星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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百話記念に製作した、完全に悪ノリなお話です。

時系列的には、1と2の間になります。


EXTRA-1

 ーーコダマタウン・展望台の電波ーー

 

 無事に地球へと帰還したボク達が、漸くアンドロメダ戦の疲れが取れただろうか……という頃合いになったので、ミソラちゃんとの模擬戦闘(訓練)を再開することとなった。

 なお、先方の強い要望により再開が早まったということを、ここに記しておく。だって、もの凄い食い気味で頼んできたんだもん。

 

 今現在、ボクとミソラちゃんは電波体同士で向かい合う形をとっている。これは戦闘前の精神統一も兼ねていて、集中力向上による高いパフォーマンスを期待することが出来るのである。多分。

 しかし改めて見ると……ハープ・ノートってアイドル要素強すぎないだろうか?ボク(ロックマン)が全身タイツにブーツとバイザー付きヘルメットと考えると、酷い変身格差ではないかと思う。まぁブランク体みたいなものだと思えば、理解は出来るけどね。理解だけは。

 

 

「……それじゃ、始めよっか?」

 

「りょーかいです!今度は負けないんだからねっ!」

 

 言葉の最後が跳ねている。どうやら元気一杯、気合い十分と言った具合らしい。こういう純粋な、組み手染みたバトルも嫌いじゃない。寧ろ大好物です!

 ……っと、そうだ。今回はちょっと違うやり方にしようと思っていたんだっけ。

 

「ねぇ、ミソラちゃん……ちょっといいかな?」

 

「なにかな?早く演ろうよ!……フフフ、今日こそはスバルくんをストリングでガチガチに縛って、あんなコトやこんなコトを……」

 

 おっと、話を聞かないモードに入ってしまったようだ。って言うか、あんなコトやこんなコトってなんだよ。 頬が上気して赤くなっているのがバイザー越しに確認出来るけれど、今の不穏な発言を聞いて興奮出来る程、ボクはその道の上級者ではない。

 

「今日は少し、特殊な趣向を凝らしてみようと思うんだけど、ミソラちゃんはどうかな?」

 

「……趣向を凝らす?」

 

 ふぅ、どうにか話を聞く態勢になってくれたようだ。ただ、趣向を凝らすという響きから何かを連想したのか、とてもだらしない顔になっているのが悲しい。一応元アイドルシンガーだってのに、堕落し過ぎだと思うのはボクだけではない……はず。

 

「そう。今からボクが『ハープ・ノート』系列のカードを使ってハープ・ノートに成りきるから、今日はその状態でバトルしてみない?ってことなんだけど。どう?」

 

「へぇ……ミラーマッチだね!」

 

 あ、知ってたんだ。まぁ格ゲーとかじゃありふれてる用語だし、知っていても不思議じゃないか。兎に角、興味を持ってくれたのは幸いだ。

 

「全く同じ能力を持つ相手とバトルすることで……」

 

「対策してくる相手の気持ちになれるってワケだね!?」

 

 対策の対策(?)の練習になるのだろうか。正直興味本意だから、楽しければそれでいいんだけどね。命のやり取りをするわけじゃ無いのだし。

 

「そうそう……で、どうかな?」

 

 毎週のように模擬戦(と残留電波狩り)を繰り返しているので、ボクは既にハープ・ノート系列のバトルカードは全て収集を終了させている。終了と言っても、『ハープ・ノート』『ハープ・ノートEX』『ハープ・ノートSP』しかないのだけど、断続的に使えば戦闘一回分程度はもつ。

 

「面白そうじゃない!いいよ、ワタシは賛成!」

 

 ハープ・ノート本人からも色好い返事を貰えたので、暫くハープ・ノート系列のカードが来るまでバトルカードを無駄撃ちすることになった。面倒だけど、手間暇かけてやる方が、遊ぶ側としても楽しいじゃない?

