時系列的には、1と2の間になります。
ーーコダマタウン・展望台の電波ーー
無事に地球へと帰還したボク達が、漸くアンドロメダ戦の疲れが取れただろうか……という頃合いになったので、ミソラちゃんとの
なお、先方の強い要望により再開が早まったということを、ここに記しておく。だって、もの凄い食い気味で頼んできたんだもん。
今現在、ボクとミソラちゃんは電波体同士で向かい合う形をとっている。これは戦闘前の精神統一も兼ねていて、集中力向上による高いパフォーマンスを期待することが出来るのである。多分。
しかし改めて見ると……ハープ・ノートってアイドル要素強すぎないだろうか?
「……それじゃ、始めよっか?」
「りょーかいです!今度は負けないんだからねっ!」
言葉の最後が跳ねている。どうやら元気一杯、気合い十分と言った具合らしい。こういう純粋な、組み手染みたバトルも嫌いじゃない。寧ろ大好物です!
……っと、そうだ。今回はちょっと違うやり方にしようと思っていたんだっけ。
「ねぇ、ミソラちゃん……ちょっといいかな?」
「なにかな?早く演ろうよ!……フフフ、今日こそはスバルくんをストリングでガチガチに縛って、あんなコトやこんなコトを……」
おっと、話を聞かないモードに入ってしまったようだ。って言うか、あんなコトやこんなコトってなんだよ。 頬が上気して赤くなっているのがバイザー越しに確認出来るけれど、今の不穏な発言を聞いて興奮出来る程、ボクはその道の上級者ではない。
「今日は少し、特殊な趣向を凝らしてみようと思うんだけど、ミソラちゃんはどうかな?」
「……趣向を凝らす?」
ふぅ、どうにか話を聞く態勢になってくれたようだ。ただ、趣向を凝らすという響きから何かを連想したのか、とてもだらしない顔になっているのが悲しい。一応元アイドルシンガーだってのに、堕落し過ぎだと思うのはボクだけではない……はず。
「そう。今からボクが『ハープ・ノート』系列のカードを使ってハープ・ノートに成りきるから、今日はその状態でバトルしてみない?ってことなんだけど。どう?」
「へぇ……ミラーマッチだね!」
あ、知ってたんだ。まぁ格ゲーとかじゃありふれてる用語だし、知っていても不思議じゃないか。兎に角、興味を持ってくれたのは幸いだ。
「全く同じ能力を持つ相手とバトルすることで……」
「対策してくる相手の気持ちになれるってワケだね!?」
対策の対策(?)の練習になるのだろうか。正直興味本意だから、楽しければそれでいいんだけどね。命のやり取りをするわけじゃ無いのだし。
「そうそう……で、どうかな?」
毎週のように模擬戦(と残留電波狩り)を繰り返しているので、ボクは既にハープ・ノート系列のバトルカードは全て収集を終了させている。終了と言っても、『ハープ・ノート』『ハープ・ノートEX』『ハープ・ノートSP』しかないのだけど、断続的に使えば戦闘一回分程度はもつ。
「面白そうじゃない!いいよ、ワタシは賛成!」
ハープ・ノート本人からも色好い返事を貰えたので、暫くハープ・ノート系列のカードが来るまでバトルカードを無駄撃ちすることになった。面倒だけど、手間暇かけてやる方が、遊ぶ側としても楽しいじゃない?
「……よし、OK!」
暫く周囲にネバついた雨が降った後、漸くセレクト可能なカードに『ハープ・ノート』系列が全種類現れた。
準備が完了したのを見計らい、向こうも闘気を纏って戦闘態勢に入り、ピリピリとした空気を作り出す。
「それじゃあ……いくよ!」
セレクトした『ハープ・ノートSP』を
「ッ!…………いつでも!」
こちらを見たハープ・ノートの瞳が一瞬見開くも、直ぐに好戦的な表情へと変化させ、同時に手元のギターへと指を滑らせる。なんだか楽しくなってきたな……
「「ウェーブバトル!ライドオン!」」
展望台の電波に、ハープ・ノート二人分の叫び声が木霊する。周囲の電波体は何事かと注目するが、その戦闘の激しさから、数秒もせずに大多数が目を逸らしたくなったのは余談である。
「ハァッ!」
「えいッ!」
頭部の『フラットライブモニター』に収納されていたアンプを前面に召喚する。間髪入れず、同時に飛び出した音符が発射された後、ぶつかり合うことで双方ともに消滅してしまう。
基本的なスペックは同等なので、同じ技を使っても差が現れることはないというのが、メガクラスの強みだ。
「中々っ!スバルくんもやるねっ!」
ストリングを伸ばし、引っ張られる形での高速移動を続けながらそう評価してくれる。どうやらオリジナルの目に敵う程度には使いこなせているらしい。
っと、ハープ・ノートがウェーブロードに着地した。次にストリングを伸ばしても、移動にはワンテンポ時間が要る。畳み掛けるなら……今だっ!
