ーーTKシティーー
バスに揺られること約一時間。ボクたちは大都会、ロTKシティへと足を踏み入れていた。揺られると言っても、実際のバスの揺れはほとんどないけどね。このあたりも、2ヶ月で随分変わったような気がする。
「やっと着いたわ!」
委員長が目をキラキラさせながら到着を喜ぶ。やはり都会はいいねぇ……
「ウホホホーー!!スゴく賑わってるな!」
「凄い人混みだよね……休日にしたって凄いよ」
老若男女、一通り揃ってる感じだ。周りを見渡せば人人人。人ばっかりだ。それはバス停も例外じゃない。
「アンタたち、迷子にならないよう気をつけなさいよ?ここの混み具合は半端じゃないんだから」
確かに。バス停でこれなら、建物内はどれだけ混んでいるんだろう。想像もつかない。
「『マロ辞典』によると……この先にエレベーターがあるはずです。そこからロッポンドーヒルズに行けるようですよ」
マロ辞典凄いな。そんなことまで載ってるんだ。
「じゃ、早速行きましょ!」
『おお~!』
ーーロッポンドーヒルズーー
かなりの高さまでエレベーターで上昇し、ついにたどり着いたロッポンドーヒルズ。エレベーターの中で聞いたキザマロの説明によると、ロッポンドーヒルズは地上200メートルに建築された最新の街、ということらしい。地上200メートルとか、普通は考えないって……
「ここがロッポンドーヒルズの中心部……」
それによく見ると、下が透けている。青いパネルが敷かれているお陰で分かりにくくはなっているけど、ダメな人はダメなんじゃないかなぁ。
『ロッポンドーヒルズへようこそ~!!』
ーービュイン!
「わわっ!」
何だ何だ!?宣伝!?四方をディスプレイに囲まれたぞ!?これは初見だとビビるよ……
『美味しいコーヒーが飲める「カフェ・ダマー」は駅からすぐの場所です!』
「エア・ディスプレイ?」
『ただいま、ショッピングプラザでは大特価セール中でございます!』
グイグイくるな……
「都会じゃ、こんな感じでCM用のエア・ディスプレイが溢れてるの。常識よ」
いや、エア・ディスプレイが非常識なんじゃないの!?普通に鬱陶しいんだけど……
『「滅びの文明展」美術館にて近日公開予定!』
あ、これは……オーパーツのヤツか。やべっ、どうしよう。オリジナルのオーパーツにチカラ返せとか言われたらマズイよな……暫く天地さんに預ければいいか。
「CMならもう結構よ」
ーービュイン!
行ってしまった……唐突だったね、ホント。
「ん?……アッチ見てください」
キザマロ?アッチには足場もない空間が広がっていたはず。何で仕切りも作っていないんだろう。普通に落下事故位、起きていそうなものだけど……
……って、まさか!
『イヤッホォォォォ!!』
ま、まさか!あのスケボーにアンテナが付いたような先鋭的なフォルムは……!
「マロ辞典によると、あれはスカイボードですね。最近人気の乗り物です」
スカイボード来たァッ!これは凄い楽しみにしてたんだよね。か、買うか……?