 

「……よし、OK!」

 

 暫く周囲にネバついた雨が降った後、漸くセレクト可能なカードに『ハープ・ノート』系列が全種類現れた。

 準備が完了したのを見計らい、向こうも闘気を纏って戦闘態勢に入り、ピリピリとした空気を作り出す。

 

「それじゃあ……いくよ!」

 

 セレクトした『ハープ・ノートSP』を読み込み(ロード)すると、足元から黄色いリングのようなモノが出現して頭の天辺までを通過していき、電波体の再構成を行っていく。ロックの頭部になっていた左腕は自由の身となり、代わりと言うべきか『ハープ・ノート』専用装備のギターが出現する。視界の端では金髪が揺れているので、既に再構成は完了しているのだろう。

 

「ッ!…………いつでも!」

 

 こちらを見たハープ・ノートの瞳が一瞬見開くも、直ぐに好戦的な表情へと変化させ、同時に手元のギターへと指を滑らせる。なんだか楽しくなってきたな……

 

「「ウェーブバトル!ライドオン!」」

 

 展望台の電波に、ハープ・ノート二人分の叫び声が木霊する。周囲の電波体は何事かと注目するが、その戦闘の激しさから、数秒もせずに大多数が目を逸らしたくなったのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ!」

 

「えいッ!」

 

 頭部の『フラットライブモニター』に収納されていたアンプを前面に召喚する。間髪入れず、同時に飛び出した音符が発射された後、ぶつかり合うことで双方ともに消滅してしまう。

基本的なスペックは同等なので、同じ技を使っても差が現れることはないというのが、メガクラスの強みだ。

 

「中々っ!スバルくんもやるねっ!」

 

 ストリングを伸ばし、引っ張られる形での高速移動を続けながらそう評価してくれる。どうやらオリジナルの目に敵う程度には使いこなせているらしい。

 

 っと、ハープ・ノートがウェーブロードに着地した。次にストリングを伸ばしても、移動にはワンテンポ時間が要る。畳み掛けるなら……今だっ!

 

「ロック!」

 

 国民的シンガーの可愛らしい美声が、今はギターのメインシステムとなりし相棒の名を叫ぶ。

 

「おうッ!……って、今は無理だぞ!」

 

 あ、そうだった。ロックも今はハープ扱いになっているから、ロックオンサイトを出すことも出来ないのを忘れていた。つ、使えねぇ……!

 

「なら、コレで!」

 

 移動用に使っていたマシンガンストリングを発射し、ハープ・ノートをがんじ絡めにせんとする。しかしハープ・ノートは慌てることなく弦を見切って回避すると、後方にアンプを設置してその場を飛び退いた。

 

「……あっ!」

 

 マシンガンストリングは着弦(?)した時に対象を縛る能力があるため、囮として呼び出したアンプへと見事に絡まってしまった。

 ウゲッ、早く引き戻さないと……いや、一度切断すべきか?因みに、一度弦を切断するとギター内部で再生するまで使用不可能になってしまう。それはつまり、機動力で大幅に遅れをとってしまうということで……

 

「今ッ!」

 

 好機と見たのか、跳躍して背後へと回り込んだハープ・ノートがギターを鋭い刀へと変換して、躊躇なく斬り掛かってくる。それはまるで、雷が形を為したかのような見た目の、どこか見覚えのある形状……って、それ『ライメイザン』じゃねーか!

 

「ちょっとそれ汚くない!?」

 

 殺意の塊みたいなバトルカードじゃないか!

 いや、ボクも常習犯だけどさぁ!?だって凄く便利なんだもの!しょうがないでしょう!?

 

「問答無用っ!」

 

 ハープ・ノートにシールド機能など無いことは本人がよく知っているため、防がれることは考えていない大振りなフォームだ。殺陣の経験でもあるのか、やけに堂に入っている。

 というか、こっちは後続のカードが全て変身系統だから、実質バトルカード無しで戦ってるようなモノなんですけどォッ!?

