい……」

 

 思いの外堪えているようだ。全身から負のオーラを放出している。ビジライザーをかけると、ハープも困惑しているのが見える。どんだけだよ……

 

「もうすぐ夕御飯だけど、もう寝ちゃうの?」

 

「起きる……」

 

 ノロノロと起きたミソラちゃんの顔は上気していた。委員長がよくする表情ですねわかります。

 

「ほらほら、元気だして。ミソラちゃんは笑ってた方が可愛いんだからさ、もっと笑顔笑顔!」

 

「うん……」

 

 ダメだこりゃ。結局この後は、あかねさんの超美味しい夕御飯を食べて帰ってしまった。

 

 因みに後日、学校にあるピアノの電脳に巣食っていたウィルスとジャミンガーどもをデリートし、キザマロとブラザーになった。酷い数の暴力で口に出すのもめんどくさい戦いだったので、ここに結果だけ記すことにする。ブラザーが増えたよ!やったね!終わり!




あまり自信のある出来ではありませんね……

やったー次からベルセルク編だー!
キザマロは逸る気持ちの犠牲になったようです。南無三。

感想・評価が次回のスバル君の戦闘力です。

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