星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 ーーTKタワー屋上の電波ーー

 

 戦闘が始まったのだけれど、ファントム・ブラックは例のフワッとした瞬間移動で数メートル後方に下がり、そのままフワフワと滞空したままだ。滞空といっても数センチから数十センチといったところなので、ドラえもんと大差はないと思う。

 

「ンフフフ……まずは様子見というヤツだ。安心したまえ、悪役(ヒール)にも見せ場は用意してやるとも。見事な散り様というものを遂げさせてあげようじゃないか!ンフフフ!」

 

 うへぇ……気持ち悪い。しかも幼女趣味とは救えないよ。寧ろ同情するね、可哀想に。(棒)

 

「どうするんだ?」

 

 ロックが聞いてくるけど別になぁ、と言った感じだ。ぶっちゃけ負ける要素があんまりなさそうだしなぁ……

 

「いつも通りでいいんじゃない?」

 

「ま、そうだよな!」

 

 警戒し過ぎても敵の思う壺って感じだし。ここはゲームのクソ雑魚ファントム・ブラックだと思ってやるしかない。ただ、しぶとそうなんだよね。

 

「んじゃ、いくよロック!」

 

「おうッ!ゥラァァァァッ!!」

 

 ウォーロックアタックで瞬時加速、一気にファントム・ブラックの眼前に躍り出る。左腕にはシンクロフック。まずはワンパンだ!……意味違うけど。

 

「セアァッ!」

 

「何ッ!?…………グハッ!」

 

 よし、入った。目線を見るに、多分対応出来てない。電波体、特に電波人間同士のバトルでは動体視力が命だというのに。未知の能力に対応するには、事前知識か動体視力なりの見極めを鍛えなきゃいけないんだよ。ボクは前者+後者って感じだけど。強い。(小並感)

 

「……なるほど。私の脚本に割り込む程度のチカラはあるというわけか。ならば私も、そろそろ反撃タイムといかせてもらおうかッ!」

 

 余裕無くなるのはえーよホセ。

 

「ンフフフ……」

 

 不気味な笑顔のまま、フワッと消えていくファントム・ブラック。殴られた頬が赤くなければ完璧だったのにね。

 

「消えた?……スバル!」

 

「わかって、るッ!」

 

 無言で背後に現れたファントム・ブラックが、手にしたステッキソードで斬りかかってくる。思いっきり不意討ちじゃないか!というかシールドでガードした感じ、剣じゃなくて普通のステッキだコレ。つまりは鉄血メイス先輩……!?いや、ほっそいステッキだった。ひ、貧弱過ぎる……!

 

「ンフフフ……中々の反応だ」

 

 それはさっきウォーロックアタックに反応出来なかった自分への自虐?酷いピエロだ……

 

「なら、こっちからッ!!」

 

 あんまり長引かせて、データを採られるのもマズイ。取り敢えずは適度にボコって撤退してもらおう。

 

「うおぉぉっ!!」

 

 左腕にソードを展開し、前方に出現したファントム・ブラックに袈裟に斬りかかる。これは決まった!

 

「ハァッ!……アレ?」

 

 斬ったと思ったら、幻?いや、瞬間移動で避けたのか。中々上手い使い方だ。

 

「甘いッ!……ハッ!」

 

 そして後方に再出現し、マントで首から下を包む。瞬時にマントを開き、中から大型の伸びる腕……ファントムクローを伸ばして攻撃してくる。確かファントムクローは防御不可だったはず。避けるか。

 

「…………おおぉッ!!」

 

 伸びた腕を半身になって避け、シールドで包んだ左腕で掴み、回転しながら思いっきり引く。当然、腕と繋がってるファントム・ブラックは……

 

「ヒートアッパーだァッ!」

 

「な、何だと!?うわぁぁぁっ!!」

 

 よ、弱っ……その辺のウィルスにもやられそうなのはボクの気のせい?取り敢えず吹っ飛ばされたファントム・ブラックは、TKタワーの外壁に背中から衝突し崩れ落ちた。これが敵さんの幹部か……

 

「グ、ググ……な、中々やるな。よ、よろしい。き、今日のところは、この辺で幕引きに……」

 

 無理すんなよ。もういいでしょう?