「おおっ!凄いなぁ!」
「オレも乗ってみたいけど、もう少し横幅のあるモデルが出てくれないとな……」
ゴン太……ドンマイ。
「アナタさっきから驚き過ぎじゃない?」
「あはは……」
すいません……
「オイ、みんな!早くポップコーンを食べに行くぞ!うおぉぉぉ!!待ちきれねぇ!」
「流石にそこまで切羽詰まってないけどさ、ボクも楽しみだったんだよね、ポップコーン」
「あぁ、ボクのキャラメル味は売り切れてないでしょうか……!」
キザマロは切羽詰まっているらしい。
「アナタたちはホントに……まぁいいわ。上映開始までかなりの時間はあることだし、この辺りを見学しましょうよ。どうせ時間間近にならないと、ポップコーンも買えないでしょうし」
普通ポップコーンって何時でも売ってるモノじゃないの?マテリアルウェーブの恩恵なんだろうか。
「え、そうなの?」
「最近の電波技術の発展で、ポップコーンなんかの類いは手続きがかなり短縮されたの。別に、上映前に長時間並ばなくてもよくなったのよ。それに映画館はポップコーン売りがメインじゃないしね。だから上映時間が迫らないと売りに出されないってわけよ」
確かに、貨幣もゼニーになっちゃったし、利便性が高まってるってことなのだろうか。儲けとかどうなってるんだろう。ああ、でも販売時間を限定することで、出来立てを提供しやすくなるってメリットはありそうだ。
「ポ、ポップコーンは後回しなのか。チェッ!」
「まぁまぁ……ほら、面白いモノとかあるかもしれないし。さっきのスカイボードとかさ」
「グヌヌ……ま、しょうがねぇよな」
よし。
ーー五分後ーー
ボクたちは何故か、ナンパの現場に遭遇していた。遭遇っていうか、委員長が見ているだけなんだけど。
『ねぇ、一緒にドライブしようよ~?』
『……』
うわっ、脈無さそう……
「あれはナンパってやつね」
『いいじゃんいいじゃん、楽しいドライブにするからさ~!オレさ、乗り物だったら一杯持ってるし!見てみて!オレのマテリアルウェーブのコレクション!……マテリアライズ!スポーツカー!』
おおっ!スターキャリアーから車が出てきたぞ!これが音に聞くマテリアルウェーブ……ホントに買ってみようかな……
『ねぇ、どう?どう?イカすでしょ~?』
「マテリアルウェーブの車か……」
「凄いわよね。乗り物や電子機器まであらゆる物を生み出せる電波なんて。ただ、マテリアルウェーブの電波は大人気で、手に入れるのが大変だって聞いたけど……」
ネットオークションみたいなので売ってればいいんだけどな。残念。
『……え?ダメ?中々ガード硬いなぁ……じゃ、これならどう?マテリアライズ!バイク!』
バイクがどう見てもオマルにしか見えない件について。これは酷い。デザイン担当は何をやってたんだ!(憤怒)
『他にこんなのもあるよ。マテリアライズ!スカイボード!』
おっ!さっきのヤツだ。いいなぁ……
『最新のスカイボードだよ~!ねぇイカすでしょ~?ねぇねぇ』
ナンパ下手すぎない?いや、ボクもしたことないけど。
「あの人、相当なマテリアルウェーブのコレクターみたいね」
「頼んだら売ってくれないかなぁ……」
「諦めなさい」
ピシャリと言われて、ボクの計画は儚く崩れ去った。
ーー二十分後ーー
あっ!
「ねぇ、見てよ!このエア・ディスプレイに映ってるの、ミソラちゃんだよね!?」
確か一月ほど前に歌手活動を再開するって宣言していた、ハズ。本人はアイドル路線からは離れたいって言ってたけど、普通に歌だけでも売れると思うんだよね。
「お、確かに!いいよなぁ、スバルは。ミソラちゃんともブラザーなんだろ?」
ゲームでは、ボクが不登校になった時に連れだそうとした委員長の連れで来ていた時にミソラちゃんとの関係を知られたけれど、このボクは不登校にはなってはいないのでアイランド地下でボクの脱出モジュールに通信をする時に始めて知ったらしい。
「あはは……うん。ミソラちゃんは大事なブラザーだからね。今はフォーマットされてるけど……」
「ふーん」
あれ、委員長がご機嫌ナナメだ。何で?
ああ、ハイハイ。そういうこと。
「まぁまぁ、委員長。そんなに拗ねないで……」
「拗ねてないわよ!……フンだ!スバルくんのスケコマシ!」
ええっ!?逆効果!?っていうか、委員長に罵倒されると、何だか不思議な気持ちになりそう。
「ちょっ、スケコマシは酷いよ!?」
「スケコマシってなんだ?美味いのか?」
「スケコマシって言うのは、女性を口説いたり、騙したりする人のコトですね。この場合、委員長とミソラちゃんという二人のブラザーを持つスバルくんは、紛れもないスケコマシでしょう」
「キザマロッ!?」
「フフフ、さっきの仕返しですよ!」
やることがえげつないよ!
「(スバル……)」
うわぁぁ!ロックまでそんな憐れまないでくれよ!?
「ごめん、ごめんってば……」
そして何故か委員長にパフェを奢ることになってしまった。今度、二人で。今日でいいじゃないか……
ーー五分後ーー
「さて、まだ上映まで時間があるわね。それじゃ、TKタワーでも見に行きましょうか?」
ご機嫌の委員長が言うには、一通り見て回ったので次はTKタワーに行こうということらしい。TK、タワー。TK……あまり深く考えないほうが良さそうだ。
「TKタワーですか!いいですねぇ~!ボクの『マロ辞典』によると、TKタワーは日本で一番大きな建物らしいですよ」
そんなものを地上200メートルに建てていいの?