「ロック!」
国民的シンガーの可愛らしい美声が、今はギターのメインシステムとなりし相棒の名を叫ぶ。
「おうッ!……って、今は無理だぞ!」
あ、そうだった。ロックも今はハープ扱いになっているから、ロックオンサイトを出すことも出来ないのを忘れていた。つ、使えねぇ……!
「なら、コレで!」
移動用に使っていたマシンガンストリングを発射し、ハープ・ノートをがんじ絡めにせんとする。しかしハープ・ノートは慌てることなく弦を見切って回避すると、後方にアンプを設置してその場を飛び退いた。
「……あっ!」
マシンガンストリングは着弦(?)した時に対象を縛る能力があるため、囮として呼び出したアンプへと見事に絡まってしまった。
ウゲッ、早く引き戻さないと……いや、一度切断すべきか?因みに、一度弦を切断するとギター内部で再生するまで使用不可能になってしまう。それはつまり、機動力で大幅に遅れをとってしまうということで……
「今ッ!」
好機と見たのか、跳躍して背後へと回り込んだハープ・ノートがギターを鋭い刀へと変換して、躊躇なく斬り掛かってくる。それはまるで、雷が形を為したかのような見た目の、どこか見覚えのある形状……って、それ『ライメイザン』じゃねーか!
「ちょっとそれ汚くない!?」
殺意の塊みたいなバトルカードじゃないか!
いや、ボクも常習犯だけどさぁ!?だって凄く便利なんだもの!しょうがないでしょう!?
「問答無用っ!」
ハープ・ノートにシールド機能など無いことは本人がよく知っているため、防がれることは考えていない大振りなフォームだ。殺陣の経験でもあるのか、やけに堂に入っている。
というか、こっちは後続のカードが全て変身系統だから、実質バトルカード無しで戦ってるようなモノなんですけどォッ!?
「ッ!」
「はあぁぁっ!」
漆黒の意思が乗り移ったようなライメイザンを、なんとか手元のギターで受け止める。専用装備らしくそれなりに頑丈な造りになっているようだ。因みに、絡まっていた弦は既に切断している。
「痛"い痛"い痛"いッ!!」
生身(?)で刀身を受けているロックの悲痛な叫び声が響くけれど、今は一体化していないので痛覚までは共有していない。しかし……鍔迫り合いなら、それは好機でもあるってコトだ!
「♪~ッ!♪~ッ!」
「これは……?……ああッ!」
適当な歌詞を歌い、パルスソングを発生させる。鍔迫り合いの状況ならば、不意討ち程度にはなるはず。歌とも言えないような酷い声だったけれど、胸についているハート型の装備『ハミングハート・トランスデューサー』(と言うらしい)によってパルス波へと変換された音波攻撃がハープ・ノートを吹き飛ばす。吹き飛ばされたハープ・ノートはすぐに立ち上がったけれど、その足取りはフラついている。目を押さえていることからして、どうやら盲目の追加効果を与えたらしい。歌で盲目とは一体……バッハ?
「……大丈夫?」
既に切断した弦は再構成が終了している。いつでも追撃は仕掛けられるのだけど、盲目の女の子を襲撃するって絵面がちょっと、ねぇ……?ヴァルゴみたいなガチの敵なら、問答無用でハメ倒しても良心が痛むことはない(と思われる)のだけど。
「うーん……自分の声で心配されると、何だか変な違和感を感じちゃうね……」
そういうモノなのだろうか?
流石にそんな体験をしたことは無いので、何とも言い難いのだけど。……今度録音して聞いてみようかな?