 

「ッ!」

 

「はあぁぁっ!」

 

 漆黒の意思が乗り移ったようなライメイザンを、なんとか手元のギターで受け止める。専用装備らしくそれなりに頑丈な造りになっているようだ。因みに、絡まっていた弦は既に切断している。

 

「痛"い痛"い痛"いッ!!」

 

 生身(?)で刀身を受けているロックの悲痛な叫び声が響くけれど、今は一体化していないので痛覚までは共有していない。しかし……鍔迫り合いなら、それは好機でもあるってコトだ!

 

「♪~ッ!♪~ッ!」

 

「これは……?……ああッ!」

 

 適当な歌詞を歌い、パルスソングを発生させる。鍔迫り合いの状況ならば、不意討ち程度にはなるはず。歌とも言えないような酷い声だったけれど、胸についているハート型の装備『ハミングハート・トランスデューサー』(と言うらしい)によってパルス波へと変換された音波攻撃がハープ・ノートを吹き飛ばす。吹き飛ばされたハープ・ノートはすぐに立ち上がったけれど、その足取りはフラついている。目を押さえていることからして、どうやら盲目の追加効果を与えたらしい。歌で盲目とは一体……バッハ?

 

「……大丈夫?」

 

 既に切断した弦は再構成が終了している。いつでも追撃は仕掛けられるのだけど、盲目の女の子を襲撃するって絵面がちょっと、ねぇ……?ヴァルゴみたいなガチの敵なら、問答無用でハメ倒しても良心が痛むことはない(と思われる)のだけど。

 

「うーん……自分の声で心配されると、何だか変な違和感を感じちゃうね……」

 

 そういうモノなのだろうか?

 流石にそんな体験をしたことは無いので、何とも言い難いのだけど。……今度録音して聞いてみようかな?

 

「……どうする?もう止めにしようか?」

 

「オレは反対だぜ!……マジで引き千切られるかと思ったからな…………」

 

 どうやらライメイザンで斬り裂かれかけたのが、よほど堪えていたらしい。まぁ、普段ならシールドも相まって一番ダメージの少ない場所であることに違いないからね。こういうのに不慣れってのは少しわかる。

 

「アラ?ロックってば、もしかして怖じ気づいたのかしら?地球を救ったというのに、随分と怖がりやさんなのね。ウフフ……!」

 

 ここぞとばかりに、ハープがロックのコトを煽ってくる。ハープってロックのコトが好きなのか嫌いなのか、時々わからなくなることがあるんだよな……

 

「ウルセーよ!」

 

「アラ、アナタこそワタシと全く同じ声なのだから、あんまり乱暴な口調では喋らないでほしいわね!」

 

 互いのギターから発声された、全く同一の声色でケンカしているのを客観的に見るのは、実際ちょっとシュールだ。

 

「あはは……っと、時間切れみたい」

 

 制限時間が過ぎたようで、電波体の輪郭が曖昧になってくる。ここで同じ系列のカードを使えば連続して変身することが出来る。要はポリジュース薬みたいなモノだ。

 

「フフフッ、そうだね。よし、それじゃ今日はもう止めにしよっか!それにしても……自分と同じ姿をしている人と戦うのって、思ったより神経使っちゃうみたいだね……」

 

 若干草臥れたような、弱々しい表情を見せる。電波体は心理状態に結構左右されるところがあるので、あんまりよろしくない傾向だ。

 

 こういうのって、現実じゃまず不可能なコトだから、あんまり影響とか考えていなかったなぁ……一応、大事はとっておくべきだろうか。

 

「うーん……辛いのなら、少しウチで休んでいく?今、家に誰もいないんだよね」

 

 あかねさんは今日もパートなので、夕方まで家には誰もいないことになっている。ミソラちゃんに『母さん』ってワードは基本NGなので、詳しく説明することはないが。

 

「ホント!?行く行く~っ!」

 

「…………」

 

 先程の憂鬱そうな表情が嘘のように、これ以上ないと言わんばかりな満面の笑みを浮かべている。うーん、ミソラちゃんってば名演技。

 