 

「………………」

 

「こ、『今回はそれほど無理をするな……』。そ、そう言われているのでな……」

 

 満身創痍じゃないか!リカバリーサービスでもした方がいいかな?煽りになりそうだけど。

 

「せ、せっかくのホラー映画が台無しになってしまったのは、い、いささか癪ではあるがね……ただ、これだけは約束しておこう。今日は私の風が吹かなかったようだが、いずれ更なる恐怖をお見せする……と」

 

 

 ーーバシュッ!

 

 音と閃光からして、恐らくはウェーブアウトだと思う。それよりも、あれだけボコボコにされてたというのになんという強キャラ感だ。そのうち対閃光防御とか言い出すに違いない。(棒)

 

「消えたか……大した敵じゃなかったな、スバル」

 

 ロックの講評が酷い。まぁ、ぶっちゃけ弱かったからね……。いくら数字的ダメージより肉体的ダメージの強い殴打系のカードで攻撃したからって、小学生にツーパンとか流石に情けなくない?

 

「そうだね……しぶとそうなヤツだったけど」

 

「違いねぇ!ギャハハハハ!!」

 

 ちょっと、下品だってば……

 

「だがよ、妙なスターキャリアーと得たいの知れない電波体に、電波変換……多分、いるぜ。アイツ以外にもな。久々に、血が疼いてきたぜ……!」

 

 ロックは年中ボクの左腕で疼いてるじゃないか。ヤバい。中二病にしか見えないぞ。

 

 

 ーーざわ……ざわ……

 

 下の方が……何だか騒がしいな。野次馬?

 

「おい、タワーの下が騒がしくなってきたぜ」

 

「ホントだ。それに日も明けてる……」

 

 うわぁ……徹夜でタワー登ってたのか。ファントム・ブラックは瞬殺だったからノーカンで。

 

 

 ーーざわ……ざわ……

 

『……夜が明けてきたぞ』

 

『……あっ!見て!ビルの天辺に何かいるわ!』

 

『ほ、本当だ……あれは……人?』

 

『あ、あの人に助けられたんだ!』

 

『オバケに襲われて危ないところを助けてくれたんだよ』

 

『じゃ、もしかして……さっきの助けてくれた、カッコいい人……?』

 

 

 ーーざわ……ざわ……

 

「うわっ、皆こっち見てるよ……手でも振ってみる?」

 

「いいじゃねーか!やってみろよ。ファンサービスってヤツだぜ?」

 

 ロックに本当のファンサービス(物理)を教えてやろうか……?

 

「しょうがないにゃあ……」

 

 タワー下にいる人たちに、手を振ってみる。

 

 ーーキャーキャー!!ワーワー!!

 

 いい気分。

 

「スバルくん!?ワタシのこと、忘れてない!?」

 

 あ、忘れてた。……そうだ。いいことを思いついたぞ。

 

「ゴメンゴメン……それじゃ、運ぶからね。体を楽にして……」

 

 委員長の背中と足に手をかけ、一気に持ち上げる。

 やっぱり軽ッ!ファントム・ブラックの弱さより驚いたよ……

 

「え?あぁ、そうね……って、抱っこ!?」

 

「こっちの方が大衆受けが良さそうだし……悪者を倒したヒーローは見事、お姫様を奪還しました!みたいな?」

 

 ぶっちゃけ少女誘拐なんだよね、コレ。事案怖い。おまわりさんこっちにこないでください。

 

「う、あ…………その、えっと……ううう……お願い、するわ……~~ッ!」

 

「うわっ、ちょっと委員長?」

 

「いいから!早く!」

 

 顔を押し当てるのは止めてくれませんかね……?バランスが崩れちゃいそうだ。

 

 

 ーーキャーキャー!!キャーキャー!!

 

 何か全体的に女性が騒いでる比率が大きい気がする。よくわからないけどね。

 

 

 

 ーー三十分後ーー

 

 取り敢えず、人気のないところまで退避することに成功し電波変換を解いたボクたちは、映画館の前に戻ってきていた。ゴン太とキザマロが映画館内にいるのは連絡で知っているからなんだけど。

 

「そういえばケガとかない?」

 

「大丈夫よ。あの男さえ視界に入らなければ、夜景を楽しむ余裕はあったしね」

 

 そういうモノなの?