「……どうする?もう止めにしようか?」
「オレは反対だぜ!……マジで引き千切られるかと思ったからな…………」
どうやらライメイザンで斬り裂かれかけたのが、よほど堪えていたらしい。まぁ、普段ならシールドも相まって一番ダメージの少ない場所であることに違いないからね。こういうのに不慣れってのは少しわかる。
「アラ?ロックってば、もしかして怖じ気づいたのかしら?地球を救ったというのに、随分と怖がりやさんなのね。ウフフ……!」
ここぞとばかりに、ハープがロックのコトを煽ってくる。ハープってロックのコトが好きなのか嫌いなのか、時々わからなくなることがあるんだよな……
「ウルセーよ!」
「アラ、アナタこそワタシと全く同じ声なのだから、あんまり乱暴な口調では喋らないでほしいわね!」
互いのギターから発声された、全く同一の声色でケンカしているのを客観的に見るのは、実際ちょっとシュールだ。
「あはは……っと、時間切れみたい」
制限時間が過ぎたようで、電波体の輪郭が曖昧になってくる。ここで同じ系列のカードを使えば連続して変身することが出来る。要はポリジュース薬みたいなモノだ。
「フフフッ、そうだね。よし、それじゃ今日はもう止めにしよっか!それにしても……自分と同じ姿をしている人と戦うのって、思ったより神経使っちゃうみたいだね……」
若干草臥れたような、弱々しい表情を見せる。電波体は心理状態に結構左右されるところがあるので、あんまりよろしくない傾向だ。
こういうのって、現実じゃまず不可能なコトだから、あんまり影響とか考えていなかったなぁ……一応、大事はとっておくべきだろうか。
「うーん……辛いのなら、少しウチで休んでいく?今、家に誰もいないんだよね」
あかねさんは今日もパートなので、夕方まで家には誰もいないことになっている。ミソラちゃんに『母さん』ってワードは基本NGなので、詳しく説明することはないが。
「ホント!?行く行く~っ!」
「…………」
先程の憂鬱そうな表情が嘘のように、これ以上ないと言わんばかりな満面の笑みを浮かべている。うーん、ミソラちゃんってば名演技。
「そうと決まれば!早速ウェーブアウトだよ、スバルくん!!」
「何か釈然としないような……」
まぁ、どうせ口でミソラちゃん(と言うよりはハープ)に勝てるとは思えないし、ここは大人しく従っておいたほうが良さそうだ。序でに今日の反省会でもすれば、万事OKだろう。
コダマタウンの展望台から、二筋の流星が飛び立っていく。青とピンクの電波は、連れ添ってコダマタウンの住宅街方面へと向かうようだ。
『オイ……これ、どうするんだ……!?』
残ったのは、電波人間同士の争いによって散々に荒らされたウェーブロードの残骸である。ウェーブロード自体は時間が経てば復活するが、周りで見物していたデンパ達の心は、決して穏やかでは無かった。
『オデタチノウェーブロードハボドボドダァ!』
『オレァアイツラヲムッコロス!』
『ナゼミテタンデス!?』
『ダッテ,カラダガボドボドニナルンダド!?』
怒りのあまり滑舌がおかしくなっているが、ようするに巻き込まれるのを恐れて何もしなかった連中である。
『ミンナ、オちツくんだ!』
展望台エリアのデンパ達のまとめ役をしているデンパが、騒がしい場を納めようとする。流石にまとめ役の影響力は無視出来ないのか、取り敢えずは話を聞く姿勢を見せる。
『イマのサンジョウはミンナもしっかりミただろう。だが、サワいでいても、しょうがないんだ!なんとかカイケツサク……いや、ヒガイをサイショウゲンにオサえるホウホウを……』
『ムリですヨッ!だってアイツラ、マジでツヨすぎるんですもん!』
『チートですよチート!』
『でも、ピンクのホウはカワイかった!』
『ワカる!』
『それはワタシもオモってました!』
ざわざわ……とまた暫く騒がしくなるが、今度のデンパ達の話題は、ピンクの方ではなく青い電波人間の方に集中していた。主にその暴れっぷりであるが。
『あっ』
愚痴っていたデンパの一人が、唐突に間の抜けた声を出す。それは騒がしかった場で、嫌に響いていた。
『どうしたんだ?』
『どうにもデキないんだったら、せめてホカのデンパにもわかりヤスいように、トクチョウをツタえるためのヨびナをカンガえたら、どうです?』
恐る恐るといった風に進言したデンパの言葉を、展望台にいたデンパ全員が反芻する。確かに、あの電波人間達がここだけで暴れるとは思えない。ならば危機を伝えるためと考えれば、至極妥当ではないだろうか。
『ヨシ……それじゃあミンナ、ナニかいいテイアンがあったらオシえてくれ!』
『ボウソウトッキュウ!』
『アバレンボウショウグン!』
『バーサーカー!』
『ヤメトケヤメトケ!ミつかったらケされるかもしれないんだぞ!?』
再び展望台の電波世界は騒がしくなっていく。しかし、中々良い案が見つからない。明らかに化け物じみた渾名だと、バレた時に命の保証が無い……!という共通認識が会議を難航させていた。
『じゃあ……ブルー……ライオット・ブルーというのはドウデスカ?』
それは、先程の呼び名を考えようと提案したデンパだった。
『ソレだ!』
『ビミョウにツヨそうなナマエにカモフラージュしたな!?』
『ワタシはサンセイ!』
『ワタシも!』
『それじゃあ……ライオット・ブルーにケッテイする!ミンナ、アシタはイソがしいぞ!しっかりハッシンしよう!』
『『オオッ!!』』
それは、
このEXTRA-1は日付変更時に、59話と真ベルセルク編1話の間に移動させる予定です。
GET DETA……無し