「日本一って言葉には興味がそそられるわね」
「キザマロは絶対見ておいたほうがいいぜ!」
おい、やめろ!それ以上言っては……
「なんでですか?」
「ちょっ、ちょっとゴン太……」
「そのタワー、スンゲー高いんだろ?それを見たら背を伸ばすヒントが掴めたり……」
「で、できませんよ!それにボクは今の身長も気に入ってます!だいたいですね……」
ああ、止められなかった。ゴメンよキザマロ。
「まぁまぁ……それでさ、そのTKタワーは何処にあるの?」
ぶっちゃけ、ここに来るまでに見えていたんだけど。だって日本一高いんだし。TKタワーのモデルになった例のタワーだって、近づく前に気づくよね。だから何処に、というよりはどこから行けるのかが気になる。
「『マロ辞典』によれば、TKタワーはここからすぐに行けるはずですよ。具体的には……」
ほうほう。なるほど。
「それじゃ、行ってみよう!」
ーーTKタワー前ーー
なるほど、確かに高い。しかし思った程じゃないな。今の時代、電子機器の小型化も進んでいるからあんまり巨大な電波施設って存在しないんだよね、確か。役割的には仕方ないのかもしれないけど。
「おお~、これがTKタワー」
一応外観位は覚えておいたほうがいいかもしれない。攻略には役立つだろうし。
「流石に高いわね~」
『知っているかね?』
ファントム・ブラック!貴様!見ているな!
「ッ!」
振り返ると、金髪長身で全身を黒多めな配色の服で包んだ男が、片手に杖を携え立っていた。というかハイドだ。
「ビ、ビックリしました」
「いつの間に……」
「ンフフフ……この、TKタワーはただ高いだけの建物ではないのだよ。巨大な電波送信設備が備えられているんだ。この場所で、日本の電波の全てが管理されているのだよ。所謂、電波ターミナルというヤツだな」
ここまで聞いていると、普通に豆知識を教えてくれた優しい人にしか見えない、ワケはない。だって、格好が怪しすぎるもの!
「(オイ、スバル。ちょっとビジライザーをかけてみろ。それから後ろのTK何たらを見てみるんだ)」
略すところおかしくない!?
「(ハイハイ……ええっと、ほい)」
ビジライザーを通して見たTKタワーは、とても多くのデンパくんで溢れていた。普段はこんな感じなのか。どうも人気のないイメージが先行しちゃうな。これも全部、ファントム・ブラックってヤツが悪いに違いない!
「(デンパくんが一杯だ)」
「(このタワーが電波ターミナルだっていう話はホントだろうぜ)」
「(そういえば昨日ビビってたテレビのデンパくんも、TKタワーから来たっていってたよね)」
「つまり……このTKタワーは日本で最も大事な施設とも言えるワケだ。何故かわかるかね?少年少女たちよ」
「それは……今の社会にとって、電波はなくてはならないモノだから……ですか?」
「その通り」
キザマロの回答に、満足したような顔で正解を告げるハイド。しかし今のアンタ、かなり嫌なニヤケ方してるよ?
「言ってしまえば、ここは日本の電波の供給源になるわけだ。ンフフフフ……」
趣味悪い笑い方だな……
「何が可笑しいの?」
委員長が純粋に不思議、といった表情で問う。何か引っかかるような笑い方だったからね。仕方ない。
「想像してみるといい。もし、この大切な施設に何かあったら、世間がどうなるかを……ンフフフフ」
そう言ってロッポンドーヒルズの方へ歩いて行ってしまった。ぶっちゃけ職質かけられそうな男だった。
「き、気味の悪い男です」
「都会っていうのは、いろんな人が集まるところなのよ。ま、気にせず見学を続けましょうよ」
都会の一言で片付けるのはどうかと思うけど、正直全く否定出来ないからなぁ。人が多いと変人の割合も増える。嫌な方程式だよね……
「それにしても、相変わらず委員長の安心感は凄いよね。まったく動じてなかったしさ」
「え?あ、そうね!フフン!もっと頼ってもいいのよ?」
ドヤッ!と言った表情の委員長。ぶっちゃけ委員長のドヤ顔って凄く可愛いと思う。反論は……あまり認めたくない。
「よし、それじゃTKタワーに入ってみようか…………あれ?入れない」
何で?