 

「まぁ平気ならいいんだけど……」

 

「……その……何て言うか……カ、カッコよかったわよ」

 

 今更?

 

「確かに、今日のロックマン様はカッコよかったもんねぇ……突如あらわれ、お姫様を浚った悪党相手に殴って殴っての大立ち回り!そういえばパンチしかしてないな……」

 

 酷い戦いだった。

 

「か、勘違いしないでよね!ロックマン様だけじゃない、アナタもカッコよかったわよ!」

 

 なんという高度なツンデレだ……。ボクには何を言ってるのかよくわからないよ。

 

「はぁ……」

 

「よくわかってないような顔ね……まぁいいわ。あっ、そうだわ。えっと、何て言うか……例のアレをここで……」

 

 ああ、ブラザーバンド?

 

「ブラザーバンドでしょ?丁度いいし、結んじゃおうよ」

 

「そ、そうよ!ブラザーバンドよ!ワタシ、結構楽しみにしてたのに……」

 

「え?」

 

 別に結び直すくらい、普通じゃない?

 

「ほ、ホラ!えっと……これからもワタシの、大事な…………大事な、と、友達でい、いてね……」

 

 ???

 

「そりゃ、もちろんだけど……まぁいいや。これからも宜しく、委員長!」

 

 ええっと、ブラザーバンドを結ぶには……ここをこうして……よし!

 

「これで完了!……って、ええっ!?」

 

 なんだこれ!?

 

「な、何!?何か起こったの!?」

 

 心配するような顔の委員長。いや、これは流石に……

 

「キ、キズナリョクが……」

 

「キズナリョク?……な、何コレ!?さ、380……!?」

 

 何で!?委員長の元々のキズナリョクが80だから……300。一人で、300……!?キズナリョクシステムがおかしいってことは……なさそうだ。だって昨日届いたんだし。

 

「これは……喜んだ方がいい、よね?」

 

「え、ええ。そうね。とても好ましい状況だわ」

 

 好ましい?どういうこと?

 

「よくわからないけど……取り敢えず、ゴン太たちを迎えに行こうよ。ボクもうクタクタ……」

 

 日本一高い建築物を一夜かけて登ったんだ。疲れも溜まるよ……

 

「フフッ、それじゃあ、帰りのバスではワタシに寄りかかってもいいわよ?それくらいはしなくちゃね。♪~♪~」

 

 委員長もご機嫌みたいだし、さっさと二人に合流しなくちゃ。ふぁーあ。眠い……

 

「あ、来ましたよゴン太くん」

 

「おっ、大丈夫だったか?二人とも」

 

 軽いけど、その軽さが逆にありがたい。根掘り葉掘り聞かれたら困ってたところだよ。

 

「何とかね。ただ、凄く眠い……」

 

「チェッ、ポップコーンのおかわり貰いにいこうと思ってたのに。まぁ、しょうがねぇな」

 

 ゴン太はブレないねぇ……そこがちょっと羨ましいけれど。しかし、夏休みまで後少しだ。次の敵まではまだ時間があるし、暫くは筋肉痛と戦っても文句は言われないよね……?

 

「あ~~っ!!」

 

「何!?」

 

 どうしたんだよ、ゴン太。珍しく大声なんて出して。

 

「オイスバル!ハーフ&ハーフのポップコーン、今日からだってよ!」

 

 ななな……何だとォッ!?

 

「そ、それは本当!?……本当だ!やった!頑張った甲斐があったよホント……」

 

 お陰で目がパッチリ覚めた。よーし、今日はポップコーン食べるまで帰らないからね!

 

「すいませーん!ポップコーンのハーフ&ハーフ、Mサイズでください!」

 

 待ちに待ったハーフ&ハーフのポップコーン!やっぱりボクはツいてるってことだね。

 

「申し訳ありません。先程の騒動でポップコーン用のマシンが故障してしまいまして……ただいま提供させていただくことが出来ておりません……って、お客様!?」

 

「」

 

 真っ白に、燃え尽きたよ……

 

「(スバルが死んだ!この人でなし!)」

 




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