「そうと決まれば!早速ウェーブアウトだよ、スバルくん!!」

 

「何か釈然としないような……」

 

 まぁ、どうせ口でミソラちゃん(と言うよりはハープ)に勝てるとは思えないし、ここは大人しく従っておいたほうが良さそうだ。序でに今日の反省会でもすれば、万事OKだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コダマタウンの展望台から、二筋の流星が飛び立っていく。青とピンクの電波は、連れ添ってコダマタウンの住宅街方面へと向かうようだ。

 

『オイ……これ、どうするんだ……!?』

 

 残ったのは、電波人間同士の争いによって散々に荒らされたウェーブロードの残骸である。ウェーブロード自体は時間が経てば復活するが、周りで見物していたデンパ達の心は、決して穏やかでは無かった。

 

『オデタチノウェーブロードハボドボドダァ!』

 

『オレァアイツラヲムッコロス!』

 

『ナゼミテタンデス!?』

 

『ダッテ,カラダガボドボドニナルンダド!?』

 

 怒りのあまり滑舌がおかしくなっているが、ようするに巻き込まれるのを恐れて何もしなかった連中である。

 

『ミンナ、オちツくんだ!』

 

 展望台エリアのデンパ達のまとめ役をしているデンパが、騒がしい場を納めようとする。流石にまとめ役の影響力は無視出来ないのか、取り敢えずは話を聞く姿勢を見せる。

 

『イマのサンジョウはミンナもしっかりミただろう。だが、サワいでいても、しょうがないんだ!なんとかカイケツサク……いや、ヒガイをサイショウゲンにオサえるホウホウを……』

 

『ムリですヨッ!だってアイツラ、マジでツヨすぎるんですもん!』

 

『チートですよチート!』

 

『でも、ピンクのホウはカワイかった!』

 

『ワカる!』

 

『それはワタシもオモってました!』

 

 ざわざわ……とまた暫く騒がしくなるが、今度のデンパ達の話題は、ピンクの方ではなく青い電波人間の方に集中していた。主にその暴れっぷりであるが。

 

『あっ』

 

 愚痴っていたデンパの一人が、唐突に間の抜けた声を出す。それは騒がしかった場で、嫌に響いていた。

 

『どうしたんだ?』

 

『どうにもデキないんだったら、せめてホカのデンパにもわかりヤスいように、トクチョウをツタえるためのヨびナをカンガえたら、どうです?』

 

 恐る恐るといった風に進言したデンパの言葉を、展望台にいたデンパ全員が反芻する。確かに、あの電波人間達がここだけで暴れるとは思えない。ならば危機を伝えるためと考えれば、至極妥当ではないだろうか。

 

『ヨシ……それじゃあミンナ、ナニかいいテイアンがあったらオシえてくれ!』

 

『ボウソウトッキュウ!』

 

『アバレンボウショウグン!』

 

『バーサーカー!』

 

『ヤメトケヤメトケ!ミつかったらケされるかもしれないんだぞ!?』

 

 再び展望台の電波世界は騒がしくなっていく。しかし、中々良い案が見つからない。明らかに化け物じみた渾名だと、バレた時に命の保証が無い……!という共通認識が会議を難航させていた。

 

『じゃあ……ブルー……ライオット・ブルーというのはドウデスカ?』

 

 それは、先程の呼び名を考えようと提案したデンパだった。

 

『ソレだ!』

 

『ビミョウにツヨそうなナマエにカモフラージュしたな!?』

 

『ワタシはサンセイ!』

 

『ワタシも!』

 

『それじゃあ……ライオット・ブルーにケッテイする!ミンナ、アシタはイソがしいぞ!しっかりハッシンしよう!』

 

『『オオッ!!』』

 

 それは、暴蒼(ライオット・ブルー)の渾名がニホン中に知れ渡る、その前日譚の出来事だった。




このEXTRA-1は日付変更時に、59話と真ベルセルク編1話の間に移動させる予定です。

GET DETA……無し
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