「おかしいわね……あ、案内のディスプレイがあるわ。何々……本日は大変混雑しており、恐れ入りますが入場を制限しております……つまり入れないのね」
「どうする?まだ上映には時間があるけど……」
「そうね……ちょっと早いけど、映画館に向かっちゃいましょうか。……キザマロ!」
キザマロが完全にデータベース扱いされているような気がする。頑張れキザマロ!後で腹黒メガネの話でもしてやろうかな……さっきのキザマロは真っ黒だったけど。もうあんまりからかうのは止めとくべきだろうか。
「はい。ええっと……ロッポンドーヒルズ内、ショッピングプラザの中ですね」
「おおっ!それじゃあ遂にポップコーンが食えるのか!?」
ゴン太ェ……
「取り敢えずロッポンドーヒルズに戻ろうよ。ボクもポップコーンには興味あるしね」
ハーフ&ハーフ!ハーフ&ハーフ!
「(スバルもポップコーンへの執着はかなり強いような……?)」
「(何か言った?)」
「(何でもねぇよ)」
変なロック。
ーーロッポンドーヒルズーー
「……この建物の中に、映画館があるはずですよ」
「じゃ、早速行きましょ!」
あ、そうだ。
「皆、ちゃんとチケットは持ってる?」
ゴン太が落としてないことを祈る……!
「……あるわよ?」
「ボクもありますよ」
「ああ、オレもあるぜ」
何!?落としてない、のか。よかった。フゥ……
ーービュゥゥゥッ!!
「うわぁっ!」
「ッ!ス、スカートが……!」
必死にスカートを押さえる委員長。じゃなくて!
これは……突風?こんなの無かったハズだぞ!?
「ああ~~ッッ!!」
チケットか!?嘘、こんなので!?油断した!
「ど、どうしたんですか?ゴン太くん」
「ちょっと!そんな大きな声出さないでよ!!」
「無い……」
この世の終わりのような、青ざめた顔のゴン太。
「オレのチケットが無い……」
「チケットが無いって……それどういうコトよ!まさかさっきの突風で……」
「ああ、確認しようと取り出したところに……チクショウ、強風で目を閉じていたから方向もわからねぇ……」
一瞬の油断、後悔は遅く……悲しすぎるね。
「これはマズいぞ、非常にマズい!あのチケットが無いと……あのチケットが無いと……ポップコーンが!食べられないじゃないか!!」
「何だってェッ!?」
「そ、それは重大事件です!!」
取り敢えずノっておくボクたち。楽しい。今は。
「アナタたちね……!」
「でも実際、どうする?広大なロッポンドーヒルズで探すのは難しいかも……」
プロセスが違うから、ゲーム通りとは限らない。どうしよう……
「……オレ、一人で待ってる」
「え?」
「映画には皆で行ってくれよ。だってオレ、遅刻はするし、チケットは手放しちゃうし……めいわk「そんなことない!」……スバル?」
クソッ、これくらい予想出来た……とは思えないけど、チケットの飛んでいった方向さえ確認していれば!しまった……これはボクの責任もある。
「そんなことない!そんなことないから、皆で一緒に探そうよ!時間はまだ、あるんだからさ。これも思い出だと思ってさ!ね、どう?」
「スバル……!」
「ハァ……しょうがないわね」
「委員長、別にオレのことは置いていっても……」
「このワタシが!アナタのことを!置いていけるワケないじゃないの!だってアナタは……ワタシのブラザーなんだもの!そうでしょ!?」
「ハ、ハイッ!」
委員長スゲー。カッコいいよね、本当に。いや、ボクも罪悪感あるんだけど。
「仮に、映画がどれ程よく出来ていたとしても、アンタが居なかったら絶対楽しめないもの。ワタシたちは、全員揃ってこそなのよ!わかった!?」
「う、う、う、うぉぉ!!委員長!オレ一生ついていくぜ!!」
「映画を見るのが少し遅くなるくらいですよ。皆で手分けして探しましょう!」
「ボクも全力で手伝うよ!電波変換解禁も辞さないからね!」
それくらいしないと、申し訳が立たないもの。
「お、おまえら……ありがとう!サイコーの友達だぜ!」
グヌヌ……心が……!今度牛丼でも奢るか……
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